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『産廃創想話例大祭C『幻想を捨てた幻想郷』』 作者: げどうん
幻想郷に経済と技術進歩が根付いて幾星霜……
文明発展に反対していた者達と牧歌的な自然の光景はいつしか姿を消し、
アスファルトと鉄筋コンクリートの街並みがこの地の当たり前の風景になっていた。
「毎日毎日、魔理沙魔理沙魔理沙……もう魔理沙は飽きたのかー!」
「そうは言っても仕方ないよ、魔理沙が手に入るだけマシだと思わなきゃ」
妖怪の価値観も変化し、脆弱で短命な人間との共存はいつしか古き時代の思想となり
今や人類とは適切な管理の元で養殖されて妖怪の主要な栄養源となる存在であった。
彼女達が手にしている串焼きの元は、魔理沙という人間を養殖し一つの種としたもの。
「ま、昔はよかったよね……好きな場所で寝泊まりもできて、水も空気も綺麗で」
「仕方ないのかー、私達みたいな小さな妖怪の都合なんか誰も考えやしないかー」
進歩に乗り権力を得る者がいれば、その競争から追い落とされる者もいる。
今、下水の縁で廃材を燃やして野良魔理沙の肉を齧っている2人は後者の存在だった。
遠い昔の悠久の時代を思い浮かべて溜息を吐く、時代に取り残された小物妖怪達。
……と、そこに響く何かの足音。
「……!!ルーミア、なにかいる!」
「本当なのかーリグル!?人間なら魔理沙以外なんでもいいのか!!」
「オイヤメロワタシハタベモノジャナイゼー!」
微かな物音を聞きつけて立ち上がった視線の先に姿を見せた人影一つ……
薄汚れた金の巻き毛を持つ人間、その内で魔理沙と呼ばれる種であった。
怯えたような声で鳴き声を上げるそれを見た2人は……
「また魔理沙なのかー……たまには早苗くらい食べたいのかー」
「贅沢言わないでってば……貴重な明日のご飯なんだ、捕まえるよルーミア!」
「オイ、ヤメロッテイッテンダローチカヨルナー」
手元の護身用であるバールのようなものを手に立ち上がるリグルと呼ばれた妖怪。
ルーミアも渋々その手に武器を取る。包丁を棒の先に縛った粗末な槍だ。
そんな様を見て慌てて背を向けて逃げる魔理沙。2人は慌てて追い始める。
「チクショウ、コンナトコロデシンデタマルカー!」
「本当に手癖の悪さと逃げ足だけは早い!ルーミア、そっちから回って!」
人間の中でも商品価値として最下層にいるのがこの魔理沙という種である。
食肉として質も肉量も低レベル、かつ繁殖力だけは高いせいで値もつきにくい。
人間養殖業者が在庫の処理に困って野に捨てたらしく、最も野良化が多い人間だった。
「マワリコマレタ!?クソッ、ヤバイ!ダレカ、タスケテ!」
「魔理沙なんかもう見たくもないのかー、生き汚いだけで美味しくないのかー」
食欲旺盛で生への執着も激しく、共食いしている姿も時に見られる劣悪な人間種。
下水で安定して手に入る唯一の人肉とはいえ、コレばかりでは辟易するというもの。
魔理沙を挟み撃ちにし、槍を構えるルーミアの顔は露骨にうんざりした様子であった。
「そんなこと言うならルーミアは明日はご飯抜きだね!」
「見たくもないとは言ったが食べないとは言ってないのかー!」
「ヒィッ!?シニタクナイッ、シニタクナーイ!!……ブゲエ゛ッ!?」
隙をついて脇をすり抜け逃げようとした魔理沙の顔面を鉄棒で殴打するリグル。
鼻が陥没し、鼻孔から大量の鮮血を噴いて地面に転がる魔理沙。
それでも這いつくばってその場から逃げ去ろうと手足を必死に動かし……
「逃がさないのかー!動くななのか!……リグル!」
「ゲヘエ゛ッ……ダジゲデッ、シヌ……シンジマウ、ゼェ……ゲフッ!」
無防備に見せた背中に槍を突き立て背を踏むルーミア。
手足を必死で動かしながらも移動の止まる魔理沙、そこへ……
「死ね、人間!大人しく肉になれ!!」
「ブゴオ゛ッ……ォ、ゴ……シニ、タク……グゲヘッ!?」
リグルが鉄棒を振り下ろし、殴打された頭蓋骨が陥没した魔理沙が脳震盪を起こす。
痙攣する魔理沙の頭部をもう一度殴打すると頭蓋が潰れ、脳漿が撒き散らされた。
しばらく痙攣していたがやがてぐったりと完全に力尽きる魔理沙。
「今日も何とか魔理沙が手に入ったけど、いつまでこの生活も続くやら……」
