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『ケジメ』 作者: 日々の健康に一杯の紅茶を

ケジメ

作品集: 5 投稿日時: 2012/10/29 13:42:08 更新日時: 2012/10/29 22:42:08 評価: 4/6 POINT: 450 Rate: 13.57
人差し指

「あんた何よ!人の物とっておいて!」
「チルノちゃん落ち着いて、ほら向こうの人も謝ってるし」
「ごめんなさいね〜。近くにあったから私の皿と勘違いしちゃったの」
紅魔館で行われているパーティーで揉め事が起こっていた。幽々子がチルノの皿の料理を間違えて食べてしまったことが原因である。
それならまた取ってくればいいのだがその料理は大好評で品切れとなってしまっていた。
「大ちゃんこいつ分かってて盗ったに決まってるよ!あれが切れてたことに気づいて食べたり無かったからあたいのを盗ったに違いないわ!」
「チルノちゃん決め付けるのはよくないよ」
チルノに付き添っていた大妖精が懸命に宥めるがチルノの耳には一向に入らない。
「本当に知らなかったのよ。今度何か食べさせてあげるからそれで許して頂戴」
「今度じゃなくて今食べたいんだ!今じゃなきゃ意味が無いの!」
「でもチルノちゃんもう料理は無いんだしどうしようもないよ・・・」
幽々子も悪気があってやったわけでは無いが図らずとも最後の一つを食べてしまったことの罪悪感がある。まして相手が妖精ではこどもを虐めているような気がしてより罪悪感が募る。
「今料理が返せないんだったらもっと誠意を見せなさいよ誠意を!」
「チルノちゃんそのくらいにしておきなよ」
「何をすれば分かってくれるのかしらねえ・・・」
困惑している幽々子の横には仏頂面の妖夢が立っている。彼女は途中からチルノに絡まれている主人を助けるべく駆けつけたのだが主人に諌められ仏頂面でじっとしていた。
ただ彼女はどんな形であれ主人が非難されることは気に食わない。例え主人に非があったとしてもだ。彼女が未熟者たるゆえんであろう。
「天狗の新聞で読んだんだ。誠意を見せるときには土下座をするんだ」
「チ、チルノちゃんいくらなんでもそれは・・・」
「どうして?悪いと思ってるんならそれぐらいできるでしょ?」
土下座土下座と叫びながら顔を真っ赤にして幽々子の顔めがけて人差し指を突き立てる。流石に騒がしいのか周囲の注意がチルノへと向く。
その瞬間金属質の音がしたかと思うとチルノの人差し指が宙を舞っていた。
「えっ」
あまりのことに理解が及ばない顔をしているチルノ。その正面にはいつの間に来たのか妖夢が抜き身の刀をぶら下げて立っている。
やがて痛みが遅れてやってきたのか左手を押さえて暴れまわる。
「チルノちゃん!?大丈夫!?」
あまりの痛みに泣き叫ぶチルノに大妖精が慌てて近寄る。妖夢はそれを見下ろしながら刀を納め無言で幽々子に頭を下げる。
頭を下げた妖夢を幽々子が厳しい目で見る。事態が周囲に広まっていきざわめきが起こる。
何が起きたのかをメイド長が当主に報告すると苦々しい顔で現場へとレミリアが向かってきた。
「お取り込み中のようだけどよろしいかしら」
嫌味たっぷりな口調で主従へと話しかける。この間にチルノと大妖精はメイド妖精たちによって別室へと移されていった。
「ええ、構いませんわ」
「謝罪は結構。この屋敷から出て行きなさい。今度からはマナーを覚えてからパーティーに来て頂戴」
顎を外にしゃくるレミリアを妖夢が睨みつけるが幽々子が冷たい目でそれを見やると睨むのをやめすでに歩き始めた主を小走りで追いかけていった。
冷えてしまったパーティーの空気を苦虫を噛み潰した様な顔で眺め回しながらふと床に目をやるとチルノの指が残っていた。腹立ちに任せて踏み潰すとまるで霜柱のように砕け散った。

