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『産廃10KB「Renko Dream」』 作者: リチャード・ハットマン

産廃10KB「Renko Dream」

作品集: 6 投稿日時: 2013/02/24 15:31:49 更新日時: 2013/02/25 00:31:49 評価: 12/14 POINT: 960 Rate: 13.13
 メリーと蓮子は大学の近くのカフェで倶楽部活動を行っていた。
「あのさ、メリー。今日の朝、郵便受けを確認したらこんなのがあってさぁ」
蓮子はメリーに一枚の紙を渡す。その紙は広告チラシと呼ばれるものだった。
「え? 何かしら? 今の時代にチラシ……?」
「そうなのよ。電子ペーパーではなくて普通の紙よ。珍しいよね、そして書いてある内容も私たち向けだしね」
「うーん、夢を売りますねぇ。何かトータルリコールに似てるわね」
そう言ってメリーは注文したケーキを一口食べた。メリーの口内にふんわりと甘いスポンジが広がる

夢 売ります
あなたが望む夢をお売りします
住所 京都××市○○

「ちょっと気になっているんだけど行ってみない?」
「うーん、まあ、いいわよ。でも明日ね」
二人は会計を済ませカフェを出た。
 空は夕暮れであり北風が吹いている中、二人は別れた。蓮子は帰路を歩く。心の中では明日、どんなことが起きるのかと考え期待を膨らませていた。
 マンションの一室に戻る。部屋は服や本で散らかっていた。それを無視し蓮子は布団を綺麗にしてベッドの上の本を床に積んだ。蓮子は夢を買うつもりなのだ。明日、夢を買って楽しみたいと帰路の途中思っていた。蓮子はメリーがよく話す夢の話を退屈だと思いながらも羨ましいと少しだけ感じたことがある。それが実現する。メリーと同じ体験が出来る、そう思いながらシャワーを浴び布団に入った。
 寝返りをしながら蓮子は考える。眠れないことに対しての焦りから無心にならないと、と考え逆に眠ることが出来なかった。
「寝れない……」
 そう呟いて昔、スマートフォンと呼ばれたPHSを開いた。アプリは何も入っていない。メールも新着は無い。
「はぁ……」
携帯を充電器に差し込むと本格的に寝ようとする。さっきまで無理に寝ようと考えていたのが嘘のように布団の温もりを感じ意識が薄れていく。


ここは夢だ。
私の五感に、もやもやとした感覚が現れる。
景色がガラリと変わった。今はこの世に無い遊園地と呼ばれる場所のようだ。あまり鮮明ではない。
 私は歩く。途中、眼が一つなのに対し二つに割ったかのように眼の色が違う水色の女の子に会った。怖くはない。
「お姉さん、だぁれ?」
「え?」
「お姉さん、だぁれ? お姉さん、だぁれ?」
女の子は同じ質問を繰り返す。うるさい女の子だ。
 ヴィジョンが移り変わった。今度はどこだろうか。周りには建物がなく木や草が生い茂っているだけだ。
 私はまた歩く。今度はメリーに会った。怖くはない。しかし、メリーは私に会うと怯えていた。
「やあ、メリー」
「あなた、だれなのよ!?」
メリーはそう言って駆け足で去っていった。何故だろうか。追いかける。木に転びそうになるが追いかける。木の根のような触手が私の足に絡まる、そして足が止まり下半身にまで絡んでくる。
ぬるぬるとした感触に身体は前に進めなくなるが私の意志はメリーを求めて、必死に前に進もうとする。
私の意志に反応したのか触手は離れ前を走るメリーに向けてシュルシュルと動きどこからか集まってきた他の触手が四肢に絡みつく。
優越感が私の心を覆う。縛りつけたメリーに無理やりキスをする。
「んぅ〜、うぅ、ぷはぁ。やぁっ、離して!」
触手が下半身の布を剥がし丁寧に股を無理やり開かせ弄っていく。
喘ぎ声が私の股間を濡らす。
「あんっ! あっ !んぅ!」
上半身側の触手はスルスルと胸に向けて服の下を這い寄らせる。
下着の下まで到達すると乳房を揉みぷっくりとした乳首をひっぱるように抓る。
メリーは胸と秘部の痛みと快楽に耐え切れず座り込んでしまった。
私は近づき、また口付けを行う。離れるとよだれの糸が垂れる。
「あぁ、かわいいメリー。はやく私の物になって欲しい」
「ぁあ…… レンコ……レンコォ」
交わる準備を終え私とメリーは淫靡な音を出して一つになろうとした。
触手が私とメリーの身体に精液のような分泌液を放出していく。
クリトリスとクリトリスが合わさるとメリーの身体はビクンッと震え私が動き出すと快楽に支配された心地よい顔を私に見せてくれた。
ビクンッ! ビクンッ!
メリーの腰がカクカクと動く。私もメリーもそろそろイキそうなのだ。
「うぅっ! レンコだめぇ!」
「メリー!」

ぶしゅりゅっるるるるっ!

