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『黒曜石の秘密』 作者: ギョウヘルインニ

黒曜石の秘密

作品集: 11 投稿日時: 2014/09/19 14:30:56 更新日時: 2014/09/19 23:30:56 評価: 4/5 POINT: 430 Rate: 15.17
 その日、霊夢と魔理沙、そして早苗さんが棲家にしている第一博麗洞窟神社での出来事です。 

 そうです。なぜか文明が衰退して原始時代に幻想郷はなってしまっている所からこの話はこうして始まるのです。

「霊夢ウホぜ、ウホぜ、ウホぜ! ウホウぜ」

「…………」

「ちょ、霊夢ウホぜよ!」

 この言葉には意味があるのかないのかわかりません。彼女達は文字を持たないため後世にその時代の文化や言語が伝わっていません。

「ねえ、魔理沙は原始人で原始の雰囲気を出したいのわかるけど何言ってるか分からないから普通に喋って」

「いや、むしろ原始時代なんだから私の方が普通に喋ってたのに」

「ふーん、そういうこと言うんだ」

「わかったぜ。普通に喋るぜ」

「うん」

 因みにこの魔理沙は火を起こしているところでした。ミニ八卦炉を持っていますが、本当の使い方は分からず。宗教的な鏡とかそういう物だと勘違いしています。
 
 まだ、文明の開花は見られない原始の日々なのです。

 同居人の早苗さんはマンモス狩りに出かけています。早苗さんが頑張らないとこの一家は全滅してしまうのです。でも、家族というわけではありませんよ。

 そして、原始なので魔理沙達はいつもの服装とは違いマンモスの毛皮で作った服を着ています。まだ、氷河期が抜けきって居ないのです。

 この時代の壁画が残っているとしたら、恐ろしい形相のチルノやレティが人々を襲い食べているところが描かれているでしょう。参考文献に排水口絵板があります。
 
「この服はデザインが格好悪いから嫌」

「そうだな。じゃあ、霊夢はいつもの格好で良いぜ」

 結局、霊夢はいつもの紅白巫女に戻りました。どういう原理なのかは分かりませんが壁に隙間が.表れてそこから伸びた手が霊夢に巫女服を手渡したのです。

 その様子を見ていた魔理沙はそれを恐ろしく思いまた畏怖の念を抱きます。あの隙間のには魔物がいるのではと思い込んでました。

「それで、まだ火は起きないの? 寒いんだけど」

 霊夢は基本的に我儘です。毛皮の服ならそんなに寒くないのですが、巫女服で過ごすには少し過酷な環境でした。

 それに、火おこし作業を少しでも手伝えば体が温まるのですが。火おこし作業は魔理沙の分担と決めつけているので手伝いません。

「いや、なんかおがくずが湿っているみたいでなかなか種火が起きないんだ」

 木と木をこすり合わせ近づけたおがくずに火をつけようとしてます。煙は少し出ていますが、おがくずから火が出てくる気配はあんまりありません。

「ねえ、ライター使えば早くない?」

「ライターってなんだ? ……魔物か?」

 この時代はまだ文明開化していません。残念ながら、ライターは魔物程度にしか認知されていないのです。

「はあ、ねえ。紫居るんでしょ。ライター!」

 すると、また壁に隙間が表れました。そして、霊夢に100円ライターを手渡したのです。魔物です。

「なんだ。その透明な緑の石は? 翡翠か?」

 100円ライターの色は透明で緑が入ったプラスチックでした。しかし、魔理沙はそれを翡翠だと勘違いしたのです。

「え? これが翡翠?」

「そうだぜ。そんな、綺麗な緑色したのは翡翠しかありえないぜ」

「残念ね。これがライターよ」

 霊夢はジュッと、火打石を擦ってライターに点火しました。

「ひぃ! れれ霊夢! お前は焔が操れるのか!」

 その火を見た魔理沙は原始人として正しい行動に出ました。これはお約束ですね。ライターから出た火を魔法の類だと思ったのです。

「そうよ。こんなの簡単じゃない」

 そういうと、霊夢はライターでおがくずに火をつけました。湿っているおがくずでしたが、今度は火がついたのです。

