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『永久に続け、二輪の花』 作者: 天狗

永久に続け、二輪の花

作品集: 2 投稿日時: 2012/03/08 16:39:21 更新日時: 2012/03/12 02:01:19 評価: 3/6 POINT: 280 Rate: 15.25
 それはよく晴れ、日の光が木々に降り注ぐ穏やかな冬の朝。
一人の少女がいつもの様に、山菜取りをしていた。
「これだけとれば十分かな」
背にあるのは大切な籠、竹から作られたもので本人もいたく気に入っている様子である。
「喜んでくれるかな?」
空を見上げ、思い人の顔を思い出す。木々の隙間からこぼれる光に似てとても輝いているその人は、今日も自分の職に勤しんでいるのだろう。
「と言っても。子供たちは何言っているか半分は……いや、ほとんど理解していないのかもな」
 苦笑いを浮かべながら彼女は来た道を戻っていく――藤原妹紅、彼女は今日も一人だったが、その心は孤独では無かった。

 「以上で授業は終わりだ、気を付けて帰るんだぞ」
終業の時間となり子供達は先ほどとは違い、元気よく外に走っていきながら「先生さようならー!」と、元気よく挨拶して教室から消えていった。
「あれだけの元気を授業で発揮してくれれば良いんだがな」
やれやれと言った感じで書物も脇に抱え、奥の部屋へ行くその少女――上白沢慧音は職として教師をしている。と言っても、生徒達には理解できない事をスラスラと教えようとしてしまう為に、その授業は寝息がよく聞こえる授業となっていた。
「ふう、まあ元気ならそれで良いのだがな」
自分の座椅子に寄りかかり一息つくと、どうやら眠くなってきたようで、うつらうつらとし始める。
『昨日の戦闘の疲労か?』
 実は昨夜、付近の村に妖怪が二匹悪事を働きに来たのだが、その時能力を使いすぎたのか、今日は朝から疲れていたのである。
『少し寝るか…』
慧音はそのまま床に寝ころび、暖炉の聞いた部屋で寝息を立て始めていた。

 人間とはあまりかかわりたくない、何故ならいずれ来る早い別れに悲しみたくは無いからだ。
――不老不死、妹紅は蓬莱の薬という代物で死ねない体となってしまった。それからは、地獄の毎日だった。化物と恐れられ、好きだった人は自分より早くに年をとり亡くなっていく。
“死なない体”というのは、持ってない人からすれば夢の様な体かもしれない、だが彼女にとっての“死ねない体”は、もはや呪いでしかないのだ。
『けど、最近は気にしなくなったな』
 これもあの思い人のお陰だろうか? 妹紅は裏の林からその思い人の家に入っていこうとし、策をひょいっと乗り越え庭に入った。
家内は静かな様で、どうやら仕事は終わっているようだ。彼女はそのまま思い人の部屋に入ろうと引き戸に手をかける。
 「慧音、山菜分けに来たぞー?」
しかし部屋から返事は返ってこず、代わりに穏やかな寝息が聞こえてきた。
「なんだ寝ているのか?」
スヤスヤと寝息を立てている慧音は、同じ女である妹紅から見てもとても綺麗で、それでいて可愛らしさもある。
籠を傍らに置き、その表情を眺める。自然と笑顔になっていくのが分かっていく妹紅は、慧音の髪を手櫛で梳いていた。
女が女に引かれると言うのは如何なものかと初めは思った。けど、ここはだれでも受け入れられる世界、少し悲しい所もあるが、彼女にとっては良い場所だった。
「なあ慧音、お前は私の前からさっさと消えないよな? もうあんな事は味わいたくないんだ」
普段の気丈な顔では無く、子供っぽい顔で慧音にひとりでに語りかける。それでもいつかは別れが来ると言うのに、それを否定せずにはいられないのだ。彼女とは別れたくない、ずっと一緒にいたいと。
「ん…? ああ妹紅か、どうした? そんな顔をして」
声が大きかったのか、ゆっくりと目を開いた慧音は右手で、悲しむ子供の頬に手を添えた。その瞬間彼その子供の顔は一瞬で真っ赤に変わってしまった。
「け、けけ、慧音! お、おはおはよう! ん? こんにちはか? ああ! いや、ええと!」
慌てふためく友を見て笑いが抑えらず、クスクスと笑ってしまう。彼女は確かに何年もの時を生きてきた、しかし一人で生きてきたせいなのか、こういう時は子供っぽくなってしまうのだろう。そこが、また良いのだけれど。
「落ち着け妹紅、それで? 今日はどうしたんだ?」
佇まいを直し、妹紅も同じ様に座椅子に座らせる。落ち着きを取り戻してはいるが、まだその顔をはほんのりと赤い。
「ああ! 山菜を取り過ぎたから分けに来たんだよ!」
「取り過ぎたって、その大きな籠の半分くらいまでしか無いのに取り過ぎたのか? なら、前みたいにそれより一回り小さいのを使えば…」
「い、良いだろう別に! この籠が気に入っているんだ!」
そうか、と自然と笑みが浮かぶ慧音。あの籠は、小さな籠しか持ってなかった妹紅に私がプレゼントした物だったな、と思い出していた。
「何だよ、いらないのかよ」
「いや、いるよありがたく分けて貰うよ妹紅」
こういう時の妹紅にはこういう風に返した方が良いと学んだ慧音は、奥の部屋から小さな籠を持ってくると、それを妹紅に手渡した。
「それじゃあ、今日は二人で食べようか。それに二人分入れておいてくれないか?」
「へ? あ、ああ分かった」
受け取った籠に嬉々としながら山菜を乗っけていく、“二人で食べる”という言葉を聞いて嬉しかったのだろう、鼻歌交じりに彼女は作業をしており、その姿を眺めながら慧音は書物を片づけ、こう思っていた。

