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『重大事』 作者: ただの屍

重大事

作品集: 4 投稿日時: 2012/07/20 11:06:44 更新日時: 2012/07/22 13:26:31 評価: 8/27 POINT: 1050 Rate: 7.68
 ここは幻想が支配する郷である。それならばインフラが整っていないようなそんな貧相な環境であってよいのだろうか。それならば完璧で瀟洒な従者である筈の十六夜咲夜が時間すら巻き戻せないようなそんな貧弱な女であってよいのだろうか。
 さてその咲夜であるが、咲夜は紅魔館と同期している。それは咲夜の紅魔館に対する忠誠心と咲夜が紅魔館内部の空間を広げていることによって説明がつく。
 紅魔館との同期によって得られる情報は紅魔館の敷地内に存在する物質の位置だけである。それだけあれば変位を観察することにより生物と非生物の分類ができる。さらには運動の様子から生物の正体を推測できる。紅魔館では対外警備を美鈴が、対内警備を咲夜が担当している。
 今、咲夜はパチュリーの下へ向かっている。その右手にはバケツが握られており中にはパチュリーが魔術に用いる素材が入っている。
 パチュリーの存在が確認できないことに気がついたのはこの時である。本調子の咲夜ならば起床してすぐにでも気付けた筈であった。
 紅魔館地下にある図書館の隣の部屋。その扉の前に咲夜は立っている。
 咲夜は自分の能力を信用していたがもう一度だけ、紅魔館に内包されている全存在から非運動物を除いたものを数え上げてみた。だがやはりその中からパチュリーらしき気配を感じ取れなかった。
 パチュリーは現在どのような状態にあるだろうか。咲夜は答えを四つほど考える。
 一つ、睡眠中。可能性極小。パチュリーの睡眠予定日は三日後である。パチュリーは魔女なので睡眠をそれほど必要としないのだ。
 二つ、どこかに出かけている。可能性小〜中。咲夜が起床してから現在の時点まで咲夜の感知域から出ていく者はいなかった。門番のいる場所まではぎりぎり監視範囲内である。もしかすると咲夜の睡眠時に抜け出したのかもしれないがパチュリーの性格から判断すると微妙なところである。
 三つ、死んでいる。可能性大。幻想郷において死体は基本的に非運動物である。それに人間である咲夜は紅魔館に内在する非運動物を把握しきれていない。いつのまにか悪趣味なインテリアが増えているということは紅魔館ではよくあることだ。
 四つ、その他。上記以外の全ての事象が考えられる。可能性は未知。
 どれにしたって入室の許可を得る必要はないな、と咲夜は青い扉を見てそう判断した。
 パチュリーの部屋に踏み込んだ咲夜はとりあえずバケツを置き、巡回を開始する。寝間を覗いた咲夜は二かなと思う。
 書斎に入ったとき、咲夜はなんでもない場所で転んでしまい頭を床に叩きつけてしまった。このとき咲夜は直感した。三だ。間違いなく三だ。唐突にも思える直感だがこれまでに直感が咲夜を裏切ったことはないし咲夜が直感を裏切ったこともない。そうと分かってしまえばメイド長たる咲夜はこの事実を無かったことにしなければならない。咲夜は急いで起き上がる。
 咲夜は時間を巻き戻す。
 時間が巻き戻っている最中、咲夜の意識レベルは後退している。時間依存性宇宙の軌跡の逆行により生じる無意識的再現力が世界を取り巻いている為である。よってこの世のあらゆる生物は如何なる生命現象に対しても己の意思を挟めない。ただ咲夜だけが時間の流れをもとに戻すタイミングを見逃さないことだけを考え続けていられ、実際に時間の流れをもとに戻すことができる。
 現在の時間速度は-1sec/secである。
 咲夜の体内を循環する血液が逆流する。血液は静脈から動脈、そして心臓へ到達する。