薬指

「なあ霊夢。提案があるんだが指って5本もいらなくないか」
「はあ?いきなり何言ってんのよ」
昼下がりの博麗神社で珍しく魔理沙が持ってきた茶菓子を口に入れながら霊夢が呆れた声を返す。
「必要に決まってるじゃないの」
「これは永遠亭で聞いたんだがな、何でも薬指というのは普段あまり使わないから清潔とされ薬を混ぜるのに用いたのが語源らしい」
「それで」
「つまり使っていない指なら無いほうがいいんじゃないのかってことだ」
「薬をかき回すのに使っているじゃないの。あんたの聞いてきた話が本当ならね」
茶菓子をもう一つつまんで租借しながら茶を飲む。珍しく手土産を持ってきたと思ったら案の定イカれた話を始める。なかなか味がいいのでもう一つつまむ。それをじっとりと眺めながら魔理沙が反論する。
「今は清潔にするんだったら石鹸を使うだろう。そんなきれいそうなんてあいまいな理由で薬指を残す必要は無いんじゃないか」
「大体わざわざ生えているものを無理に取る必要なんて無いじゃない。痛いだけだし膿むかもしれないし。百害あって一利無しだわ」
「じゃあ利益があるとしたらどうだ?余計な体の一部が取れて栄養が他に回る上にハッピーにもなれるんだぜ」
「・・・あんたまさか」
霊夢が魔理沙の方を向くと魔理沙が右手の甲を向けていた。4本の指が立っていて小指と中指の間にあるはずの薬指が根元から無くなっていた。傷口は一見すると分からずまるで元から薬指なんて無かったかのように見える。
「魔法の触媒にしてみたんだ。切り落とすときはキノコで神経を麻痺させておいたから特に痛くは無かったな」
傷口の治療も触媒にした薬指で簡単に出来たと無表情に言う魔理沙の顔を狂人でも見るかのような目で見る。距離をとろうとして立ち上がろうとしたが体が動かない。頭もぼんやりとする。
「茶菓子に薬を入れておいたんだ。あんなに食べるとは思わなかったから頭にも回ってきたんじゃないか」
魔理沙が立ち上がって近づく。まず霊夢の体を縁側に横にする。足裏が地面についたままだとおぼろげに感じる。続いて左腕を横に伸ばさせられ掌を上にして開かせられる。
「切ってから一ヶ月経ったけど今の所不自由は無いな。案外他のやつの手なんて見ないから指が無いことにも気づかれない」
現にお前も気づいてなかった、などと喋りながらエプロンから取り出した清潔そうな布を左手の下に引く。
再びエプロンに手を入れ透明な液体が入った小瓶を取り出し薬指に付け根から爪のほうに丹念に振りかけ一度下に敷いた布で丁寧に拭い取ると再び振り掛ける。
最初に振りかけられたときはひんやりとした感触があったが再び振りかけられると全ての感覚が無くなっていった。
「これは麻酔と消毒を兼ねていてな。ケガの時なんかに重宝するんだ。痛みはまったく無いと思ってくれていい」
エプロンからナイフを取り出す。とてもよく切れそうに見えるが詳しくは無いのでよく分からない。八卦路でナイフを炙りながら魔理沙が続ける。
「もしどうしても不便だったらもう一回生やすことも出来る。一度試しにやってみたんだが無いほうがしっくりくるからもう一回切ったよ」
ナイフが十分に熱せられたことを確かめ霊夢に顔を向ける。その顔には何の表情も浮かべていない。
「すぐ終わるから」
そういってナイフを逆手に持つ。頭の上まで振り上げると薬指に向け一気に振り下ろす。ナイフが床板に突き刺さる音が聞こえ指が無くなったことが分かった。本当に感覚が無い。頭も麻痺しているのか特に驚きも起きなかった。
魔理沙はナイフを持っていないほうの手で地面に落ちた薬指を拾い上げると口の中に放り込みバリバリと噛み砕いた。霊夢はこいつが魔理沙ではないことが分かった。

