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『産廃創想話例大祭B『小傘と紙飛行機』』 作者: 県警巡査長
幻想郷の某所に設けられたとある駐在所にて―――
「ヤバいヤバい!急がないと遅れてしまう…!」
そこで勤務している一人の駐在警官が身支度をしていた。
寝癖のついた髪をせっせとブラシで梳かした後は、少々盛りすぎた歯磨き粉で歯磨きする彼。
彼の名前は青澤良彦。幻想入りして三年目の若手巡査だ。この駐在所には配属されてまだ日は浅い。
何故彼がこうも焦っているのかというと、寝ている間に目覚まし時計の電池が切れてしまったのが原因で、起床するのが少し遅れてしまったのだ。
まさに時間との闘いに明け暮れていた彼は、ようやく出勤用のスーツを身につけて駐在所を飛び出していった。
ここから彼が向かおうとしている人里警察署は徒歩で五分程度の距離だ。なんとか走れば間に合うはず。彼は自身をせかしながら走るのだった。
その頃、人里内では。
「今日もみんなを驚かしてまわるわ!」
赤と青のオッドアイに水色の服を着て、手には妙ちきりんな傘を持った少女が意気盛んになっていた。
多々良小傘は今日も驚かす相手を探して、人里内を徘徊していた。そこに…
「あっ!最初はあの人にしよう♪」
不幸にも今日一人目のターゲットにされたのは、警察署に疾走中の青澤巡査だった。
彼女はニコリとほほ笑むと、彼が通り過ぎようとしたときに…。
「驚けぇーっ!!」
「うおああぁっ?!」
警察署にたどり着く事に頭が一杯だった青澤巡査は突然の事に見事に驚き、勢いよく地面に転がり込んだ。
「やったー!驚いたー♪」
小傘は満面の笑みを浮かべて、地面に伏す彼を眺めた。
「はぁ、はぁ…。な、何をするんだ?!君は!!危ないじゃないか!!」
彼は怒りながらスーツに着いた土を掃い、立ち上がるとその場からまた走っていった。
そんな彼の後姿を見えなくなるまで眺めていた小傘であった。
(またあの人間を驚かしてみようかなー?)
人里警察署・ロッカールーム室
「はぁ…。」「おう、青澤。おはよう!どうしたんだ?」「朝からへとへとじゃないか、お前」「いやぁ、ちょっとね…」
何とか警察署に間に合った彼はロッカールームで制服に着替えながら同僚たちと会話していた。
しかしその表情は疲れた様子だった。
「かくかくしかじか、ということがあったのさ…」彼は今朝あった出来事を同僚たちに話した。
「それは災難だったなぁ…」「大変だったね…」
同僚たちはそんな彼に同情の念を禁じ得なかったのだった。
『おはようございます!!』
「えー、諸君。全員揃ったな。それでは、今日も連絡事項や、装備品点検を行う!きびきびとするように!」
全署員と地域課長の挨拶と共に朝の朝礼が始まった。彼は朝、驚かしてきた少女の事について頭の隅に置きながら朝礼に臨んでいた。
(結局、あの子は何だったんだろうなぁ…。急に驚かしてくるなんて…)
地域課長や署長と副署長による諸連絡の後、拳銃の弾倉検め、警棒・警察手帳に防刃ベスト等の全ての点検が終了し、ほっと一息ついた彼は勤務を開始したのであった。
今朝の勤務は博霊神社の警備(というよりも、雑用処理)だ。午後からは人里内の連絡巡回といったスケジュールとなっている。
一旦駐在所に戻った彼は、白い自転車に跨り今朝一緒に神社の警備に就くこととなるパートナーの巡査と合流した後、神社を目指した。
「「今朝は宜しくお願いします!」」
「はいはい…」
神社に到着した青澤巡査と彼の相棒は霊夢に挨拶を済ませると、素敵なお賽銭箱を間に挟んで休めの体勢をとった。博霊神社で勤務する警官たちはこういうポジションを取るのが定例となっているのだ。
「そうそう。今日はあんた達には境内の掃除をしてもらうわね。それから、買い出しに行ってもらうわよ。それから…」
「は、はぁ…」「りょ、了解です!」
本日の霊夢からの指令を受ける二人は、その後淡々とそれらをこなすのであった。
一旦霊夢から休息の許可を貰った二人は縁側に座って、雑談していた。そして青澤巡査は霊夢に今朝自分を驚かしてきたあの少女の事についてなにか知っているか尋ねたのだった。
「あぁ。多々良小傘ね。私も以前、ちょっとした異変解決にあいつと出会ったことがあるけど、ちょっとうっとおしかったわね…」
「そうなのですか」