 呼吸のリズムは一見すると正常である。だが咲夜の肺胞は呼吸した空気から二酸化炭素を取り込み酸素を放出する。
 時間の進行と頭痛とが正比例する。
 立っていられなくなるほど頭痛が酷くなったとき、咲夜は素早く両膝をついてから両腕を床に突き出し頭を垂れる。その姿勢は土下座に見えなくもない。振り下ろされた額が床に衝突したとき、転倒による頭痛に関する記憶が彼方のものとなる。咲夜は両脚をぴんと伸ばす。それから見えない手に引っ張りあげられかの如き非人間的後方起立法を行う。
 咲夜は後ろに滑らかに歩きながらパチュリーの部屋を見て回る。それからバケツを右手で持ち上げ、来た道を帰る。図書館を出た咲夜は厨房に戻る。
 厨房に入った咲夜は妖精メイドの挨拶を背に受ける。ただし当時の記憶があればこそ挨拶だと言えるのであり、実際に彼女らの発している言語は逆回しに発音されておりもはや意味のある言葉には聞こえない。
 幾人かのメイドは空の皿をテーブルに並べている。
 咲夜は厨房の奥に入りバケツを置いてから、メイドらと同席する。咲夜の胃袋は俄に活気づき蠕動運動を始める。消化液に洗われた消化物は己の形姿を取り戻す。この日の朝食は焼肉である。肉は食道を昇り喉頭を通過し口へ到達する。
 何度か肉を咀嚼した後、咲夜は口に箸を差し入れて肉一切れを取り出す。その様子をメイドらが呆然とした表情で眺めているが、勿論メイドらが時間の逆行を認識しておりそれに反応を返しているわけではない。
 咲夜は食事を中断し立ち上がる。それと同時に何人かのメイドらも立ち上がり咲夜から距離を取る。部屋から逃げ出す者もいる。メイドらの顔には怯えが見て取れる。咲夜はゴミ箱の前に立ち、その中から新聞の包を取り出す。それは天狗が書いた新聞である。メイドらの中には叫び声を上げる者もいる。
 咲夜は新聞の包みを床に広げる。それから新聞越しに何かをつまんで床に置く。そこに現れるのは体長40mm近くあるワモンゴキブリの死骸である。咲夜は新聞の皺を伸ばし棒状に丸める。ゴキブリの死骸が不自然に、そして凶悪な飛び上がり方で壁に張り付く。瞬時に、咲夜は丸めた新聞をゴキブリの死骸に押し当てる。ゴキブリが生を取り戻す。咲夜は新聞を勢い良く振りかぶる。
 ゴキブリが飛ぶ気配を見せる。メイドらの叫びは恐怖に歪んでいる。席についているメイドは誰一人としていない。咲夜はメイドらの叫びにならない叫びの中、ゆっくりと席に戻り食事を再開する。一人のメイドが両目を剥いて絶叫しながら部屋に飛び込む。
 他のメイドらも一人二人と飛び込むように着席し、絶叫と混乱は指数関数的に鎮静する。ゴキブリは物陰に消えている。咲夜は元通りに伸ばした新聞を読みながら食事を続ける。
 咲夜はメイドらと談笑しながら皿の上に朝食を並べていく。食事を二割ほど済ませた時、美鈴が慌ただしく入室する。美鈴は仕事がありますからなどと言いつつ席につく。それに対して咲夜はもう少しゆっくりするよう美鈴に言う。
 美鈴は嘔吐するような速さで肉を貪り吐く。美鈴は咲夜が指一本も動かさぬうちに食事の全行程を遡る。そして嵐のように退室する。
 残り二割の食事を終えたとき咲夜は空腹であり、メイドらも同様である。咲夜は立ち上がり、全ての料理を下げる。メイドらは嬉しげな表情で朝食を見送る。咲夜が厨房の奥に引っ込んでしまうとメイドらはお腹を押さえながら厨房から退室する。二日酔いや寝不足に祟られている者もおり実に恨めしげである。
 咲夜はまず全ての皿にある焼き肉をフライパンに集める。熱されたフライパンによってタンパク質が変性し、肉に残された少量の血液が融解する。フライパンが十分冷えると生肉を調理台に移す。
 咲夜は包丁で生肉の刺身を一つ一つ接合し赤身のブロックを作り上げる。咲夜が冷蔵庫から動物のバラバラ死体を取り出して調理台に並べてしまえば冷蔵庫の中身は空になる。咲夜はそれらの肉塊を包丁で繋ぎあわせていく。
