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『産廃10KB 「萃香の省スペース計画」』 作者: ウナル

産廃10KB 「萃香の省スペース計画」

作品集: 6 投稿日時: 2013/02/24 15:03:08 更新日時: 2013/03/17 14:51:35 評価: 17/18 POINT: 1390 Rate: 14.89
「正直、もう土地が無い」
 紫の頭を悩ます新たな問題。それは幻想郷の土地問題であった。
 外の世界からの妖怪の流入、命蓮寺建設と聖徳王の復活。守矢の神による開発。
 様々な要因により幻想郷にはバブル期を彷彿させる建設ラッシュが起こり、地図の空白はあっという間に塗り潰されていった。
 一人一人が使えるスペースは縮小していき、騒音・日照などの生活に関する問題も頻出した。
 生活環境の悪化はその者の人間関係そのものにも影響を与える。人心の荒廃、治安の悪化。高騰する土地の価格に目をつけて地上げ同然のことを始める輩さえいるほどだった。
 事態を重く見た八雲紫は「幻想郷省スペース化政策」を掲げ、省スペース委員会を設立、強行な幻想郷改革へと乗り出した。


   ◆


 肩を寄せ合い道を行く人々を館から眺めながら、レミリア・スカーレットはミルクティーに赤い唇をつける。
「下々の輩が苦しむ様を見ながら飲むお茶の美味しい事。世間は土地土地と苦しんでいるようだけど、私たちには関係ないことよ。ねえ咲夜」
「はい。お嬢様。この屋敷は私の能力で拡張しておりますので、ご不便は――」
「どーん!」
 突然屋敷の壁が吹き飛び、レミリアは飲んでいた紅茶ごと吹き飛んだ。
「さてと、まずは中の物を全部運び出しちゃって。その後に工事にかかるよ」
「了解!」
 威勢のいい声と共に金槌を持った鬼や工具を抱えた河童たちが紅魔館へと侵入していく。
「な、何なのよあんたたち! 勝手に屋敷に入って――」
 起き上がり声を荒げるレミリアに〈省スペース委員会〉の腕章を付けた萃香が一枚の紙を付き付ける。
 そこには〈省スペース政策〉と銘打たれた文章に八雲紫のサインが添えられている。
「省スペース政策が施工されたんだよ。この屋敷は改修して集団住宅になる」
「なっ!」
 萃香の手から書類を奪い取り、レミリアは食い入るように文章を読む。
 文章は要約すると以下のようになった。


@幻想郷はみんなの楽園なので、勝手に広い土地を得るのはいけないことです
Aだからみんなが暮らせるように土地や建物や財産は一旦省スペース委員会が貰い受けます
Bその後に、みんなが暮らせるように土地を再分配します。文句は言わせません。文句を言う人は処罰します
C以上のことを省スペース委員会委員長、八雲紫が命じます


「そう言う訳で、この屋敷も徴収対象になったんだよ。あ、ちゃんと部屋は割り当てられるらしいから生活は心配しなくていいよ」
「ふ、ふざけんじゃないわよー! 誰が八畳一間なんて貧乏くさい部屋に住むもんですか!」
 怒りの声と共に書簡と間取りの紙を破り去るレミリア。
「こんなもの受け入れられる訳ないじゃない! 私の館も500年かけて集めたコレクションの数々も誰にも渡したりなんか」
「ゴネられても困るのよね。ここは幻想郷なんだから」
 開いた穴からさらに入って来る人影。博麗霊夢、八雲藍、さらには永遠亭の蓬莱山輝夜までいる。
 その腕にはみな〈省スペース委員会〉と書かれた腕章があった。
「な、なによ。私は弾圧には」
 たじろぐレミリアの肩を萃香が掴む。
「なあ霊夢。こいつの羽は随分とスペースを取ってないか?」
「ほえ?」
「ええそうね。省スペース法違反ね」
「え? え?」
 レミリアの左右の羽を霊夢と萃香が掴む。そして一気にそれを引き抜いた。
「っ――ぎゃあああああああああ!」
 一瞬の間の後、上がる絶叫。レミリアが床でのたうちまわる。
「それにこのスカート。スペース取り過ぎよね」
「帽子もね。こんな大きなリボンなんて無駄無駄」
「あらやだ。靴も上げ底なんかして。500歳のおこちゃまにはサンダルで十分ね」
「い、いやああああああああああっ!!」
 あっという間に服を剥ぎ取られるレミリア。やがて床には帽子をはぎ取られ、フリルスカートの代わりにスパッツを履かされ、サンダル履きにされた少女が転がった。
 かつての紅魔館の主の威厳はどこにもなく、せいぜい田舎の病弱娘という体だ。
「よーし。レミリアはこれでよし。次は……」
 ぐるりと首を回し、咲夜を見る面々。ひっ、と小さな悲鳴が上がる。
「あ、あの私は別に。むしろ空間をいじって省スペースに貢献していると思うのですが?」
「問答無用!」
「そ、そんなああああああああああ!」
 レミリア同様、咲夜もまた省スペースの波に襲われた。メイド服はヘソ出し&股下5センチまで減らされ胸に入れていた異物も取りだされた。
 さらに省スペース部隊の侵攻は続く。
「フラン! 出歩かないなら羽も手足も必要ないわよね!」
「パチュリー! こんなに本でスペース取って! 全部スキャンしてHDDにデジタル保管しなさい!」
「美鈴はこれから犬小屋に暮らすこと! 庭の花や茶畑も共有化よ!」
 上がる悲鳴を踏み砕き、紅魔館の住人も財産も全てを根こそぎ省スペース化していく。日が暮れる頃にはかつての魔の洋館の雰囲気は完全に消え、効率第一の集団住宅へと生まれ変わっていた。


