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『B級シアター大海原』 作者: 十三

B級シアター大海原

作品集: 2 投稿日時: 2012/01/21 14:49:17 更新日時: 2012/01/21 23:49:17 評価: 6/7 POINT: 550 Rate: 14.38
 B級シアターが始まるよー



 










『 幸せ指数上昇中 』



「ねぇ咲夜。最近すごく退屈なのよ。何か楽しいことは無いかしら」

「そうですね。考え方を変えるのはどうでしょう」

「たとえば?」

「私たちは今ショッピングセンターにいます。そして目の前にはポテトチップスがあります。
 普通に見て普通に考えれば、目の前にあるのはただのポテトチップスです。
 しかし、
 ポテトチップスコーナーはじゃがいもで溢れかえっているとも考えられる」

「へー。でもポテトチップスってじゃがいも2つ分くらいなのよね」
「へぇ。」

「ポテチよりチョコレートの方がいいわ。お菓子コーナーはカカオの実がたくさんあるじゃないの」
「カカオの木がたくさんあるのですね!」

「お刺身のコーナーには魚がわっぱいいるわ。水族館みたいね」
「本当ですね!!」

「なんだか幸せになってきたわ。散歩にでも行きましょうか」

 門番をしていた美鈴は、レミリアと咲夜が人里の方へ駆けていくのを見た。






「見て咲夜!牛丼屋があるわ!」

 眼前には巨大な田んぼと牧場が広がった。

「すごい!こんな光景初めて見ましたわ!」



「見て咲夜!レストランよ!高級な食材が世界中から集まっているわ!!」

 眼前には世界中の高級食材たちの大名行列が現れた。

「ここに居るだけで世界中に旅行した気分になれますね!」



「咲夜!カレー屋よ!!!」

「まぁ!!危険すぎますわ!!」

「逃げよう!!!!」



 二人は一目散に紅魔館に逃げ帰った。しかし、

「ぎゃあああああああああああああああああ!!」
「きゃああああああああああああああああああああ!!」


「!?」

 門番の前で二人は悲鳴を上げた。
紅魔館では真っ赤なチューリップが咲き誇っていた。
二人がそれを見て何を思ったのかは定かではない。






数日後。






二人はじゃがいも農家の畑で騒いでいた。 


「咲夜!ポテトチップスがこんなにいっぱいあるわ!!」
「あぁ、なんて幸せなんでしょう!」










『 私の家 』




 霊夢は地霊殿の隣に出来たさとりのマイホームにやってきた。


「地底野郎にしちゃ随分と洒落た家じゃないの」



「でもよく見ると陰気な家ねぇ。私はこんなところに住みたくないわ」



「しかも入口まであんなに階段を登らないといけないなんて。飛べない客にはとことん不親切ね」



「大体、こんなところに家立ててどうすんのよ。どうせならもっと日の当たるところを選べばいいのに」



「てか、呼び鈴は何処にあるのよ!全くイライラするわね!」



「あー来なけりゃよかったわ、こんなところ!!決めた。もう帰る!」




―――

「あらあら霊夢さん。貧乏神社に住んでいる巫女にこの家の良さは分かりませんか。


 この家からは世界中の風景を眺めることが出来ます。私はいつもここで風景画が描きます。

 家の横には大きな塔があります。生きるのに疲れたらそちらに移動し、自分の心の中を描きます」
















 『 前世少女たちのミサ 』



「ねぇ魔理沙。今日は私の前世について教えてあげるわ。
 私は生まれる前、誇り高き龍神族のプリンセスだったのよ。そのころの記憶は
 あんまり残ってないけど、私の生活が光に満ちていたことだけははっきりと覚えているの」

「へぇー。」

「毎朝、あったかいハゲタカドリンクで目をさまして城下を眺めるのよ。
 町の名前はモッコリピラミッドって言ってね、とってもきれいな街なの。
 夜にはチングリマグロの町から旅芸人がやってきて、楽しい踊りをするのよ。素敵でしょ」

「ほぉー。」

「私には婚約者がいたの。ポンチャビン国のフンコロ王子よ。
 とっても男前でかっこいいのよ〜。月明かりの下、彼に告白された時はロマンチックだったな〜」

「ふーん。」

「でもその後ヘチマライオン王国が攻めてくるの。だから私たちは必死に戦ったわ。
 龍神様のため、愛する人々のため、我が身を犠牲にしてね!!」

「へぇー。」

「前世に戻れるんなら、わたしはこんな生活すぐに捨てるわ。
 あぁ、あの頃に戻りたい」




 