 咲夜は成人男性の肉で出来た容器を見下ろす。咲夜はバケツから彼の脳、目玉、骨、生殖器、内蔵、皮膚、毛髪を取り出して彼をせっせと装飾する。
 一人前の人間の死体として完成した彼の肉体には両足が欠けており首筋には幾つかの牙跡が残されている。咲夜はその死体を担いで主人の部屋へ向かって歩く。
 咲夜は主人の部屋の前に彼を下ろす。彼の顔には絶望が張り付いている。雑巾みたいに横たわる彼を残して咲夜は洗面所へ移動する。
 洗面所に着いた咲夜は脱衣所で清潔なメイド服を脱ぎ捨てる。湿ったタオルで体を拭う。タオルがすっかり乾くと水を滴らせた咲夜は浴室に入る。
 咲夜の入浴は正に烏の行水である。あっという間に終わっていてまるで時間の省略が行われたかのようである。まあ浴室には換気用に小さな窓があるだけであり鏡もないので特に見るべきものもない。
 咲夜は籠から取り出したメイド服を着る。その汚れた服は特異臭を放っており不快であることこの上ない。
 洗面台に立ち向かう咲夜は排水口から湧き出た水で口を濯ぐ。その結果咲夜の口内に胃液が残留する。
 咲夜は急ぐような歩調でトイレに向かう。トイレに着いた咲夜はレバーを操作して便器に汚水を溜める。汚水の原因は未消化の食物と酒である。咲夜は口を開け、汚水の中からそれらを正確に選び吸い上げる。咲夜の頬に涙の跡が出来る。
 その内容物は咲夜自身の吐瀉物である。咲夜は大口を開けて吐瀉物を飲み下す。息つく暇もなく迅速に己の吐瀉物を鯨飲する様子は満腹することを知らぬ餓鬼のように見えて凄まじい。
 咲夜が己の行動に歯止めを掛けたとき、服は人に見せられるようになっており体から特異臭は抜けている。だが酒臭い。
 咲夜は慎重な足取りで宿舎へと移動する。
 現在は午前六時である。二日酔いを迎えたことを知った咲夜の気分は最悪であり、髪も寝癖によって同調の意を表明している。メイド達が一斉に眠りにつく。咲夜もメイド長専用のベッドに横たわり己の眠りを呼び覚ます。起床のベルが鳴り響く。
 現在は午前三時である。ボロ雑巾のような格好をした咲夜は泥のように目覚める。
 咲夜は時間を正常に進行させる。
 咲夜はとても疲れており、今すぐにでも眠りたいという気持ちで一杯である。更に時間を遡ればそれもいくらか解消されるだろうが、宴会で出たゴミを紅魔館中にばら撒くのはもう少し先のことになるだろう。
 咲夜はパチュリーの部屋から人間ほどの大きさの生物の気配を二つ感じ取る。部屋を訪れるのに茶がいるな、と思う。
 咲夜は厨房へ移動し、紅茶を二人分作る。
 それから咲夜は時間を止める。
 時間が止まっているとき、全ての物質は力の影響を受けない。力とは重力、電磁力、弱い力、強い力、それに加えて幻想的な力である。だがその例外が咲夜だ。そうでなければ能力として成立しない。
 咲夜は時間の止まった世界を自由自在に動けるわけではない。
 まず呼吸ができない。それに心臓の鼓動も停止する。だが問題はない。時間が止まっているので咲夜が死ぬ心配はないし、それが杞憂に過ぎないということは他の生物を見れば明らかである。
 呼吸ができないのは空気が固定されているから、という理由ではない。空気は固定されてなどいない。力が働いていないのだから当然の結果である。
 咲夜は空中にある分子を他所に押しのけて進む。物質は剛体と化している。時間が止まっているのだから当然の結果である。服はたちまち拘束衣へ、靴は足枷へと変化する。
 咲夜は無力なる空間を時間停止以前からの慣性によって宇宙的に移動する。服や靴は咲夜の体によって前方に押し込まれる。
 このとき盆にカップを乗せるような普段通りの運び方をしていては、運動の軌跡上にカップあるいは紅茶が置いていかれてしまう。
 咲夜は盆を口に加える。それからカップ底面を地面と垂直にしそれぞれの取っ手に指をかける。それからカップの底面と手のひらを合わせ両手を前方に突き出す。これが基本の構えとなる。