 その後も省スペース委員会の活躍は進んだ。
「こんなにだだっ広い庭と屋敷なんていらないでしょ! 桜の樹も一本あれば十分ね!」
「ヒマワリばかりこんなに植えて! この地は開拓して段々畑にします!」
「伐採! 開墾! 焼畑農業! 妖怪の山も住居にするよ!」
「魔理沙が抵抗している? 家に火を点けろ! どうせ大した物は持ってない!」
「無縁塚は危険? 格安の土地として売り出せ! 死にたい奴だけ買って良し!」
 さらに省スペースは日用品にも適用された。
 箸は小さく細くなり、布団は二段ベッドに変えられた。釜戸と囲炉裏はダイニングキッチンへと変更され、風呂場は3点ユニットがデフォルト設定となった。
 古来の歴史を感じられる町並みはもはや遠く、碁盤の木目のように並んだ家は間取りも色もまるで切り張りされたコピー写真のように個性を奪われていた。


   ◆


 ふと出会った魔理沙とアリスは、どこか疲れたような猫背ぎみの姿勢で手を振りあった。
「あんたの帽子、丸くなったわね」
「そういうアリスも、人形が小さくなったな」
 魔理沙はトレードマークであった広いツバの三角帽を奪われ、何とか交渉して貰った小さな麦わら帽子を黒く塗って被っている。身の丈ほどあった箒も今では小さな手箒になってしまっている。
 アリスの方は大量の人形が問題とされ、強制破棄されかけた。一体たりとも捨てさせないと抵抗するアリスは苦肉の策として人形のさらなる縮小化に着手した。今では手の平サイズどころか指人形ほどになり、まともな弾幕勝負すら困難になっていた。
「二人ともまだいいじゃないですか。私なんかこれですよ」
 話に割り込んできたのは妖夢だ。腰に付けていた刀はそこにはなく、胸ポケットに差しているペンのようなものを取り出すと二人の前で抜いて見せる。
 ポン、と間抜けな音と共に鞘が抜け、鉛筆サイズに削られた白楼剣が姿を見せる。
「こんなの、あんまりです」
 なまじ形がそのまま残っているだけに屈辱もひとしおなのか、妖夢は剣を両手で握り締めながら悔し涙に歯噛みする。
「こんなの、許されないぜ! 私は行くぞ!」
「ええ、付き合うわよ魔理沙!」
「一揆です! 打ち壊しです!」
 怒りに髪をなびかせ、魔理沙たちは霊夢の住まう博麗神社へと向かう。
 かつて妖怪神社と言われたその地も今では高層の住宅群に囲まれ、灰色の壁の間に鳥居を構えている。
「霊夢! 居るなら出て来い! 我慢の限界だぜ! こんなのあんまりだぜ!」
「省スペ省スペそればっかり! もうたくさん!」
「紫さんに会わせてください! 直訴です! 自由のための聖戦です!」
「ぶつくさ言ってんじゃないわよ!」
 神社奥から聞こえた怒声に三人はたじろぐ。
「自分たちばかり割を食っているみたいなその言い方! 気に入らないよの!」
「なら、お前らは何か省スペースのために努力してるってのか!?」
「そうよそうよ!」
「神社もそのまま! 不公平です!」
 合唱する三人。「ならば」と小さなつぶやきと共に神社の中から影が飛び出す。
 境内へと降り立った霊夢の姿に三人は息を飲んだ。
 服装はノースリーブノー袖にホットパンツ。さらに髪のスペースすら惜しいとばかりに、その頭は日差しに眩しいつるっぱげにしている。
 ついでに他の毛も剃ったのか、わずかな剃り跡を残して消失した眉は言いようも無い迫力を醸し出していた。
「博麗霊夢には覚悟がある! 幻想郷のために身を犠牲にする覚悟が! それがまだ疑わしいというならかかってきなさい!」
「「「すいませんでしたー!!」」」
 三人は霊夢のつるつる頭に向かい頭を下げた。



