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『さわやか幻想郷』 作者: box

さわやか幻想郷

作品集: 4 投稿日時: 2012/06/29 11:14:06 更新日時: 2012/07/02 22:03:18 評価: 8/10 POINT: 840 Rate: 15.73
「こいし様、こいし様、」
「何?お空。」
「邪気眼ってなんですか?」

こいしは黙って、姉を指差した。

今日も地霊殿に悲鳴が響く。



・・・・・・



<いつも通り>

「私の話を聞いてください。」

聖の、真水のせせらぎのような声が、命蓮寺本堂に響く。

ナズーリン。
雲居一輪。
村紗水蜜。
寅丸星。
封獸ぬえ。
幽谷響子。

命蓮寺に所属する全ての妖怪が、聖の陰鬱な表情を食い入るように見つめていた。

「懺悔します・・・・」

「私、白蓮聖は・・・」

一瞬の間を置いて、唇が動く。

「仏教を捨て、改宗しました。」

震える肩。
固く、頑なな拳。
重い、沈黙が流れる。

弾圧と罵声。
非難と失望。
それを思い、聖は静かに目を閉じた。


「・・・ご主人、みんな、聞いてくれ・・・」

一瞬、かつ永久に等しい時間。
最初にそれを破ったのは、意外にもナズーリンだった。

「・・・実は、私も一月前から・・改宗してたんだ。」

瞬間。
命蓮寺に、電流走る・・・!

「ナズーリン・・・」

次いで堰を切ったのは、星であった。

「実は、私も・・二ヶ月前から・・・」

されど。
聖の表情は、重い。
自分だけではない。
部下まで揃って、背徳を犯してしまったのだ。


だが、しかし、

「きき、気にすることは無いよ!」

なけなしの元気をぶつけた響子の叫びが、堂内に響く。

「私だって、面倒で、つらいから、二週間前に・・・」

命蓮寺は、仏の下に妖怪が集まったのではない。

誰もから愛される存在、即ち白蓮聖の下に集まった集団なのだから。

そっぽを向きながら、ぬえ。

「も、元々別に、大して仏教信じてた訳じゃないけど、半年前から止めてるよ」

雲山を携えながら、一輪。

「私だって、雲山だって、端から仏のためじゃなく、姐さんのためにいるんです!とっくに改宗してますよ!」

聖の手を取りながら、水蜜。

「あなたも、私も、みんなも、揃って同罪です。聖。」

「・・・・・・。」

再びの。
沈黙。

聖は、頷いた。

「・・・やはり、私達は、」

「私達は、仏などに従わなくても、一つだったのですね・・・」

と、聖は立ち上がる。
呼応するように、その場にいる全員が立ち上がった。

「作りましょう!新たなる神の御所を!命蓮神殿を!」

「唯一神、アッラーの名の下に!」

「アッラー神の加護あれ!イスラム教に光あれ!」

新たな信仰への誓いが、大合唱となされて響く。

命蓮寺、もとい命蓮神殿の、新たな船出であった。




全身の全て、余すところ無く汗をかきながら、ぬえは思う。


―――――私、イスラムじゃなくてカトリックなんだけど・・・・




ナズーリンもまた、歯を細かく鳴らしながら、思う。


―――――統一教会のために借金してたのがバレたら、どうしよう・・・・


今日も命蓮寺は、いつも通りであった。




<<妖夢vsちくわ>

桜の花が散っては咲き、咲いては散る。
冬を越したと言うのに、その風景に何ら変わりはなかった。
気まぐれに降り積む粉雪が、艶やかに舞う花びらになっただけなのだから。

「「・・・・・・、」」

しかし。
そこに座する、二つの影があった。
桜の海の中を、戦でもって血に染めんとす者たちが。
質量のある覇気をたぎらせ、相対していた。
そう、彼女達は、

「西行寺家、剣術指南役兼庭師、魂魄妖夢だ。」

半人半霊の庭師、魂魄妖夢。

そして、

「・・・・・・・。」


ちくわ。


ちくわ。

「・・・・これから切り結ぶ相手に、かける言葉はいらんとするか。」

ちくわに対しそう言い捨てると、妖夢は刀に手をかける。
魂魄家代々の魂を吸った刀。
白楼剣、楼観剣。
ある種の芸術性すら持つ白刃の煌めきが、妖夢の手の中に収まる。
妖夢は、構えた。

「いざ、尋常に・・・!」


風が、止まった。
音も、光も。
空気も、そして花も。
三千世界全てが、一様に止まる。

戦の基本。
それは、間合いの駆け引き。
構えながらの、微動だにしないぶつかり合い。
互いに構え、相手の呼吸を、鼓動を、生命を、感じ、読む。

相手の隙を見誤れば、死ぬ。
隙を見せても、死ぬ。

沈黙が、火花を散らす。


―――――こいつ、

出来るっ・・・!