「一つ言っておく。私の前世はクランキー・イカ・ヤキソバだ」







「えぇ!?あの伝説のタンポンラーメンの血を引く!?」

「そうだ。もうすぐハバネロゲートの門が開く。
 そうすれば魔獣たちにこの世界は支配されてしまうだろう」 

「どうすれば防げるの!」

「門は開かないように鍵を掛ける必要がある」

「その鍵はどこに!?」





「……マンドリンパイパイ」







「まさか!?あんなところ…絶対に無理よ!」

「あぁ…だから…力を貸してほしい。龍神族のプリンスよ。
 共にパンチラレクイエムを危機から救うのだ!!」

「はい!共に戦いましょう!」











――同志を探しています

  私たちの波動を感じる人はお手紙を下さい――
















 『 いちごの木 』



 息子の友達のケンちゃんが亡くなった。
でも息子は死についてよく分かっていない。
だから、「ケンちゃんはちょっと旅に出たのよ」と言って聞かせた。

すると息子は、「いつ帰って来るのかな」と聞いてきた。
私は「さぁ分からないわ」と答えた。




最近、息子はよく庭にいる。
「なにをしているの?」と聞くと、

「木が生えるのを待ってる」と答えた。

ケンちゃんはいちごが大好きだった。
息子はケンちゃんが『旅』から帰ってきたら、いちごをたくさんプレゼントするつもりらしい。

だから、庭にいちごを植えて木が生えるのを待っているのだ。

「いつ木が生えてくるかな?」

私は「さぁわからないわ」と答えた。


息子は、「分からないことばっかりなんだね」と返してきた。




しばらく経った。

息子が庭に植えたヒマワリは大きく育っている。
でもいちごは何時まで経っても芽を出さなかった。

「どうしていちごは芽を出さないのかな。」

息子は言った。


私は息子に「宿題は終わったの?」と聞いた。
息子は「まだ終わってない」と言い、部屋へと戻っていった。


その日の晩、息子の描いた絵日記を見た。


たくさんのいちごを実らせた木の隣にケンちゃんが描かれていた。

『なつ休みがおわるまでに木がはえますように』

日記の内容はいちごの木のことばかりだった。



今日も息子は庭にいる。
庭で一人、いちごの木が生えてくるのを待っている。















 『 伝説のジョークの幻想郷版 』


 紅魔館にやってきた霊夢がレミリアの耳元で囁いた。




「次は紫抜きでやりましょう」




















 『 格言 』 

「明日はなんとかなると思う馬鹿者。 今日でさえ遅すぎるのだ。 賢者はもう昨日済ましている。」

 by カーリー・クーリ



 こんな言葉に感銘を受けた寺子屋の子供がいた。

彼は、友人にこう言った。

「宿題はやったかい?」

「今からやる」

「お前は馬鹿者だ」


 彼は慧音先生にも聞いた。


「この宿題はいつ集めるのですか」

「明日だ」

「お前は馬鹿者だ」

 慧音はその子を叱りつけた。


するとその子は、
「今日でさえ遅すぎるのだ。賢者はもう昨日すましている。」
と言って、寺子屋を後にした。


















 『 ヒーロー 』


 
「よこせ!!」

 そう言って寅丸は子供からチョコレートを奪い取った。
当然子供は泣く。心から泣く。

 

