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『お勤め帰りの魔理沙』 作者: NutsIn先任曹長
人里の治安を守る自警団。
その詰め所から、黒白エプロンドレスと魔女帽子姿の少女が出てきた。
「けっ」
「……」
警杖を持った立ち番の自警団員は、少女の悪態に眉一つ動かさなかった。
「お勤めご苦労様。魔理沙」
「ここ、ブラック企業だぜ。過酷な『労働』に給料をびた一文払ゃしないぜ」
少女――霧雨 魔理沙を迎えに来たのは博麗の巫女、博麗 霊夢だった。
魔理沙は霊夢といきつけの甘味処に向かった。
霊夢のオゴリだと言質は取ってある。
甘味処に入店した霊夢と魔理沙。
店員の案内を待たずに、二人はズカズカと一番奥にあるテーブル席を陣取った。
「御注文は?」
緑茶と冷えた濡れおしぼりを持ってきた店員が、二人の少女の非礼を咎める事無くオーダーを尋ねた。
「あんみつセット」
「クリームあんみつセット」
「私もクリームね」
魔理沙がソフトクリームが乗っかったあんみつにしたので、霊夢もそれに変更した。
「お飲み物は?」
「玄米茶」
「『ランチ焼酎』。ロックで」
「確認します。クリームあんみつセットお二つ。玄米茶と焼酎ロックですね」
「ええ」「ああ」
甘味のセットでは酒は選択できないはずだが、店員は『いつものように』柔軟に対応したようだ。
店員が去った後、霊夢はにやけ面で魔理沙に話しかけた。
「お日様が出ているうちから飲むの?」
「痛み止めだ」
魔理沙の左頬には大人の男性の握りこぶし程の青痣ができていた。
「人権侵害ね♪」
「そんな世迷言、幻想郷警察でしか通用しないぜ☆」
幻想郷の主に人里の治安維持機関は二つある。
一つは、今回魔理沙が1泊して『おもてなし』を受けた自警団。
もう一つは、幻想入りした外界の警察官達の寄り合い所帯である幻想郷警察である。
自警団は里の有力者達が出資して運営している私設の組織なのに対し、幻想郷警察は幻想入りしたと言われる公僕の精神に則って働くボランティア団体である。
また、自警団は法よりも『上』の命令と『下』の機嫌が優先されているが、幻想郷警察は頑ななまでに法を守ろうとしている。
「噂じゃ、幻想郷警察は取調べでカツ丼を奢ってくれるそうだぜ?」
「ホント!? じゃあ私も逮捕されようかしら♪」
「間違って自警団に逮捕されたら、ゴツいあんちゃんのゲンコをゴチになる羽目になるぜぃ☆」
魔理沙の顔と服に隠れた箇所にある無数の痣は自警団の『下』の機嫌を存分に損ねた結果であり、釈放されたのは『上』の命令によるものである。
「ったく。うら若き乙女を令嬢殺しの犯人に仕立て上げようとしやがって……」
魔理沙とは実家の関係で顔見知りだった、とある豪商の箱入り娘が亡くなった。
豪商は彼女の死体の側にいた魔理沙を、娘を殺した犯人と決め付けて手下達に可愛がらせた後、自警団に突き出した。
自警団の詰め所で、魔理沙は一昼夜に渡る、供述調書無き取調べを堪能した。
魔理沙の件をパパラッチ天狗から小耳に挟んだ霊夢は、恋人であり幻想郷の管理人である大妖怪、八雲 紫経由で『異変解決人』の取調べに閻魔や覚り妖怪の立会いを申し入れた。
『申し入れ』とオブラードに包んだ言い方をしたが、実質的な命令である。
幻想郷では――外界でもそうだが、紫の機嫌を損ねた者は即、『神隠し』である。
