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『アリス・マーガトロイドのお人形遊び』 作者: おにく

アリス・マーガトロイドのお人形遊び

作品集: 2 投稿日時: 2012/02/16 16:04:41 更新日時: 2012/02/17 01:04:41 評価: 6/9 POINT: 680 Rate: 14.10
おだやかな春の風がベージュ色のカーテンを撫でる、白く穏やかな陽光が、西洋造りの一間を照らした。
暖かな輝きに、黄色いガザニアがますます映え、時を重ねる古時計の秒針の音までもが、小鳥たちのさえずりにかき消されてしまう。
新鮮な朝の空気が、私の鼻から全身に広がってゆく。血流の淀みは消え、足のつま先まで冴え渡った。
暖かく心地よい、いつも通りの春の朝だ。こういう日は普段にまして愉快になる。
楽しい一日になりそうだった。
まだ木の匂いのする真新しいベッドを離れ、茶色のブーツで床を鳴らす。
そして影の中で夢を楽しむ、可愛い子供たちを見た。
澄んだ茶色のキャビネットには、西洋装束に着飾られた人形の少女達が眠っている。
頬の柔らかさから指の先の爪一枚一枚に到るまで、温室に咲く睡蓮のように白く無垢だった。
少女という概念が抽象され、幻想と事実の合間に結実した、純粋で完全なものたち。
瞳を閉じて、いつ覚めるとも分からないような、まどろみの中に沈んでいる。

その子たちのうちの一人を、二つの手でそっと抱き上げた。
関節がかちゃりといい、丁寧に仕立てた青と白のエプロンドレスが小さな布擦れの音を鳴らす。
赤いリボンはバラのよう。膝ほどにまである長い金髪には、冷たく透明な小川のようで、自然な肌触りがあった。
青と白のシンプルなエプロンドレスは、私がこの子だけのために縫ったものだ。
とっても可愛い、私の自慢の子。私はその子の胸に人差し指をあて、物の魂を呼び覚ます。
「起きなさい」
肩から指の先にかけて、青白い魔法が水のように流れてゆくのを感じた。
青く塗られた爪がぼんやりとした光を放ち始め、人形の少女の嘘の心臓が、ことことと小さな鼓動をはじめる。
左手の上で、彼女はひとりでにぴくぴくと動き始めた。魂が目を覚ますにつれ、体が自由になるのだ。
やがて一つ一つゆっくりと関節が動き始め、ついには統一された意思が、まとまった動作を創りだす。
そして彼女は、うっすらと添えられた瞼を開き、私の顔を認識した。
サファイアのような透き通った瞳は、眠りから覚めた幼児そのもののようだ。
ぼんやりとうとうとと視点が定まらなかったが、やがて意思を得て、私と視線を交わし始める。
「おはよう。私と一緒に遊びましょう」
愛おしい人形の少女は、言葉を飲み込めなかったのか、しばらくきょとんとしていた。
目覚めさせられたばかりで意識がはっきりしていなかったのだろう。
「ほら、まったく寝坊助さんね」
私は少女の肩を掴みやさしくゆらす。すると少女はぴくりと跳ね、目をぐりぐりさせて、辺りを確認し始めた。
やっと目を覚ましたらしい。ぱちくりさせて、やがて陽に向かう向日葵のように微笑んだ。

