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『あんた誰?』 作者: Sfinx

あんた誰?

作品集: 1 投稿日時: 2011/09/11 07:41:17 更新日時: 2011/09/11 16:41:18 評価: 4/7 POINT: 450 Rate: 11.88
「『夢から覚める夢』を見たことはある?」



















「なんだそりゃ!?」

急な問いかけに大声で反応したのは、普通の魔法使いであるところの、霧雨魔理沙。つまり私だ。
茶菓子でもご馳走になろうか、と友人である人形遣い、アリス・マーガトロイドの家に押しかけたところ、茶を出されてすぐの唐突な問いだった。

「ええとね、この間人里で人形劇を披露したときのことなんだけど。最近、そういう夢を見る人が多いらしいのよ。布団に入って、日が昇って目を覚まして、さて働くか、なんて思ったところでもう一度目を覚ます、みたいな夢。」

「またずいぶんと変な夢だな。何かやる気になってるときに急にもう一度目が覚めて、気づけば布団の中だった、なんて気分が下がるったらありゃしない。」

「その通りみたい。散々働いたと思ったら夢だった、なんてことも多いらしくて、現実でもう一度働くのが面倒臭くなったり、ひどい人は鬱病に近い状態になっちゃって、永遠亭で治療を受けてたりするわ。」
 
「うへぇ。考えただけで気が滅入るなそりゃあ……」

ポリポリと、新作だという焼き菓子をつまみながら雑談は続き、だらだらと時間は過ぎていった。
ふと気づけば東の山の稜線から月が顔を出していて、そろそろか、と重い腰を上げる。

「んじゃ、そろそろ帰るぜ。お茶とクッキーご馳走様。」

「ええ、またね魔理沙。帰りも気を付けて。」

アリスの心配に肩越しに手を振って応えると、箒に跨り、宙に浮かんだ。
普通の人間が見たらどこに何があるのかさっぱりわからない魔法の森であっても、私くらい慣れていれば自分の家やアリスの家くらい、夜目でも瞬時に判断できる。
箒の柄を反転させると、自分の家を目指して一気に加速した。

元よりそれほど離れた場所ではないため、程なくしてスピードを緩める。
視界に「霧雨魔法店」の文字を確認すると、ゆっくりと地上に近づき、軽やかに箒を飛び降りた。
扉を開けると、大量に散らばったガラクタやマジックアイテムが私を出迎える。

「相変わらずきったねえなあ。まあ、掃除する気も必要も無いし、別にいいか。」

足元の鉄クズを足でどかすと、身に纏った衣服を豪快に脱ぎ捨て、ドロワーズとキャミソールのみの下着姿となった。
ベッドの上にもいくつかのガラクタが転がっていたが、それを無視して毛布にくるまる。
今日食ったクッキーは美味かったなあ、明日も行くかな、などとぼんやり考えているうちに、私は深い眠りに落ちていった。



















「『夢から覚める夢』って見たことある?」












「え?」

今日も今日とてアリスの家にお邪魔したのだが、アリスの口から出た言葉に妙な既視感を覚え、思わず聞き返した。

「お前、それ昨日も話さなかったか?」

「いいえ、初めて話すはずだけど。どうしたの?」

アリスはキョトン、とした顔で首を傾げる。
あまりにもその様子に芝居っけが無かったので、長い雑談の中での記憶違いだったか、と軽く片付けることにした。

窓から見える沈みかけた夕日に、そろそろか、と小さく呟いて立ち上がる。

「このクッキー、最近よく作るよな。なかなか美味いから嬉しいぜ。それじゃ、またな。」

今日はアリスの返事を待たずに箒に跨り、オレンジ色の空へと向かって一気に上昇する。
見下ろしたアリスの家は、夕日に染まった地面とは対照的に、不自然な暗さがあった気がした。

















