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『かわいいは罪』 作者: おにく

かわいいは罪

作品集: 2 投稿日時: 2012/03/08 18:34:34 更新日時: 2012/03/09 03:34:34 評価: 11/15 POINT: 1120 Rate: 15.27
ガラス張りの窓越しに、さんさんと輝く森の樹木を見ながら、アリスは鼻歌を歌っていた。
高くなめらかな人形裁判のメロディが聞こえる。今日の彼女は機嫌がよい、いや、むしろ浮かれているといってたほうが正確だった。
先程配達された新聞で、漸く外の世界で行われた第九回東方人気投票の結果を確認したのだ。
前々から噂では聞いていたが、自分で結果を確認すると、喜びもひとしおである。
社交的でもなく、一人でいることの多いアリスであっても、自分の人気は多少気になるのだ。
そして、単純にかわいいと褒められて、悪い気がするほど捻くれた性格はしていなかった。
「へへへ、私なんて、そんなに可愛くないのにねぇ」
そう上海人形に語りかけ、一人謙遜してみせているが、にんまりとした表情からは嬉しさが溢れており、まんざらでもない様子が伺える。

しかし、その喜びに水を差すように、ガンガンと粗暴なノックが家中に響く。
アリスは眉をひそめた。こんな不躾な訪問者に心当たりはなかったが、居留守をするわけにもいくまい。
わずかに苛立ちながらもすぐに玄関に向かう。その間にも二度三度とノックは続けられた。
「はいはい、どちら様?」
わずかにドアを開くと、和服を着込んだ屈強な男が、四人ほど家の前で直立していた。
いずれもアリスより頭一つ分は大きい。腰には刀まで帯びており、その視線にはわずかな油断もなかった。
ドアが乱暴に開けられる。そして一瞬のうちにアリスの両手首が縛られ、わずかな抵抗もできなくなってしまう。
「ちょ、ちょっと!」
恐怖を感じ、アリスがあげようとした反抗の声は、別の声により遮られた。
「アリス・マーガトロイドだな」
写真とアリスを見比べながら、男の一人が頷く。
「かわいいは罪の容疑で逮捕する。拒否権はない。同行してもらおう」

そうしてアリスは、あっという間に裁判所にまで連れてこられてしまった。
いや、実際にはそれなりの時間がかかったのかもしれないが、あまりに混乱していたため、アリスには時間の感覚がなかったのだ。
彼岸に位置する裁判所は、シックというより恐ろしいという表現が似合うほど薄暗い場所であった。
もちろん、書類を読む関係からか、法廷では十分な明かりが灯され、視界は確保されている。
ただ、アリスにとって、このような明るい法廷は居心地の良いものではなかった。
ひしめき合う傍聴人や、厳しい目つきで見下ろす裁判官たちの視線が、痛いほど突き刺さってくるからだ。
このような場所の孤独ほど辛いものはない。アリスは弁護人もなく、一人で法廷中央にある被告人席に立たされている。
もちろん両手を縄で縛られたままで、その上、刀を帯びた男が二人も傍に控え、アリスの行動を見張っていた。
「あれが、アリス・マーガトロイドか……」
「確かに結構かわいいな」
そんな好奇心に満ちたざわめきは、裁判官が着席し終える頃にはすっかり落ち着いていた。
裁判官の代表として中央に陣取るのは、四季映姫・ヤマザナドゥである。
「これから、被告人アリス・マーガトロイドの裁判を始めます」
幻想郷裁判所のトップは体こそ小さいが、言い知れぬ威厳を備える。その一言で、法廷が緊張に満ちた。