良く愛された物には魂が宿る。付喪神の例などのように、ありふれた話である。
特に人の形をした彼女たちには、質の高い明瞭な魂が住み着いてしまうものなのである。
森の奥の独り身が寂しくなったとき、私はそっと彼女たちの魂を命へと昇華させるのだ。
大層な目的があるわけではなく、ただただ暇つぶしからの行為であるのだが、
人形たちはかまってもらえるだけで嬉しいようで、起こした子達は無邪気に喜んでくれた。
この子も同じだった。私に選んでもらえたことを素直に喜び、これから何が始まるのか、弾む表情で待ち望んでいる。
「そうね、まずはお茶を淹れてもらいましょう」
彼女は私の手の平で抱えられるほど小さい。私は彼女を抱えたまま、焜炉の前へ向かった。
ポットを丹念に温め煮立った熱湯を注ぐ。人形の少女は、小さな両手いっぱいに茶葉を掴み、入れてくれる。
紅茶の色が鮮やかになるまでの数分、彼女はその透明な色の移り変わり楽しんだ。
煮立った紅茶は、内側に花が描かれた陶器のカップが受け止める。人形用の豆のような入れ物にもだ。
人形の少女は与えられたカップをうれしそうに受け取ると、私の右手にちょこんと座った。
テーブルに帰り、薄く広がるその味をゆったりと楽しむ。
「とっても美味しいわ。ありがとう」
人形の少女はテーブルの上に座りながら足をぱたぱたさせている。
人形は紅茶を飲めないので、彼女がしていたのは口をつける真似事だったが、それでも楽しげな口元であった。

一杯の紅茶を飲み干すころになると、部屋に差し入る陽光もひときわ明るくなる。
人形の少女は次の遊びを心待ちにしていたらしく、にっこりと微笑みながら私の瞳を覗き、その指示を待ち望んでいた。
「次は、あなたの髪を梳いてあげましょうか」
そう告げると、少女の可愛らしい顔に、また一輪の咲くような笑顔が添えられる。
たとえ人形であろうとも、お洒落というものは女の子の心を捉え、けして離さない。
人形の少女は私に背を向け、深窓の令嬢がするような芝居がかった上品さで、テーブルのふちに座った。
髪の毛を傷つけないように小さな手櫛で優しく髪の毛をといてゆく。少女はいつまでもされるがままだ。
ひと通り梳いたら、スプレーで形を整える。金の糸のような髪がますますなめらかになる。
それだけ手入れを済ませると、私は少女に鏡を見せてあげた。
「ほら、とっても美人になった」
少女も同意見のようで、体全体を使ってポーズを取ってみたりしながら、しばしの時間を楽しむ。
踊るようなステップを踏み、体の糸がからみあって、時折転びそうになる。そのたびにそっと横から支えてあげるのだった。

こうして遊んであげると、人形の少女はとても上機嫌になる。
小さく可憐な笑顔をこちらに振りまきながら私の袖を掴んで、待ちきれない子供のように見上げてくる。
「ほらほら、慌てないの」
作り物の人形とはいえ、その振る舞いはまるで本物の子供のようだった。
紅の乗った頬、せわしなく動く手足、感情はぽろぽろと表に出てくる。
「ふふ、私と遊ぶのは楽しい?」
人形の少女はしきりに頷いた。それにつられて大きなリボンまで揺らめいている。
私はこの子が急に愛おしくなって、やわらかなほっぺたを指先でつついた。
すると彼女はお返しとばかりに、指にしがみついてそこに頬ずりを返す。
甘えん坊な子供のような人形、私はよく懐かれているらしかった。
「ありがとう。でもごめんなさい、次の遊びで最後になるわ」
人形の少女はそれを聞くと、途端に悲しそうな顔をする。いつまでも遊んでいたかったのだろう。
人形というのは人に愛され、人と遊ぶことがその存在意義だ。人と共に歩いてはじめて輝くものだ。
寂しさも道理であったが、しかし終わりというものはどんなものにも訪れる。
「そんな顔しないで。あなたのために人形劇をするんだから。あなたが主役の即興劇よ」
人形の少女はちらちらと私の顔を見て、寂しそうに笑った。
そのふんわりした頭頂部を、指でそっとなでまわす。
また愛おしい気持ちになった私は、小さな腰に手を回し、唇にそっとキスをした。