「あれ?」

箒で見慣れた我が家へ向かおうとしていた、はず。
何故か、下着姿で毛布を抱いていた。

おかしいな。
しばし考え込んで、私はその理由に気づいた。

「そうか、これがアリスの言ってた『夢から覚める夢』ってやつか!」

「確かに、こんなことがしょっちゅうになったら気が滅入っちまうな……」

悪い意味で斬新な体験をした私は、服も着替えぬまま大声で独りごちた。
デジャ・ビュかと思ったあの会話も、夢ならば有りうる話だ。

「今日はアリスの家に行くのはやめておくか……」

そう決めた私は、最近熱中している研究を進めることに決めた。
少し前に発見したおそらく新種であろう茸が、強力なマジックアイテムとなりうる魔力を秘めていることがわかったからだ。
これを私の魔法に利用できれば、間違いなく一段階上の魔法が放てるようになる。
そんな期待と希望で、私の胸はいっぱいだった。



「やった!」

期待通りに精製された魔力に、喜びを抑えきれず短く声を上げた。
この茸を見つけてから何種類もの実験を行なってきたが、とうとう実を結ぶ時が来たのだ。
あとはこの魔力をエキスとした、マジックポーションとして保存するだけだ。

「いやー、とうとう魔理沙様の努力が実ったってとこだな。よく頑張ったぜ、私。」

「あとはちゃんと保存







































          しておくだけだな。」

そう口にして、なぜ急に目の前が真っ暗になったのか疑問を抱いた。
答えは目を閉じていたから、ただそれだけだったのだが、私には即座に受け入れることは難しかった。

「えっと、なんで急に私はベッドに移動したんだ?」

「早く保存しないと。」

「私、服脱いでたよなそう言えば。暑かったし。」

何度か悪足掻きのように呟いたが、ようやく現実を受け入れられる程度には冷静になれた。

「『夢から覚める夢から覚める夢』とか、何の冗談だよ……」

微かな笑いを浮かべる余裕すらなく、自嘲気味に呟く。
一縷の望みを抱いて茸を探してみるも、そもそもどこに片付けたかすら覚えていない。
やたらと汗ばんだ身体を拭き、いつもの服に着替える。
愚痴を吐き出そうかと、重い腰を上げてアリスの家に向かった。





「私、そんな話したかしら?」

「おいおい、お前が教えてくれたんじゃないか。そんな感じの夢を3連チャンで見ちまってさ。もう気が滅入るったらありゃしないぜ。」

「ふーん。確かに気が滅入りそうな話ね。ところで。」













「貴方、誰かしら?」




















































私はまたベッドの上にいた。

そしてそこは、寝慣れた霧雨魔法店のベッドではなかった。
小学校の頃、人間の自分は物凄く長い夢であって、いつか急に目覚めてヒョロポッポ星の八つ足ひよこ星人になってしまうのではないかと本気で心配していた時期がありました。

夢って怖いと思います。

今の自分がひよこ星人の夢なのかそうじゃないのか、私は未だに結論が出せません。
皆さんはどうでしょうか。
Sfinx
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2011/09/11 07:41:17
更新日時:
2011/09/11 16:41:18
評価:
4/7
POINT:
450
Rate:
11.88
分類
短編
魔理沙
アリス・マーガトロイド
SF?
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0. 90点 匿名評価 投稿数: 3
1. 100 NutsIn先任曹長 ■2011/09/11 16:48:10
理屈抜きの恐怖。
あくまで、これは夢の話……、だよね。

ループ状態の夢、夢、夢……。
とてもじゃないが、どれが夢で、どれが現実かなんて判断できません。

果てしない自問自答に、答えなんて、無い。
5. 90 名無し ■2011/09/13 00:46:49
おもしろかった。
6. 70 名無し ■2011/09/13 20:56:36
いいと思ったけど、ちと軽いかな。
魔理沙が本格的に恐怖する前に終わったから仕方ないかもだけど、これからが本当の地獄だと思えばその不憫さが愛しい。

リアルで軽度の睡眠障害になった時、全身が虚脱して息苦しい悪夢の中で、布団から必死に這い出したり「起こして……」と家族に助けを求めたり、大変な苦労をしてようやく自室から出られた直後に布団の中にいる、という夢を5回も10回も繰り返してようやく起きられる、という体験をした事があります。
気が滅入るというか、精神が磨耗される感じ。ふ、ふふふ……魔理沙がそれと同じ、いや、それ以上の苦しみに落ちるのかと思うと……とても可哀想で可哀想でとても可愛いよ魔理沙。
7. 100 名無し ■2012/01/04 21:08:16
新作期待
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