愛液を周りの触手から開放されたメリーは完全に堕ちた女の顔だった。別に彼女がメリーとは違う存在、つまり幻でも私がメリーと断定すればメリーである。
「はぁはぁ、レンコ好き……」
「わ、私もよ……」
 夢の中での意識が薄くなってゆく。ああ、起きるのか。



 蓮子は目覚ましの音で目を覚ました。時刻は七時。
「欲求不満なのかしら……」
 夢の記憶が瞼の下に映し出される。
 ベッドから降りて一通りの準備をして待ち合わせの駅まで歩いて行く。蓮子は化粧に少々時間が掛かってしまったが問題はないと思いいつものペースで歩いた。先ほどまでの夢のことを思い出す。断片的な夢の記憶を頭から思い出すとメリーが夢に見たことと淫夢であること導きだせた。蓮子はメモを鞄から取り出し書き記す。

2月 18日 夢。メリー、淫夢

 これを書き終えると今日訪れる場所への好奇心がまた湧いてきた。
 蓮子は駅に着くとメリーにメールで連絡をした。連絡をすると後ろから声をかけられた。

「後ろよ。十分遅刻なんだけど」
「いいや、十一分十一秒さ。さあ、行こうか」
「行こうかじゃなくて、いつも遅刻をしていいのかしら?」
 蓮子はメリーの愚痴を聞きながら改札を通り電車に乗った。目的地はここから数駅行った場所にある。

「へぇ、蓮子も夢を見るのね。でも私みたいに実際自分の意志で明晰夢みたいに動けなかったのよね?」
「私だって夢ぐらい見るわ! うーん、どうだったかな。夢って全然覚えてないからさぁ」
「そうなんだ。そういえば今日行く場所で夢を買えるのよね。好きに夢を見れるって新しいアロマみたいなものかしら?」
「それがわからないのよ。紙のチラシには詳しく書かれてないし、ネットで検索しても見つからないわ」
「じゃあ行ってからのお楽しみなのね」
「そういうことね」
会話を続けると目的地に着く。二人は電車を降りてタクシーを使って住所まで訪れた。