妖夢の既に砂漠のような喉が、音も無く鳴る。


―――――あの構え、一見すると甘く弱々しい。

だが。

微動だにしないどころか、震え一つ起こしていないッ


妖夢の張り詰めた鼓膜を、彼女自身の鼓動が打つ。
冬が明けたばかり、まだ僅かに冷たい空の下。
摂氏15度の中、汗の味が妖夢に染み込んだ。

「「・・・・・・・。」」

変わらずの、沈黙。
妖夢から響く、エナメル質同士の擦れる音。


―――――動かぬ、ならば、

こちらから仕掛けるまでッ!


瞬間。
静かの海は、割れた。

「あああああああッ!」

楼観剣を握る腕が、振り上げられる。
同時に、いや、既に妖夢は駆けだしている。
真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに、敵へと。

ちくわへと。

そして、楼観剣もまた、振り下ろされた。
真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに。


風の悲鳴が、響き―――――――


「・・・・・・・」

―――――楼観剣は、裂いた。
無機質な大地を。
虚空の場所を。

「・・・・・・・」

必殺の一撃から奇しくも逃れたそれは、変わらぬ焦げ茶色のまま、悠然と座していた。

地に深く突き刺さった楼観剣の隣り。


ちくわ。

「・・・・・・・」

妖夢はそれを一瞥した。
そして、何かを悟るように頷くと、楼観剣を鞘に納めた。

「刹那たりとも隙を見せぬ構え、そして剣を交えずとも、剣客の闘気をかき消すほどの覇気・・・・」

妖夢は言葉を切り、白楼剣もまた鞘に納める。
さらに、二本の刀を地面に置いて正座をすると、低く頭を垂れた。

「参りました、どうか私を、弟子にしてください」


「あら、ちくわね」

ちょうど散歩をしていた幽々子は、ちくわを素早く拾い上げると、一口で食べた。




<紅葉狩り>

幻想郷に秋が来た。
夏の若草達は思い思いに化粧を始め、紅葉のグラデイションが舞い、自ら舞台を作る。

紅葉狩りの季節である。

『悲しみの秋』と言ったのは誰だったか。
名も無き詩人か、それか営利宣伝に余念の無い企業の物かは、今となっては我々には知りようも無い。
ただここでの論点は、そんなことではない。

『悲しみの秋』、まさにそれがそれだったことである。

「ィヤッホホウ!!椛だ、椛!」

秋も深まる、妖怪の山。
紅、黄、茶、山の描いたボディアートの上を、芸術性の一切を排除した、鋼の野獣――――――サバイバル・ジープが風を切って踏み荒らしてく。
上がる爆音。
助手席に立ち、M60軽機関銃を片手にサディスティックな雄叫びをあげる、文。
その表情は、元々の端正な顔立ちをひしゃげ、歪め、悪趣味な芸術と化していた。

それらに恐怖を覚えた椛の群れは、本能のままに逃げ惑い始めた。
親椛も、子椛も、じいさん椛も、ばあさん椛も、皆一様に。
だが、逃げる様も皆一様であれば、死に様もまた皆一様であった。

「ヒャッハー!椛は消毒だー!」

そんな、狂気に満ちたつんざきと共に。
M60軽機関銃の重いはずのトリガーは、意図も容易く、えげつなく引かれた。

じいさん椛は、気付けば首から上が吹き飛んで、死んだ。
親椛は、子椛を庇おうと覆い被さったが、鉛弾の強襲には塵に等しく、子椛は親椛諸共全身を雨に打たれて死んだ。
脇腹を撃たれ、地面に突っ伏しながら泣き叫んでた小二椛は、自分勝手極まりない中二椛に肋骨を踏み砕かれ死んだ。
中二椛は小二椛を「障害物」としか認識していなかったが、次の瞬間には心臓を貫かれて、自分も障害物の一つとなって死んだ。
社畜椛の脳裏には一瞬、いつも約束を破ってしまった子椛の姿がよぎった。だが、それが網膜に焼き付く頃には、網膜その物が無くなって死んだ。