『今日も良い日だ』と。


 「ごちそうさま」
妹紅の持ってきた山菜と、昨日の残り物を合わせて出来た昼食を食べ終わり、二人は満足していた。慧音は台所でお茶を二つ入れ持ってくる、和食を食べた後に飲む熱いお茶はまた格別で、それだけで一息つける飲み物。これを生み出した人物に感心しながら、慧音は飲んでいる。
「なあ慧音、今日はこの後暇か?」
「ん? ああ、本でも読もうと思っていただけだからな、特に予定は無いぞ」
「そ、そうか!」
すると妹紅は嬉しそうな真っ赤な顔でニコニコしている。今日の妹紅は何処かおかしい、慧音はそう感じていた。なんというか、まず顔が赤い。それに妙にそわそわしているし。
熱でもあるのだろうかと思った慧音は妹紅に近づき、額に手を置く。
「け、慧音!? な、何を」
「いや、熱でもあるのかなと思ったんだが……ふむ、平気そうだな」
「ね、熱なんてあるわけないだろ!」
「あれ? 少し上がったな」
 妹紅はからすれば、思い人の顔がすぐ傍にある、こんな状況が目の前にあるのに動揺しないのは無理と言うものだ。胸のドキドキが止まらない…まさに富士山ヴォルケーノ一歩手前と言ったところだろう。
「あまり体調がよくないならゆっくりした方が良いぞ?」
「あ、ああ。分かったから離れてくれないか?」
「む……」
その言葉が気に障ったのか、慧音は離れることなく次には妹紅の頭を撫で始める。
「妹紅は可愛いな」
「かわ! いきなり何言って! ん!?」
一瞬だった。頭を撫でていたかと思うと、二人は急に唇を付け会っていた。接吻――キスをしていたのである。
「ん! …けい…ね!」
妹紅は慧音を離し、距離を取る。何が起こったのかを段々とはっきりさせ、顔は紅潮しワナワナと震え始める。
「ん、嫌だったか?」
一方慧音はいつもと変わらぬように見えるが、その方は少し赤く、妹紅に近づく。
「いや…じゃない」
「そうか…」
するとまたキスをし始める。今度は優しく、二人は小鳥が突き合う様にする。今度は妹紅は逃げず慧音に抱きつき、自分からもしようとする。
「ん、ふ、ふぁ」
「もこう…ん、チュ」
どちらともなく床に倒れ、横向きになりキスを続ける。やがて、優しいものは段々と激しくなっていき、部屋には淫靡な水音がピチャピチャと響き渡る。
「ちゅ、んー、はぁ」
「ん、もこう? くち、あけて?」
「ふぇ? くち、んん!?」
妹紅が少し口をあけると、そこから何かヌメッとしたものが入ってくる――慧音の舌である。最初は妹紅の舌を優しく舐めとり、唾液を奪っていく。しかしやがて、舌だけに留まらず、上顎、歯茎、舌の裏、色んな所に舌を這わせ始めた。
「んん、ちゅる、はぁふ、ん」
「じゅる、ん、こく、もこうの、唾液、おいし…」
「慧…音…」
 やがて慧音だけでなく、妹紅からも積極的に舌を絡め始める。部屋に響く音は激しく大きくなり、外に聞こえるほどである。だが幸いこの時間は、人通りが少ない。
そろそろと、二人は顔を離す。妹紅はトロンとした顔をしており、魂此処にあらずいった感じで、息だけが荒く繰り返される。
「妹紅、平気か?」
「はぁ、はぁ、ふぁ? うん」
「すまないな妹紅、我慢できなくなってしまったんだ」
「ガマ…ン?」
「ああ、私はお前が好きだから、あんな可愛い姿を見せられたら我慢出来なかったんだ」
「慧音が、私を?」
「大丈夫、私はお前の前から勝手に消えたりはしないさ、安心しろ」
「うん、ありがとう慧音、だいすき」
 それを聞いて安心したのか、妹紅は目を閉じ寝息を立ててしまった。その顔に悲しみは無く、ただ安堵の表情が浮かんでいた。
「ちょっとやりすぎたか、まあいいお休み妹紅」
妹紅に膝を貸し、頭を撫でる。今まで隠していた自分の気持ちをさらけ出した事によって、慧音は抱えていたものがフッと無くなった事に気付いた。
『一人にしない…か、そうだな。私が生きる限り妹紅を一人にする事はない。それに、私のこの能力を使えば……呪いを解く方法もあるかもしれない』
きっと一人にはしない、絶対に。新たな思いを胸に秘め慧音は妹紅を見つめる。その顔は未だ幼い子供のままだ、自分が一緒にいないとな、と。

