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『不老不死の代償』 作者: 山田トカミル

不老不死の代償

作品集: 2 投稿日時: 2012/02/10 15:17:39 更新日時: 2012/02/11 00:17:39 評価: 4/6 POINT: 410 Rate: 12.43
時刻は夕方・・・
幻想郷で唯一人間達が暮らす人里では、子供が家に帰る姿が見える時間帯だった


人里の寺子屋では、薄暗くなった教室に一人、宿題の丸付けをしている人物がいた


「・・・よし、終わった」


彼女の名は上白沢 慧音。この寺子屋の教師である
丸付けをし終わった慧音は宿題のプリントをひとつにまとめ、教卓の中に入れた
そして小道具を鞄に入れ、寺子屋を出た









私は寺子屋を離れ、竹林の前まで来た

今日はこの竹林・・・いや、竹林の先にある永遠亭に用があり、訪れたのだ
私は竹林の前周辺に建っている小屋の扉をノックした


「はいはい、誰ですか・・・なんだ、慧音じゃん」


中から出てきた彼女は藤原 妹紅。この竹林の案内をしている


「案内?」

「あぁ、頼む」

「わかった。じゃあついてきて」


妹紅はそういうと先に竹林に入っていった
私は後についていく




私と妹紅は友人のような仲だ

だが、いつしか私は妹紅と目が合うと落ち着かなくなる
私は・・・妹紅のことを好きになってしまったんだ

いつも普通に話していたし、特におかしいことをしたわけではない
なぜか、いつの間にかそう意識し始めたんだ

同姓なのはわかっている。わかっているんだ・・・
だが、この気持ちを抑えることはできないんだ

だから、だから・・・


今日、妹紅に告白しようと思うんだ
妹紅なら、受け入れてくれるはずだから・・・




「ついたよ」


考え事をしていたらいつの間にか到着していたようだ


「でも慧音が永遠亭に来るなんて珍しいね」

「ん?あぁ・・・ちょっとな」

「まぁいいけどさ。じゃ、帰りは呼んでね」


妹紅はそういうと後ろに向きを変え、来た道を戻っていった
さて・・・


「・・・・・・」


私は無言で永遠亭に入った




私は永遠亭に入り、永琳がいる診察室まで歩いた
すると


「あれ?慧音さんですか?」


横の部屋から鈴仙が出てきた
彼女は鈴仙、本名は長いから言わないが


「珍しいですねー。診察ですか?」

「・・・まぁな」


私はそういうとまた歩き出した
なぜか鈴仙はついてこなかった
・・・空気を読んでくれたのだろうか?




「失礼する」


私はそういい、診察室に入った


「あら、慧音じゃない。珍しい」


中には白衣を着た八意 永琳が椅子に座っていた


「・・・何か用かしら?」


永琳が足を組んでそういった
そして私は口を開いた




「・・・蓬莱の薬を渡してほしい」




「・・・・・・」


永琳は驚いたような顔をしていた
そりゃそうだ。急にきてこんなことを言われたら・・・


「・・・すまない。聞かなかったことにしてくれ」


私はそういい、振り向いて診察室を出ようとした


「待ちなさい」

「・・・なんだ?」

「まずなんで蓬莱の薬なんかほしいかいいなさい。話はそれからよ」


私は扉を開くのをやめ、椅子に座ってわけを話した
正直話したくなかったが、言わなきゃいけないようだ


妹紅は人間なのだが、蓬莱人という不老不死の人間なんだ
だから妹紅は何年経とうが老いることも死ぬこともない
だが私はただの獣人。いずれは老いて死んでしまう
私は妹紅より先に死ぬのは嫌なんだ。今日告白して、特別な関係になり、幸せに人生を送るのに・・・
だから私は永遠亭に蓬莱の薬をもらいに来たんだ


