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『死ねば死に損生くれば生き損』 作者: レベル0
「ほら、さっさと歩くんだよ!!」
ガッ、と背中を蹴りつけられた邪仙、霍青娥は忠実な死体、宮古芳香と共に地獄へと連れてこられた。
先ほど青娥を蹴りつけたのは三途の川の水先案内人である小野塚小町だ。
「ちょっと!!もう少し人の体を丁寧に扱えませんの!?」
「そーだぞー。せーがにらんぼーするなー」
「黙れ!!罪人共!!貴様等にまともな待遇が与えられると思うなよ!!貴様等はこれから映姫様の所で死ぬよりも苦しい罰を与えられるんだ。精々震え怯えてるがいいさ」
小町はそう言い放つと2人を歩かせ続けた。
2人の業は余程深かったらしく三途の川の横道を歩いて体感時間でおよそ3日ほどかかった。もちろん乗せてもらえる舟など無い。
ちなみに小町は三途の川を渡る死神であり距離を操る程度の能力を持っているのでいくら距離があろうが関係ない。汗1つかかずに涼しい顔だ。
「はぁっ……はぁっ……。も……もう駄目ですわ……。み……水……」
「つかれたなんてもんじゃないぞー」
3日3晩飲まず食わずで歩き続け極限状態である青娥と芳香の事など気にもせずに小町は裁判所の扉を開けた。
「映姫様。罪人の邪仙である霍青娥とその僕であるキョンシー、宮古芳香をお連れしました」
「ご苦労様です。小町」
裁判所の荘厳な椅子に座った地獄の裁判長、四季映姫・ヤマザナドゥが言い放った。
映姫は罪人である霍青娥を見て言った。
「ほぉ……あなたが霍青娥ですか。聞きしに勝る悪党面ですね。延びた寿命の分の人生は楽しめたかしら?随分と手こずらせてくれましたね」
映姫は精一杯の罵倒をしながら椅子から降り、青娥に歩み寄るとその小さな体からは思いもよらないような重い蹴りを放った。
ドガァッ!!
「ぐはぁッ!!」
映姫の渾身の蹴りを腹に喰らって青娥は悲鳴をあげた。
「全くッ!!テメェみたいなクズをッ!!見てるとッ!!吐き気がッ!!するんだよッ!!散々逃げてくれやがってッ…!!死ねッ!!死んじまえッ!!このクソ仙人がッ!!」
ドスッ!!ドスッ!!と映姫の蹴りの音は裁判所の全体に響き渡り止む事を知らない。
「……ッ!!……ッ!!……ッ!!」
余りの痛さに青娥は悲鳴をあげる事すらできない。
やがて青娥は腹への衝撃で胃の中のものを全て吐き出していた。
その苦しみは正に地獄の苦しみであった。
「やめろー!!せーがをいじめるなー!!」
「フン、邪仙のキョンシーか」
芳香が声をあげた事でとりあえず映姫の青娥への蹴りは止んだ。
「う……うぅ……」
「せーがぁー……だいじょーぶかぁー……?」
「よし……か……。うん……だいじょーぶ……だいじょーぶだから……」
僕である芳香の思いを受け止めて青娥は泣いてしまっていた。
「あなたもかわいそうにねぇ。そんなクズのご主人様を持ってしまったばっかりにこんな所へ連れてこられてしまうなんて……。」
映姫は無慈悲に言い捨てた。
「せーがをばかにするなぁー!!せーがはわたしにやさしくしてくれたんだぁー!!そんなせーがをばかにしたらゆるさないぞぉー!!」
大好きなご主人様を馬鹿にされて内心穏やかで無い芳香は怒りを露にする。
「う……うっ……芳香……」
青娥は涙が止まらなかった。
「おーおー。泣かせますねぇ。主従の絆と言うヤツですか。イイハナシダナー。反吐が出ますね」
映姫はそう言って痰をペッ、と吐き捨てた。
そして映姫は芳香の髪をグイッ、と掴みズルズルと小町の前まで引きずっていった。
「うおー、いーたーいーぞぉー!!はーなぁーせぇー!!」
「まぁ、あなたには罪も怨みもありませんが、あのクソアマの僕では仕方ありませんね。誠に、誠に、まっこっとーに!!不本意なのですが……」
映姫は芳香の髪を乱暴にかなぐり捨てた。
ドサァッ。
「いっ……たっ、あ……ッ……!!」
「小町」
「ヘイ」
「このクソマグロの腕を切り落とせ」
「了解です」
小町は慣れた手付きで鎌を取り出しクルッと一回転させてから構えた。
「ちょっと待って……。何をする気なの!?」
青娥は驚愕の表情を浮かべた。
「一気に切り落としてはいけませんよ。じわじわと少しずつ切っていくのです」
「わーかってますって」
小町の鎌が芳香の右手にあてがわれた。
「やーめーろぉー。なーにーをーすーるーきーだぁー」
「こうするのさ」
小町は答えると大鎌を振り上げた。
「お願いッ!!やめてッ…!!」
ザンッ!!
