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『不完全変態』 作者: 卑金属
1.
「やあ、アリス」
「あら、にとり。お久しぶりね。今日も何か面白いものを?」
「ああ、今日は新鮮な卵をたくさん持ってきたんだ。何か所望はおありかな?」
「うーん。お料理の方は間に合ってるのよねえ。・・・あ、そうそう。魔理沙の卵なんてないかしら?」
「もちろんあるとも。きっと君が欲しいと思って、新鮮なやつを持ってきたんだ」
「も〜だったら最初からいてくれればいいのに〜〜」
何言ってんだこいつ。相変わらず魔法使いは自分勝手で困る。にやにやしやがって。
「悪かったよ。まあ相利共生だけじゃ世知辛いってもんじゃないか」
「うんうんっ。そうねっ。ふふふ。これで魔理沙の自立人形が作れるわ〜〜」
あー?人形だぁ?これは卵であって卵子じゃねえぞ。人の話も聞けねえのかこいつぁ。あー、でも、人間は卵子のこと卵とも言ったか...?
まあ卵をどう使おうが知ったこっちゃないね。
「お代は私の卵でいいかしら?」
「もちろんさ。アリスの卵は貴重なんだ」
「あら〜。なんだかうれしいわね」
「なに。それでこそアリスだよ」
2.
「やあ、妹紅」
「・・・ん?お前は、山の河童か。・・・にとり、だっけか?」
なんで覚えてるの。きもーい。年寄りは無茶すんなって。
「覚えていただいたとは光栄だね、妹紅」
「いや、忘れかけていたんだ、すまなかったな」
ペッ。
「今日は君におすすめの卵を売りに来たんだ」
「卵?生憎、間に合ってるぞ?」
「本当にかい・・・?これは、慧音の卵だ」
「・・・!!どこでそれを手に入れた!?」
「チッチッ。企業秘密だよっ。少なくとも買ってもくれない人に教えるわけにはいかないね」
買ってくれたところで教えるもんかい。べーだ。
「・・・買わせてもらおう。いくらだ?」
「なあに。君の卵と交換でいいさ。妹紅の卵は貴重だからね」
「いいのか!?」
「もちろんさ。人間と河童は古くからの盟友じゃないか」
3.
「はじめましてかな、吸血鬼さん」
「・・・あなたは、だあれ?」
「河城にとり。山の河童で、卵の卸売をやっている」
「・・・どうやって、ここにきたの?」
あー、こいつ本当に気がふれてんのか。めんどくさいねえ。
「むしろこっちが聞きたいくらいさ、フラン。ここは外だよ?どうしてここにいるんだい?」
「・・・??どうして、わたしは、ここにいるの?お部屋に、帰らなきゃ・・・!お姉さまに怒られちゃう」
「まあ、そう急ぎなさんな。ところで、そのレミリアの卵があるんだけど買っていかないかい?」
「お姉さまの、卵?」
「ああ、そうさ。しかもとれたてのぴちぴちさ」
「・・・・・・。ほしい、・・・けど。私、お金も、何も、持ってないの」
「大丈夫。君の卵をくれればそれでいい。フランの卵は貴重なのさ」
「え・・・。・・・・・・うん! ちょっと、まってね。・・・・・・んっ・・・。でたぁ」
「ありがとう、約束のレミリアの卵だよ」
「やったぁ・・・!!フランね、これを育てて、お姉さまと戦わせるの!」
はあ?育つわけねーだろ。それは無精卵だよ阿呆。レミリアにオスはいない。
「そうかい。きっと時間はかかるだろうが、いつか必ずレミリアに勝ってみせてくれ」
4.
「やあ、芳香」
「だーれーだー」
「河童の河城にとりだよ。今は卵の卸売をしているんだ」
「たまご?」
「そうだね、君には青娥の卵をお勧めするよ」
「せーがの卵?ほしいほしい」
「いいともお代は君の卵でいい。芳香の卵は貴重だから」
ちょろいぜ。
「たーまーごー」
死体からでも卵が出るとは・・・。まったく、誰の差し金だ?
「確かに受け取ったよ。はい、これが約束のものだよ」
5.
「やあ、霊夢さん」
「屋台はお断りよ」
ちっ
「やだなあ。もうすんだことじゃないか。盟友を疑うなんてひどいじゃないか」
「あー?」
「まあまあ、そんな顔せずに。今日は霊夢のために天狗の卵を持ってきたんだ」
「あら、くれるの?だったら、ありがたくいただくわ。お腹すいてるし」
「おっと、タダではあげないよ」
強欲な巫女め。タチが悪い。
「なら、奪うまでよ。あんたは妖怪、退治のついでよ」
「奪われるくらいならこの場で割ってやるさ。なに、大したことじゃない、君の卵が欲しいんだ」
「私の卵は高くつくわよ?」
「知ってるよ、霊夢の卵は貴重なんだよ」
「そうじゃなくて」
あー?