親指

「お姉ちゃん。今日はね親指の日なの」
そうなの。知らなかったわこいし。
「だからね、今日はお姉ちゃんの親指を切り落とすことにしたの。素敵でしょう?」
そうかも知れないわね。だからと言って私の右手に五寸釘を打っては駄目よ?前みたいに上に蝋燭を立てないだけましだけど。どうせ橋姫さんの所から盗ってきたのでしょう。
「今日はちゃんと貰ってきたのよ。星熊さんにお姉ちゃんの手を固定したいから五寸釘をくださいって言ってもらったのよ」
手の傷が治ったら誤解を解きに行かないとまた評判が悪くなるわ。鬼に怖がられるさとり妖怪とかどうなのよ。
「鬼殺しだね。アルコール中毒でピンクの象が大行進」
そうねえ象っていうのはまだ飼ったことが無かったわ。早くこっちに流れてこないものかしら。食事の準備が大変そうだけど。
「食事の世話をするのはペットだからお姉ちゃんが苦労することは無いんじゃないの」
それは言わない約束よこいし。ところで釘を抜いてもらえるかしら。
「それじゃあお姉ちゃんが逃げちゃうからだめよ。まだ親指を切ってないから抜いちゃ駄目なのよ」
親指を切らないという選択肢は無いのかしら。いくら治るといっても痛いものは痛いのよ。
「駄目よ駄目駄目。痛いのも含めて親指の日なんだから。思いっきり痛がらなきゃだめなのよ」
じゃあ私の代わりにペットの指を切りなさい。私の指を救えるとあれば喜んで身を投げ出すでしょう。
「そんな考え方だからお燐とお空が神社に行っちゃうんだよ」
うるさいうるさい。私のペットなんだから生殺与奪は私が握って当然なのよ。
「普段ほったらかしにしてるじゃないの。そんな恩も感じさせないような飼い主に忠義を示さないと思うよ」
ぬぐぐ。いいでしょう。ではいかに忠誠心があるかをこれからあなたに見せてあげましょう。さあこの釘を抜いて私についてくるのです。
「指切ってからにするね」
切ってからでは忠誠心が示せないでペットが困るでしょう。あなたはペットを困らせたいのですか?
「あ、そうだ。切った後は用事があるから忠誠心とやらはまた今度見せてね。それまで練習してていいよ」
練習しなくても十分慕われてますし。おすし。それはそうと釘を抜く気は無いのね。お姉ちゃん悲しい。
「その悲しみも取り込み親指の日はより一層輝きを増していく」
あのーこいしさん?もしかして地上で変な宗教に入ったって聞いたけどその影響なんでしょうかこれは。
「南無阿弥陀仏」
ああ宗教怖い。ついに我が家にもカルトの魔の手が。これから毎月お布施を搾り取られるんだ。
「親指の日は宗教と関係ないけどね」
あらそれは一安心。お姉ちゃんほっとしたわ。
「じゃあほっとした所ですとんと」
ああ痛い痛い。指が切れてしまったわ。およよ。
「この前蝋燭立てた時もだけどあまり痛そうじゃないね」
うん。私肉体の痛みとかには鈍感で。ほら心読むとしょっちゅう痛いのとか見るから鈍くならざるをえないというか。まあ痛いことは痛いけど。
「じゃあ私が代わりの親指を上げるね」
こいし?なんで靴下を脱いだのか教えてほしいのだけれど。。お姉ちゃんとてもいやな予感が・・・

