産廃創想話例大祭�C『愛さ霊夢』

……あー霊夢のどこが好きかって？　お前そういうことは……あ？　私だけじゃない？　まぁそれなら……いいか。
えーとだな、私は霊夢の眼が好きだな。お前よく見たことがあるか？　若干赤味がかった黒。黒曜石みたいですっごく綺麗なんだよ。霊夢って言えばさ、喜怒哀楽が激しいけど、それを一番表すのもあの瞳だと思うんだ。
それに、弾幕ごっこの時のあいつの眼。あれはいいね。
なぁ文、異変の時、一回対峙したことあっただろ？　どう思った？
……だろ？　怖いだろ？　温度も何もない、ただ目の前の物体としか見ていないあの瞳。あんな視線をぶつけられてたら、気の弱い奴ならトラウマもんだよ。
しかも、だ。霊夢は絶対相手から目を逸らさない。弾幕や動きなんて見てないんだ、ずっと、ずぅっと目の前の相手の眼だけを見続ける。
そりゃプレッシャーは凄いよ。何しても一切視線が外れないんだ。私も何回か経験あるけど、あれはやばい。
お前の動きなんて全部見透かしてるぞ、そうはっきりと言ってるように感じるんだ。
どんな弾幕を放っても、どんなフェイントをかけても、一切関係ない。お前だけを見続けている。たいていの奴はあの視線だけで参るね。
私？　私はそうだなぁ……あの視線が癖になっちまった。いっそのことずっと見ててもらいたい……って何言わせるんだよ。


……物好きねぇ。私？　私はそうね、髪の毛、かしら。春雪異変で顔を合わせたときは確かぽにーてーる？っていうのかしらね？　あの頭の後ろで一本にまとめた奴。それだったわ。
それとリボンかしら。あの頭の大きいやつ。あれもいいわね。幽々子は霊夢のことを紅白の蝶って言ったらしいけど、言い得て妙だわ。確かに大きな蝶が飾り立ててるみたい。
ちょっと話を戻すわね。そうねぇ、霊夢の髪の毛ってすっごく綺麗なのよ。そりゃストレートさで言えば月の御姫様も居るけれど、こう人間的に綺麗なのはやっぱり霊夢よね。
それとあの子よく動くでしょ？　そのたびにあの黒髪がそれを引き立てるの。あー貴方は短いから……偶には伸ばしてみれば？　邪魔？　そう。
それとあの子異変の度に髪型変わるでしょ……気付いてなかったの？　ちょっとジャーナリスト失格じゃなくて？　今度写真あげるからしっかり確認しておきなさいな、何だったら特集組んでもいいのよ？
……失礼、少し取り乱しましたわ。で、何の話だったかしら。
そうそう。霊夢が異変の度に髪型が変わるって話よね。あれね、可愛らしい理由なんだけど、おめかしなのよ。
ほら、霊夢も女の子なんだし、毎日毎日同じ髪型はちょっとって鏡に向かってるの。可愛らしいわよねぇ。もう見てて微笑ましいわ。貴方と出会った時は結構な長髪だったでしょ？　どうだったかしら？
……そうよねぇ、やっぱり綺麗だったわよねぇ。
ほら、私達って一応こういう人間の形してるけど、本質は妖しい怪異じゃない？　極端な話、外見なんて自由自在なのよ。だからやろうと思えば霊夢みたいな黒髪も出来るんだけど……駄目ね、やっぱり、霊夢じゃないとダメ。
そう言えば魔理沙はなんて言ったの？　瞳？　あらよくわかってるじゃない。
あの黒髪黒目、私たちと対峙してきた大和の民族よねぇ。素敵だわ。素晴らしいわ。


ふふふ、来ると思っていたわ。まぁ霊夢との付き合いは紅霧以来ずっとだからな。存分に訊ねるといい。
そうね。やっぱり私は肌ね。どこぞの黒白ネズミと違って、霊夢はあまり出歩かないからな……出不精とか言ってやるな、本人曰くヤルことが多すぎてそんな暇がないとのことだけど……大抵お茶飲んでるのにやることがあるのかどうか。
……話が逸れたわね、まぁなんだ、余りに日に焼けていない、少女然としたきめ細かい肌が好きね。
私も？　ふふ、褒め言葉として受け取っておくよ。とはいってもな、私も含めて化け物連中にとって外見などさしたる意味を持たないわね。その気になればいくらでも変化させられるのだから。
咲夜も見事なものだけれども仕事に熱心な所為か少し肌荒れが気になる年頃よ……なに？　気付いていないと思ったのか。お前の主人は誰だ、まったく。
まぁ咲夜は後で存分に可愛がるとして……ええい顔を赤くするな、新聞記者。しっかりと聞きなさい。
でも本当に霊夢の肌は綺麗よね。ああ、でも想像するだけでぞくぞくするわ。あの綺麗な肌に牙を立てた瞬間。皮膚の弾力を越えて牙がブツリと突き刺さる感触。滴ってきた血を舌で舐め取った時の熱さ。博麗の、しかも処女の血はどれほど美味なんでしょうねぇ……あ、嘘嘘冗談だからちょ紫スキマは洒落になら。