「まさかあんた、あんな子供だましな驚かしにビックリした訳?情けないわね…」
「あの時は自分が少し急いでいて心のゆるみが出来ていたわけでありまして、それさえなければ私は驚きませんでしたよ!」
「まぁまぁ。落ち着け青澤…」
憮然顔な彼を宥める同僚。そして二人はお昼になって勤務交替の警官達がやってくるまでせっせとまた働き始めたのだった。
正午過ぎ、命蓮寺にて。
「こんにちはー!巡回連絡です!」「あら、こんにちは。今日もお疲れ様です」
まず最初に命連寺を訪問した彼は、白蓮に巡回連絡カードを書いて貰っていた。と、そこに…。
「ばぁーっ!」
「ん?ああっ!君は今朝の!また驚かしに来たな!」
また背後から驚かしにかかった小傘と遭遇した青澤巡査。しかし今度は驚かなかった。
「むぅー。今度も上手くいくと思っていたのに!」「こら、小傘!今はこの人はお仕事中なのですよ!」
頬を膨らませ、悔しがる彼女を叱る白蓮。
「なんで君はこうも人を驚かすんだ?理解できない」
「実は彼女は付喪神の妖怪なのですが…」
この件に関して白蓮が何故彼女がこのような行為をしているのかについて詳しく説明するのだった。
「それに彼女は人懐っこい妖怪ですし」
「うーん、そういうことだったのですか」
ようやく彼女の事がはっきりとした彼は、小傘にこう話すのであった。
「君のことはよく分かった。今朝はあんな風に怒鳴り散らしてごめんね…」
「えっ…?」
思わぬ謝罪に今度は小傘が驚かされる立場となった。
彼はそれでは、と白蓮に一礼すると寺から去っていったのだった。
そしてその夜。駐在所へと戻った青澤巡査はひとまず勤務報告書を書いていた。
「さて、あの小傘という女の子だが…。まだまだ色々と気になるから後日、彼女に接触してみようかな。白蓮さんの話じゃよくお寺にいるそうだし」
彼はペンを走らせながら、小傘の事が忘れられないでいた。
彼ははぁ、と一息ついてそんな内心を抱えたまま警らに出かけたのだった。
それから数日後…。
久々に休暇をとった彼はあるものを持って命蓮寺へと向かっていた。それは近くの雑貨屋で購入した折り紙である。
これで色んなモノを作って小傘にプレゼントしようと嬉々とした様子で命蓮寺へと向かった。
「こんにちは!白蓮さん」「あら、青澤さん。どうされましたか」「小傘はいますか?」「えぇ。たぶん墓地の方に…」
白蓮はそういうと、小傘を呼びに向かった。
「こんにちは。小傘ちゃん」「あっ。あのお巡りさん!」「実は小傘ちゃんの為にあるものを持ってきてね…」
彼はそう言うと、折り紙を取り出した。
「折り紙?」「そう。お近づきの印に色んな物を作らない?」「うん!わきちやるやる!」
こうして縁側に座ると、様々なものを作り始めた。
小傘は折鶴を折ったり花を作る中、青澤巡査は紙飛行機を制作したのだった。
「どれ、ちゃんと飛ぶか確認しなくちゃな。それっ!!」「?わあっ、紙飛行機だっ!」
彼は紺色の紙飛行機のテスト飛行を行った。それを見た小傘は、目を輝かせるのであった。
「ねえねえ!わきちにも作って!」「お、おう…」
突然の要求に一瞬たじろいた青澤であったが、急いで水色の紙飛行機を作ってあげた。
「わーい!一緒にどっちが遠くまで飛ばせるか競争しましょう!」「よし。その勝負乗った!」
というわけで、寺の境内で紙飛行機の飛距離を競う二人だけのコンテストが行われた。
「わーい、わきちの勝ちー!」「よく飛ぶねぇ(まぁ、俺が作ったから紙飛行機だかなねぇ…)」
「やれやれ…。二人とも楽しそうですね…」
そんな光景を微笑みながら眺める白蓮であった。
それから一週間後…。
「それっ!おおっ今度は俺が勝ったぞ!」「むうーっ!もう一回!」「はいはい…」
「あんた達!うちの境内は公園じゃないのよ!」
今度は博霊神社でコンテストを行っていた二人。そんな二人に少々迷惑気味に感じる霊夢。
「分かっていますよ!そうだ、霊夢さんも投げてみます?ここに紙飛行機がありますし…」
そう言うと青澤は霊夢に赤色の紙飛行機を手渡した。
「はぁ…。分かったわよ。一回だけよ!」
「よし来た!」「わきちも負けない!」
というわけで、霊夢も参戦することとなった。
「紙飛行機構え!よーい……、投擲!」
青澤の合図と共に、三人の紙飛行機は青い空へと向かって行き良いよく飛んだ。
(こんな一日も悪くないわね…)
霊夢は内心、そんな事を呟いていたりした。
こうして今日も幻想郷の穏やかな一日が流れていくのであった。