白い太陽に雲がかかり、その影は家の周りに落ちてくる。
陽光はわずかに弱まり、光を受けてぴかぴかと輝いていた床や花瓶なども落ち着いた色を取り戻し始めた。
舞台となる木製テーブルの上には、花瓶などを除いてなにも設置されていない。
しかし私達がそこを草原とすれば草原になるし、森とすれば森になるのであった。
今から演じるのは森の湖のほとりに佇む一軒の小屋に住む、可哀想な女の子のお話である。

「むかしむかし、あるところに、真っ赤なリボンの可愛らしい女の子がいました……。つまりあなたのことね」
ゆったりとしたリズムで、話の中身を語り上げる。
「その女の子は、お友達に囲まれ何不自由なく暮らしています。幸せな女の子でした」
ストーリーはのんびりと進んでゆく。全てが即興で、行き先は不透明だ。
人形の少女は私の語り口にあわせ、心の中で思い描いた役柄を演じようとする。
「しかし、その女の子は悪い狼に目を付けられてしまいました」
私はキャビネットの下段から木彫りの道具箱を取り出すと、その中にある15cmほどの長さの、大きなはさみを手にとった。
はさみは陽光を跳ね返しながら鈍く銀色に輝いており、その刃は紙を裁断するにしてはやけに鋭い。
人形の少女は、席を外した私をおとなしく待っている。瞳は物語の続きを待ち望んでいた。
壊したくなるような純粋な心。
私は要望に応えるために、はさみの刃を開いた。
「その狼は手足の欠けた女の子が大好きです」
素早く少女に近づくと、きらめくはさみをその左手の肘にあてがう。
戸惑うような表情、しかし私への固い信頼があった。少女の表情の曇りはすぐに消え去った。
私は一呼吸おき、少女が落ち着いてくれるまでの時間をとってあげる。

そして私は、鋭くあまりにも大きいはさみで、少女の左腕を切断した。

ぷちんというあっけない音とともに、左腕の肘から先の部分が飛ぶ。
切断された部分はころころとテーブルを転がって、やがでそばにある花瓶にぶつかることで漸く止まった。
人形の少女の顔は、冷水を浴びせられたかのように真っ青になっていた。
少女の切断面からは、体を制御するための細く赤い糸が何本も垂れ下がっている。
体全体のバランスが崩れて上手く歩けないのか、何もない場所で躓きながら、ちぎれた左手のもとへ走った。
左手の前でしゃがみこむ彼女の後ろ姿は、あまりにも悲しげだ。
人形は人のためのもの。鑑賞され、遊ばれるためのものである。
だから壊れてしまったいらない人形になることほど、彼女たちを震え上がらせるものはないのだ。
壊れた人形はいらない。その世の中の道理は人形の心にも染み付いているのである。