中指

「よくこんなになるまで放っておけたわね。呆れるのを通り越して学術的な興味がわいてくるわ」
「御託はいいからとっとと治療して下さい」
「衣玖!お医者様にそんな事を言っちゃだめじゃないの!」
永遠亭の診察室で永江 衣玖と比那名居 天子が月の薬師と向き合っていた。永江はうんざりした顔で右手の中指を突き出している。
その指は素人目にもひどく損傷していた。皮膚が紫色にはれ上がり一部から黄色くにごった膿とどす黒い血が流れ出ている。
「私は妖怪だからこのぐらい大丈夫ですよ」
「大丈夫なわけないじゃない。私が無理やり引っ張って来なかったらずっとあの汚い包帯を巻いておくつもりだったの?」
机の隅に置かれた汚れた包帯を指差す。
「今日取り替える予定だったんですよ。一週間ごとに取り替えることにしているんです」
「ずぼらにも程があるわ!包帯ぐらい毎日取り替えなさいよ!」
「大丈夫ですよ。雲海でオゾン殺菌とかされてそうな感じがしますし」
「医者の立場から言わせてもらうと」
咳払いをして二人の注意をひきつける。口論を中断して永琳の方に顔を向ける。
「こういうひどい傷は自分で治そうとしないでほしいわね。何をしてこうなったの」
「それはご勘弁願えませんかね」
「この場に及んでまだそんなことを言って・・・」
天子がまた喚くのを尻目に永琳に向かって口をぱくぱくさせる。ウインクも繰り返す。そのサインを理解したのか永琳が天子に顔を向ける。
「ああ、はいはい。分かったわ。比那名居さん。少し席をはずしてもらえるかしら?」
「はあ?何で私が」
「これから治療を始めるから。付き添いの方がいないと暴れるようなお年でもないでしょう」
「・・・まあそういうことなら仕方ないわね」
ちゃんとお医者様の言うことを聞くのよと永江に向かって言ってから診察室から出て行く。それを見送った後再び永琳が話し始める。
「ではまず原因から教えてもらえるかしら」
「どうしても言わなきゃ駄目ですかね。気が進まないのですが」
「どうしても言ってもらわないと困るわ。場合によって治療方法が変わることもあるから」
数秒間にらみ合った後永江がため息をついてから話し始めた。
「守秘義務は守ってくださいよ」
「守らなかったらこんなに繁盛しないですんだわ」
「先週揚げ物をしてましてね。油の温度を確かめなきゃいけなくなったんですよ。それで普段使ってる温度計をちょうど壊してしまいましてね。そこで仕方なく」
「あーはいはい大体分かったわ」
目をそらしてカルテに何かを書き込む。それをちらと見てから永江は続ける。
「いや自分でもあほだとは思ったんですよ?ただですね・・・」
「よく、よく分かったから。今度から温度計で測って頂戴。で、包帯を巻く前は消毒ぐらいしたの」
「いやただの火傷だと思って水で冷やしてほっぽってたら腫れてきたんでそのまま包帯を巻きました」
「そう。じゃあ傷口は引っかいたりした?」
「出来るだけやらないようにしてたんですけどかゆくてつい」
カルテを置いて天を仰ぎたくなる衝動をこらえながら傷口を観察する。
指先の肉は腐敗が始まっているようでひどい臭いを放っている。爪が今にも剥がれ落ちそうだ。間接を上がるにしたがって若干ましな色合いにはなっていく。付け根の付近は火傷をしていないようでごく健康的な色合いを保っている。
「痛みは感じないのかしら」
「電気を操れるので火傷したときから痛みが来ないようにしています」
それならここまで放っておいたのも頷ける。精神病の類を疑う必要が無くなったことをカルテに書くと治療方針を告げる。
「結論から言うと切り落とす他ありません。このまま放置していても傷口が治る可能性はありませんし膿が回る可能性もあります」
「そこまでひどいんですか」
「妖怪なんですから指の一本や二本また生えてくるでしょう。もう生えてこないっていうなら一か八かで努力するのも検討しますがその場合でも切る方を絶対にお勧めします」
厳然と言い放つ。言われた永江は多少悩んでから料金の事を訪ねてその値段をしばらく考えてから切り落とすことに同意した。
「大体どのくらいで生えてくるんですか」
切り落とす器具の準備をしている永琳の背に問いかける。
「一番早いので切ったらすぐ生えてきたのがいるわ。一番長いのだと半年。まあ大体一ヶ月ぐらいで生えてくるわね」
「一ヶ月ですか」
「切った後はしばらく薬を飲んでもらうからアルコールは控えるように」
絶望的な顔をして口を閉じる。準備が終わり永江の手を金属の台の上に手の甲を上にして置く。
「麻酔はいらないわよね」
力なく頷く永江を見てから指先と付け根を細いテープで固定する。手早く消毒液を振り掛けてから刃物を手に取る。
付け根のぎりぎりの所の肉を刃物で切ってからあふれ出る血と膿を用意しておいた生理食塩水で洗う。骨が見えた所で小型ののこぎり状の器具で骨を切っていく。数秒で切り終え再び新しい刃物で指の腹の方の肉を切り落とす。
手を切り落とした指を遠ざけ傷口に消毒液を振りかける。周りの皮を寄せ手早く縫った。
「はいおしまい。薬は時間がかかるから外で待ってて頂戴。因幡が届けにくるわ。料金もその時に渡してね」
「はあ。分かりました。どーもお世話になりました」
「はいお大事に」
永江が力なく出て行くのを見届けてから後片付けをゆっくり始めた。妖怪の指は貴重なので資料として保存することにした。

小指
物部 布都は右手の剣を床に差し壁に寄りかかりながらうずくまっていた。
命蓮寺と神霊廟の争いは年々激しさを増し大祀廟に火が放たれたことがきっかけとなりついに爆発した。
日が暮れると同時に命蓮寺に奇襲をかけ血で血を洗う抗争が始まった。面白半分で加わってきた妖怪と遅れて駆けつけてきた邪仙のキョンシーの群れが更なる混乱を招き一時は里の自警団が周囲を固める事態まで発生した。
やがて本堂から火の手が上がると飛び火を恐れて次々と野次馬は去っていった。