「恐ろしい。霊夢は魔物だったのか」

「私は魔物じゃないわ」

 この時代の魔理沙は完全に霊夢のことをそう思うようになってしまいました。でも何かが変わるわけではありません。

 単純に分からないことがあったら皆魔物のしわさに決めつけてしまうのです。

「まあ、いいぜ。これで暖がとれる」

「ええ、そうね」

 二人は起こした火で温まることが出来ました。それに、火さえついて居れば獣がよって来ません。

「そろそろ、腹が減って来たぜ」

「早苗はまだかしら?」

 体が温まったところで、今度はお腹がすいてきました。今だ、早苗さんは狩りに行ったきり帰ってきません。

 やはり、偽石槍だけではマンモスには勝てないかもしれしれません。

「マンモス肉が食べたいぜ」

「漫画肉ってやつね」

 この時代に漫画はありません。でも、マンモス肉の形状は漫画肉という決まりみたいなのがあったのです。

「そうだな。もう、三日も肉食べてないぜ」

「だから、この間たくさん獲れた時に干し肉を作っておけば良いって言ったのに魔理沙は余った分をお隣のアリス一家に分けちゃったんじゃない」

 お隣の第一アリス洞窟には、アリスと上海人形や蓬莱人形が住んでいて大家族だったのです。人形なのでいつまでも成長しません。それでも、食欲は旺盛なようで生肉を与えるととても嬉しそうでした。

 だから、魔理沙は感謝されている気になって肉を分けてしまったのでした。

「どんぐり余ってないか?」

 今はまだどんぐりが収穫できる季節ではなく去年集めた物でした。

「どんぐりなら少し土器の中に余っていたと思う」

 魔理沙は土器がおいてあるところに行って、土器の中を調べてみました。すると中にはどんぐりではありませんでしたが少し傷んだ茸が入っていたのです。

 魔理沙にとってどんぐりよりも茸の方がごちそうでした。うれしい気持ちで、焼いて食べようと土器から茸を取り出して火のある霊夢のところに戻りました。

「やったぜ。茸があったぜ。霊夢、食べようぜ? ん、霊夢は何食べてるんだ?」

 ところが、魔理沙が戻ってみると霊夢は何か食べていました。

「え? これはお弁当だけど」

 いわゆる、コンビニ弁当でした。498円のお弁当です。魔理沙が土器のところに行っている間に隙間から出てきたのです。魔理沙の分はありません。

「お弁当って、なんだ? それにその白いのは米か? それに変わった形の肉だな」

「これは、ハンバーグ弁当って言うのよ。おいしいわ」

 それは、おいしそうでとてもいい匂いがして食欲をそそりました。

「一口私にも食べさせてくれ」

 だから、魔理沙は霊夢にお願いしたのです。

「これは私のだから駄目。それに添加物いっぱいで、原始人の魔理沙には毒よ」

「毒を食べるなんて、やはり霊夢は魔物か?」

「違うわ」

「そうなのか?」

 それ以上は何も言わず魔理沙は枝に茸を刺して焼き始めました。しばらくするとそれなりに美味しそうな匂いがしてきました。

「あら、おいしそうね。醤油とかかけたらもっとこうばしくておいしくなりそう」

 弁当食べ終わり、最近はやりのコンビニカフェを飲みながら霊夢は言います。

「醤油ってなんだ? 魔物か?」

 残念ながら、醤油はまだ発明されていませんでした。だから、魔理沙にとって醤油は魔物のような存在でした。

「これよ」

 そういうと、霊夢は弁当についていた魚を模した魚型たれびんを魔理沙に見せました。

「なんだこれは? まるで海の魚みたいじゃないか。幻想郷に海なんてないし。これってもしかしてオーパーツなんじゃないか? 何で、霊夢がこんなものを持っているんだ?」

「え? これがオーパーツ?」

「そうだぜ。こんな、オーパーツは私達の技術では作れないぜ」

「そうね。そういえばこれ、私も作れそうもない」

 石油製品ですから、一般人は作れないですね。

 魔理沙は原始人なので考えることをやめて、生きるために必要な行為として焼けたキノコを食べ始めました。カロリー的に少々不足していますが、魔理沙はモンゴロイドの底力でこれでも大丈夫なのです。