「本当なら、キス以上もしたかったが…まさか寝てしまうとは。それだけ初なのか、それとも安心して気が抜けたのか」
 心だけが一つではない、これからはいつも一緒だ。

 
 「さてこれで良しっと!」
空は既に赤みを帯び、夕刻となっていた。
ここはとある天狗の住まい、彼女は束になった紙を掲げ満足な表情を浮かべている――射命丸文である。彼女は、幻想響いちのブン屋。掲げているのは新聞のようで、そこには大きく見出しにこう書かれている。
【スクープ! 寺子屋の先生、上白沢慧音と藤原妹紅の熱愛発覚!】と、キスをしている写真と共に書かれていた。
「よーし、早速配りに行きますか!」
文は颯爽と宙を飛び最速最高の早さで、まずは永遠亭に向かった。
「こんにちはー! 清く正しい射命丸です、新聞お持ちしましたー」
「あ、ご苦労様です……随分と穴の多い新聞ですね? 今日は」
「え? ど、どういう事ですか!」
新聞を受け取った因幡――優曇華院はそのまま大きな空白を見せる。そこには何も書かれておらず、ただ真っ白な紙があるでけである。
「あれ! 確か書いた筈ですよ! 大きなスクープの……なんでしたっけ?」
「私が知るわけありませんよ」
「あれー?」
優曇華院に呆れらながら、必死に思いだそうとするが思い出せない文。何か凄いスクープを書いた筈なのだが……まるで、“最初からそんな歴史が無かった”かのような感じがしたのであった。

 「まだまだ甘いな、射命丸文。私はそこまで証拠を残すほど甘くはないよ」
永遠亭に書物を届けに玄関にいたのは慧音、不敵にクスクス笑いながら文を見る。
「うーん、思い出せませんねー」
「あの、もう帰ってもらって良いですか? 掃除がしたいので」


今日も幻想郷は平和でした。
どうもお久しぶりとなりますか、天狗です。
初めましての方は、初めまして
本来ならば、「学は友、恋は敵」の続編を出すつもりでしたが
先に此方を投稿しておきました。
しかし、こちらはそこまで見直していないので
誤字脱字や、違和感等もあるかもしれません。
その際は、申し訳ありません。

少し気になったのが
私の作品をここに投稿して良いものなのかと思います。
何か、問題がありましたら
よろしくお願いします

ではまた、誰でも受け入れる幻想郷で
御逢いしましょう。
天狗
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2012/03/08 16:39:21
更新日時:
2012/03/12 02:01:19
評価:
3/6
POINT:
280
Rate:
15.25
分類
慧音
妹紅
もこけねならぬ、けねもこ
短編
微エロ
3月12日コメ返し済
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POINT
1. 80 NutsIn先任曹長 ■2012/03/09 02:21:41
けねもこ、良いね。
ブン屋さん、人の恋路を邪魔しちゃあ、いけませんぜ。

私も、よくヌルい作品を投稿しますので、こういう平和的な作品も投稿して宜しいのではないですか。
2. 100 博多ぷくぽん ■2012/03/09 04:34:10
いいですねー
平和で、あのー、その、なんとゆーか、純愛な感じがいいです(焦
3. フリーレス 名無し ■2012/03/09 16:21:19
平和だ…!
4. フリーレス 名無し ■2012/03/10 00:01:10
規約さえ守れば問題無し!
正直のところ作者さんが 何を求めるかです。
5. 100 名無し ■2012/03/11 12:50:13
人の恋路を邪魔する奴は馬に犯され死んでしまえ。
こういう一線を越えないけれど、一線を越えても問題ない関係が良いですね。
二人には幸せになって欲しいですね。
6. フリーレス 天狗 ■2012/03/12 02:00:20
皆さんこんばんは、作者の天狗です。
まずは読んでいただきありがとうございます
あまり修正をしていない作品なので
誤字脱字も多かったと思います、すいません。

それで今後の事ですが
これからも私はここに投稿していくつもりです
加えて、リクエストなんかも受けていきたいと思います
私自身、グロ系も書けなくはありませんが
やはりこういう感じの物語が性に合っているので
なるべくこのスタイルでいきたいと思います。

次回の投稿は3月13日の昼ごろになると思います
『学は友、恋は敵』の続編となります
こちらを先にお読みになっていただけると嬉しいです。

それでは、またお会いしましょう。
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