青娥の願いも虚しく小町の大鎌は振り下ろされ血しぶきをあげながら芳香の右手が宙を舞う。
「ッ…!?ッギャアアアアアアッ!!」
芳香は一瞬何が怒ったのか分からずようやく理解した時には激しい激痛が切断部に走り、悲鳴をあげた。
「っきゃあああああっ!!芳香ッ!!芳香ァッ!!」
青娥は自分の可愛い僕が右手を失ったのを目の当たりにし、悲痛な叫びをあげる。
「痛"い"ッ"!!痛"い"ぃ"ぃ"ぃ"ッ"!!」
「あぁ、ようやくさっきの喋り方をやめましたね。正直クソウザかったんですよ♪」
映姫はスッキリした表情で言った。
「さっ、小町。次は第一間接です」
「かしこまりっ!!」
言うが早いか小町の大鎌が芳香の右腕をとらえた。
「ぎゃあああああ!!」
「芳香ッ!!芳香ッ!!」
徐々に腕を失っていく芳香を見て青娥は己の無力さを噛み締めていた。
「もう肩までいっていいですよね。えいっ!!」
小町の1振りで芳香の右腕は完全に無くなった。
「ぐア"ッ"!!ア"ァ"ッ"……」
「うぅ……芳香……。ごめんね……。何もできない私を許して……」
「何もできない事はありませんよ」
「え?」
映姫が近くにいた死神にあれを、と言うとしばらくして巨大なノコギリが登場した。
「それであなたの右腕以外を切り落としなさい。そうすれば切れた部分の芳香ちゃんの部位は助けてあげますよ」
「本当……ですね?」
「えぇ……閻魔は嘘をつきません」
映姫は一部の屈託も無い満面の笑みで言った。
青娥は仕方なく自分の四肢を切り落とす事に決めた。
何より可愛い芳香の為だ。
青娥はまず自分の左腕にノコギリをあてた。
「やめろ……。青娥……私の事はいい……」
芳香はそう言ったが青娥はもう後にはひけなかった。
青娥は自分の左腕にノコギリを入れる。
ギコギコと音がして青娥の腕にゆっくりとノコギリが入っていく。
「ぐッ…!!うぅ……ッ……!!」
痛い。想像を絶する痛みだ。
切り口から真っ赤な血がジワァとにじみ出てくる。
映姫と小町はニヤニヤと笑いながらそれを見物していた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
芳香の為芳香の為芳香の為芳香の為芳香の為芳香の為。
それだけを考えて青娥は自分の腕を切り続けた。もはや痛みが一周して感じないほどだった。
「ぐっ……うぅっ!!」
しばらくして青娥は自分の左腕を切り落とした。
「はぁっ……はぁっ……」
もはや痛すぎて左腕があった場所から感じる感覚は何なのかよくわからなかった。
「いやー、よくできましたねぇ。えらいえらい。でも芳香ちゃんが切られるのが嫌なら両足も切り落とさなければいけませんよォ?」
「…!?」
そうなのである。
青娥が切った場所を芳香が助けてもらえるなら青娥はあと2ヶ所。つまり両足を切断しなければならない。
「青娥……もういい……。私の為に無理はするな……」
芳香のそんな優しい言葉も今の青娥には後押しにしかならなかった。
「芳香……私が……私が必ず助けてあげますわ……」
青娥は意を決して自分の両足を切断し始めた。
「やめろッ……!!青娥ッ……!!もうやめてくれッ!!」
そんな言葉も無視して青娥は自分の体を切り続けた。
そして青娥は胴体と右腕だけの存在となった。
「あ……あぁ……青娥……」
「これで……これで芳香だけは助けてあげてください……」
「えぇ……助けてあげますよ。ただし……」
映姫は少しためてから言った。
「四肢だけはなァッ!!」
瞬間小町の大鎌が芳香の首をとらえた。
切られた芳香の首が床に転がり息絶えた芳香はその場に崩れ落ちた。
「あ……あ……あぁぁぁぁぁ!!」
右手だけで芳香の首を持ち青娥は叫んだ。
青娥は芳香の死により発狂してしまったようで散々叫び狂った。
「もううるさいし断罪は終わりですね。小町」
「はいよ」
小町の大鎌が青娥の命も狩り取った。
しばらくして青娥は目を覚ました。
体はある。
夢だったのか。
ホッとしたその時だった。
目の前にあの悪魔の顔があった。
「お目覚めのようですね」
「!?」
青娥はどういう事か理解できなかった。
「実はですね。今回の刑の執行用に地上の薬師に悪夢を見せる薬を作ってもらったんですよ。効果てきめんだったでしょう」
青娥は事態を理解したことにより再び発狂し泣き叫んだ。
暴れる青娥を小町が取り押さえる。
「さぁ。刑の執行を続けましょうか。あなたには延ばした寿命分の悪夢を見てもらいます」
青娥の地獄はまだ終わらない……。
懲りずに再び投稿。
ついでに名前も変えました。
よろしければ今後ともよろしくお願いします。
ふすま改めレベル0
レベル0
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2014/07/09 16:46:13
更新日時:
2014/07/10 09:58:03
評価:
3/3
POINT:
300
Rate:
16.25
分類
青娥
芳香
ほか
終わりのないのが終わりとは言いますが、伸びた分だけ、ってことは、案外四季様も温情判決ですね。