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『物』 作者: まいん

作品集: 7 投稿日時: 2013/05/05 05:45:18 更新日時: 2013/06/22 00:05:42 評価: 4/6 POINT: 420 Rate: 14.83
注意、この物語は東方projectの二次創作です。
   オリ設定、オリキャラが存在します。





石窟を利用した石牢。妖怪の山に造られたその場に妖怪の少女が集められていた。
種族の名が示す通りの白い髪と白い肌。 白狼天狗の少女達だ。

石牢内の湿度は蒸し上がる様な熱気を帯び、肌に絡む不快とも快感とも思える触感を与えた。
臭いは不快そのもの。 灯りの油、汗と小水と体液、そして栗の花の臭い。ともすれば独特な香木の香りも含まれている。

部屋の中では至る所で男と女がまぐわっている。
体を巡る快感に嬌声を上げる者、望まぬ性交に拒絶を叫ぶ者。
自分の身に起こっている状況を受け入れず行為の終わりを祈り死んだマグロの様にしている者。
三者三様の状況であっても行為中の全員が涙を流し、行為を望んでいない事が窺える。
その中で涙を流していない者が居た。 犬走椛もその一人だ。
その者は己の誇りと共にこの訓練を山の為と思い納得した上で受け入れていた。

壁沿いに立たされている少女達が居る。 行為を見せつけられている少女達が居る。
本来身に着ている筈の服は纏っておらず各々が局部を露出していた。
それだけでは無い、緩急の違いはあれど自らを慰める様に秘裂を擦り、抜き差しし雄を受け入れる準備をしていた。
苛立ちと焦りが緊張を呼び、濡れない状態が続く。 怒る者もいた。

出る杭は打たれる。
まぐわっていた白狼天狗が苛烈な攻めにへばり、代わりの少女が補充された。
先程怒りを露わにしていた少女は顔を真っ青にして、前戯を懇願した。
少女達を犯している雄の鴉天狗は歯を見せて微笑む。少女は安心して肩の力を抜くとぎこちなく愛想笑いを返した。
雄はまだ満足していない怒張した逸物を何も濡れていない、秘裂に無理矢理押し込んだ。
切られたり、殴打されたりするのとは違い、内から来る未知の痛みに体をくねらせて叫び声を上げる。
この光景も補充された少女達のあちこちで見られた。
性行為の経験の薄い少女達が、丹田の黒い欲望に忠実な雄に耐えられる訳も無い。

「いいか、よく聞け! 貴様ら哨戒の役割を与えられた者は本隊に先じて敵に当たり、時間を稼げねばならぬ」
「だが、戦の勝敗は兵家の常。 よって虜囚の辱めを受ける時が来ぬとも限らん」
「よって、ここで房中術の取得と共に責苦に耐える訓練を終えねばならん」
「いいか、敵に捕まった時は自らの体で虜にする事が理想だ」

一人の鴉天狗は服を纏ったまま、一糸纏わぬ白狼天狗の少女達に説明をしていた。
丹田の下を山の如く怒張させ、それを隠そうともしていない。

「しかし、隊長も真面目だねぇ」
「だが、そのお蔭で我々に役得があるというものだ」
「そうそう、女が前線に出られる時代、万々歳と言った所かな」

世話話をする間も雄の手も指も腰も止まる事はなかった。
女の声を作業用の音楽にしたまま、女の体を楽しんでいる。
それに隊長と呼ばれた人物が割って入った。

「お前らがこいつらを壊さない様に見張らないといけないからな」
「へばらせるなら兎も角、山の備品を壊す事は許されないぞ」
「前回それで隊長に拳骨を喰らった事は忘れていません」
「反省しています。 すみません」
「で、隊長はいつお楽しみに?」

前回と言ったのは薬効耐性訓練の事である。
そこで一人の白狼天狗を色狂いにして壊してしまったのだ。
相も変わらず腰を打ち付ける音が、話をしている者とそれ以外で響いている。
少し悩んだ男は顎に指を当てる。

「副隊長が満足した頃かな。 俺も命は惜しい、備品を壊したくはないからな」

そう言いながら、壁沿いに並んでいる少女達に向かって戻っていった。
腰を振り、打ち付け、体を巡る快感を追及する鴉天狗達は、時に速く時に遅く自身の逸物を良く扱く場所をねっとりと楽しんでいる。

「偶には女を抱きたいもんだ」
「滅多な事を言うな。 女の体を当てがってもらうだけでも感謝しろ」
「射命丸とか良いよな?」
「はた……」
「おい、それ以上言うな。 首と胴が永遠にお別れしたく無ければな。 隊長が睨んでいるぞ」
「くそっ、お前の所為で萎えたじゃないか」
「だったら、椛に元気にしてもらえよ」

