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『ふつうのまほうつかい』 作者: 穀潰し
ある森の中に、きりさめまりさという少女が住んでおりました。
まりさは自分のことを魔女と名乗り、確かにそれにふさわしい力を持っていました。
そしてその力を使って、知り合いの巫女と一緒に、いろんな異変を解決しました。
ある時は赤い霧を出す吸血鬼を。
またある時は春を奪った亡霊を。
山の神を、地獄の太陽を、封印された魔法使いを。
様々な強敵に立ち向かい、時には負けるときもありましたが、それでもまりさは最後には勝利を掴んでいました。
博麗の巫女とともに異変に立ち向かう者は素晴らしい。
こんな言葉を聞くたびに、まりさは口元を緩めます。
一人はもちろん巫女のこと。
一人はもちろん自分のこと。
異変にかかわるうちに、知らずと有名になる自分に、まりさは少しずつ鼻高々となっていきました。
ある時、まりさは自分の実験や調合に追われ、異変の一つを見逃しました。
彼女が気が付いた時には既に解決済み。楽しいことを一つ見逃したと彼女は指を鳴らしたものです。
しかし過ぎ去ったことを悔やんでも仕方ないと、まりさはたいして気にもしませんでした。
別の日、まりさは里へと出向きました。
実験によりしばらく家を離れられないと分かった彼女は、大掛かりな買い出しに出かけてきたのです。
あれを買って、これを見て。まりさとて少女。入用なものは幾らでもあります。そして今は勘当された身とは言え、かつては生活していた場所。
しかし。ふとまりさは首を傾げます。
対応する店主たちが妙に余所余所しい。いくら勘当された身とは言え、かつては生活していた場所。未だに顔見知りの人間は両手の指では足りません。
だというのに、まるで一見の様な扱い。
まぁ、最近ずっと家に籠りっぱなしだったからな。
深くは考えず、あっさりと結論を出したまりさは、ふと寺子屋の教師を見つけました。
おい、慧音。今日もご苦労なことだ。
挨拶代りに背後からそう声をかけるまりさ。しかし声に振り向いた教師は怪訝な表情を浮かべるだけでした。
どなただろうか。
そう教師が返します。
ははは、悪い冗談だ。
ただの冗談だと受け取ったまりさが笑い飛ばします。しかし、教師は怪訝な表情を崩しません。その瞳には不信感の色が少しずつ滲み出てきます。
まりさだよ、魔法使いのまりさだぜ。
慌てたまりさが自身の名を告げます。それにしばらく視線を泳がせた教師はややあって、手を打ちました。
ああ、まりさか。
何だってんだ。
すまない、少し呆けていたようだ。
おいおい、少しお疲れなんじゃないか。人の顔も忘れるようで教養が身に付くのかね。
謝る教師をからかうまりさ。
それから彼女たちは二、三言葉を交わして別れます。
去り際、まりさは気付いたでしょうか。
教師の瞳から、不信感が消えていなかったことに。
まりさはそれからしばらく実験で家に籠りました。
物事に熱中するまりさに、周囲の動きは目に入りませんでした。
しかし家の外はそんなことは関係ありません。
季節は変わり、その間にも宴会や異変が起きる程度の時間が過ぎました。
ある日、ようやく実験もひと段落し、家の外へと飛び出したまりさは、いつものように紅魔館へとお邪魔しました。
目的は紅魔館内の大図書館から本を借りる事。
今まで何回も行ってきた、もはや挨拶代りともいえる行為。
今回もそんな気軽さで、紅魔館を訪れたまりさ。
しかし彼女を待っていたのは、紅魔館の住人からの手痛い歓迎でした。
特に、大図書館の主人からは親の仇のような扱いをされたのです。
確かに今まで弾幕を撃ち掛けられたことは何度もありました。
しかし今回ばかりはいつものごっこ遊びではない、害意の籠った攻撃。
まるで侵入者を排除するような動き。
何だってんだ、一体。
這う這うの体で逃げ出したまりさ。しかし彼女の受難はここからでした。
同様に借り物をしようと訪れた人形遣いには門前払いを食らい。
カラス天狗からは追い回され。
お茶をたかりによった神社では怪訝な表情を返されるだけ。
流石のまりさも、これは癇に障りました。
なんだなんだ、どいつもこいつも。まるで私が招かれざる客のような扱いをしやがって。
思わず吐き出した言葉。しかし巫女は冷静に返すだけでした。
うちの神社は確かに誰でも歓迎するわ。けれども、初対面でお茶をたかる様な人は遠慮願いたいわね。
その言葉に、まりさに出来たのは間の抜けた声を返すことだけでした。
初対面、ってどういうことだよ。
ようやく絞り出した言葉に、巫女はきょとんとしてこう答えました。
あなたとは、今日初めて出会ったわよ?