 近くには何もなく、首都である京都のはずだが木が生い茂った人工林の中にその店はあった。
「こんな所、あるのね……」
「まるで、秘境ね」
メリーと蓮子は近くの建物を探すと、人工林が開けた場所に建物が一軒あった。大きな看板には『夢殿大祀廟』と書かれた大昔の商店似ている建物あった。
 入り口と思われる場所に移動すると、出てくる人物がいた。二人はその人物に気づいた。
「あら? 蓮子、あの人って岡崎さんじゃない?」
「……そうね。でも何でこの店にいるのかしら? おーい、岡崎さーん」
 岡崎とは二人と同級生の女性だった。少し口数の少なく地味だが講義やオカルトの話題などで二人と知り合ったのだ。
「あら、あなた達も見つけてしまったのね。じゃあね、バイバイ」
そう言って自転車に乗り去って行った。
「見つけてしまったって、私達はチラシを見て覗きに来ただけなのにね」
「そうね……。でも彼女がどんな夢を買っていったのか気になるわね」
 二人は店に入ると中には昔レンタルビデオ店と呼ばれた場所のように『夢』のパッケージが閲覧できるように並べられていた。
「すみませーん」
蓮子がレジのような場所に行くと店員を呼んだ。
「はーいっ。なんでしょうか?」
そこに現れたのは白色の大陸風の服装の女性だった。髪に簪を挿していた。
「このチラシを見て来たんですけど初めてなので……」
「初めてのお客様ですね。私、オーナーの霍青娥と申します。お二人は夢を知っていますよね。それを自由に見ることが出来ます。好きな夢をレジまで持ってきてその分の料金を払って頂ければその日の夜に夢を見ることが出来ます。もちろん複数、夢を買って毎日買った夢を楽しむことも出来ますし、夢を売ることも出来ますわ」
 蓮子は難しそうに質問した。
「それってどんな原理なんですか?」
「企業秘密よ。ヒントは東方の魔術かしらね」
そう言って笑っていた。メリーが不安そうに蓮子と青娥の顔を見る。
「それでは、私は後ろの部屋にいますから呼んでくださいね」
 二人は彼女が行ってしまうと店内の詮索を始めた。店内は広くはない。しかし、膨大な量の『夢』が置かれていた。中には二人が興味を持つものやゾッとする程の奇怪な『夢』があった。
「メリー、何を買うか決めた?」
「やっぱり私買わないわ。何か結界の切れ目が所々にあって怖いんだもの」
「そっか。私はこの夢を買うわ」
蓮子の手に一本の『夢』が握られていた。見た目はCDケース程度でありあまり重くもない。
「ちょっと気になってね。一つだけだし大丈夫でしょ」
レジまで持っていくとそこには青娥が営業スマイルで二人を迎えた。
「あら、夢を選んだのね。お隣の彼女さんは選ばないのかしら?」
彼女と呼ばれメリーは顔を赤らめる。何か青娥には不思議な魅力のようなものを感じた。
 会計は普通に行われ蓮子が買った夢は三百円という安い値段だった。会計が終わると蓮子は気になっていたことを聞いた。
「さっき来ていた人、私の知り合いなんですけどどんな夢を買ったか。教えてくれませんかね?」
メリーは蓮子のことを小突くように見た。そんなことを聞かなくて良いだろうとメリーは思う。
「うふふ、他人の夢は気になりますわよね。えっとさっき担当してたのがアルバイトの娘なんですけどその娘に聞くよりパソコンに履歴があるので見ちゃいましょうか」
 青娥はパソコンを動かすとにっこりと笑ってきた。アルバイトも雇っているのかと驚いた。
「岡崎夢美さんは『平行世界に関する超並行時空移動型装置について』をかなり買ってるわね。うふふ、まるでマッドな科学者ね」
二人は彼女が言った夢のタイトルに背筋が凍った。確かに岡崎はオカルト関連の知人であるがここまでオカルトに詳しい人間ではない。しかしここまでその設計図のような夢に何かがあるのだろうと蓮子は思った。
「もしかして不気味だと思っています? 人はどんな夢を見ても構わないのですわよ。実際に夢と同じことを起こさなければ何も問題はありません」
「はぁ……わかりました。じゃあ蓮子帰りましょう」
「お買い上げありがとうございました。今夜の夢をお楽しみください」
 店を出るとメリーが必死になって蓮子に今夜は寝てはいけないと訴えたが蓮子は適当に返事をした。蓮子は今夜見る夢に少し恐怖はあった。しかしそれ以上に興奮と興味が胸に溢れてきた。
 蓮子はメリーと別れると早足で帰った。
 帰宅し家事を済ませて寝る準備をする。夢のタイトルは『トータルリコール』というSFの『夢』らしい。タイトルに興味が引かれたのだ。メリーがカフェで言っていた名前と同じである。
 眠るとメリーは夢の中で主人公視点へと置き換わり行動した。登場人物は私の知ってる人物になっている。

 買った夢の最後に私はメリーとキスをした。

 眼が覚めた。非常に目覚めが悪い。酔った。三百円が無駄になった訳でもない。メリーに感想のメールを送る。
「気持ち悪い……」
 蓮子は考えた。あの店が言っていた実際に起こることはないだろう。しかし、岡崎の夢は起こりそうだ。夢なんて買わなきゃ良かったとは言い難い。もう一度寝たいがまた見るのはもうごめんだ。
 夢を見ることでフラッシュバックとして思い出した。一昨日の夜から昨日の朝の夢だ。

 後日、メリーと蓮子は岡崎に話をする機会があった。話を聞くと、どうやら東京の研究室で時空についての研究職に就くらしい。良いことなのか悪いことなのか分からない。

「何か、腑に落ちなかったわね」
「無事で良かったわよ。あそこの店にはもう行かないわよ」
「でも、あそこの真実を暴いてみたくならない? だからもう一度行きましょうよ!」
「いいえ、絶対に近づくのはごめんよ。はい、今回の活動はこれで終わりね。次、講義があるからお会計しましょうか」
「あっ、いいわ。ここは私が奢る」
「あら太っ腹。珍しいわね」