 運動が回転運動にならぬように咲夜は床や壁や天井を使って体勢をちょこちょこ修正しながら移動する。この方法にも慣れたものであり紅茶がカップから飛び出してしまって慌てふためいたことなど遠い過去の話である。
 時間が止まっていれば紅茶の液面は揺れもしないし、大気中のゴミが混ざることもない。紅茶の温度も下がらない。良いこと尽くしである。
 このようにしてパチュリーの部屋の前にたどり着いた咲夜はカップを空中に離し、盆を下から接触させる。咲夜は時間停止直前に盆やカップ、それに自分に対してどのような力がどの方向に働いていたかを考えてそれぞれの力の復活に万全に備える。
 咲夜は時間の進行を再開させる。
 咲夜は力に対応し、覆水を防いだ。
 落ち着いてから咲夜は赤い扉の横についているボタンに触れる。パチュリーの部屋には内外に対する防音処理が施されているのでノックは無意味である。扉には鍵の類は掛かっておらず、部屋の主が扉の色によって入室の許可状態を表している。
 ややあって、扉の色は青に変わった。
 「失礼いたします」部屋に入った咲夜は、応接間の三点セットにパチュリーと一人の男性が向い合って座っているのを見た。「お茶をお持ちいたしました」
 男は不機嫌そうな顔つきをしていた。それもその筈で普通はこんな時間に茶を運んでくるメイドなどいない。ましてや茶を頼んだ覚えもないのである。パチュリーもややむっとしていた。
 男はパチュリーの様子をちらりと窺い、それから咲夜を見て尋ねた。「何時だい」
 「三時を回ったところでございます」
 「これを飲んだら帰る。見送りはいらない」言うが早いか、男は紅茶を一息に飲んだ。そして男は姿を消し、紅魔館の中からいなくなった。帰ったのだと咲夜は判断した。
 「どなたでしょうか」咲夜はパチュリーに尋ねた。
 「人間の魔術師よ」パチュリーは投げやりにそう答え、紅茶に手をつけた。「で、用事を聞かせてちょうだい。まさか紅茶を運びに来たわけではないでしょう」
 「はい」咲夜は今朝遭遇する筈の出来事を全て話し、パチュリーは紅茶をちびりちびり飲みながらそれを聞いた。「どうか私の直感を信じてください」
 「信じるも何も、疑ったことさえないわ。だって嘘か真かなんてどうでもいいもの」パチュリーは最後の一口を飲んだ。「確か、私が死んだのはこれで六度目になるんだっけ」
 「はい。一度目は理由不明の突発的な首吊り自殺をなさいました。二度目は使い魔による計画的で偶発的な下克上の末に果てました。三度目は召喚した邪神に殺されました。四度目は宣戦無しに人里を壊滅し、さりげなく黒幕に回ろうとしたものの失敗して火炙りの刑にされました。五度目はジョークとしてレミリアお嬢様を串刺しにした後、ジョークだと分からなかったフランドールお嬢様に殺されました」
 「それで六度目は」
 「実は分からないのです。私の睡眠中に起こったことは確かなのですが」
 「私が死ぬまで待たなかったの」
 「いらぬ混乱の元となりますから時間の巻き戻しはなるべく避けたいのです。だからまずはパチュリー様ご本人に事情をお伺いに参上いたした次第でございます」
 「うーん、ならお手上げね。私が死ぬべき理由なんて何一つ思い浮かばないわ」
 「実験の予定はございますか」
 「ないわ」
 「面白いジョークは思いつかれましたか」
 「いいえ。あなたはどう思う」
 「ジョークを解さない連中には余程恨まれておるかと存じます。現にそういう輩は未だにジョークだと分かっていないようでございますから」
 「つまり逆上したあの人に私が殺されたというわけね。あまり想像できない情景だけど」
 「いえ何もそう決めつけているわけではございません。現時点では私以外は全て容疑者であり死因は一切不明なのですから」
 「まあ捜査も執行もあなたに全て任せるわ。解決したら報告よろしく」
 パチュリーはカップを盆に置いた。
 「紅茶のおかわりを頂戴。一秒で持ってきてね」

