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『姉妹非対称』 作者: 隙間男

姉妹非対称

作品集: 5 投稿日時: 2012/11/11 13:14:32 更新日時: 2012/11/11 22:14:32 評価: 3/7 POINT: 400 Rate: 10.63
「お姉ちゃん」

地霊殿の一室で座っている少女のことを呼んだのは古明地こいし。
彼女は地霊殿の主、古明地さとりの妹である。
その妹が『お姉ちゃん』と呼んだのだから彼女のそばにいるのは姉のさとりなのだろう。

「なにかしら?」

さとりがそう反応し、振り向くと同時に、ずいっと手に持った饅頭を差し出すこいし。

「ここにお饅頭があるわ」

「あらおいしそう。腐っちゃう前に早く食べなさいな」

「私はお姉ちゃんと食べたいの」

「でも一つしか無いじゃない」

「だから、半分こしよ?」

古明地姉妹。それは、幻想郷最後の覚妖怪にして、一番の仲良し姉妹。
彼女達姉妹は、妹のこいしが瞳を閉ざした事によりバランスが取れているといっても過言ではないだろう。
もしもこいしが他者の心を見続け、捻くれた性格になっていれば、さとりも、こいしも一人ぼっちになっていたかもしれない。
さとりはこいしの心が読めないことにより、「自分が周囲から嫌われている」という妄執からこいしに逃げることができ、
こいしは姉の存在により「最後の覚妖怪」という重圧から逃れることができたのだ。
結果、こいしは瞳を閉ざすことにより自らの保身を図ることができたし、さとりは本当の意味でひとりぼっちにならなくてもよくなったのだ。

「ええ。いいわよ」

姉のさとりにはこいしの思惑など、理解することも読むこともできない。
しかし、彼女が悪意を持って現在接してきていることは無いことだけははっきりと理解している。
さとりにとって、こいしは唯一の血を分けた姉妹なのだから。

「やった!じゃあ半分こね。こっちの大きい方をお姉ちゃんにあげるわ!」

こいしにとって、姉のさとりは唯一の心やすらぐ存在であった。
唯一危惧していることがあるとすれば、自らが瞳を閉ざしたことに対して、姉は私を恨んでいるのではないのかということだけである。
しかし、今の彼女にはそんなことはどうでも良かったのだ。『今が幸せ』これだけで彼女は救われているのだから。
しかし、心の取っ掛かりは早めに外しておいたほうが良いのだろう。『自らの幸せ』を再確認するためにも。

「……お姉ちゃん」

「どうしたの?こいし」

「お姉ちゃんは、『幸せ』についてどう思っているの?」

「『幸せ』?……うーん、お燐がいて、お空がいて、こいしが私のそばに居てくれたらそれで私は十分に幸せだわ」

「……本当に?」

「本当よ」

「私が、心を閉ざしてお姉ちゃんが『最後の覚妖怪』になってしまって、それでも私がまだ我侭ばかり言っても?」

「ええ」

さとりにとって、今の質問は特になんら自らの感情に響くものではなかった。
今までもこういった質問は何度かされたのだ。そのたびに彼女は『私は幸せ』と答えてきたのだ。
しかし、それは嘘なのだ。さとりは自らの感情を殺し、妹の幸せを願ってここまで生きてきた。
地霊殿の所有権、旧地獄の管理権を得て、安心して過ごせるようにしたのもこいしの為であり。
霊烏路空、火焔猫燐を始めとするペット達も半分は自らのため、もう半分はこいしの為に用意したものだったのだ。
古明地さとりは、妹である古明地こいしの為に動かなかった日がなかった。
しかしこいしの幸せがさとりの幸せとなるわけでは無い。そして、少なくともさとりはこいしを『恨んでいる』

「大嘘。それは大嘘なんだよお姉ちゃん」

「?」

「私、知っているよ。お姉ちゃんが今まで私の為を思って行動しなかった日は無いって」

「私、知っているよ。本当は私を恨んでいるって」

「何を言っているの――」

こいしの発言がさとりを驚かせることは珍しくもなんともない。
今までだって苦しんでいる人間を見て『おもちゃ』呼ばわりしたことだってあるし殺した猫を『ガラクタ』呼ばわりしたこともある。
『感情が欠落している』といっても良いだろう。彼女は瞳を閉ざすことにより他者の意思を汲み取れなくなったのだ。
そして、それは思いやる気持ちの欠落を意味した。
そんな彼女ですら何ら驚くこと無く受け入れることができたさとりだったが、今の発言にとある意図が読み取れた時、さとりは驚愕せざるを得なくなってしまったのだ。