自警団への『申し入れ』は午前に行なわれ、昼休みを挟んで午後には魔理沙は証拠不十分で釈放された。
この件に関し、被害者の父親である豪商は何も言わなかった。
娘の敵と思い込んでいる魔理沙が天下の往来を歩いているのに、驚くべき淡白さである。
我がまま放題にさせていた妾腹の娘は、所詮捨て駒。人里一の豪商である霧雨店への攻撃手段でしかなかったようだ。
魔理沙は店員が注いだ二杯目の焼酎を、氷で冷えるのを待たずに喉に流し込んだ。
「けほっけほっ!!」
「急いで飲むから……。私にも頂戴」
店員は直ちに氷入りのグラスを持ってきて霊夢に渡すと、酒をお酌した。
「で、そのお嬢様の死因は?」
焼酎で口を湿らせた霊夢は、ソフトクリームと餡子と寒天と黒蜜を一匙にまとめたもので口直ししている魔理沙に尋ねた。
「オーバードーズ。薬物の過剰摂取だとさ」
「病弱なお嬢様を襲った、悲しい医療事故な訳ね……」
へへ、とギラついた目で嗤う魔理沙。
「そのお薬が、気持ち良くなる劇薬じゃなかったらな♪」
はぁ、とため息をつきつつ、ニヤニヤ嗤いで霊夢は話の続きを魔理沙に促した。
「退屈を持て余したお嬢は、色々とイケナイ事、ヤッてたそうだぜ」
「例えば?」
「気弱そうな使用人をいぢめて自殺に追いやったりとか、ちょいとイケてる男を一晩玩具にしたりとか……」
「それからそれから♪」
「金に飽かせて永遠亭から処方箋のいらない特製精神安定剤を取り寄せて、一服キメたりしたそうだぜぇぇぇ☆」
帽子の影で見えないが、魔理沙はさぞ、下卑た嗤い顔をしていることだろう。
「やがて、永遠亭のマイルドな『お薬』に満足できなくなった嬢は、小ズルそうな因幡の紹介で地底製のヤツに手を出した」
「あらヤダ。アソコのヤツ、怨霊とかブレンドしてありそう♪」
「レシピは流石に私は知らん。で、それにもお嬢様は御不満と相成った……」
ニヤリと嗤い合う、二人の異変解決人。
「そこで、『なんかします』でおなじみの、霧雨魔法店の出番だぜ☆」
「わー(パチパチパチ)」
ぶりっ子キメポーズの魔理沙に、霊夢は棒読みの歓声でわざとらしい拍手をした。
「お嬢様友達の彼女に、魔理沙さんは『トモダチプライス』で『魔女の秘薬』を煎じてやったんだぜ」
「へぇ。材料は?」
「魔法の森の肥沃な大地と瘴気ですくすく育ったキノコ、魔界の鉱石、廃棄処分された禁書の断片――」
「博麗秘伝の神降ろしの霊薬も参考にしてたわよねぇ♪」
「古文書の『閲覧料』は毎月口座に振り込んでるだろ? 自警団のヘボ観察医や、『警察』の外界の常識に縛られた鑑識には尻尾すら掴めないぜ」
魔理沙は可愛そうなオトモダチを慰めるのに使った『お薬』に、絶対の自信を持っていた。
自分の『友人達』には咎が及ばないはずだ。
「お嬢さんは、魔理沙さんのお薬をキメ過ぎたのかしら?」
「私は薬師の義務として、ちゃんと言ったぜ。『用法、用量を守って、正しくお使いください』ってね」
「ちゃんと聞いていたの?」
「彼女、涎とションベンを垂れ流しながら『あ゛〜、あ゛〜♪』って返事したから、キいていたはずだぜ♪」
「ぷっ!!」
「へへっ!!」
魔理沙のゾンビめいた物真似が、霊夢のツボを直撃した。
霊夢と魔理沙はしばらく、くぐもった嗤いを漏らした。
霊夢と魔理沙はクリームあんみつを既に食べ終わり、醤油を塗って焼いた海苔巻き串団子を追加注文していた。
それをツマミに二人は、それぞれ5杯目の焼酎のグラスを傾けた。
「ふぅ……♪ 結局、このお嬢様、何でお亡くなりになったのかしらねぇ〜」