  ◇

 彼が先ほど登場した人間の魔術師である。
 彼は皆から一二三四五六(ひとふたみしごろう)と呼ばれている。それが真名なのか偽名なのか本人さえ分からない。
 彼が七曜の魔女と顔を合わせたのはこれまでに八度。九度目となるその日を紅魔館の犬が嗅ぎ回っている。
 両人が初めて出会ったのは十年前のことであり、その数字が十一になるのは十二日後のことである。
 そのような折の十三時十四分十五秒。正にその瞬間であった。
 十六夜咲夜は彼の心臓に柄までナイフを突き刺した。

  ◇

 これでは死んでしまうではないか。おれは眼前に立つ女を睨んでいた。
 死にたくない。おれは生きて産廃百物語に参加するのだ。おれは反射的にナイフに触れようとしたが、おれの体は鉛のようになっていておれの命令を容易く退けた。
 ばか、おれは何をしている。傷は深いのだ。抜くと致命傷になる。だが刃に毒が塗布されていたらそれこそ命取りだ。
 どうする。やけに時間が長く感じられる。時間の描写が失われたせいだろう。
 おれは外傷の程を確認しようとしたのだが女から視線を逸らすことができなかった。おれは焦りを感じた。
 そのうちおれは目の前の女が十六夜咲夜であることに気づいた。それはおれを嫌な気持ちにさせた。
 おれは何故殺される。何故おれが殺されなければならない。おれは咲夜へ無言のうちに答えを要求したが、既に咲夜は置物になっている。
 怠慢だ。この女がおれの殺害理由を明確にしない限りはおれがその理由を考え提示してやらなければならない。
 しかしおれ一人が推考に推敲を重ねても全てはおれの憶測に過ぎない。それは走馬灯のように儚いものだがそれでもやらなければならない。
 原因を考える。原因第一だ。原因ありての結果。因果と呼ばれるものの因。
 おれの頭にはおれが死ぬべき理由なんて何一つ思い浮かばないのだがどうにかして四つの原因を捻り出してみる。
 一つ。幻想郷、特に排水口の連中は何を考えているのかよく分からない。なにやら勝手に訳の分からんことをしでかしておれがそのとばっちりを受けたというのもあり得る話だ。ならばおれの目の前にいる咲夜はこの作品の一つ下の作品や一つ上の作品から影響を受けたのかもしれない。もしかするとこの作者の過去作品に登場した咲夜なのかもしれない。そんなことはなく新徒・産廃創想話にある全く別の作品からかもしれない。それどころか東方夜伽話や東方創想話からかもしれない。聞いた話によると産廃創想話の作者には向こうのほうに投稿している人もいるらしい。“咲夜”と“作者”は響きが似ている。これらは驚くべき発見に繋がるかもしれない。
 二つ。幻想郷、特に排水口の連中は何を考えているのかさっぱり分からない。殺しのための殺しなど朝飯前である。というか朝飯に人やら妖怪やらの肉を食う連中である。この咲夜という女も紅魔館に住んでいるだけあってやはり人喰いである。ならばおれが本日の獲物として見定められた可能性は否定できない。ここで考えなければいけないのは咲夜がおれのことを知っているかどうかということだ。わざわざパチュリーに尋ねるようなことでもなかったからそれが分からない。もし咲夜がおれのことを知らないのであればおれが獲物として殺されるというのは妥当な結論である。だが知っているのであればどうなるだろう。主人の友人の知り合いは捕食対象に成り得るか。当然成り得るだろう。
 三つ。幻想郷、特に排水口の連中は何を考えているのかちっとも分からない。この咲夜という女も他の女に負けず劣らず狂っており、外見や会話からその兆候が読み取れる。そもそも時間を操れるような人間がまともな精神構造をしている筈がない。この女は紅魔館のメイド長をやっているのであり、それだけでも自機級のキチガイだと判断できる。だがキチガイ故の犯行だとすれば一や二と同じ結論になってしまいそうだ。三つめとして新たな理由を考えるならば、おれが未来においてしでかした何らかの事象と関係があるのだろうがさてこれはおれに対する誅殺なのだろうか。それとも単なる事情聴取の一環に過ぎず後に時間を巻き戻し元通りにするつもりなのか。どちらにしてもまったく人の命を何だと思っているのか。
 四つ。幻想郷、特に排水口の連中は何を考えているのか全然分からない。よって上記以外の全ての事象がおれを殺した原因としての可能性を持つ。咲夜がおれの死とまったく関係していないということも十分あり得る。
 あれこれ考えてみたがいまいちぴんとこない。初めから分かっていたことだ。
 ここでおれはこの作品があと2KB足らずで終わってしまうことに気がついた。
 相も変わらず視線は咲夜に寄せられたままなので死相を確認することはできないが死神の足音は感じ取れる。既に視界は黒ずんでいる。
 この作品が終わると同時に死ぬのだと悟った。それまでにおれが取るべき行動はなにかあるか。
 おれは再度ナイフを引き抜こうと試みたが、やはり体は動いてくれなかった。ナイフをこの場に残して転移しようとしても駄目だった。
 無駄になるであろうことは半ば承知の上でおれはこのページ最下部の編集ボタンを押し、パスワードの欄に“wd”と打つ。エラーが出たので今度は“thewaterducts”、それから“haisuikou”、“toho”、“tadanosikabane”と打った。全てエラーが返されたが元々これでいけるなどとは考えていなかったので却ってさっぱりした。
 体が冷たくなってきた。終わりは近い。ああ死ぬのは嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だと反抗するのも嫌になってきた。別に死んだっていいじゃないか。
 八つ当たりでもしてこの作品を締めくくろうと思う。何故かそれだけはできるのである。
 幻想郷ごと咲夜をぶっ殺してしまおう。そこまでやれば時間を巻き戻して再起されることもあるまい。
 幻想郷が滅びてしまえば新作に少なからず影響が出るだろうが、なに月がある。
 というわけで新作の舞台は月になるだろう。
というわけで新作では主人公共が一新されるであろう。