「全部、私のせいだって気づいてしまったの」

「あの日、私が心を閉ざしてしまったからお姉ちゃんは自らの命を絶てなくなった」

確かにそうだ。私はあの日、こいしが瞳を閉じなければ自ら命を絶っていたであろう。
なぜならそうしなければ私が壊れてしまうだろうから。

「あの日、私が心を閉ざしてしまったからお姉ちゃんはあらゆる重圧に耐えなければいけなくなってしまった」

確かにそうだ。私はこいしが瞳を閉ざしたせいで今の今までありとあらゆる重圧に耐えなければいけなくなってしまったのだ

「そして、私が心をひらいてしまったからそれらのこと全てに『気づいてしまった』」

それはさとりにとって『最悪の展開』だった。
このままさとりは自らの命の終焉までこいしを『恨んでいる』ことを隠し通して生きていくつもりだったのだ。
それは、『心を閉ざしてなお、なぜこいしは恨まれなければいけないのか』というさとりの思いやりの他ならなかった。
『彼女は私の愛だけを受け取っていればいいのだ。恨みまで受け取る必要は無い』
さとりは今日まで愛だけをこいしに注ぎ込んで生きてきたのだ。

「そして私は知っているの。それでもお姉ちゃんは私を『愛してくれた』ことに」

「だから、私はこれ以上お姉ちゃんに苦労も、重圧も掛けたくないの」

「だから………おやすみ」

そう言うと、こいしは第三の目をさとりの第三の目に向け―――





目が覚めたとき、そこは普段と変わらない地霊殿の一室だった。
只、何かがおかしいとさとりは思った。
お燐は相も変わらず怨霊たちの管理で忙しそうだし。
お空は間欠泉センターに行っているし。
こいしは旧地獄関連の書類の整理で忙しそうだった。

「あ、お姉ちゃん起きたの?」

「え、ええ……」

こいしの第三の目を見つめながらさとりはうっすらとした記憶をたどり始めた。

――なんで彼女の瞳が開いているの?

――心を閉ざしたのは彼女で……あれ?

――ああ、私が閉ざしてしまったのだったわ

さとりは、瞳を閉ざした自分の第三の目を見つめながらそう結論づけた。

「もう、お姉ちゃんに迷惑は掛けないから」

ふと、こいしがそんな事を呟いた気がしたが、さとりにはなんのことかわからないのでどう反応していいのかわからなかった。
姉妹は同時に瞳を開くこともないし閉ざすこともない
姉妹はお互いがこうやって依存しあって生きていくことが最良だと自覚しているのだから
故に姉妹『非』対称
その形を崩さないように彼女は、今日も『嘘』を吐き『嘘』にまみれた日常を生きる





久しぶりの投稿です。相変わらずの駄文ですね
スカイリムが面白すぎてはかどらないのです

なんでも産廃SSこんぺなるものをやると風のうわさで聞いたので現在頑張って執筆しています
今回も締め切りまでに出せたらいいなとおもっています

それはそうと、ちまたではついったぁというものをやっていないと皆に流行に乗れてないと言われて虐められると聞いたので始めて見ました。良ければフォローおねがいします
隙間男
https://twitter.com/sukima_boy
作品情報
作品集:
5
投稿日時:
2012/11/11 13:14:32
更新日時:
2012/11/11 22:14:32
評価:
3/7
POINT:
400
Rate:
10.63
分類
こいし
さとり
考察混じりのなにか
短編
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0. 120点 匿名評価 投稿数: 4
2. 100 NutsIn先任曹長 ■2012/11/12 00:35:31
この姉妹は精神の均衡を保つ天秤をシーソーにして遊んでいるのか?
一体、何回のスイッチを繰り返してきたのだろうか……。
ON、OFF、ON、OFF……。
4. 80 名無し ■2012/11/12 04:56:27
ずっとコレの繰り返しなんでしょうかね…
7. 100 まいん ■2012/11/13 22:25:51
依存しても良い。
二人の間にはお互いを思いやる確かな愛が存在しているのだから
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