赤ら顔で水滴の浮いたグラスを揺らす霊夢。
「私が殺したんじゃないとすると……。ヒック☆」
しゃっくりしつつ腕組して黙考する魔理沙。
「おぉぉ、アレだ。『自殺』だ♪」
「自殺ぅ?」
「おうさ☆」
魔理沙は、少なくとも自分自身が納得できる原因を突き止めたようだ。
「危ないお薬を一瓶、ガーッと飲んじまったんだからなぁ。自己責任だぜ」
「まるで見てきたみたいな事を言うのね」
「ああ、私の目の前でキメやがったぜ☆」
「だったら、お得意の素早さで止めなさいよ」
「あっという間の事だったし、素早さなら私を取り押さえた黒服連中の方が凄いぜ♪」
私の膣(なか)でイくのも早い、早漏共だったぜ……。
グチグチ呟いた魔理沙は酒をグビグビ。
「魔理沙の薬で死んだのよね?」
「私は悪くない!! だから、自殺だ。だろ?」
「ん〜、まぁ、そ〜かもね」
「そうなのぜ☆」
じきに、『公式発表』でもそう伝えられるだろう。
お嬢様の死体と彼女のやんちゃ振りが葬られた後で。
シメの一杯は、儚く逝った深窓の令嬢に捧げることにした。
グラスを、酔って覚束ない手で掲げる霊夢と魔理沙。
「禁じられた遊びに手を染めたお嬢様に」
「払いが良かったお得意様に」
「「地獄へのお勤めに、逝ってらっしゃ〜い☆」」
チンッ♪
軽く打ち合わされたグラスの音が、葬送の鐘となった。
冤罪、怖いですね〜。魔理沙の場合、普段の行いもあるんだろうけど……。
でも、持つべきものは友達ですネ☆
2014年9月21日(日):いただいたコメントへのお返事を追加
>ギョウヘルインニ様
異変解決人にとって『そんな事』はしょっちゅうだから、いちいち気にする必要は無いよ♪
相手が人間なだけ、まだましな部類です。
>県警巡査長殿
幻想郷警察に任せれば、実際安全です。欺瞞!!
幻想郷警察はお気楽なボランティアのガードマン程度にしか周囲には思われていないけどね。
>3様
魔理沙は無実だ。いいね? アッハイ。
>レベル0様
まるで魔理沙がゴミクズな小悪党みたいな言い方ですね♪
>5様
まま、あなたも一杯♪
NutsIn先任曹長
http://twitter.com/McpoNutsin
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2014/07/20 08:48:52
更新日時:
2014/09/21 21:06:56
評価:
5/5
POINT:
500
Rate:
17.50
分類
霧雨魔理沙
博麗霊夢
冤罪
このような事は魔理沙にとってチャメシ・インシデントである
今頃、その娘は地獄で閻魔様の裁きを受けていることでしょうね。その親父もきっといい死に方はしない筈です。
何はともあれ、助かってよかったね、魔理沙…。無実を証明した皆さんには感謝しなければ。
幻想郷警察職員「やったぁ!ついに…ついに!幻想郷警察>自警団の方程式が成り立とうとしているぞ!これはまさに我々が長きに亘って待ち望んだ事だ!これは実に嬉しい!
霊夢さんがやって来たとあらば、カツ丼じゃなくてもっと豪華なものを奢ってあげますよ♪(紫様の事もありますし…)
という訳で、幻想郷にお住まいの人妖の皆さん!ブラック企業で劣悪環境な自警団より遙かに快適な職場で、親切・愉快な警察職員が揃う我ら幻想郷警察をどうぞこれからも宜しくお願いしまーす★」(後ろに色々とダークな物を隠しながら)