「・・・そう」


永琳はそういうと立ち上がり


「ついてきなさい」


私にそういって診察室を出て行った




私は永琳の後についていった
どうやら月が出ているようだ。いつの間にか私の姿は獣になっていた
髪が薄く緑に染まり、角が二本生えている


「入りなさい」


永琳はそういい、ある部屋に入っていった
私もその部屋に入った




中は薬品の匂いが充満した部屋だった
見た感じ研究室ともいえる部屋だ・・・


「慧音、これが蓬莱の薬よ」


私が周りを見渡していると、永琳がそういって薬を差し出してきた
見た目はただの白い粉だ。だが蓬莱の薬を飲むと不老不死になれる
私は自然と手が伸びてしまった


「まだ渡せないわ」


永琳はそういうと薬を自分の服の中に仕舞った


「実はまだ獣人のデータが取れていないの。だから・・・」

「私を実験台にすると」

「そう。もし協力してくれれば、薬は渡すわ」

「わかった。協力する」


私はすぐ答えた
もちろん、答えはYESだ


「実験は簡単、今からここにある薬をすべて飲んでもらうわ」


永琳はそういうと、後ろにある机の上を指差した
その机の上には


「な・・・」


ありえないくらいの量の薬があった
軽くは五十を超えているだろう
種類も錠剤や粉末、液体と様々だった


「こ、これをすべて・・・?」

「えぇ」


永琳は真顔でそういってきた
・・・どうすればいい・・・


私はしばらく悩んだが、覚悟を決めた


「・・・・・・」


私は一番前に置いていた丸型フラスコを手に取った
中身は液体で緑色だ。少しとろみがある


私はそれをすべて飲み干した


「うぐっ・・・」


口の中に広がる薬特有の苦味
そしてそれはすぐ起きた


「っ!?」


私の体に突然痛みが走った
胸から締め付けられるような痛みを感じる
あまりの痛みに私は膝をついて倒れてしまった


「っぁ・・・ぅあっ・・・」


少しずつ呼吸が難しくなる
胸の痛みはどんどん激しくなった
しばらく私はもがき苦しみ、やがて痛みは引いていった


「はぁっ・・・はぁっ・・・」


私は額から汗をたらしながら立ち上がり、次の薬を手に取った
次の薬は錠剤だ。私はそれを口に含み、飲み込んだ


「・・・っ!!くああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


すると突然頭が割れるように痛み出した
私は膝をついて頭を抱え、のた打ち回った


「くっ・・・私は・・・」


私は・・・私はぁ・・・
どうしても・・・蓬莱の薬が・・・


私は激しい頭痛に耐えながら、次々と薬を飲み込んでいった


その姿を、永琳はずっと見ていた


――――――――――


あれから数時間、私は薬を飲み続けていた
そして最後のひとつも飲み込み、蓬莱の薬を手に入れ、永遠亭を後にした
もう深夜だった


私は水を取り出し、薬を飲む
なぜか水を入れた水筒を取り出すのに苦労した。指が上手く動かないんだ
どこからかツタのようなものが伸びてきて、水筒を開けてくれた
そして私は薬を飲み、水を飲む
体に焼けるような痛みが走るが、もう慣れてしまった
本当になれたか確認するため、ナイフを使って腕を切る
血が吹き出たが、すぐに皮膚が引っ付き、再生した
私は不老不死になれたのだ


「やった・・・やったぁ!!ついになれたああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


私はそう叫ぶと、重い足を引きずりながら竹林の道を進んでいった
それにしても体が重い・・・蓬莱の薬の副作用だろうか?










数十分歩いて、やっと入り口まで戻ってこれた
私は小屋の扉をノックする。だが返事がない
私は無理やり扉を押し倒した


「誰だ!!」


中には妹紅がいた。可愛い寝巻き姿で
妹紅は私を見ると急に震えだした
顔を真っ青にして、後ずさりまでしている


「どうした妹紅?私だ。慧音だぞ?」


喉が痛くて上手く声が出せない


「う、嘘つくな!お前みたいな化け物が慧音なわけあるもんか!!」


私は妹紅の言葉で固まった
化け物・・・?バケモノ・・・?