>>boxさん
産廃百物語についてですが、これから忙しくなるので投稿はできそうにないです。勘違いさせるような文章を書いてしまってすみませんでした。
一読者として産廃百物語の開催を楽しみにしたいと思います。
ただの屍
作品情報
作品集:
4
投稿日時:
2012/07/20 11:06:44
更新日時:
2012/07/22 13:26:31
評価:
8/27
POINT:
1050
Rate:
7.68
分類
産廃飛躍物語
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0. 250点 匿名評価 投稿数: 19
6. 100 んh ■2012/07/21 22:51:08
排水口の人はみんなとおんなじこと考えてるよ、素直なだけ
時間遡るとこ読んでたら眩暈しました
7. 100 名無し ■2012/07/22 00:37:39
久しぶりに度肝を抜かれた気分です

もう常識から飛び立ってますね
8. 100 名無し ■2012/07/22 02:52:17
時間遡るシーンを文字化されたのは初めて読みました。すごく新鮮。
排水溝に流れ込んだ水や吐瀉物が口に戻っていくシーンが明瞭に思い浮かべられる、これだけでもこの作品は高く評価できます。

その他の要素が投げっぱなしのような気がしないでもないですが、逆に可能性を妄想できるのでこれもプラスです。
別の排水溝の咲夜の意思がこの排水溝の咲夜に影響を及ぼしたから殺人を…は掘り下げると面白そうですね。枝分かれする排水溝理論。
こんな世界に生きてたらキチガイにもなりますわ、咲夜さん。某ペル○ナ2のバイ○ンマン思い出した。


雑記:
時間の流れ方が戻った所で多少の混乱が生じました。間に記号等を挟むとわかりやすいかもしれません。
9. 100 名無し ■2012/07/22 03:45:22
流石!
なんで、評価低い?
10. 100 box ■2012/07/22 09:37:16
正に排水口
緻密な描写に頭がクラクラしました
情景描写がどれだけ大事かわかりました

>>おれは生きて産廃百物語に参加するのだ。

ものすごくさりげなく言わないでください!思わず二度見してしまいました!
しかしうれしい限りです
この場で言うのは少々場違いだとは思いますが、よろしくお願いします
11. 100 ギョウヘルインニ ■2012/07/22 14:07:28
すごい、興味深い内容でした。内容も面白かったです。
排水口
排水口の連中が考えること
排水口
うーん、わかりません。
12. 100 名無し ■2012/07/22 16:36:31
何月がある、と舞台は月、主役は綿月姉妹で発売された東方新作。
大不評を博し東方終焉の引き金となった問題作として後に語り継がれることとなるのであった。
27. 100 名無し ■2012/09/16 17:40:02
一二三四五六30歳
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