「はあ、食べたぜ。ご馳走様でした」

「それで、これからどうするの?」

 そうです。何かしらしないとこの話はただ魔理沙が原始人になっただけの話になってしまいます。

「しりとりでもするか?」

「しりとり? なんでまた?」

「しりとりは良いんだぜ。しりとりはな、心を豊かにしてくれるんだ」

 魔理沙はしりとりのことを考えてうっとりとした表情になりました。それだけしりとりが大好きなんです。もう、しりとりしたことを想像しただけで幸せな気持ちになれます。

 幸福は人それぞれなんです。たまたま魔理沙はしりとりに幸せを感じる娘だったのです。痛くないですしないです。

「そうなんだ」

「だ? 打製石器」

「何? 本当にやりたいの?」

「の、野宿」

「……熊」

「魔物」

「ノーベル平和賞」

「う? おい、霊夢、ノーベル平和賞ってなんだ? 魔物か?」

 魔理沙は聞きなれない言葉を聞いてまた魔物の類だと思いました。

「そうだったわね。原始時代にはノーベル平和賞は無かったわ」

 まだ、ダイナマイトは発明されて居ませんが、お隣にはもっと強力な爆弾が多数いるのでダイナマイトが無くても爆発はできます。

 何か問題が発生すればすぐにお隣に逃げればいいのです。そうすれば、爆発です。

「ノーベルって伝承に出てくるやつか?」

「伝承?」

「そうだぜ、私の親父のそのまた親父の親父のずっと前から語り継がれている。ノーベルのことか?」

「違うわ。何それ?」

 魔理沙達、原始人は口承によりその文化を引き継いで来ました。ですから、途中でおかしくなってしまうのです。

 ノーベルはノーレッジがなまってそうなったのではと、魔理沙は余計な推測をして聞いたのです。

「紅魔館伝説に出てくる。パチュリー・ノーレッジがなまってそうなったんだろ?」

「紅魔館伝説って何?」

 そのことを聞かれた魔理沙はしまったという顔になりました。紅魔館伝説は代々霧雨一族のみに伝わる。門外不出の何とかだったのです。

 それはとても大事なことでした。火を起こすことや、打製で石器を作る事を覚えることと同等位に大事なことでした。

 そして、霊夢に紅魔館伝説が知られてしまえば世界の在り方や構造が変わってしまうと思い込んでいました。

 今までだって、隠してきたのに今回に限って言ってしまったのです。

「仔馬の育て方だぜ、間違えたぜ」

「……それだと、仔馬の育て方に出てくるのがパチュリーってことになるんだけど」

「なんで、お前がパチュリーの事を知って居るんだ?」

「ん? 今、魔理沙が言ったんじゃない」

「そうだったぜ」

「それで、紅魔館でなんかあったの? またレミリアが何か異変を起こそうとしてるの?」

 狂っているのは魔理沙なのか、霊夢なのか。霊夢は魔理沙が隠していることを知って居ました。

「なんでレミリアを知って居るんだ?」

 レミリアは悪者として伝わっていました。皆の太陽であるフランを独り占めして地下室に幽閉してしまったのです。

 そのせいで、日が昇らなくなってしまいました。地球の温度が下がって作物は枯れ果ててしまい人類は滅亡してしまいました。
 
 でも、滅亡したら今いる霊夢や魔理沙は何処から来たのでしょうか?
 
「ねえ、少し、いや、かなり面倒になって来たんだけど。いくら原始人だからって無知にもほどがあると思うわ」

「そんな、急になんてそんなこと言うんだ? 霊夢がおかしなことばかり言うせいだろ?」

 あくまでも霊夢の方がおかしなことを言ってる設定なのです。

「そうね。私達は原始人だったわね」

「そうだぜ。毛皮を着て言葉は無く、火が起こせず、食べ物はどんぐりが似合う素敵な原始人だぜ」

「魔理沙がここまで本格的に原始人してるとは思わなかったわ」



 霊夢は後悔していました。せっかく原始時代になったのだからと原始人をファッション感覚で始めたことを非常に後悔していました。

 魔理沙はこの有様で早苗は狩りに行ったきり帰って来ません。余り今まで触れていませんが、神の力で奇跡を起こすと言ってもまだその神奈子や諏訪子は崇拝されていないのでその能力は期待できません。

