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『そうか!頭の中に』 作者: R
「近頃さ、起きたらベッドに虫がいるんだ。どっから入ってくるんだか。嫌になるぜ」
「そうね、魔理沙って虫に好かれるような顔してるもんね」
「何だと。お前、私を馬鹿にしてるのか。ふざけやがって」
「前から思っていたんだ。れ、霊夢は私を見下してるだろう。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。許さんからな」
「そんなに怒らないでよ。魔理沙が虫みたいって言ったからって、怒る人なんて誰もいないわよ。どうしたの、頭なんか押さえて。頭痛いの?」
「ああ、うう。頭が痛い。くそ、馬鹿にしやがって。ああ。こないだキノコを食べてからだ。面倒で生で食べたから、身体を壊したのかな。だけど、腹は痛くないんだ。それどころか、身体は調子がいいくらいだ。一体何なんだ?くそ」
「大丈夫?身体の調子が悪いと、良くないわ。医者にでもかかったらどう?」
「ああ、そうするぜ。私は何事にも万全を期する人間なんだ。ぬかりはないぜ。医者に行ってくる。医者はどこだっけ?うう、うう」
近頃の魔理沙は怒りっぽくて、困る。飛び立っていくのを見ながら霊夢は思った。情緒不安定気味に怒り出しては、次の日には何もかも忘れたような顔でけろっとして神社に来る。気味が悪い、と霊夢は思う。キノコを食べて調子が悪い話をされるのも、これで何十度目だろう。記憶も曖昧になっていて、不気味だ。
「おい、医者、医者。身体がおかしいんだ。頭が痛い。なんとかしてくれよ」
「また来たの。悪いけどあんたの相手はしないの。出て行ってくれる」
「どういうことだよ。医者だろ。医者だからって、頭がいいからって、客を選ぶのかよ。どういうつもりだよ。おい。見下しやがって。この野郎が」
「この野郎じゃないわよ。あんた、その調子で何回も何回も来て。そんな態度で来る奴を相手に診察なんてできるわけないでしょ。いいから、帰りなさい。兎に相手をさせるわよ」
「ああ、くそ、くそ。ううう」
近頃の魔理沙は不気味だ。毎日毎日、竹林に来ては診察をせがみ、勝手に怒ってはそれっきり帰っていく。怒ってはいても、弾幕を撃とうとはしない。こっちが凄んで見せると、怯えて帰っていくのだ。近頃は箒に乗っている姿も見ない。ふらふら、ずるずる足を引きずって、うめきながら歩きまわる。まあ、関係のないことだ、と永琳医師は思う。こちらに迷惑をかけなければどうでもいい。
ただ、気にはかかった。ああいう状態を生むものが何なのか。今度魔理沙が来たら、魔理沙のレントゲンを撮ってみよう。
魔理沙の家に行ってみると、魔理沙は椅子に座ってよだれをだらだら垂らし、ううう、ううう、と呻いていた。焦点が合わず、眼球は左右それぞれ別々の方向へいっぱいに振り切れて、時折ぴくぴく、ぴくぴくと震えている。
研究をする感じもないし、盗みをすることもない。神社と竹林に来ることのほかは、出歩くこともなくなったようだ。魔理沙は、霊夢を入ってきたことに気付いてさえいない。
霊夢はベッドを調べた。ベッドには確かに、小さな虫が転がっている。2,3センチほどの、白いうじ虫だ。拾い上げて、小さな袋に入れた。何の虫かは分からなかった。だけど、永琳に聞けば、何か分かるかもしれない。
「おかしいぜ、おかしいぜ、おかしい。絶対におかしいんだ。頭が痛くなくなったのはいいんだ。だけど、目が見えなくなった。身体も動かない。どうなってるんだぜ、霊夢。助けてくれよ。霊夢、霊夢……」
魔理沙は身体を動かすのにさえ、異常な震えを見せた。大小の痙攣が断続的に襲い、立っていることすらできなくなった。
「霊夢、霊夢。そこにいるのか。霊夢。くそ。こんなになるまで放っておきやがって。私を殺す気だろう。殺す気なんだな。許さんぜ」
「魔理沙。可哀想ね、あんた」
「何がだよ。くそ、可哀想だと。見下しやがって」
「虫がどこから来てたのか、分かったわよ。あんたの中から来てる」
「何だって?」
そう呟く魔理沙の耳から、ぽろぽろ、ぽろぽろ、虫が涌いてはこぼれ落ちた。
「脳みそが食われてるのよ。あんたの中で孵った卵が、脳を食い荒らしてる。神経系が奪われてるから痛みは感じなかった。目が見えなくなったのもそのせいね。身体がうまく動かせなくなったのも。頭の痛みは、頭にだけ違和感が残ったんでしょう、って医者は言ってたわ。感覚が普通と違えば痛みとして感じるらしいわ。たぶん、キノコに卵がついてたんでしょう、ともね」
「何だと。そんなはずないだろ。そんなはずない、そうだろ」
「行動も操られていたのよ。魔理沙、あんた、自覚していないでしょう。箒で飛ぶこともしなかったし、魔法を使うこともしなかった。歩くという行動はできても、そういうことは、虫には思いつけなかったんでしょうね」
「そんなはずない。私は私だぜ。脳に虫がいるなんて。痛みがなくなったんだ、私は普通だ。そうだろ」
「残念だけど、痛みがなくなったんなら、痛みを感じる脳がなくなったんでしょう。もう、だめね。もう、だめよ。あんたが生き延びる方法は、医者になら分かるかも知れないけど、私には分からないわ」
「くそ。くそ、くそ」
話している魔理沙の顔からも虫がこぼれ落ちていた。耳だけでなく、眼孔も既に虫の住処になっている。鼻からも、口からも、こぼれて落ちた。魔理沙には口の中に異物があるという感覚さえ失われているのだろう。喋るたび、歯の間でぐちゃりぐちゃりとうじ虫は潰されてこぼれた。
よく会う人間がそんな姿をしているのは、気味悪く、心苦しいことだった。霊夢は魔理沙を見ているのが嫌になって、背を向けた。ばたん、と扉が閉じた。くそ、くそ、くそ、と魔理沙は呟き続けて、虫はこぼれ落ち続けた。やがて魔理沙がからっぽになるまで、虫はこぼれ落ち続けるだろう。このことは忘れよう、と思った。
霊夢は、服の裾にうじ虫が引っ付いていることに、気付かなかった。永琳は対策と検診を怠らなかったが、霊夢にはそういう考えは、当然、無い。
魔理沙、お許し下さい!
(黒幕というわけでもないが仲間が増えて嬉しいリグル)「やったぜ。」
R
- 作品情報
- 作品集:
- 11
- 投稿日時:
- 2014/10/17 13:48:54
- 更新日時:
- 2014/10/17 22:48:54
- 評価:
- 7/9
- POINT:
- 730
- Rate:
- 16.78
- 分類
- 博麗霊夢
- 霧雨魔理沙
- 八意永琳
あぁ、気持ち悪いものを見てしまったなぁ。
虫はキモいーから嫌いだ
今度は麻薬ものが読みたいです!!
しかしまぁ、これはさっさと診察してやらなかった永琳がアカンでしょ