誰かが誰かの名を呼び、死んだ。
死んでいった。

「クハハハハ!あと何匹かなぁ、椛ちゃあん!?」
「待って、文、あれは・・・・」

運転手のはたてが、その台詞を最後まで言うことは無かった。
そしてこれからも無い。
八○○米先に発見した敵影より先に、そこから放たれた銃弾が、はたての下を訪れた。

「はたてがだと!?」

隣で肉塊が生まれた音を捉え、文は驚愕する。
しかし、遅い。
運転手を失ったジープはそのままの慣性のまま木に激突。
文もまた、血と肉で塗りたくられた絵画の一部となった。



「・・・・・・。」

敵の天狗が死亡したのをスコウプも使わず確認すると、軍人椛のモミ・バシリは、音もたてずに愛用のモシン・ナガンボルトアクション式ライフルを下ろした。

「・・・・・・・。」


―――――まただ。

また、守れなかった。


しかし。
モミは、何もしない。
溜め息はおろか、一筋の涙も流しはしない。

そんなことをしても、彼女の同朋は戻ってはこないのだから。

「・・・・・・・・・。」

一二○○米先に新たな敵影を確認すると、モミは再び、モシン・ナガンを構えた。


悲しみの秋。
紅葉狩りの季節は続く。




<愛と勇気>

星熊家の財政は火の車だった。
八割は勇儀の酒飲みが災いし、残りの二割はパルスィの嫉妬による揉め事の示談金が原因である。

もはや米一粒買う金もないまま、少しでも空腹をしのごうと、二人は狭い小屋の中で身を寄せ合っていた。

「・・・パルスィ・・。」

いつになく弱々しく、勇儀が口を開く。

「お腹、空いてないか?」

明らかな愚問が、こじんまりとした一部屋の小屋に響く。
パルスィは肩を寄せながら、勇儀の方を見ずに言った。

「・・・妬ましいわね、人の心配が出来るなんて・・・あいにく、空いてるわけないわ」

しかし。
その言葉を紡ぐ唇は艶を失い、いつもはほのかな桜色の頬も、今は死人のそれと大差無い。



パルスィは嘘をつくとき、相手を見ない。

相変わらずだな、と勇儀は薄く笑った。


勇儀は、もう一度パルスィを見た。

そして、彼女自身の立派な一本角に手をかけると、刹那ほどの躊躇いも無く、角を千切った。

中にぎっしりとこしあんの詰まった香ばしい香りのそれを、勇儀はパルスィに差し出した。

「食いな。」


「・・・・・・・・、」

パルスィは、何も言わなかった。
言えなかった。
だが、数秒もすると我に返り、見開いてた目を元に戻す。

パルスィは、もう一度視線を逸した。

そして、彼女のチャームポイントである尖った両耳に手をかけると、一瞬で、千切り落とした。

中にぎっしりとつぶあんの詰まった甘い香りのそれを、パルスィは勇儀に差し出した。

「・・・・・別に、あなたなんか・・・。」

勇儀は、パルスィをひしと抱きしめる。
耳の無い橋姫は、赤面した。




<鳥>

ミスティア・ローレライの屋台は、毎日大繁盛である。
満月が南中する頃にもまた、新たな客が訪れる。
自棄酒で足下もおぼつかない、魔理沙であった。
魔理沙はカウンターに倒れ込むように座った。
おそらく、自分が何をしてどこにいるかすら、わかってはいない。