その沈黙を破るかのように、被告人席右手に居る検察官の一人が、手元の書類を読み上げ始める。
「被告人アリス・マーガトロイドは、美容に関する情報を集め実践を繰り返した他、鏡を頻繁に覗き、あざとい仕草を研究するなどして、、
 基準値をはるかに超えるかわいいを追求した。また、それに飽きたらず、外界に存在するMMDという幻術を弄することによって、
 人心を大いに惑わし、第九回東方人気投票にて、前例のない好成績を残した」
アリスはもう、何がなんだか分からなかった。なぜそんなことで裁判を受けなければならないのかと、叫びたかった。
しかし裁判所の重苦しい空気は、アリスの勇気を握りつぶすのに十分だった。読み上げが続けられてゆく。
「以上、諸般の事情とかわいいは罪の法理を以って、被告人を死刑に処するのが相当であると考える」
傍聴人席がざわめく。
「まだ若いだろうに、死刑とは気の毒にねぇ」
「いや、自業自得だろう。あんなに可愛いんだから、死刑で当然だ」
当のアリスは固まっている。これは夢か、なにかのドッキリか、冗談なのではないのか。
透き通った青い瞳で、裁判官たちを見上げる。中央に陣取る裁判長は、とても冗談が通じる人間には思えない。
「あ、あの」
「何か?」
「これ、冗談よね? まさか、かわいいは罪って、そんなことで死刑になんて……」
傍聴席のざわめきは、ますます大きくなった。検察官は眉間に皺を寄せ、裁判官たちはため息をついた。
裁判長の四季映姫は特に失望しているらしく、暗く怒りに満ちた瞳で、アリスを見下ろす。
「これだけのことをして、罪の意識がないというのですか、あなたは!」
机に拳が叩きつけられる。アリスの背筋は、ドライアイスが敷き詰められたかのように冷たく凍ってしまった。
恐怖のあまり声が出ないどころか、指先ひとつまともに動かせなくなってしまったのだ。
「……失礼しました。証人を呼んでください」

傍聴席の後ろからぞろぞろとやってくるのは、みなアリスの知り合いばかりであった。
「確かにアリスはかわいいを目指していたわ。神社にやってくるときも、よく人形自慢をしていたわ」
「永夜抄の時はバッチリ化粧をきめてて、別人かと思ったぜ。多分、計画的にかわいさをアピールしていたな」
「守矢の信仰が落ちたのは、アリスさんのせいです! ぐす、一刻も早く死んでください!」
「あの金髪は相当な時間をかけて手入れしているわね。かなりの執着がなければ出来ないことだわ」
その誰もがアリスの死刑を支持してゆく。そこには一切の容赦がなかった。
「そ、そんな……、なんで、どうして……?」
目の前がかすんで見える。涙だった。目尻からひと粒、またひと粒と涙がこぼれている。
「決まったようなものですね。まぁ、証人を呼ぶまでもなく、物的証拠は揃っていましたが……。
 結局は、より悪質な常習犯であることが分かっただけでした」
裁判長映季は、こほんと咳払いをした。
「求刑通り、被告人アリス・マーガトロイドを死刑に処します」

「離してっ、離してよおっ!! こんなのってない!!」
処刑はそのまま法廷の中で行われることとなった。
射命丸文を始めとする天狗記者たちが、こぞってビデオカメラを取り出し、今か今かとその瞬間を待っている。
「嫌ぁああ! どうしてぇ、なんでこんなことで死ななきゃいけないのよぉ!!」
アリスは顔を真赤にして泣き叫んでいた。逃げ出そうともがき、涙と鼻水で顔をべたべたにする様子は子供のようであった。
血まみれの斧を持った処刑人を見たなら、当然の反応であるといえたが、屈強な処刑人の力に逆らうことは不可能である。
「あ゛あああぁぁああ!! 誰かあ゛ああああッ!!!!」
「くそ、大人しくしてろこの犯罪者がっ!!」
それでもアリスは体をくねらせるなどして、出来る限りの抵抗を試みた。それでなんとか微かな時間を稼ぐことはできた。
しかし、やがてはわずかな身動きもしないよう地面に抑えつけられ、傍聴席の前にある処刑台に固定されてしまった。