……いえ、取材は構わないのですが……どうされたんです？　焼き鳥にでも転身されましたか？　あ、違う。巻き込まれた？　それは災難でしたねぇ。
ま、そんなことはどうでもいいです。私はそうですねー、声、ですかね。普段の子供っぽさが少し抜けない声と、異変や神事の時の凛とした声。これですね。
霊夢さんの声はですね、聴いていて耳に心地よいんですよ。鈴を転がしたような、って言うんでしょうか、綺麗なんですよね。すっと耳に入ってくる。
諏訪子様の軽い声とも、神奈子様の威厳のある声とも違う、なんて言うんでしょうね、人間なんだけど、どこか浮世離れしたような声。ごめんなさい、ちょっと上手く言えません。
ともかく、初めてお会いした時から、あの声が好きになりましたね。それにですよ、霊夢さんって喜怒哀楽激しいじゃないですか。だから声にも色々あってですね、喜んだ時の弾んだ声や怒った時の、それこそこちらの胆が冷えるような声。それに悲しんでる時の沈んだ声に、のんびりしてる時の声。どれをとっても同じじゃないんですよ。それこそ万華鏡みたいに聞くたびに変わるんです。いいですよねー、聞いてるだけで時間が潰せますよ。
他にも里のお偉方と会話してる時の神妙な声に、子供に言い聞かせる年上ぶった声、魔理沙さんや貸本屋さんと会話してる時の年相応の声なんてのもありますね。
ほんとはですね、もっと聞いてみたい声もあるんですけど、まぁ無理でしょうね。


……如何でしたでしょうか。各々方に胸の内を存分に語って……ええい、そう叫ばないで下さいよ。ちょっと手足の腱切って霊力封じてるだけなんですから。
いや、なぜって言われましても。先ほども言いましたよね？　各々方に霊夢さんのどこが好きかと語ってもらったって。
それとこの状況が結びつかない？　うーん、聡明な霊夢さんにしては珍しいですねぇ。まぁ用はですよ、好きなモノは欲しくなるのが人情ってもんでしょう？　私たちは妖怪ですけど。
……五月蠅いですねぇ。静かにしてれば楽に分けてあげるですから、もう素直になってくださいよ……私だって暴れ回るのを解体するのは疲れるんですから。
どうして？　いや、それを今聞きますかね。
まーなんというか博麗の巫女としての宿命と申しましょうか。うーん、私もそれなりに生きてきましたがこればかりはちょっと説明できませんね。まぁ簡単に言いますと、博麗の巫女は人妖隔てなく好かれるんですよ。博麗の血がそうさせるのか、それとも特別な何かがあるのかは知りませんが、結果としてそうなります。
それこそ行き過ぎる程に。過去には博麗の巫女を巡って殺し合いまで発展しましたから。
そこで、被害が広がる前に各自好きな部分を言い寄って、分けてしまおうということになったわけです。
いやーそれにしてもよかったですよ。誰一人として好きな部位が被ってなかったですから。同じ場所が好きって言ってたら喧嘩になってましたもんねぇ。やっぱりおいしい物はみんなで分かち合わないと駄目ですよね。
え？　私は霊夢さんの……いえ、博麗の巫女の内臓ですかね。その綺麗な肌の下に包まれた桃色の臓物。ああ、もう想像するだけでゾクゾクしますよ。
ああ、心配はいりません。今頃は紫さんが次の巫女を見つけてるでしょうし。
因みにですね、当代を見逃して次代の巫女で我慢すると言うことも考えられはしたんですが……駄目でした。我慢が出来ませんでした。
いやぁ、先代はいい声で鳴いてくれましたよ。今でも思い出すだけで興奮しちゃいます。びちょぬれです。今回は声は早苗さんですけどねぇ。あ、ちなみのこの会話も録音されてます。てーぷれこーだーって言うんでしょうか、便利ですねぇ。
ささ、長話もなんですからぱぱっと終わらせちゃいましょう。皆さんを待たせるのも悪いですし。
ああ、大丈夫ですよ。上から下まで綺麗に全部、分けて差し上げます。
どんな状態になっても、霊夢さんは何時までも皆さんと一緒ですよ。
それこそ、死が二人を別つまでってね。