「こら!返してあげなさい」

 それを見ていた白蓮が寅丸を叱りつける。
申し訳なさそうな顔をしながら寅丸はチョコレートを子供に返した。

「ありがとう!」

 子供は笑いながら白蓮にそう言った。




「この馬鹿野郎!!」

 公園で遊んでいた女の子を寅丸が蹴り飛ばした。
女の子は足を擦り剥いて泣いてしまった。

「大丈夫ですか!!」

 すぐに白蓮が駆け付ける。

「謝りなさい!!」

 白蓮にそう言われ、寅丸はしょんぼりと女の子に頭を下げた。
白蓮は女の子の傷を手当てし、家へ送った。




「ちくしょう!!」

 寅丸はそう言って石を投げた。

 パリーン

 ガラスの割れる音が響いた。

「なんてことを!!すぐに謝りに行きなさい!!」

 寅丸は激怒する男に何度も謝った。
白蓮は割れたガラスを集め、新しいガラスの手配をした。


「白蓮さん。貴方は本当に素晴らしい御方だ」

 さっきまで怒っていた男は笑顔でそう言った。




 数日後



 パリーン

 彼の家のガラスがまた割れた。
それも今度は家中のガラスだ。

 男は驚いた。ガラスを割っていたのは白蓮だったのだ。

「やめてください!」

 寅丸が白蓮を静止する。

「彼に謝ってください」

 白蓮は寅丸に言われた通り、男に深く頭を下げた。


「なんでこんなことをするんですか」男は白蓮に聞いた。



「今日は私が悪者の番ですから」

  















『 これは悪夢だ 』






 人里の一角で悲鳴がこだました。

道端に男が倒れている。
腹が裂けており、彼の赤黒い臓物がそこから顔を覗かせていた。
男にはもう意識がない。死んでいるわけではないが、あと数分の命だと言うことは誰にでも分かる。

それよりも問題は彼がこのようになってしまった原因だ。
彼の遺体(死んだことにして申し訳ないが)のすぐ側には一人の少女が立っていた。
名前は魂魄妖夢という。
手には血に濡れた刀が握られており、表情は驚愕と不安に満ちている。

男を殺したのは(死んだことにして申し)彼女だった。
犯行はさきほど、白昼堂々と人里の中心部で行われた。

 暫く前、二人は口論をしていた。
妖夢が子を宿したのだ。男は焦った。ほんの夜遊びのつもりだったからだ。
妖夢は男の本心を知り激怒した。少なくとも、彼女はあの行為が正当な恋愛の元に行われたと思っていた。
今の仕事を捨ててもいいとさえ考えていた。そして今日の告白に臨んだのだ。
その途端これである。

 ついカッとなってしまったのだ。
倒れた男の体から震えが無くなり、文字どおり男は死んだ。今丁度死んだ。
妖夢は息を荒げて周囲を見回した。目撃者が居たレベルの騒ぎではない。
歩いていた主婦や商人。目の前の茶屋で団子を食べようとしていた子供。
ありとあらゆる人物に犯行を見られてしまった。

 恐怖に駆られた妖夢はその場を急いで後にした。
刀を鞘に納めるのも忘れていた。そのせいで、血塗れの得物を持ちながら走る少女がいると、
人里の保安官事務所に通報がいくつも入った。それだけ妖夢は焦っていた。
とにかく逃げるしかないと彼女の本能は喚き散らしていた。

 妖怪の山の近く、人里が見渡せる場所まで妖夢は逃げた。
ここからでも里の混乱の様子を見ることが出来た。里の治安組織は間違いなく自分のことを追って来ている。
妖夢は生い茂る密林の中へと走った。空は飛ばなかった。身を隠す物がないからだ。

 時刻は夕方になり、空は徐々に色づき始めた。
妖夢は普段足を踏み入れない妖怪の山の麓までやって来ていた。ここいらには滅多に人間はやってこない。
とりあえずは一安心と、妖夢は疲れた体を大木へと預けた。

なにが一安心なものか。

噂はすぐに広がるだろう。妖夢は二度と人里に近寄れない。すぐに逮捕されてしまう。
あそこのルールは簡単だ。死には死を持って償わせる。
例外はあるが、今回の場合、その例外は恐らく適用されない。

白玉楼まで逃げようかと思ったが、妖夢はそれを止めた。
今頃西行寺幽々子は妖夢のしでかしたことを聞いて顔を顰めているだろう。
…許してはくれまい。しかも、幽々子は妖夢が子を身籠っていることをまだ知らない。
これから告げようとしていたのだ。しかし、そんなダブルショックを主人に告げる勇気はもう無かった。

ならば、あそこへ戻る理由も無い。

 空が闇に包まれるにつれ、妖夢の心にも暗黒のとばりが降り始めた。
何もかも失ってしまった。あの男と過ごした日々は楽しかった。それがこんな形で終わりを告げるとは、
予想だにしていなかった。妖夢は膝を抱きかかえて頭を垂れた。
自然に涙が溢れた。声は出さなかった。誰かが自分を探してすぐ近くまっでやって来ている気がしたからだ。
急に喉元が熱くなる。妖夢は体から込み上げてくるものに耐えかねて、大きく口を開けた。
口の中に残る酸味。途端にお腹が減ってきた。まもなく夕食の時間なのだ。