処刑方式は、斧で首を切り落とすというものだ。前時代的ながら派手で見応えがある。
もちろん、される側はたまったものではない。アリスは汗まみれになり、屠殺場へ連行される豚のように震え切っていた。
「アリスさん! どうですか、死刑になった感想は?」
「あ、あひぁ、死にたくない、死にたくない……」
射命丸文が、縛られたアリスにすかさずマイクを向ける。他の記者も、我も我もと近づいてくる。
だが、録れたのは結局、そんな命乞いめいたつぶやきだけなのであった。
「ほら、離れて離れて。あまり近づくと、こいつと一緒に首が飛ぶよ」
記者たちはしぶしぶ散ってゆく。1メートルほど離れ、そこからカメラを構えている。
そうして、アリスの細い首の付け根に、冷たく血生臭い斧があてがわれた。
「ひっ……!!!」
アリスは地面に押さえつけられたまま固定されており、視線は地面の方を向いている。
だから、斧が今どこにあるか、首がいつ飛んでしまうか、全く分からない状態のまま怯えるしか無いのだ。
ヒントになるのは、傍聴席の人々や、記者たちの好奇心に満ちた顔のみである。
そしてあてがわれていた斧がそっと外された。
「嘘、こんなのうそよぉ……、もう、やだぁ、お母さん……」
アリスの歯がカチカチと鳴る。恐怖のあまり失禁し、そのドロワースは黄色に染まり始めていた。
「許して、許して、もう、でしゃばりませんからぁ……!」
ぼろぼろになったアリスを、誰も助けようとしない。
「ごめんなざい、ごめんなざいぃ……」
そしてあまりにも大きい斧が、アリスの首に振り下ろされた。
カシャカシャと鳴るシャッター音、アリスの首はあっけなく体と別れ、最前列の記者の前にころころと転がってくる。
その表情には驚きと苦痛があった。斧が首に食い込んだ瞬間、想像を絶する痛みがあったに違いない。
主を失った胴体は、拘束を外すと力なく崩れ落ち、断面からは赤黒い血がびしゃびしゃと噴き出し始めた。
緩んだ肛門からは便が漏れ、尿と混じり合って、鼻の奥を刺激するような強い悪臭が立ち込め始める。
その様子は、アリスという生き物の命が終わったことを如実に示していた。

2012年3月8日、午前11時9分34秒(幻想郷標準時)、こうしてアリスは息を引き取ったのである。
あんなに殺されまくっていたアリスさんが、最近はのほほんとしていることが多いっぽいので、
溜まりきった欲求がこういう形で現れてしまうわけですね。

アリスさんの死体は一点ものの肉便器になり、裁判所の福利厚生に使われることになりました。
おにく
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2012/03/08 18:34:34
更新日時:
2012/03/09 03:34:34
評価:
11/15
POINT:
1120
Rate:
15.27
分類
アリス
かわいい
死刑
第九回東方シリーズ人気投票
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POINT
0. 60点 匿名評価 投稿数: 3
1. 90 塩昆布 ■2012/03/09 04:41:49
ん"ん"ん"ん"ん"ん"!!!
これぞAlice☆shineと言いたい所だが少しtasteが違う…かな
…うん。可愛いは罪だね!
2. 100 NutsIn先任曹長 ■2012/03/09 07:16:28
罪には罰が付き物。
分不相応な順位を取ったばかりにこんな事に……。

ちなみに、この罪状が適用されるのは、ほんのひと握りの者だけでしょうね。
上位の常連さんは当然、適用外です。むしろ告発者。
3. 100 糞団子 ■2012/03/09 12:34:29
命乞いをして泣き叫ぶ時が一番そのキャラが可愛く思えてしまう。
4. 100 名無し ■2012/03/09 20:02:36
転落とその末路。いいわぁ…
5. 100 名無し ■2012/03/09 23:27:59
おまえは可愛くなりすぎた
8. 100 名無し ■2012/03/10 09:22:18
ああ、アリス・・・
可愛過ぎたばっかりに・・・
9. 90 ローゼメタル ■2012/03/10 12:26:59
^^
10. フリーレス 名無し ■2012/03/10 15:11:57
>「へへへ、私なんて、そんなに可愛くないのにねぇ」
まだ足りないと考えてるらしい。さすがは死刑囚欲望は底なしだな。
11. 100 名無し ■2012/03/11 12:53:45
上位を取っても順位が下がっても同じ運命、これぞアリスって感じですね。
12. 80 名無し ■2012/03/11 13:17:15
そういえばアリスで斬首ってレアだなあ(そこかよ
13. 100 ギョウヘルインニ ■2012/03/25 18:06:59
この自体になるまで放置していた証人たちも皆連帯責任ですね。
15. 100 レベル0 ■2014/07/16 13:45:00
こんな罪いらんわwww
アリスがあまりにも不憫だ
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