蓮子はメリーに思い出した夢の内容を言わなかった。なぜなら、あの店に『夢』を売ったから。



2月 22日 夢 メリーを犯した。また淫夢。また売ろう……
2月 26日 夢 メリーと良いことをした
2月 27日 夢 またメリーとした
3月 1日 夢 メリー好き
3月 2日 メリー犯す
3月 メリー犯した

 ここは夢殿大祀廟、店内の新作と書かれた棚の一番下に成年向けの新作が時々増える。
ある常連客のお陰で……。
『男性向け 18禁 女大学生の淫夢〜触手レズ編〜』
メンヘラな詩をネットに書く秘封倶楽部の片割れの蓮根を僕に売ってください。
リチャード・ハットマン
作品情報
作品集:
6
投稿日時:
2013/02/24 15:31:49
更新日時:
2013/02/25 00:31:49
評価:
12/14
POINT:
960
Rate:
13.13
分類
産廃10KB
秘封倶楽部
宇佐見蓮子
マエリベリー・ハーン
霍青娥
岡崎夢美
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0. 40点 匿名評価 投稿数: 2
1. 80 NutsIn先任曹長 ■2013/02/25 01:05:36
夢は永遠に追い求める物です。
夢を叶えてしまったなら、それは幸いなことです。
夢に食われてしまったなら、それは辛いことです。
彼女は『夢』ではなく、『現実』を売り始めてしまった……。
3. 90 汁馬 ■2013/02/27 00:50:50
いけないことだと分かっていても自分も夢を売り買いしたいなあ
4. 100 機玉 ■2013/02/27 21:20:32
おおー夢を売り買いできるお店ですか、SFチックで良いです。
秘封倶楽部は片割れが何かにのめり込んでしまって崩れていくのが何故か映えますね。
自分も是非店のラインナップを見てみたいな。
5. 50 pnp ■2013/02/28 15:15:38
見せられる夢って夢と呼べるのかしら。
6. 70 まいん ■2013/02/28 23:09:31
いけない娘さんだ。
あれ程夢と同じ事を犯してはならないと言われたのに。
7. 80 名無し ■2013/03/01 19:58:48
実はもっと長い話を書きたかったんじゃないかなぁ・・・
カフェでだべってる二人が大冒険って言う流れが小規模になった感じ(勝手な想像)
9. 90 紅魚群 ■2013/03/04 00:56:37
夢を買える…夢の世界から抜けれなくなる的なオチを想像してたけど、まさかそう来るとは。
それにしても青娥ちゃんのプライバシーに対する倫理感がなってないな!
10. 60 ちゃま ■2013/03/04 17:07:47
夢の売買。幻想郷でなくこっちの世界であるところがまた面白い。
10kbだから仕方ないかもしれないけれど、急ぎ足な感がしてしまった。
11. 70 んh ■2013/03/04 19:33:00
オチがさっぱりしていて面白かったです
夢美を出すならもっとガンガン絡めて欲しかった
12. 70 矩類崎 ■2013/03/05 20:57:11
そんなにメリーが好きなら仕方ない。楽しく読ませて頂きました。
オカルトな妄想で精神崩壊してゆく教授を一瞬幻視しました。
13. 80 町田一軒家+ ■2013/03/06 15:08:51
結末があっさりしていたのが良かったです。
夢が現実に侵されて壊れていくさまを面白く読ませて頂きました。
14. 80 名無し ■2013/03/10 09:03:10
夢膨らむいいSFでしたね。岡崎女史が買った夢は『東方夢時空』そのものとか、
メリーにとって夢は現実に近いわけで…不特定多数との触手プレイをしなきゃいけないメリー可哀想とか。


ただ惜しい点がいくつか。
また、夢の売り買いについてもう少し解説が欲しかったところで。夢を売ると忘れてしまうのか、夢を売ることを蓮子がどう思っているのか。
視点が安定しないのでちょっと読みにくかったです。岡崎教授がどうして登場したのか、よくわかりませんでした。
容量不足の苦肉策なのかもしれませんが、二回目の夢はパロ元を引用するよりはオリジナルの夢でよかったのでは。

色々ごちゃごちゃ言いましたが10kbでこんなに空想の材料を提供できるのだから、いい作品なのは間違いありません。
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