「とはいえ、もう限界かしら」
 空に開けたスキマから紫は地上を見下ろす。強引な省スペースを推し進めたものの、結局の人口は変わっていないし、その煽りを受けた人々のストレスは日々積み重なっている。このままではいつ暴動が起こっても不思議ではないだろう。
「でも、人口を削るなんてのはねえ。となると移民か土地を広げる? 侵略行為なんてイマドキ流行らないのに」
「ふと思ったんだけどさ」
 頭を悩ませる紫に霧となった萃香が近づく。
「スペースが足りないなら、住人の方を小さくすれば万事解決じゃないか?」
「―――――」
 口を半開きにして呆然と表情を固めていた紫。その口が不意に弓なりになる。
「そう、そうよ! どうしてこんなことに気付かなかったのかしら! ナイスアイデアよ萃香!」
「いやあ、それほどでも」
「流石、省スペース体型なだけはあるわね!」
「どういう意味だいそれは」
 上目遣いに睨む萃香の前で、紫は清々しい笑みを浮かべる。
「委員会を招集せよ! これより幻想郷省スペース政策ぱーと2を施行します!」
 

   ◆


 男は世界を追われた者だった。
 男の居た国では結婚できるのは20歳以上の男女と定められ、それ以下の女性の写真やビデオは撮ることも所持することも禁じられていた。
 無論、20歳以下の性的表現をされた作品は法に触れ、悪質な場合は死刑まであり得た。
 だが男は世界の異端者であった。性的対象にできるのは10歳以下の未成熟な女性のみ。ちっちゃなおっぱいとつるつるなお股にしか欲情できない哀れな生き物であった。、
 そんな性癖に生まれ付いた彼にとって、世界は地獄以外の何物でもなかった。
 ある時、男はとある噂を耳にした。
 世界のどこかに小さな女の子しか居ない世界があると言うのだ。
 根も葉も無い眉唾話。だが男にとってそれが真実でも虚実でも良かった。
 地獄の中で生きるのなら、天国を夢見ながら死にたい。
 彼は楽園を目指して歩み出した。

 ――それから多くの月日が流れた。


「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
 東の果て。黄金の国で男は遂に楽園へと辿り着いた。
 通りを歩く幼女幼女幼女。
 彼女らの背丈は男の半身ほどしかない。短い手足を動かして小さな家から出入りするその姿はまさに男の夢見た楽園そのものだった。
 零れる鼻血。いきり立つ股間。障害はもはや何も無い。男は彼女らに向かって突貫した。
 その瞬間、歩いていた幼女たちの動きが止まる。
 注がれる視線の先には彼の股間があった。
「大きいぜ」
「ええ。省スペース法違反ね」
「おっきいのはいけませんね」
 側に居た巫女姿の幼女、魔女姿の幼女、刀を持った幼女が男へと歩み寄る。
「WHY?」
 男の股間は針で貫かれ、レーザーで焼かれ、刀で切り落とされた。
「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」 
 断末魔の叫びが上がる。周囲に居たショタ姿の男たちの股間が一気に省スペース化された。





「スペース問題これにて解決!」
 扇を広げ、空の上でロリ紫は満足そうに笑む。
 その横で酒の湯につかったミニ萃香がぽつりと言う。
「これはこれで別の意味で滅びそうだけどね」
 事態の重大さに紫が気付き、幻想郷子育て計画が発令されたのは、それから10年後の話であった。
Q:これって萃香あんまり関係なくね?
A:愛があればいいじゃない!