「何を言っている?私は正真正銘慧音だぞ」


また上手く声ガ出ナい


「黙れ!化け物め!!まさかお前慧音を・・・」


まタ化け物っテ言ッタ・・・


「私は慧音だ!上白沢 慧音だ!今日はお前に告白を・・・」

「化け物と付き合う気はないね!!とっとと消えないと燃やすよ!!」




化け物・・・化け物・・・化け物・・・


バケモノバケモノバケモノバケモノバケモノバケモノバケモノバケモノバケモノバケモノバケモノバケモノバケモノ・・・


マタ・・・化ケ物・・・




その時、私の何かが崩れ・・・た

















「あ・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」


私は妹紅の首を掴み、壁にたたきつける
なぜか今の体には力が溢れている


「がはっ・・・は、離せ・・・」


「なぜ!なゼ!!ナゼ!!!ナゼソンナ事ヲ言ウンダ!!!!」


私の背後から先ほどのツタが何本も伸び、妹紅の腹に突き刺さる
妹紅の腹からはドクドクと血が溢れ出る


「かはっ・・・うぐぅっ・・・」


「ナンデ何でナンデ何でナンデナンデナンデ!!!!!」


首を掴む力が強くなり、伸びた爪が首に食い込み、血がにじみ出る
ツタのようなものは相変わらず腹にたくさん突き刺さっている


「私はコンナに愛シテイるノニ!!ナンデ気づカナい!!なンデ気づいテクレなイ!!!」


左手の爪を尖らせ、妹紅の腹に突き刺す


「いっ・・・」


中身をえぐり、横に裂く
壁や床を血に染め、妹紅の腹には穴が開く


「私ハお前ト幸せニナリタカッた!!ダカラ蓬莱の薬も使っタ!!」


左手で頭を掴んで壁にたたきつける。何度も何度も何度も
生々しい音が鳴り、妹紅は何も言わなくなる


「ナノに!!ナノニ!!ナノニィィィィィ!!!!」


何度も何度も何度も何度も壁にたたきつける
次第に妹紅の頭がつぶれ始めてきた


「くっ・・・」


妹紅は片手に炎を溜め、私の左腕に放ってきた
私は驚き、手を離してしまった
妹紅は床に落ちる


「慧音・・・なのか?」


妹紅はかすれた声でそう聞いてきた


「何度モ言っテルだロ!!私ハ慧音ダ!!」

「蓬莱の薬を使ったって・・・言ったよな・・・?」

「あア!言っタさ!!」

「そう・・・か・・・」


妹紅はそういうと片手に炎を溜め始めた
私はそれを見て、また妹紅の頭を掴んで壁にたたきつける


「がはっ!!」

「ナゼ私を傷ツケる!?ナゼ私ヲ燃ヤス!?私ハコンナに・・・」

「なぜ蓬莱の薬を使ったんだ・・・」


私は妹紅のその言葉を聞いてたたきつけるのをやめた


「不老不死は・・・絶対に死ねない・・・それは・・・悲しいことだ・・・」

「・・・・・・」

「・・・慧音には使ってほしくなかった・・・」


私は妹紅の顔を見てハッとする




妹紅は涙を流していた


「・・・やれよ」

「っ!!」

「お前も傷ついただろ?化け物扱いされて・・・気が済むまで私をやれ」

「うっ・・・」


私は妹紅を壁にたたきつけた


「うああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


何度も、何度も、何度も・・・
原型がなくなるまで妹紅を壁にたたきつけた


「はぁっ・・・はぁっ・・・」


私は妹紅を離す
床は血だらけになり、壁には血が飛び散り、妹紅の頭はほぼなくなっていた


ふと、横にあった全身鏡を見てみた
そこには・・・化け物が移っていた


あまりにも太すぎる足
大きくなった手
背中から無数に生えるツタ・・・いや、触手
原型を保っていない顔
そして・・・三本になった角


そこにはまさしく・・・化け物がいた


「あっ・・・あぁ・・・」


妹紅が言った事は本当だった・・・
そこには血で染まった・・・











バ   ケ   モ   ノ













「あああああああああああアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああぁああああああぁぁあぁぁぁあああああアアアアああああああああぁああアああああああぁぁぁぁあああああああああああああぁぁぁぁあああああああああああアアアアあああアアあアアアアあアアアアアアアアアアあああああアアアアアアああああああああああアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





私は小屋を出ると、竹林を走り回った
走るのもつらくなり、飛び交うように移動し続けた
そして、風を切る中で、私の心の中は・・・






「後悔」に満ち溢れていた・・・


――――――――――


後日・・・

永遠亭では、輝夜と永琳が話し合っていた


「よかったの?獣人にあんなことして・・・」

「・・・いいんですよ」

「帰り見たけど、なに飲ませたの」

「・・・いろいろですよ」

「ふ〜ん・・・」


輝夜はそういうと廊下に出て行った


「・・・そう簡単に恋は結ばれないのよね・・・まぁこれで慧音が頭冷やしてくれればいいけど・・・」





―終わり―
<上白沢失踪!?>


前日の夜中から、人里の寺子屋で教師をしている上白沢 慧音が失踪
最後に見かけた人によると竹林に入っていったらしいので、竹林で遭難している可能性がある

永遠亭の八意 永琳に話を聞いたが、関係ないとの事
また、竹林の案内人の藤原 妹紅が現在捜索中である

上白沢 慧音を見かけた方はすぐに連絡を


記事元:文々。新聞
山田トカミル
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2012/02/10 15:17:39
更新日時:
2012/02/11 00:17:39
評価:
4/6
POINT:
410
Rate:
12.43
分類
慧音
妹紅
純愛?
悲劇
簡易匿名評価
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POINT
0. 60点 匿名評価 投稿数: 2
2. 60 名無し ■2012/02/11 01:20:24
蓬莱の薬を飲むと最初は化け物になるのか?
もこたんとてるよは人になれるまでは化け物だったのか?
3. 100 ギョウヘルインニ ■2012/02/11 04:47:01
先生が!
4. 100 NutsIn先任曹長 ■2012/02/11 07:10:08
話の内容からすると、慧音に飲ませた諸々は一定時間で効果が切れるものだったりして。
不死になっても姿は変わらないが、世間様はアレのような、またはそれ以上の仕打ちをしてくるから、
永琳はお試し版を飲ませたのかな?

もし慧音がそれに耐えられるのなら……。
もし妹紅がそれでも愛せるのなら……。
6. 90 ナカナハら ■2012/02/12 22:31:05
ヴァケモノけーね最高っ!!
愛だね、これは。
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