皆さまお久しぶりです。そうでない方は初めまして。県警巡査長です。
前回の産廃創想話例大祭A以来、約11カ月ぶりのSS投稿となります。
今回は小傘ちゃんとお巡りさんが触れ合う作品を書かせていただきました。
そもそも幻想郷警察の皆さんはどういった組織になっているのかといいますと、
・幻想入りした警察官によって成り立っている。
・勤務内容は外界にいた頃とは全然変わらない。
・警察官の皆さんは外界にいた頃よりも柔軟な思考を持つようになった。
・警察官の人間像は良く言えば「誰でも接しやすくなったので親しみを持てる」悪く言えば「比較的穏やかな性格となった事により、あまり危機感を持てない」。
・ただし人里警察署の副署長や、幻想郷警察のトップである本部長など外界にいた頃と変わらず真面目で頑固な性格の人間もいる。
・制服や装備は新旧混合。
・場合によっては、平の警察官でも機関銃等を持ち出すこともある。
・本気になったらやる時はやる…?etc...
といった具合になっています。
最後となりましたが、拙作を最後まで読んでいただいた皆様に感謝のお言葉を送らせて頂きます。
そして遅刻してしまい、大変申し訳ありませんでした!!
なお、この物語はフィクションであり実在の人物とは一切関係がありません。
それでは、機会がありましたらまた皆さまとお会いしましょう…。では。
〈7月25日 追記〉皆様、拙作へのコメントありがとうございました。コメントの返事をさせて頂きます。
>1.まいん様
基本平和的な作品ばかりなものでして…。
次回からはもう少し、盛り上がるような描写も書けるようにしたいと思います。
ご意見ありがとうございます。
>2.ギョウヘルインニ様
となると、青澤巡査の相手は幻想郷警察全職員とそして、幻想郷の少女たちとの戦いになりそうな予感が…!青澤巡査の危機!
>3.穀潰し様
ご意見ありがとうございます。申し訳ありません。
今回のオリキャラを書く際、穏やかな様子で書かせて貰いましたが次回からはそういったものの調整を再考することにします。
>4.名無し様
機会があれば、SSでもそういった内容の作品を書いてみたいと思います。
誤字指摘ありがとうございます。修正させて頂きました。申し訳ありません。
>5.NutsIn先任曹長様
幻想郷警察の日常風景の一コマを書かせて頂きました。今回は誰も一滴の血を流す事が無い話でした。
その手がありますか…。今後の物語を書く際、是非参考にさせて頂きます。
>6.名無し様
まぁ、一部の警官においてはそういう思考を持ってはいる人間はいると言ったらいますね…。
絵板の方も今後ともどうぞ宜しくお願いします。
>7.あぶぶ様
エログロが無い話で申し訳ありませんでした…。いつかはそういったSSが書けるように努力します。
>8.んh様
子どもはどうしてこうも紙飛行機に憧れを抱くものなのでしょうか…。私も大変気になるものです。
>9.ラビィ・ソー様
時の流れが早いという物程残酷な無いと思います。
>10.レベル0様
ありがとうございます!そのように仰って頂けるとは大変光栄です。
これからもどうぞ宜しくお願いします。
県警巡査長
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2014/06/20 12:34:15
更新日時:
2014/07/25 21:51:10
評価:
10/10
POINT:
750
Rate:
14.09
分類
産廃創想話例大祭B
主人公は幻想入りしたとある警官
小傘
霊夢
幻想郷警察の皆さん
白蓮
いつも絵板の方ではおちゃらけたりドジを踏んでしまったりとまったくどうしようもない幻想郷警察の皆さんですが、今回は少しばかり真面目になっていただきました。
7月25日コメントの返信をさせて頂きました。
スラスラと読む事が出来ましたが、幾分抑揚に欠ける点があったと思いました。
名前付きでオリキャラを出すなら、もう少し勢いを持たせてもいいかもしれません。
それと些細なことですけど「博麗神社」が「博霊神社」になってます。
いつ、マッポがミスファイアして小傘を射殺して、撃つ展開、もとい欝展開になるのかワクワク、もといハラハラしました。
この後のストーリー展開は、引き続きほのぼのでもお巡りさん凶暴化でもイケそうですね♪
時の流れはなぜかくも速いのでしょうね。