「ふふふ、どうしましょう。お手手が取れちゃったわね」
ちょこまかした悲喜劇に、私の口が勝手に笑い出した。
人形の少女は、信じられないものを見るかのような目で私を見上げている。
「これだけ妙な場所で切れたらもう直せないわね。どうしましょうか、……ふっ、ふふふふ」
笑いがこぼれてしまうので、私は口元を手でおおった。しかしお腹が笑い出し、やがて止まらなくなった。
今日は天気がいい、人形遊びにもってこいの、本当に愉快な一日だ。
「ふふ、ふふふふ」
大きなはさみを開いたり閉じたりしながら人形の少女に近づける。
彼女の瞳はその切っ先に釘付けになった。丸い舞台の上で、小さな体で必死に逃げ始める。
「左腕だけでは飽きたらない狼は、ふふふ、細く可愛らしい右腕をも切り落とそうとします」
私は一気に右腕を掴むと、肘から先を切断してしまった。一瞬のことである。
人形の少女は自分の右腕を守ろうとして、うっかりバランスを崩し転倒した。
起き上がれずにじたばたと暴れる彼女をそっと撫でる。
「ほらほら、綺麗な足まで無くなっちゃうわよ」
今度はやわらかな両足に狙いを定めた。彼女に声帯があれば既に泣き叫んでいるころだろう。
手足のない体で必死に立ち上がり、また走り始めた。
「ふふふ、頑張れ頑張れ」
私はテーブルの周りをぐるぐる周り、彼女のスピードにあわせ、もう少しの所で先回りしてみせる。
半狂乱になった少女はそのたびにあらぬ方向へ走り始めるのだ。
何度も何度も振り返り、いくら逃げても逃げ切れない。少女は演台で踊る人形に過ぎなかった。
その逃走劇を楽しんだ後、私はその小さな背中を強く押してしまう。すると彼女は簡単に平衡感覚を失い、転んだ。
倒れる少女のすぐ後ろにはあの大きなはさみが迫りつつあった。
私はスカートをめくり上げ、生のふとももを露出させると、そこに刃をあてがう。
「さあ、右足さんとバイバイしましょうね」
人形の少女は足をばたつかせようとして、最後の最後まで必死に抵抗していた。
あまりにも無力なお遊戯だ。幼く作られた彼女にまともな抵抗はできないのである。
私はかまわず右足を切断した。ちぎれとぶ破片、またころころと転がってゆく。
そして左足もすぐに同じ運命をたどった。

彼女は切断された四肢を使い、犬のようにちょこちょこと四足歩行をしはじめた。
この高いテーブルの上で、どこに逃げようというのだろう。私は少女の体を持ち上げた。
一気に引き寄せる。少女は私の顔を見て、全身をかたかたと震わせ始めた。
「どう? 私と遊ぶのはとっても楽しいわよね」
人形の少女は震えながらも、あらんかぎりの力で首を横に振った。髪の毛はくしゃくしゃに乱れた。
両手両足を壊された悲しみは深い。無理もない話だ。これでは人形なのだか"犬"形なのだか分からないではないか。
そう考えるとなんだか可笑しくなって、彼女の震えるを見ながら吹き出してしまった。
「ふっ、ふふふ、主がこんなに楽しんでるのに、どうしてあなたは楽しくないの?」
私は再びはさみの刃を開いた。
「そんな悪い子にはおしおきが必要ね」
そう告げると少女の表情から血の気が引いた。
私はためらいなく青と白のエプロンドレスを裁断し始める。
この子を作ってあげた時、一緒に新調してあげた彼女だけのドレスだ。
人形である彼女にとって、このエプロンドレスは体の一部のようなもの、手足と同じぐらい大切だった。
じょきじょきと、わざとらしく音を立てながらそれをバラバラに切り刻んでゆく。
人形の少女はもう私に逆らえないことを知っていた。
せめて現実から逃避するために、視界を遮断しようと、まぶたをぎゅっと閉じて震えている。
「あらら、じっどしていていいの? あなたのお洋服がばらばらになってるわよ」
人形の少女は私の手の平の中でぴくりと震えた。
脚側からの切り込みはとうとう首のあたりに達し、そしてドレスは布切れとなって、少女の体から離れていった。
今、少女の体を覆っているのは、小さく仕立てられたドロワースだけ。
「あら?」
人形の少女の瞳からは、小さい水の粒があふれ始めていた。
顔を真っ赤にしながら、瞳の周りは塩水でびしょびしょに濡れてしまっている。
「あらあらあら、貴女、涙なんて流せるのね」
高度に感情を持った人形は、髪が伸び涙も流す。
「最高よ、最高にいいわ。とってもかわいいわよ」
私はその涙を掬うように、舌を伸ばし少女の顔を舐めまわした。
舐められる感触が気持ち悪いのか、舌が近づくたびに顔を逸らそうとする。
そのうぶな仕草がまたいじらしくて、私は顔だけでなくうなじや耳の穴までも舐め尽くしてしまった。