「あー?」
「天狗の卵一つじゃつりあわないって言ってるのよ」
この下衆め、ぬけぬけと・・・。相変わらずいい勘してやがる。
「もちろんさ。ちゃんと天狗の卵は二つ用意してある」
本当は三つあるけどな。ざまあみやがれ。
「ふふふ。こんな珍味は久しぶりね。はい、私の」
「確かに受け取ったよ」
「いただきまーす」
「どうぞ、めしあがれ」
6.
「こんにちは、スキマ妖怪さん」
「あら、こんにちは、河童さん。こんなところまで、珍しいわね」
「大事なお客様ですから」
「ふふ。褒めたって反吐くらいしか出ないわよ?」
「相変わらずお口が悪いようで」
「貴方には敵わないわ」
「御冗談を」
「ふふふ」
「ははは」
「それで?今日は何を持ってきてくれたのかしら?」
「卵です。とれたてのぴっちぴちで各種取り揃えてあります」
「あら〜いいわね〜。んー?それじゃあ霊夢の卵なんてあるかしら?」
「あー・・・申し訳ありません。何度も試みたのですが、あの巫女はガードが固くて。まさか頼んでもくれないでしょうに」
「ふふ、冗談よ。わかってるわ。それじゃあ、先代のでいいわ」
「・・・・・・」
「うふふふ。そんなかわいい顔もできるのね。泣かないのっ」
「相変わらずお口が悪いようで」
「貴方には敵わないわ」
「・・・・・・・・・・・・」
「ほら、にっこり」
「それでですね」
「・・・・・・」
「幽々子さんの卵を入荷しまして」
「亡霊でも卵は作れるものなのね」
「亡霊どころか、なんと死体でも」
「生き死になんて関係ないのかしら?」
「死んでいると判断できる以上、生きていると言えるでしょうに」
「あら〜、よくわかってるわね。けれど見たくないものまで見る必要はないわ」
「そのくらいが丁度いいってもんです」
「闇ね〜」
「お互いに」
「ふふふ」
「ははは」
「それにしても、よくとれたわね」
「もらったのです。藍さんの卵と交換で」
「ぇ」
「きっと紫さんは欲しがるんじゃないかと」
「ちょっと」
「大丈夫です。お代は紫さんの卵で大丈夫ですから。紫さんの卵は貴重なんですから」
「あ・・・えっと、ええ。どう、ぞ?」
「確かに受け取りました。どうぞ幽々子さんの卵です」
「あの」
「冗談ですよ。相変わらずお優しいようで」
「・・・相変わらずお口が悪いようで」
「ええ、本当に」
・・・?
7.
・・・?
「やあ、蓮子?」
蓮子・・・?
「・・・!?河童!?」
「うるさいな。河童くらいどこにでもいるだろうに」
「・・・?その、ちょっと帽子取って見せてくれない?」
「殺すぞ」
「ごめんごめん。やっぱり河童っていうとお皿じゃない?きゅうり?」
「お前らがどう思おうが知ったこっちゃないんだよ」
なんなんだこいつは。何だこれは。
「それで今日はどうしたのかな、河童さん?」
「卵を売りに来た。」
「卵?スーパーで買ってるけど・・・」
「鶏でも鶉でもないんだよ。メリーの卵だ」
そんなものは持っていない。これは天狗の卵だ。
「・・・・・・メリー、の、・・・卵・・・?」
「ああ、そうだ。そのためにお前に会いに来たんだった」
何なんだこいつは。いきなり顔色を変えやがって。気味が悪い。
「どういうこと?貴方、ふざけているの?」
なんだその眼は。人間ごとき、が。
「ふざけているのはお前だ。お前にメリーを売ってやる、何がおかしい?お前は誰にもメリーを渡したくはないだろう?」
そうだメリー。マエリベリー・ハーン。この宇佐見蓮子の親友のことだろう?
「当たり前よ!!河童だろうが妖怪だろうがメリーに仇為すものは許さないわ」
「おうおう、お熱いこって。さっさとお前の卵をあるだけよこしな」
「あるだけって・・・そんなにあるわけないでしょ!!」
「あ?こちとら遊びでやってんじゃねえんだよ。メリーの卵は貴重なんだ。」
・・・?
「・・・・・・いくつ、出せばいいの・・・?」
「7個だ」
・・・・・・?
「・・・・・・っ!!そんなに、出したら、・・・死んじゃう。じゃない・・・」
・・・そうだ。芳香の時から、いや、アリスの時から、か?