「ご注文は?」
「・・・・カワとモモを二本づつ」
「はい」

ん?と魔理沙は首を傾げたが、すでにミスティアは違う客の所に行っていた。



「あれ?みすちー、それどうしたの?」
「うん、ちょっと、ね・・・」

常連であるチルノに問われたミスティアは、恍惚とした表情で、足の包帯を撫でた。

「ところでチルノちゃん、注文は?」
「レバー!」
「うん、ちょっと待っててね・・・」




<そーなの化>

西暦二XXX年。

幻想郷を、大いなる禍、『そーなの禍』が襲った。
ルーミア目そーなの科に属する謎の生物『そーなの蚊』がウィルスを撒き散らし、全生物に『そーなの化』を促したのだ。

全てが『そーなのかー』に始まり、『そーなのかー』に終わる時代の始まりである。



ルーミア暦二XXX年。
今年も、蒸し暑いそーなの夏がやってきた。

吸い込まれそうな闇の中、霊夢と魔理沙は、オープンそーなのカーを走らせながら談笑に興じていた。

「そーなのかー?」
「そーなのかー、そーなのかー!」
「そーなのかー」

二人は、大手株式会社『So nano car』のそーなの課に所属する、敏腕のそーなの家である。
やりがいのある仕事ではあるものの、疲れの溜まっていた二人は、そーなの暇をとり、休日である、そーなの日と合わせて旅行に出ているのだ。

「そーなのかー」

と、言葉を切り、霊夢は前を指差した。
そーなの河を越えたのだ、目的地である。


二人はそーなのカーを止めると、小さな小料理屋に入ってく。

「そー、なのかー?」
「そーなの、かー」
「そーなのかー」

着物を来た給仕に手を引かれ、二人はそーなの火に照らされた通路を進む。
そして、そーなの香の漂う座敷の間についた。

予約していたため、料理はすぐに来た。
二人は手を合わせると、ひどくお腹が減っていたため、すぐに食べ始めた。

そーなの鹿の炙り肉。
そーなの果の和え物。
食べても良い人類の丸焼き。
舌包みを打ちながら、二人はにこやかに笑い合う。


と、夕食もたけなわになった頃、ふと魔理沙はテレビをつけた。
ブラウン管式のそれの中では、皇帝ルーミア・ソ・ソーナノカーが、聖者が十字架に磔られたポーズのまま、にこやかにそーなの花を受け取っていた。

アナウンサーが一通りニュースを告げると、ニュースの時間は終わる。
電源の消えたブラウン管式のテレビを見つめながら、二人は言った。

「そーなのかー」




・・・・・・




「さとり様、さとり様、」
「何?お空。」
「コミュ障ってなんですか?」

さとりは黙って、妹を指差した。

今日も地霊殿に悲鳴が響く。



おしまい
蒸し暑いこの季節に、「さわやか幻想郷」

コメ返信

>>1様
>>NutsIn先任曹長様
>>3様
>>んh様
>>ギョウヘルインニ様

そもそもなんで『さわやか』なんだ・・・(適当)
box
作品情報
作品集:
4
投稿日時:
2012/06/29 11:14:06
更新日時:
2012/07/02 22:03:18
評価:
8/10
POINT:
840
Rate:
15.73
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短篇集
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0. 40点 匿名評価 投稿数: 2
1. 100 名無し ■2012/06/29 21:06:35
超さわやか
2. 100 NutsIn先任曹長 ■2012/06/29 21:21:39
梅雨も間もなく終わる。

古き因習を断ち切り、
練り物キャノンの前にサムライは屈し、
殺戮の雨を止めるリム付きの銃弾、
ゆっくりあまあまをたべていってね!!
ゆっくりわたしをたべていってね!!
sown an occur.

呪われた姉妹の惨劇が始まり、終わる……。

夏は、もうそこまで来ていた。
3. 100 名無し ■2012/06/29 23:29:02
10年に1度のさわやか
4. 100 んh ■2012/06/30 00:11:34
突っ込むのがめんどくなるくらい涼んだ
5. 100 ギョウヘルインニ ■2012/06/30 00:45:34
この、作品を作ったのは誰だ?お前か?お前は今日からさわやか産廃作家だ!
6. 100 名無し ■2012/07/11 22:37:07
超さわやかって言おうと思ってたらもう言われてた boxさんの短編はおもろい

次はなごやかで(ry
8. 100 まいん ■2012/07/14 15:22:26
超cool

モミ・バシリに愛を囁きたい。
10. 100 レベル0 ■2014/07/14 18:28:57
あなたのセンスがうらやましい。
妖夢vsちくわで爆笑www
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