鋼鉄の淑女

　
　

ＣＶ-２２
全長: 17.47 m（ピトー管含まず）
全幅: 25.54 m（ローター含む）
全高: 6.63 m（VTOL時）
ローター直径: 11.58 m
航続距離: （強襲揚陸時）: 515nm (953km)
（ペイロード4,536kg、垂直離陸）: 350nm (648km) 以上
（ペイロード2,721kg、垂直離陸）: 700nm (1,295km) 以上
（ペイロード4,536kg、短距離離陸）: 950nm (1,758km) 以上

フェリー距離: 補助燃料タンク使用時 1,940nm (3,593km)
短距離離陸滑走距離: 152m以下[29]
実用上昇限度: 26,000ft (7925m)
上昇率: 2,320ft/min (11.8m/s)
ホバリング限界高度 地面効果内: 3,139m
地面効果外: 610m以上（22,680kg時）、1,8290m（20,866kg時）、4,267m（15,422kg時、95%出力）

空虚重量: 15.032 t[30]
円盤荷重: 20.9lb/ft (102.23kg/m2)（自重247,500lb時）
飛行荷重制限: +4G/-1G[2]
最大離陸重量 垂直離陸時: 23.981 t
短距離離陸時: 27.442 t

エンジン: ロールス・ロイスアリソン社製T406（ロールス・ロイス社内名称 AE 1107C-リバティー）×2基（最大定格出力: 4,586kW (6,150 shp)、緊急時最大出力: 5,093kW）
最高速度 通常時: 305 kt (565 km/h)
ヘリモード時:100 kt (185 km/h)[要出典]

離着陸距離[31] 貨物を載せず24人が乗り組んだ場合はヘリコプターのように垂直離着陸が可能
最大積載量を積んだ場合は垂直離着陸できない。離着陸には約487m（1,600フィート）が必要
上空でエンジンを停止させて着陸する『オートローテーション』飛行訓練や単発エンジン着陸訓練、編隊離着陸などの習熟訓練には、最短で約792m（2,600フィート）、最大で約1,575m（5,170フィート）が必要[2]。



「それで、一体、何なんだ、それは」

　鉄の塊を前にスペックを説明するにとりに対し、犬走椛はそう言った。

「じゃあ、簡単に説明しよう。つまりは航空機だね。このＣＶ-２２、通称オスプレイはジェット機とヘリコプターの両方の特徴を兼ね備えている。つまり、ジェット航空機の速度と長い航行距離を備えながら、離着陸に長い滑走路を必要としない、柔軟な運用のできる航空機で……」
「ちょっと待った。全然簡単になってない。まずもって航空機って何だ。飛ぶのか、これが」
「勿論。私も見るのは初めてだけど」
「嘘でしょう」
「あそこに竹とんぼの羽根のようなものがあるだろう。勿論、竹のように軽くはないから、その分高速回転させて飛ぶんだ。そもそも、我々だって訳の分からない力で飛んでいるじゃないか」
「それは……私達は自分の意志でそれを制御できるじゃないか。こんな鉄の塊を、どうやって制御するというんだ？」
「電気で制御する。電気は分かるでしょう？　かなり手がかかったけどね、仲間達と、電気を使える能力の持ち主にも協力してもらったお陰で、飛ばせる状態にはなっているはずだよ」

　椛は信じられない、といった面持ちで、にとりの見詰める鉄の塊を眺めた。数日前に幻想郷に現れた、この鉄の塊が、飛行するだなんて、とても考えられない。

「危なくはないのか？　外から来たと言うことは、その存在が薄れたから来たのだろう」
「だとしても、私達河童が、こんなものを見て挑戦しないなんて、私達のフロンティアスピリットが泣くね。まあ、見ててごらんよ。今はまだ遠い未来の話だけど、この技術をうまく取り込んで、万が一量産できるようになったら、幻想郷はまた一歩革新の道を歩むことになるよ」

　不安げな顔をしている椛をよそに、にとりは作業をしている河童達に歩み寄り、何事か話している。

「じゃあ、行ってくるよ。しっかり見ておいてくれ」
「にとり」
「大丈夫さ。帰ってきたら、椛の家でうまい飯でも食わせてもらおうかな」

　そう言って、にとりはオスプレイの機体へと乗り込んだ。
　しばらくして、激しいエンジン音と回転翼の回転する轟音が響いた。そのやかましさに、思わず椛は後ろに下がり、やがて浮き上がるそれを見ていた。その重みを感じさせずに浮き上がり、空中へとそれは飛び上がった。操縦席から飛んだろう、と言わんばかりにガッツポーズをしてみせるにとりを、椛の千里眼は捉えていた。勝ち誇るように更に機体は飛び上がった。



　余談だが、特殊作戦向けのＣＶ-２２は、米海軍で使用されているＭＶ-２２に比べて事故率が高い。



　墜落した。
　ばりばりと音を立てて、木々を掻き分けるようにしてオスプレイは墜落していた。椛は走っていた。自分の方に向かってきたのだから、その回転翼から逃れるようにして走らなければならないのは当然だ。

「椛！　大丈夫か。本部聞こえるか、回収地点が襲撃された、オスプレイは墜落。予備地点に移動する。椛、何をぼうっとしているの！　我々はメディスンを移送しなきゃいけないわ。急いで！」

　文が椛の前で喚き、急かしている。そう。椛は、人間の里で毒をばらまいたメディスンを連れ帰らなければならないのだ。見境のない狂犬、フランドール・スカーレットと手を組んで悪事をしていたメディスンは大切な情報源だ。
　椛は走った。文に続いて、敵を撃ち、掃討しながら走った。上空には命蓮寺組によるＡＣ-１３０の援護がある。援護を受け、敵を倒し進む。戦争の色は未だ色濃く、その終焉の兆しは見えない。いつまで、どこまで。そういった思いに椛の足も止まりそうになる。だが、その歩みが止まることはない。敵の血に、戦友の血にもまみれながら。
　この戦いで連れ帰るメディスンの情報が、一つ、戦争を終わらせる手がかりになるだろう。フランドールを捕らえる手がかりに。今はそれだけを頼りに走る。