コメントありがとうございます!
>>1 10KBというテーマを聞いてまっさきに思いついたのが省スペースというネタでした
>>2 「賢者様の脳みそは、あまりスペースを取っておられぬようだ」うまいですねw
>>3 ロリショタが子育てするという世紀末状態なのではないでしょうか
>>4 ときどきこういうハイテンションを書きたくなります
>>5 紫ちゃんはダメ政治家
>>6 ありがとうございます〜
>>7 ゆかりんは今を生きているのです!
>>8 今回は難しいことを考えずに読めるSSを目指しました
>>10 ハイテンションスカトロSSならワンチャンですか?
>>11 うむ。完全に省スペースと関係ないことやってますな
>>12 倹約ダイジ
>>13 萃香が好きなのです!
>>14 グロではなくギャグで押しました!
>>15 超高速フラグキャッチャー☆レミリア!!
>>16 上っ面の省スペースでは世界は救えないわ by八雲紫
>>17 多分、髪の毛とかは省スペースしなくてよいかと
>>18 高得点ありがとうございます!
ウナル
http://blackmanta200.x.fc2.com/
作品情報
作品集:
6
投稿日時:
2013/02/24 15:03:08
更新日時:
2013/03/17 14:51:35
評価:
17/18
POINT:
1390
Rate:
14.89
分類
産廃10KB
ギャグ
3/17コメント返信
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0. 30点 匿名評価
1. 80 名無し ■2013/02/25 00:08:55
省スペースというテーマが今回の企画にもぴったりで大変いいのではないでしょうか
2. 80 NutsIn先任曹長 ■2013/02/25 00:28:40
何か勘違いした悪法をゴリ押しで進めた結果がこれだよ!!
賢者様の脳みそは、あまりスペースを取っておられぬようだ。
3. 70 おちこち ■2013/02/25 02:18:31
テーマに沿った内容でいい感じだね
皆ちっちゃくなっちゃって、一体誰が子育てするんだろ
4. 70 pnp ■2013/02/25 12:36:33
いいテンションや……
5. 80 まいん ■2013/02/25 22:01:16
ペド犯罪者の所で大いに笑わせて貰いました。
そして、後手後手にまわる賢者様(笑)が可愛すぎる。
6. 100 汁馬 ■2013/02/27 00:21:43
うむ。自分のサイズなら省スペースだからこのロリショタ天国でも暮らせるな。
テーマに沿ったすばらしい内容。
7. 70 名無し ■2013/02/27 14:36:24
お前紫、そのやってみよーいってみよーってのはこないだ土下して良くないって分かっただろいいかげんにしろ。
8. 100 機玉 ■2013/02/27 15:27:46
始まりから終わりまでノンストップで話が押し流されていくハイテンションさが良かったです。
サクッと読めて楽しむ事が出来ました。
10. 60 あぶぶ ■2013/03/01 19:47:23
ウナル氏のスカトロSSのファンだったけどこのハイテンションは少し苦手だった
11. 90 紅魚群 ■2013/03/04 00:53:30
土地の省スペースの話だったのにいつのまにか関係ないところまで話が伸びていくのがばかばかしくて面白かったです。
勢いの良さも爽快でした。
12. 60 ちゃま ■2013/03/04 17:02:50
昔社会の授業で習った、江戸時代の倹約制約を思い出しました
13. 80 んh ■2013/03/04 19:22:41
紫の行き当たりばったり感に笑いました
もう少し萃香を活かして欲しかったかなと思いました。活かせそうだっただけに
14. 100 矩類崎 ■2013/03/04 20:01:52
タイトルで色々先入観があったりで、とりあえずレミリアが剥かれた時点で唖然としました。イケイケ感がやばいです。
萃香ってのがシュールで、わからないようで微妙にわかる感。楽しかったです。
15. 60 山蜥蜴 ■2013/03/06 05:13:57
レミリアさん、フラグ回収速度、マジカリスマっす!
田舎の病弱娘ちゃんなら省スペースだから家でも飼えるだろうか。
愛があるとしても、もう少し萃香が絡んで欲しかったです。
16. 70 町田一軒家+ ■2013/03/06 14:11:28
省スペースに対する皮肉がたっぷりと込められていますね。
ハイテンションで話が進むのでサクサク読めました。
17. 100 box ■2013/03/06 17:21:31
一発ネタだけでない早いコメディで楽しかったです
・・・しかし、現実世界もこれくらいしないと不味いような・・
18. 90 名無し ■2013/03/10 07:34:17
冒頭の財産全没収があまりにも酷過ぎて見事でした。ハイテンションギャグとして高得点
名前 メール
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