「明日はきっと野良のアリスを獲れたりするのかー!暗くなったら負けなのか!」
絶命した魔理沙を担いでねぐらに向かう妖怪2人。
うつろな眼球の魔理沙の頭部が傾ぐたび、砕けた頭部からボトボトと脳片が崩れ落ちた。
「重いねえ、これでも軽い方なんだけど……早苗だともっと肉量多いらしいよ」
「味もずっといいらしいし、食べてみたいのかー」
下水に落ちないようにヨロヨロと湿気た隘路を歩く2人。
妖怪が自由に空を舞い、弾幕を無限に生成したのも自然が消えるまでの話……
文明の発展は妖怪に楽を与え、個の強さを奪っていった。
大昔に接点があったという外の世界の人間も同じ道を辿ったというが……皮肉な話だ。
「昨日獲った魔理沙がまだ残ってるから今日のは燻製にしよう、ドラム缶もってきて」
「えー、たまには私が捌きたいのかー!」
「ルーミアは食べれる場所もダメにしちゃうじゃない、あと焚き火に木足して。」
手製の粗末な調理台に魔理沙を乗せ、錆を極力削ったボロのナイフを首に突き刺す。
喉を切り裂くと鮮血が散るが気にせず頸椎を残して肉を裂ききるリグル。
最後に頭部を力任せに曲げ、骨をへし折って頭部を分離させた。転がる生首。
「ルーミア、飲み水を鍋に汲んで。頭と内臓は日持ちしないから今日煮ちゃおう」
首なしの胴を正中線に沿って裂くナイフ、薄い胸から下腹部にかけてを抉る。
皮膚が裂けてその下の肋骨と腹膜内の臓物が露わになり、こぼれ出る腸管。
消化器とそれ以外の臓器を分けて抉り取っていく手練れたリグルの手先。
「勿体ないけど、また当たっても嫌だからね……」
消化器はドブに叩きこむ。魔理沙は悪食で有名であり、毒物を腹に溜める例があった。
知らなかった頃に食べた内臓のせいで死にかける目に遭い、流石に懲りている。
生殖器や呼吸器を適当に刻んでバットに移すと、残った正肉の解体に移った。
「リグル、火の準備できたのかー。コレ煮ればいいのかー?」
「うん、あと頭からミソと眼球穿って煮込んでおいて」
バットの中身に加え、生首にスプーンを突っ込み穿っては鍋に落とすルーミア。
それを横目で見ながらリグルは胴から肉を削ぎ、四肢を切り離しにかかっていた。
人型を残していた魔理沙が徐々に肉片の塊に変じ、銀のバットに積み重なる。
「チップは……もう残り少ないなあ。また木箱探さないと。」
血抜きを待っている間に燻製の準備にかかるリグル。台所事情はいつも火の車だ。
ここ数日は野良魔理沙の調達が良好なものの、調達が滞れば途端に飢える羽目になる。
もし食べるものが無くなってしまった時は……
「ルーミア。私、廃材拾い行ってくるよ……火の番よろしく」
「さっき狩りしたばかりなのに疲れてないのかー?」
「余力ある内に集めれるものは集めておかないとね、行ってくる」
背を向けて下水の外へ出ていくリグル。その背を見て溜息を吐くルーミア。
鍋の中で煮えていく魔理沙の内臓と脳、プカプカ浮いた眼球とにらめっこを始める。
そうでないと昔のことを思い出してしまいそうだった。
「腹ペコも、仲間が減るのも嫌なのかー」
昔はこの下水暮らしの仲間は4人であった……今はもうリグルと2人きりだ。
最初に消えたのはミスティア……裏町で無許可の串焼き屋を開いていた夜雀だ。
野良魔理沙肉を別の肉と偽って客に出し、全員が食うに困らない日銭を稼いでいた。
……ある日、公僕に目をつけられどこかに連れていかれてそれっきりだったが。
「みすちーもチルノもいい奴だったのかー」
稼ぎ頭を失い、一時期魔理沙の調達も捗らずに飢えていた3人。
肉屋に忍び込んで人肉を盗もうとしたチルノが店主に見つかり、半殺しにされた。
顔の形が変わるほど殴打されて帰ってきたものの、傷が悪化し力尽きたチルノ。
この上リグルがいなくなれば自分は一人きりになってしまう。
「魔理沙なんて食べなくていい暮らし、したいのかー……」
叶わない夢を口にするルーミア。鍋の中で火の通った魔理沙の眼球が白く濁っていた。
「今回は早苗肉のレシピ、調理次第で早苗も霊夢に負けない料理に大変身……」
ビルの一角に据えられたオーロラビジョンでアイドルの料理番組のCMが流れている。
画面に映るのは早苗の生首を持った土蜘蛛の横でシェフが食肉を調理するシーン。
