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『火ケリマスローズ』 作者: 戸隠
ある日の雛は病んでしまったから熱湯を、にとりにかけて火傷させても良いと思った。
病んだ。だがそれが熱湯をかけることの免罪符になるのだろうか?
「……来たよ。……雛? 話って何? 雛何処?」
にとりはこれから熱湯をかけられるとも知らず。知る術もなく。普通を装った雛に呼び出されて、雛がよくいる川原が在る場所に呼び出されて出てきたのだった。
だが、そこには雛は居なかった。いや、居るのだが隠れているのだ。
最高の最高に沸騰した熱湯をかけるポイントに、にとりが来るのを待っている。
「あれ、雛が約束の時間にいないなんて珍しいな。少し待つかな?」
にとりは独り言に少し雛が約束の時間に居なかったことに対して空気に抗議の意味を兼ねてそう言った。その途中に丁度背もたれにするには良いサイズの木がを見つけたのでそちらに歩き始めた。
計画通りだ。このまま、にとりが木にもたれかかったときに上から熱湯を掛ける。
そう、雛はその丁度良い木の上で熱湯の入ったヤカンを構えていたのだった。
気分はまるでスナイパーだったんだと思っていたし、知らない人が見ればまるで雛の眼は鷹のソレだった。
猛禽類的な、的確に得物をしとめるそれだった。
にとりは、何の疑いも無く疑いようも無くその気に向かって来た。その距離は5mと言ったところだった。
にとりとしては唯歩いているだけなのだが、狙う雛にとっては1秒が1時間に感じられるほどだった。
おそらく、木の下に来るまでには2秒だが雛にしてはそれは2時間。
雛は自分が病んだ理由を思い出していた。
それは、にとりがいけないんだ。だって、にとりは人間のあのこといつもイチャイチャとしていて、雛の事ことなど眼中にないとは言わないが、友達しか思っていないのだろう。
いや、もっともう少し上方修正して親友位にしか思って居ないのだろう。でもそれだけでは満足できない。
できなかったんだ。
雛はあのこのところに行った。それで、もうあの子と関わらないでと言った。人間のあのこでも分かるように『人と妖怪は違うんだ』と教えた。それでも、あのこは『じゃあ、妖怪と神様も違うんだろと』言って一蹴したのである。文字通り本当に迷惑そうに急に雛の綺麗な足を狙って蹴って来たのであった。
だから、あのこはもうこの世に居ない。蹴られた時以前に雛は病んでいたのだけれどもそれいじょうは考えなかった。
ああ、にとりが近付いてくる。私を待つために。私はここに居るよ。一緒に仲良くしたいね。一緒に仲良く。一緒に。
でも、今は駄目なんだよ。今わね。なんて、雛は思う。
だって、私達はこれからだものなんて、のろけていたら。少し、ヤカンから少し熱湯がこぼれた。一瞬も永夜の夜だったあの日のように二人であの異変を解決したときのように。永遠と須臾を操るあの女を二人で倒したような思いの妄想に感じるのだった。
ひ汗は沸騰してないが、汗はまるで沸騰したかのように沸き立った。
熱湯の落ちたところが少し、湯気立った。ほんの僅かなソレだった。
もはや、死を覚悟した雛は自殺用のアレを準備して。
……だが、にとりは気がつかなかった。良かった。助かった。私が居なくなった後の世界など私は想像できないなど雛は考えた。
そうこうしてるうちに、にとりは雛の下、木の下に到着したのだった。
そして、にとりは木に寄りかかったのだった。
「痛!」
木に寄りかかった瞬間に鋭いけど小さな痛み。チクりと何か刺さった。木に何かささくれだった棘が出ていたんだろうと、にとりは思った。
その痛みの本当の原因を、にとりが調べようとした時だった。
瞬間に雛は十字を切って人類は10進法をって、やって他人に祈ってそれを実行したのだった。
最初は雨だと間抜けにも、にとりは思ったがそれは一瞬だった。
「え?」
間抜けた声を、にとりはあげた。
「熱い! 嫌! 熱い! 熱い! 熱い!」
にとりは河童だから、人間や雛のそれ。皮膚に比べたらずっと弱かった。そんな、にとりに容赦なくかけた。
にとりが半ば本能的に走りだしてその場から逃げ出そうとしたがもう遅い。さっきの、チクっとしたはあらかじめ雛が準備していた針で麻痺する毒が塗られてその場から動くことが出来なくなっていた。
しゃあしゃあと、雛はリンゴをウサギ形に切って病室でそれを、にとりは与えていた。
「にとり、食べて」
「ありがとう。雛」
「ごめんね。私があんなところに呼び出さなければ。こんなことにはならなかった」
あの時、雛は全身に火傷を負って倒れている、にとりをそ知らぬ顔して。いや、焦った顔して病院に連れて行った。
雛が犯人だと誰も思っていない。それどころか、こうやって健気に看病する姿が見られてとても心優しいとすら思われている。
心の中ではほくそ笑んでいるというに。
「そろそろ、面会時間終了だから帰るね」
「ありがとう。雛。……雛、明日も来てくれる?」
「もちろんよ」
これだけ、尽くし尽くされたんだ二人は相思相愛、同性とかは種族の違いに比べれば些細なことでしかない。
にとりは、明日に雛に告白しようと思っていた。
だけど、その日の晩に、にとりの容態は急変したのだった。感染症という奴で敗血症を起こして死んでしまったのである。
火傷はこういうことがあるから、油断がならない。
雛はこの事実を聞き手、酷く後悔して自らも熱湯を被って死んでしまおうとしたが、人形でできたその身体は火傷をおうことはできなかった。
だから、今日も酷く後悔の日を過ごしている。
今度のひな祭りの日は一緒に罪を流したい。
- 作品情報
- 作品集:
- 12
- 投稿日時:
- 2015/02/21 13:16:10
- 更新日時:
- 2015/02/21 22:16:10
- 評価:
- 8/8
- POINT:
- 800
- Rate:
- 18.33
- 分類
- 雛
- にちょり「
この罪は水に流すことは出来るだろうか……。