露出した体、切断された両手足、断面から垂れ下がる無残な赤い糸たち。
そしてその全てを象徴するような、少女の悲しげな顔だ。
「あなたに声があれば、心地の良い悲鳴が聞けたのでしょうね」
無残な姿である。人形としての尊厳はほとんど破壊し尽くされていた。
「ふふふ、もう止めて欲しい? でもね、狼はこんなものじゃ満足しないの」
少女の心はすでに壊れかけていたかのように見えたが、ドロワースを脱がし始めると、
恥辱に耐えかねてか、またさかんに抵抗をし始めた。
残されたふとももの部分をきゅっと閉じて、すじ状の性器を隠そうとする。
とはいえ、手足の欠けた人形の抵抗なんて、ほんのスパイスにしかならない。
私はそっと足の間に指を入れ、鑑賞しやすいように無理矢理開脚させた。
「ねえ貴女、私がどうしてこんなところまで作ってあげたのか分かる?」
私はドロワースに隠された二つの穴を表面を強く揉むように撫であ。
その穴はあまりにも小さかったが、寸分たがわず少女の股間のミニチュアになっていた。
「それはね、こういう風に遊ぶためなのよ」
舌を伸ばし、人形の少女の性器をじっくりねっとりと愛撫しはじめる。
人形の少女は顔を真っ赤にして股を閉じようとするが、私は無理矢理そこをこじ開け、そのひだを吸い上げた。
私の涎で良く濡れたことを確認すると、人差し指を膣に、中指を肛門にあてがう。
円を描くように動かし、よくその部分を慣らしてゆく。
あまりに小さい穴であるが、今日という日を見越して、指までは入るように設計しておいたのだ。
「ふふ、処女喪失おめでと」
冗談めかした口調で私は言う。そして未成熟に作られた少女のそこに、二つの指を突き入れた。

人形の少女の体は、私の手の平の上で海老反りになり、またじたばたと暴れ始める。
だが、突き入れられた二本の指はあまりに深々と突き刺さっており、四肢もない彼女が抜けるわけがなかった。
「これじゃあまるで指人形ね」
私の二本の指は、彼女の穴にとって少々太すぎたようだ。
第一関節まで入れただけで、奥の奥までぎちぎちに詰まっているようである。
仮に彼女が人間であったなら、裂けて血だらけになってもおかしくないだろう。
私は突き入れた指を前後に出し入れし、時折穴の部分を舐め、滑りを良くしてまた挿入していった。
「レイプって知ってる? 知らないわよね、可愛い貴女が知ってるはずないもの」
少女はまたぽろぽろ涙を流し、顔を紅潮させながら暴れ始めた。
「今されているような事をレイプって言うのよ。とっても痛くて苦しいでしょう」
私は指を引きぬいて、大きなはさみを取り出し刃を開く。
今度は二つにわかれた刃の片方を膣に、もう片方を肛門に挿入し、先ほどのように前後運動をさせた。
冷たく鋭いそれは少女の中を痛めつけ、指よりもさらに苦しめ追い詰めていく。
そしてだんだんと反応が乏しくなり、時折跳ねるように痙攣するだけになると、さらなる刺激のために、私ははさみの刃を閉じた。
わずかな肉の抵抗があったが、やがて太いゴムがちぎれるようなぶちんという音がした。
それと同時に人形の少女の膣は肛門まで裂け、ぐしゃぐしゃになってしまった。
「ほら、貴女の大事なところが滅茶苦茶になっちゃったわよ。く、くくくくくっ……」
人形の少女はそこを見て言葉を失った。そして震えが止まり、全身の力が抜ける。
可憐な女の子の人形として作られ、事実そのように振舞ってきたこの子は、これをもって何もかもを失ってしまったのだ。
瞳はすでに意思を放棄しはじめていた。その表情はまさに、壊れた人形そのものであった。