 それに、早苗も霊夢に流されてファッション感覚で偽お祓い棒ではなく偽石槍を持ってマンモス狩りです。あんな、先端がプラスチックの棒切れでどうやってマンモスに勝つというのでしょう。多分、マンモスと戦うどころかスライム辺りと出くわしてやられているでしょう。

 原始時代だからスライムくらいは生えているのです。




「なんの話だ? 幻想郷は原始時代だから自然に原始人になれるんだぜ」

「それは? どういう理屈なの?」

「陰陽だな」

「陰陽? じゃないの?」

「これでも、太陽か月位は信仰してるんだぜ」

「え? 太陽の動きで収穫期が分かったりするの?」

「収穫期って何だ?」

「あぁ、残念だったわ。米はわかって居たみたいだけど。稲作文化はまだなのね」

「ああ、何しろまだまだ打製だからな。これからが磨製の見せ所だぜ」

  

 打製で磨製、縄文で弥生な文化が混じったこの幻想郷はもう駄目でした。霊夢は、ふぅっとため息一つ吐きました。


「……ねえ、紫。帰って良い?」

 霊夢は、急にそんなこと言い出しました。その様子を見た魔理沙が困惑していると、急にまたあの隙間が現れたのです。

「どういうことだぜ」

「時々、見に来るからね。じゃあね。魔理沙」

 別れを言う魔理沙が困惑していると、霊夢はその隙間に飛び込んでしまいました。そして、それきり居なくなってしまったのです。



「……霊夢はやっぱり魔物だったのか」

 魔物という結論に至った魔理沙は洞窟で1人、早苗さんの帰りを待ちました。火が消えないよう時々枯れ枝を加える姿は酷く原始の幻想でした。
その日、早苗さんはイライラしていた。朝起きたときからそうだった。
 
 鬱蒼と茂る木々の間からこぼれる太陽の光で起きたのだが、それが昨日までの遭難生活が夢でないことを告げていた。

 そして、今日も霊夢と魔理沙と共に遭難しなければならなければならないと思うとイライラしてしまう。

 思わず、まだ寝ている魔理沙の顔を何度も何度も踏み潰してぐしゃぐしゃにしてしまおうかと思ってしまう。

 生憎、靴が一足しかないからそれも出来ない。革靴だし最後の食料になるかもしれないから魔理沙の血で汚すわけにもいかない。

 早苗さんは、その場に落ちてた枯れ枝を拾うとそれを投擲した。枯れ枝は狙いどおり魔理沙の眉間に命中した。

 命中したが、魔理沙を起こすまでにはいたらなかった。早苗さんは魔理沙を起こすことを諦め、イライラしながらもひとまずは放っておいて火を起こすことにしたのだった。

 ちなみに、霊夢は寝ているところを起こされるとどんな酷い目に合わされるか分かったものではなかったので何もしない。

 

 ライターのガスが無くなってから何日たったかは、良く覚えていない。

 ただ、木を擦る作業にはもう慣れた。杉の皮がこんなに燃えるなんて遭難しなければ分からなかったことだ。

 神社に帰ることが出来たら、神社に居る諏訪子に杉の皮で作った服を着させてあげようと思う。



 
 
 火を起こして、暫く経ったが早苗さん以外は起きない。早苗さんは仕方が無いので、一先ず着替えることにした。

 なぜ脈略もなく急に着替え始めたかというと、サービスシーンのためだ。
 
 早苗さんの身体は、染み一つ無くとても綺麗だった。
ギョウヘルインニ
作品情報
作品集:
11
投稿日時:
2014/09/19 14:30:56
更新日時:
2014/09/19 23:30:56
評価:
4/5
POINT:
430
Rate:
15.17
分類
太古
ほのぼのとは無関係なのです
魔理沙
霊夢
早苗さん
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0. 30点 匿名評価
1. 100 名無し ■2014/09/20 01:08:10
原始のサービス業ですね
2. 100 名無し ■2014/09/20 15:50:27
生活基盤は衣食住
3. 100 NutsIn先任曹長 ■2014/09/20 18:56:07
遊び感覚での、命がけだという所だけリアルなエセ原始生活……♪
霊夢だけチートで優遇か♪ ゆかりんならそうするし、私もそうする♪

実質的第2部はリアル『生きてこそ』になるかと思ったら……。
サバイバル話で生殺しかよ……。
4. 100 名無し ■2014/09/21 04:12:35
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