そんな大通りの風景、通りを行く雑踏は目も向けない路地に妖怪の姿が一つあった。
「霊夢肉かぁ、一度は食べてみたいね……っと」
店舗の裏に積まれていた廃棄用である青果の木箱を抱え運び去るリグル。
最高級の人肉である霊夢……それに次ぐ味で肉量が多く人気の白蓮は勿論のこと、
味はともかく硬くて調理に向かない天子や庶民にお手頃な早苗も手の届かない品。
半分が混じり物の家畜の妖夢さえ繁殖力はさほど高くないため、野良では滅多に獲れない。
「明日は粗大ゴミの日だし、早起きしないと……いいもの見つかるといいなあ」
使えそうな家電でも見つかったら、裏町近くの河童の店へ持って行って金に換えよう。
幻想郷文明化の立役者である同族――にとりへの恨み言を一日中呟いている雑魚河童だが
リグルが纏まった金銭を手に入れられる唯一の窓口であった。
「帰ったら魔理沙鍋食べて、燻製作って早く寝よっと……」
「ただいま……え?」
動く姿のない下水のねぐら――
魔理沙を煮ていた鍋がひっくり返り、白んだ脳と眼球が地面に撒き散らされている。
何かあったのか……
「まさか、浮浪者狩り……!?」
公的・私的な組織が浮浪者を連行する例はままあり、時折耳にする噂であった。
いずれにしてもロクな結末が待ってないという話で……リグルの背筋が凍る。
「そんな……ルーミア!ルーミア、いるなら返事してよ!?」
蒼白になった顔で辺りを見回すリグル。何か手がかりでもないかと必死に目を巡らす。
必死な呼び声は下水の闇に響き渡るばかり……
「リグル、帰ってたなら助けて欲しいのかー」
「!?」
ではなかった。下水の奥から苦し気なルーミアの声が響く。
どこか怪我をしてるのか?鬱な予感を振り払い、駆けだすリグル。
「リグルぅ、手伝ってくれなのか……わぁなのか!?」
「ルーミア、無事だったの!?大丈夫、ケガしてない!?」
「いきなり抱き着かないでほしいのかー苦しいのかー」
五体満足のルーミアを見て思わず抱きしめるリグル。
何かを背負っていたらしいルーミアは荷物ごと後ろにひっくり返ってしまう。
「ごめん、でも一体どこへ行ってたの……って、ソレ!?」
「これを見つけてビックリして鍋零したのかー熱かったのかー」
倒れたルーミアが下敷きにした人間、の死体……グラデーションのかかった毛髪。
首を絞めて仕留めたのか無様な鬱血した顔で絶命したソレは記憶が確かなら……
「白蓮!?こんな高級品の人間がどうして……!」
「わからないのかー。でも肉たっぷりで美味そうなのかー。」
豊満な乳尻を持つ発達した体躯、その脇腹には折れた槍が刺さったままになっている。
権力者の妖怪の中には食肉にせず人間を飼育する者もいるらしいが、
そういったペットが逃げ出したものなのかもしれない……栄養状態は良さそうだ。
「槍が折れて苦労したのかー、あと鍋零しちゃってごめんなのかー」
「は、ははっ……ルーミア!愛してる!!」
「もう、苦しいのかー」
いろんな感情がない交ぜになってルーミアを抱きしめるリグル。
その日は屠殺し解体した白蓮を少しと魔理沙肉をたっぷり齧り、
夜更けまで歓談しながら明日への希望を新たにする2人であった。
ここは悠久の日々を忘れ、妖怪達が幻想を捨て去った幻想郷。
それでもその住人達はそれぞれこの地で日々の生きる意味を見出して生きている――
なんか空想都市紹介小話みたいになったどうしてこうなった。どーもげどうんです。
「たまには魔理沙じゃなく早苗くらい食べてぇや」
って台詞を使いたかっただけなのにそれ以外の部分が想像以上に膨らんじゃいました。
何はともあれ今年も例大祭開催めでたく思います。
げどうん
作品情報
作品集:
12
投稿日時:
2015/06/19 10:28:14
更新日時:
2015/06/19 19:28:14
評価:
11/11
POINT:
1010
Rate:
17.25
分類
ルーミア
リグル
カニバリズム
文明化
この二人を養って信頼を得た後にレイプして絶望の淵に立たせたいなぁ。
一所懸命たくましく生きているルーミアとリグルがちょっと切なくも可愛いですね。2人が美味しいお肉をお腹いっぱい食べられますように。
文明開化の音がする
白蓮は、美味しそうだけど少し食べにくいかな。
いやー、しかし、この話いいなぁ。ユーモラス