私は最後の仕上げとして、少女の首にはさみをあてがった。
人形の少女はもはや抵抗を示さない。ただただ涙を流し、今を嘆いているだけである。
「首をはねたら人形でも死んでしまうでしょうね。怖いかしら?」
虚ろな瞳は私を見つめていた。恐怖・悲嘆・哀願などが混ざり合った感情の濁流が、私の中に流れ込んできた。
「ごめんなさいね。他の子たちに感づかれてもつまらないから」
それだけ言って、私は少女の首を切った。テーブルを転げてゆく首にもはや意思はなかった。
人形に宿った魂は、もはや人の形を失ったものに留まることができず、空気の中に紛れ霧消してしまった。

命を得た少女は、ただのモノになってしまった。
何年も一緒に暮らしてきた、お気に入りの人形である。
私は衝動的にテーブルに上り、人形の少女の残骸にまたがると、私の青いロングスカートを一思いにたくしあげた。
そして私はいつもの白い下着を履いたまま、小便を彼女にかけはじめたのだ。
黄金色の水流が小さい体に降り注ぎ、独特の臭いを立てる。
切り刻まれた服に、ちぎれた手足に、幼く悲しげな少女の生首に、おしっこがからみついてゆく。
温かなアンモニアの臭いで人形の少女が汚されていった。
人形の死への最悪の冒涜であった。体全体が打ち震えるのが分かる。
朝のすがすがしい太陽の光を浴びながら、私は絶頂した。

心地の良い体の震えは止まり、凶行の残骸のみが残されている。
キャビネットに飾られた人形たちは、仲間が欠けてしまったことさえ知らず、
いまだ陽光の中で、夢の奥底にまどろんでいた。
アリスさんの使う人形がたいてい幼女なのは、そういう性癖を持っているから
アリスさんが人形に爆薬を仕込むのは、きっとそういう性癖を持っているから
そうに違いない
おにく
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2012/02/16 16:04:41
更新日時:
2012/02/17 01:04:41
評価:
6/9
POINT:
680
Rate:
14.10
分類
アリス
上海人形
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1. 100 名無し ■2012/02/17 02:28:27
素敵な倒錯っぷり。
好きです。
3. 100 NutsIn先任曹長 ■2012/02/17 07:49:30
なんて素敵なご趣味でしょう。
自分の作ったモンだから、どう扱おうと勝手ですけれどね。
倫理的にアレですが、別に他人に迷惑かけているわけでもないですし。
ひょっとして、自律人形がいつまでたっても完成しないのは、アリスの所業に恐怖して真の魂が宿らないからか。
5. 90 名無し ■2012/02/17 10:34:26
アリスが人形を作る理由は前々から考えていたのですが、純粋な少女性というものを実現させたいからかもしれないな。
丑の刻参りだの胡蝶蘭丸の愛好家だったり、東方キャラの中でもアリスはどろどろ人間くさすぎる。そういう自分が嫌で完全無欠の少女を作ろうとしている。

それをいつまでも完成させられないことは、不完全な自分を再認識させられて、さぞイライラするんでしょうね。
変態性癖やら自分への願望やら破壊衝動を人形に投影しているような、色々考えられる話です。
6. 100 バルガス ■2012/02/17 20:21:40
人形に命。
性癖と言う需要。
凄いですね〜
このアリスさんならその辺の子を襲って声までつけそう!
是非俺の人形にm「貴様は歪んでいる!」何ッ!?
あァ…どうやらアニメを点けたままだったようです。
ともあれ、
センス抜群でした。本当にありがとう御座いました。
7. 100 名無し ■2012/02/17 20:36:25
綺麗な文章に綺麗な情景、まるで心が洗われるような場面が一転、
人形が嫌がり、楽しそうに残虐な行為を行うアリスに痺れてしまいました。
アリスの倒錯っぷりは自身の愛が業の如く深い様を表しているようでした。
8. 100 ギョウヘルインニ ■2012/02/28 21:49:51
きれいな文章で、すばらしい作品でした。
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