布都は寺に入ると仏像が置いてある広間へと向かい虎の妖怪と交戦した。なんとか首を落としたがひどく消耗してしまった。
自由にならない体を疎ましく思いながら深呼吸を繰り返す。戦いの中で周りについた火が徐々に強くなるのを意識しながらどの程度ここにいられるかを勘定する。
(動くのが早いに越したことは無い。しかしこのままではまともに動けん)
100数えてから動くことにして半ばまで数えた所で火の手の向こうから何者かがやってくるのが見えた。
「…」
床板に突き立てた剣を引き抜いて立ち上がる。燃えさかる炎を乗り越えてやってきたのは敵の首魁である聖 白蓮だった。
彼女は胸に神子のものであろう宝剣を突き刺したままゆっくりと近づいてくる。その手には神子の生首がぶら下げられていた。
怒りと絶望で沸騰しそうになるのを必死に押さえ白蓮に向かって武器を構える。復讐を果たすためにも落ち着く必要がある。どこを起点に攻めていくかを考えはじめた時に不意に白蓮が話しかけてきた。
「豊聡耳さんから全てを聞きましたよ。このような結果になり非常に残念です」
「…」
構えを引き締める。胸の傷だ。あそこを起点に太子様が作ってくれたチャンスを活用することにしよう。
「彼女は全部知っていました。知っていてここに踏み込んだのです。あなたにはその意味が分かりますか」
足に力を溜める。体を前にかがめ敵だけを見る。集中力が増していき敵のみが視界に入る。だが声ははっきりと聞こえ続ける。
「大祀廟に火をつけ蘇我さんを消滅させたのはあなたですね」
溜めていた力を解放する。敵に向かって一心不乱に突き進む。敵は避けるそぶりを見せずにこちらを見つめ続ける。
あと少しという所で不意に横から吹き飛ばせれ思わず武器を取り落とす。吹き飛ばされながらも何がぶつかったのかを見た。
そこには先刻切り落とした虎の首が左手に噛み付いているのが見えた。まるで生きているかのようにうなり声を上げ噛み付いてくる生首を絶叫と共に振り回すと眼前に落ちていった。左手は小指から手首までを食いちぎられていた。
「彼女は平和を望んでいました。最大多数の幸福も。先日決まった不可侵条項もその一つでした。しかしあなたはそれが気に入らなかった」
傷口を右手で握りつぶすほどの力で抑えながら転げまわる。
「彼女は蘇我さんもあなたのことも同様に大切になさっていました。だから蘇我さんを失った今となっては命蓮寺を攻める他無くなってしまった。あなたに復讐せず・・・」
痛みに必死に耐えながら傷口から手を離し再び武器を握る。
「あなたの希望を叶えることが彼女の信条を曲げないために必要だったのです」
白蓮が神子の生首をそっと床に置く。叫び声を上げながら武器を構え体ごとぶつかっていく。まるで岩にぶつかったかのような感触と共に吹き飛ばされる。
「私も長くはありません。せめて弟子の一人なり救えればと思っていたのですがそれも叶わなかったようです」
腹部に新たな剣を刺されながらも全く動じず苦笑いを浮かべる。その姿はまるで仏像のようだった。思わず悲鳴が漏れる。
「敵を討つ、というのも柄ではないので最後は皆の所で過ごします。さようなら」
床に落ちた虎の首を拾い瀕死とは思えないような足取りで炎の中へ去っていく。傷口を押さえるのも忘れその後姿に見入る。
やがて炎しか見えなくなってから布都は立ち上がり燃え盛る寺から脱出すべくどこへとも無く逃げ去っていった。

後日寺の焼け跡からは動物の骨を抱え胸に2本の折れた剣が刺さった骨が掘り出された。信者によって墓地に埋められたがしばらく経ってから何者かによって掘り出され共に埋葬された剣が無くなっていた。
設定を妄想するのは好きですが文章にするのは難しいです。
日々の健康に一杯の紅茶を
作品情報
作品集:
5
投稿日時:
2012/10/29 13:42:08
更新日時:
2012/10/29 22:42:08
評価:
4/6
POINT:
450
Rate:
13.57
分類
霊夢
布都
さとり
チルノ
衣玖
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0. 50点 匿名評価 投稿数: 2
2. 100 NutsIn先任曹長 ■2012/10/30 19:33:28
人を指差しちゃいけませんって、ママから教わらなかったか?
魔理沙は変な薬でもキメたのか?
親同然に、手塩にかけて育ててもらったお姉ちゃんを足蹴にするか?
真面目な人も、クソッタレな事をしでかすんだねぇ。
大人は対極を見据えて散って逝き、小人はその威光を穢す事しかできないのか……。
3. 100 名無し ■2012/10/30 22:59:33
薬指の話が一番好みだった。
油の温度は菜箸で確認しろとあれほど・・・。
4. 100 名無し ■2012/11/02 21:04:05
指にまつわる五つの短編。
どれもこれもキャラが立ってて実に良かった。それと人間とは違う妖怪の身体感覚も。

ズボラ衣玖さんいいね…
6. 100 まいん ■2012/11/10 16:06:25
衣玖さん見た瞬間にfxxkってやってるように感じて面白く思えた。
他の話も良かったです。
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