いや、最初に出会ったのは、霊夢だったかもしれない。紫さんだったか?いや、そんなはずはない。
何もかもが、ずれている。
断片も、全体も歪んでいる。時代錯誤が倒錯している。
全てを無に還すかのように。
「黙れえええええええ!!!自分でやらねえならバラバラにしてやろうかあ!?」
とにかく、はやく、"メリー"のところへいかなければ。
「きゃあぁぁぁっ!!!・・・・・ッ!!嫌ぁぁぁ!!!」
口と膣口から、宇佐見蓮子の存在性を引き抜いていく。
こんな能力が河童にあっただろうか?
「なんで、生きていられるの・・・」
人間なら絶対に死んでいる、はずなのに。
「嫌ぁ・・・。痛い・・・よ・・・。死にたく、ない、・・・・・・。」
尻子玉一つ抜かれただけで死んでしまうこの弱い種族が、なぜ・・・?
* * *
「ひとつ足りない・・・」
宇佐見蓮子のあるべき要素が足りない。
・・・要素とはなんだ?なぜそれを集めている?
「・・・メ・・リー・・・。たすけ・・・て・・・・・・」
・・・・・・。
「・・・残念だけど、メリーは、来ないと思うよ」
「・・・メ・・・リー・・・・・・」
もう聞こえないか・・・。
できれば、したくなかったけれど。
もうそんな貴方を見ていたくない。
貴方が、人間である以上、貴方には死ぬ方法がある。
操り人形が、にとりで、よかったね、蓮子。
電源を落とした機械のように、蓮子は動かなくなり、あとには、人間の死体と、一つの珠だけが残った。
8.
・・・?
「やあ、マエリベリー」
・・・・・・?
「あら、にとり」
・・・・・・・・・なぜ、私のことを知っている・・・?
ここは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、どこだ・・・?
「きょうはっ・・・新鮮な、卵が、・・・・入ったから・・・」
わからない。なにもわからない。けれど・・・何もかもがまずい。
「蓮子の卵はあるかしら?」
逃げなければ・・・!
「あるともっ!!!この7個が蓮子の卵だよ!!!!蓮子の卵は貴重なんだ!!!」
早く逃げないと・・・!!
「あら〜、こんなにたくさん。お高いんでしょう?」
逃げよう・・・!!!
「いや・・・いやいやいやいやいや!全部タダであげるよっ!!それにほらっ今持ってるえーと、他のも全部あげるからっ!!!それじゃねっ!!!!」
今までの苦労なんて知ったこっちゃない。そもそもなんで集めていたのかさえも・・・。
そもそも、あれが何かさえも知りはしない。知っていたとしても、忘れなければならない。
見たくないものまで見る必要はないんだ。
「あっ・・・!待ってよ〜にとり〜〜」
* * *
まったく。まだOKは出してないのに。
勝手にどっかいっちゃって。もし間違ってたら許さないんだから。
* * *
・・・うーん、思ったよりいい線はいってるけど、ちょっと違うのよねえ。
そもそも、数が間違ってるじゃない。
これじゃあ二つ足りないし、一つ多いわ。
まったく、あの河童、使い物にならないわね。
う〜〜。また集めなおしか〜〜。
もうっ。河童なんて次は失くしてしまおうかしら。
* * *
じゅるり、と。
「うーん、これは妹紅かなー?」
まあ、美味しいけどやっぱり蓮子が一番おいしいわね。
蓮子はたくさんあるし、それだけ、私は蓮子に近づける。
失敗の数だけ、成功までの距離は短くなる。ならなけでばならない。
「・・・ぅん?」
「これは・・・・・・有精卵ね!」
食べる前に気付けて良かった。
なあんだ、あの河童、やるじゃない。
「きっとかわいい蓮子が生まれるわ」
あなたを絶対に連れ戻す。
楽な事じゃないし、少しぐらい癒しがあってもいいよね。
「ひとりで何処かに行っちゃうなんて、絶対に許さない」
少しずつだけど、時間は、歩みを戻し始めたみたいだから。
待っててね、蓮子。
赤銅色に光っていた沼に、紫色のセメントを流し込んだような気分です。
出会いと、別れというのは必ずしもこの順番でなくてもよいのではないでしょうか。
「後になって、その人のためになるから」という理念に拠る行為は、「結果その通りになったとしても、当時その人が傷つき、恨んだことを無に還し、その行為を正当化することにはならない」という覚悟を背負ったうえでやるべきであるように思います。
少なくともこのメリーはそんなこと考えていないでしょう。
或いは、考えたうえで、この概念を否定しているかもしれません。
卑金属
- 作品情報
- 作品集:
- 11
- 投稿日時:
- 2014/10/06 15:25:16
- 更新日時:
- 2014/10/07 07:59:01
- 評価:
- 4/4
- POINT:
- 400
- Rate:
- 17.00
- 分類
- にとり
- アリス
- 妹紅
- フラン
- 芳香
- 霊夢
- 紫
- 蓮子
- メリー
こういうの自分は大好きです
悲しいこって