そのあとのことはよく覚えていません。
気付けばまりさは家のベッドに顔を埋めていました。
頭の中では巫女に言われた言葉がずっとぐるぐるとまわっています。
―――初めて出会った―――
そんな筈はない。だって私は何度も霊夢と異変解決に乗り出した仲だ。
アリスだって魔法に関して議論したことは何度でもあるし、パチュリーだってそうだ。
慧音だって何度も顔を合わせてるし、美鈴だって、咲夜だって、レミリアだって―――。
今まで出会った者たちを思い出していたまりさは、ふとある共通に思い至りました。
そうだ、あいつらとは、異変を通じて知り合ったんだ。
つまり、異変と言う事態が起こってそれに関与しなければ、私は―――。
自分で思い至った結論に、まりさは頭を振ります。
そんな。
そんなバカなことが有って堪るか。
異変に参加しなければ、忘れられるなんて。
私は私だ、きりさめまりさだ。
―――そう、それで?―――
唐突に掛けられる声。
ゆかり、どうなってるんだ!!
思わず叫ぶまりさ。どうせお前の悪ふざけなんだろ、早く元に戻せ。そう叫びます。
それは非難というより懇願に近い響きでした。
『ちょっとからかっただけじゃない』そういう言葉が返ってくることを期待して。
でも、返ってきたのは酷く冷めた声でした。
どうなっているも何も、全てあなたが招いた結果よ
響く声。僅かに嘲弄の混じる声。
私は何もしてない!!
そうね。だからよ。
あなたをあなたと周囲に知らしめていたのは、『博麗の巫女とともに異変を解決した』という肩書のみ。それがなくなったあなたに、一体どれほどの特徴があるのでしょう。
ましてやここは幻想郷。
種族魔法使いですら居るというのに、高々職業魔法使いが、一体どれほど珍しいでしょう。
物語に登場するからと言って、一言二言しか話さないような人物が記憶に残るかしら。
ねぇ、『ふつう』のまほうつかいさん。教えていただけるかしら?
あなたは、一体何が特徴なの?
幻想郷では今日も異変が起こります。
それを解決するのはもちろんこの人達。
博麗の巫女と『その仲間達』です。
魔理沙って魅力的な脇役ではあるけど、正直魔理沙じゃないとダメ!! っていうことは無いんだよなぁ。
まぁこれは俺が勉強不足なだけもあるけど。
因みに結構前に書いた『はくれいのみこ』と同じような感じにしたかった。
>まいんさん
ほら、一応幻想郷内で生活してるこの……えーと、この金髪の子、えーとうん。
>2さん
ほんとにねー。こんな力のない人間の子供をねー
>ギョウヘルインニさん
狭い箱庭そんなに急いで何処へ行く。
>5さん
ほんと、少し人前に出たからって売れた気分になるぽっと出芸人みたい!!
>NutsIn先任曹長殿
異変の無い幻想郷なんてスパイスの効いてないカレー。転じてそれに関与しないやつなんて居ても居なくても……
>pnpさん
魔理沙ちゃんか弱い
>県警巡査長さん
絶対に必要な役割以外は全員可能性がありましてですね……
穀潰し
- 作品情報
- 作品集:
- 11
- 投稿日時:
- 2014/12/01 14:18:27
- 更新日時:
- 2014/12/18 01:41:47
- 評価:
- 8/8
- POINT:
- 760
- Rate:
- 17.44
- 分類
- 霧雨魔理沙
- 12・18返信
で……この金髪の娘、誰?誰かの知り合い?
旅行に行ったら村八分。
自己アピールしないくせに分をわきまえることもできないなんて本当に普通だなぁかわいいなぁ
お勤めを一度果たさなかっただけで、あっという間に忘却の彼方に……。
幻想郷というシステムにおいて、『異変』に関わらない者に『個』は与えられないのかっ!?
とはいえ逆に言えば、100年以内なら友人や家族が記憶してくれそうなもんだが……
あ、金髪ちゃん友人も家族も……