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『処分』 作者: ギョウヘルインニ

処分

作品集: 10 投稿日時: 2014/06/08 05:54:03 更新日時: 2014/06/08 15:00:00 評価: 5/8 POINT: 590 Rate: 13.67
 盲目になった咲夜は、メイドとしての価値が無くなったので紅魔館から放逐されることになった。

「さて、行きましょうか」

「ねえ、美鈴。眼の見えない私が紅魔館から捨てられたら。死んでしまうわ」

 美鈴に手を引かれ、咲夜の分からない場所までの短い旅が始まったのだった。
 
 短い旅だが帰ることは無いだろう。

「そうですね」

「待って私は眼が見えなくなっても、お嬢様の世話くらい出来るわ」

 紅魔館のことなら、眼が見えなくても。いや、耳すら聞こえなくても咲夜は何でも分かるだろう。

 時間が経って、人や物の配置が変ってしまっても時間を止めて全てを把握することだって出来る。

「そうかもしれませんね」

「だったら、あなたがお嬢様に頼んで私を紅魔館に戻れるようにして」

 美鈴はただの門番であり、今日も不用品の処理をこうして押し付けられている。

 けして、身分や待遇が良いわけではないが。長年紅魔館に勤めている古株だ。そして、レミリアやフランに気に入られている。

 もしも、美鈴本人に出世欲があれば門番などしておらず。例えば、妖夢のような剣術指南役、美鈴なら武術指南役と言った名誉職につくことだって出来ただろう。

 それこそ、働きもしないで咲夜をあごで使っていたかもしれない。

「新しい。メイド長も決まっていましたし。咲夜さんの戻るところはないですよ」

「でも、お嬢様のことを1番知っているのは私よ」

 主人のことを1番知っていたからといって、1番役にたつとは限らない。

 新しいメイド長は咲夜より仕事の出来る者だった。何よりも、人間じゃないので手加減しないで済む。

 咲夜が盲目になったのは、レミリアの機嫌を損ねた際に頭を殴られて眼の神経を損傷したことだった。

「では、やはりこのまま手を引かれ。私に手を引かれるべきだと思いますよ」

「私はお嬢様の仕打ちを恨んでなんかいないわ」

 咲夜は眼が見えなくなっても、レミリアを恨まなかった。ただ、レミリアやフランの顔が見れなくなって悲しんだだけだった。

「そうでしょう。咲夜さんはそういう人ですからね」

「だから、紅魔館に私を戻して。お願い」

 見え無い眼からは涙が流れ始めている。美鈴はそれに気がついて居たが、そのまま進み続けた。




 それから、しばらく進んだときだった。

「美鈴。紅魔館に帰りたい」

 再び咲夜は美鈴に頼んだ。先ほど頼んだときから、返答も無くしばらく進んでいたのでしびれをきらせてもう1度言ったのだった。

「このまま、咲夜さんの分からないところまで連れて行った後の事を私は知りません」

「じゃあ、私は紅魔館に戻っても良いの?」

 美鈴は、レミリアに命令されたのは、咲夜を咲夜の知らないところまで連れて行くことだった。だから、その後のことには干渉するつもりは無い。

「私にはよく分かりませんが。いいのでは、ないでしょうか?」

「良かった」

 美鈴は、よく分からないと保険をかけて言った。戻って来るのはかまわない。だが、紅魔館に住み仕事に復帰できるかは、また別の話だった。

 そのときに、咲夜はレミリアやフランは恨まないだろう。だが、美鈴があの時戻っても良いと言ったから戻って来たとか言われ、話のダシにされるのはごめんだった。

 だから、前置きしたのだった。その時によく分からないと言ったと言えるように。

 まあ、おそらく戻っては来れないだろうが。

 





 咲夜はそれで納得して、美鈴に手を引かれながら歩き続けた。

 足元に集中して、道順を覚えていた。



 美鈴は命乞いが無くなって、少し気が楽になっていた。

 咲夜の様子を見た限りどうやら道順を覚えているようだ。

 それを止める気も無く、咲夜が知らないところまで進んでいった。





「さて、咲夜さん。ここはもう、あなたの知らないところでしょう」

「ここは、どこ?」

「残念ですが、うっかり何処だか喋ってしまうこともないです」

「そう」

 だが、咲夜は紅魔館に帰れると思い余裕だった。ここまでの道順を本気で覚えてきたからだった。

「それでは、これで。お元気で」

「何よ。今生の別れみたいなこと言って。おかしいわ」

 美鈴からはそういうことで言ったのだったが、咲夜には冗談に聞こえたのだろう。




 


 美鈴と咲夜が別れた場所は、確かに咲夜の知らないところだった。

 だが、紅魔館からはそんなに離れていないところの森だった。

 だから、道順を覚えていれば帰ることは不可能ではなかった。





 美鈴は今まで、何人も咲夜のようなメイドや役に立たなくなったものを捨てて来た。

 その数は10や20ではない。それだけ、長い時間を紅魔館で過ごして来た。

 人を捨てることにはもう慣れた。

 慣れる前は、戻ってしまうこともあったが、もう慣れた。

 歳をとったものは、がけのした。
 
 耳が悪いものは、山の上。
 
 気がふれているものは地下室に。

 そして、咲夜はここだった。




 


 美鈴が森の外まで来たころで、遠くで聞きなれた声が聞きなれていない悲鳴を言ったのが聞こえたからそれは確信に変ったのだった。
産廃冷帯災
ギョウヘルインニ
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2014/06/08 05:54:03
更新日時:
2014/06/08 15:00:00
評価:
5/8
POINT:
590
Rate:
13.67
分類
咲夜
美鈴
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0. 90点 匿名評価 投稿数: 3
1. 100 名無し ■2014/06/08 15:17:10
原作からするとこうなるか。いらないなら下さい。
3. 100 穀潰し ■2014/06/09 13:39:47
森の中で咲夜さんがどんな目に合ったのか非常に気になる次第でございまして。
4. 100 名無し ■2014/06/12 00:31:25
転んだら危ない所かな
6. 100 名無し ■2014/06/14 02:34:11
もなかは危険がいっぱい
8. 100 レベル0 ■2014/07/29 18:17:05
メイドとして物のように扱われる咲夜……。
不憫すぎる……
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