 本来なら今頃、白玉楼で夕食を作っているはずだった。
今日の献立は大根の煮物と焼き魚。それに豪かなデザートを作る予定だった。
そのデザートで幽々子への告白の衝撃を少しでも和らげようと考えたりしていた。
そこまで考えて、妖夢は再び泣いた。鼻水も止めどなく流れた。
幽々子は帰らない妖夢をどう思っているのか。先代はこんな自分を見てどう思うだろうか。
心底自分という存在に嫌気がさしてきた。
恥ずかしくて、恥ずかしくて…心が滅茶苦茶に握りつぶされてしまったように痛んだ。

 すこしして、森が不気味に唸った。
辺りに光は無い。妖夢は自分が今どこにいるのかはっきりと把握していなかった。
思えば、妖怪のねぐらである筈の密林の中で独りぼっち。
また別の不安が妖夢を襲った。人外の何かがじっと自分を狙っている。そんな妄想に妖夢は取りつかれた。

 妖夢は自分の手元を見た。
幸いにも鋭利な刀がある。彼女には自殺という選択肢が残されていた。
もはや生きていても(半分死んでいるが)どうしようもない。
潔く全霊になってしまおう。そしてこの忌々しい生から逃げよう。
その後の裁きも怖いが、このままここに居るのはもっと怖かった。
刀に手を掛けた瞬間、妖夢はあることを思い出した。自分のお腹の中には新たな命があるのだ。
自殺はその子を殺すことでもある。――また誰かを殺すのだ。
男はこの子を望まなかった。しかし、妖夢は望んでいた。素直にこの新たな生命の奇跡に感動していた。

それなのに。…それなのに。妖夢は考えるのを止した。
もう疲れ果てていたのだ。精神だけが一気に年を取ってしまったようだった。

 鞘から刃を抜き地面に突き刺すと、雲の切れ目から月が顔を出し始めた。
刃が月明かりを反射し、妖夢の目をしばたかせた。

ギロギロと輝く得物は男の血を吸って笑っているようだった。

そんなとき、たった一つ、素晴らしい考えが妖夢の頭を過った。

そうだ。これは夢だ。現実ではない。
こんな残酷な出来事が起きるはずがない。数時間前まで笑って喜んでいたのに、
突然ここまで急落下するはずがない。




そうだ。そうなんだ。間違いない。






―――





そう。その通り。実は夢だったのだ。

妖夢は白玉楼の机に顔を付けて寝ていた。

マジで夢だったのである。

しかし、安心するのはまだ早い。
実際の出来事はこうだ。

妖夢は人里で男に衝撃の事実を告白され酷く落ち込んだ。
しかし、刀を抜くようなことはせず、彼女はふらふらと白玉楼まで舞い戻り、自室に篭ってひとしきり泣いた。
そのうち疲れて眠ってしまったのだ。

机には妖夢の涙のあとがびっしりついていた。

妖夢は表情を作らずに側に立てかけてある刀を見た。
自殺という運命に変わりは無かったのだった。
 

















 




 閉幕
朝のナパーム弾の臭いは格別だね。
さよなら。さよなら。さよなら。さよなら。
十三
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2012/01/21 14:49:17
更新日時:
2012/01/21 23:49:17
評価:
6/7
POINT:
550
Rate:
14.38
分類
短編がいくつか
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POINT
0. 30点 匿名評価
1. 60 ローゼメタル ■2012/01/22 00:18:36
8連投してボッコボコに叩かれてアク禁されてたらS級シアターだったと思った(小並感)
2. 100 ギョウヘルインニ ■2012/01/22 02:01:55
1番目と最後の話が面白かったです。
3. 80 名無し ■2012/01/22 18:59:33
最初と最後が面白い
4. 80 名無し ■2012/01/22 22:53:07
いちごの木が、なんか切なかった。
帰ってきたら苺を沢山食べさせる
帰ってこないから苺を食べさせる事が出来ない
そんな風に感じました。
5. 100 名無し ■2012/01/23 12:49:03
面白い…しかしジョークが良く分からん…
7. 100 ラビィ・ソー ■2012/02/04 18:40:26
どれも面白かったです。格言とヒーローが好みです。
特にヒーローでのマッチポンプは教祖の基本ですよね。
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