鴉天狗と白狼天狗の狂宴は朝方迄続き、少女達の体に傷や打撲、裂傷がない者は一人としていなかった。



いつか見た光景。
白銀の獅子が針を敷き詰めた様な針葉樹の木々を疾駆していた。
短いながらもたなびく白銀の頭髪は私の目を奪った。 残光として残った影も同じく白銀。
それは四季を問わずに見る事が出来た。
春は若葉萌ゆる明るい新緑に映え、夏は生命力溢るる濃緑に目立つ。
秋は生命終焉の煌めきの上に隠し様がなく、冬は銀世界の中に溶けながらも美しく輝いていた。
部屋に引き籠っては外に出ない事を咎められなかった私が久方ぶりに見た光の束、いや光景。
忘れようがない、必死で探した。 その正体を。
見つけた。 記憶の隅に追いやられた何かを探して見つける喜びを。

一介の下っ端哨戒天狗にして白狼天狗の犬走椛の存在を。

〜〜

長い間家の敷地から出なかったはたてにとって、朝の強烈な陽光は目に毒であった。
手をかざしては光を遮り、目を細めては眩しさを避けようとする。
昨日は彼女が見える位置まで行けた。 一昨日は彼女を見る事さえ出来なかった。
その前は家から出る事も困難であった。
今日は話しかけたい。 今日が駄目でも明日はきっと、明後日はきっと、その次は必ず。
勇気を振り絞って動いていた。 それも前日よりは一歩でも先にという確かな決意を込めていた。

大木の影に隠れ、いつか見た白銀の正体を補足する。
額に汗を浮かべ、口は波打った様に微妙に噤み、更に尻を突き出して前傾の微妙な姿勢だ。

「某に何か用でござるか?」

今まで見ていた影が消えている。
背後から聞こえた声は初めて聞く声だが、はたてはそれが誰の声かすぐに理解できた。

「失礼致した。 鴉天狗様に無礼を働くつもりは御座らなんだ」

体を震わせながら振り向いたはたての目に土の地面に跪く白狼天狗が居た。
跪き抵抗の素振りも見せない少女はいつか見た気高さがあった。常人には理解の出来ない誇りがあった。

「か、顔を上げて下さい。 私は貴女に用があっただけで……」

他人との話もこれが久方ぶり、途切れ途切れのたどたどしい言葉遣いで話を切り出した。
その言葉を命令と受けとり地面に擦り付けていた顔を上げる。額にはまん丸の土の跡があった。

「っぷ。 あはは、それ、おかしいよ。 あははははは」

白狼天狗の額を見て、はたては笑い出してしまう。
その様子を少女は不思議そうに見ていた。



「それでね、花果子念報って新聞を発行しているんだ」
「ほうほう、それは凄いでござるな。 我ら白狼天狗にはその様な技術は持ち合わせておらぬ故」

それで、と切り出したはたては白狼天狗の犬走椛に取材を持ちかける。
突然の事に椛はポカンとするが、すぐに持ち直すと口を開く。

「失礼を承知で言わせて頂いてもよろしいかな? 我ら白狼天狗に興味を持たれる御仁を初めて見申した」
「おかしい事かな?」
「はい、姫海棠様以外で見た事はござらん」
「……ねぇ」

先程までの緊張は無く、ジト目で椛を見つめる。
声も会ったばかりの遠慮は潜めていた。 他人との距離感が掴めていない話し方である。

「私の事は、はたてって呼んで。 私は椛って呼ぶから。 歳も近そうだし」
「いえ、某は若輩者故その様な失礼な行いは出来ないで……」
「は・た・て」
「はたて……殿」

その日は夕方まで、はたてによる質問攻めが続いた。
振り回される椛は終始あたふたしていたが、固有能力の千里眼は蟻の動き一匹に対しても逃さずに睨み付けている。
遠方より鴉天狗の姿を確認するも優先順位に沿って、はたての安全を第一に構えていた。

〜〜〜

「こんにちは、今日も来たわ」
「はたて殿、今は平和になったとはいえ、ここは哨戒を行う前線でござる。 無用な来訪はご遠慮下され」
「貴女強いんでしょ? 私一人守る位大丈夫でしょ?」
「そうとも言えぬでござる。 二人ならば某がおとりになりて、はたて殿を逃がす事が精一杯でござる」

気を取り直して、写真をパチリ。
椛は慣れていない事と苦手な射命丸文の存在もあり、どうも写真というものが好きではない。
普段より凛々しい顔つきに気付かれる事は無いが、身分の差から抵抗する事さえなかった。

「もうちょっと笑顔とか作れない?」
「任務中故申し訳ござらぬ」
「非番時なら良いのね? 次の非番を教えて?」
「ひ、姫海棠殿?」
「は・た・て。 ねぇ? いつ? ついでに取材も手伝って」
「ぎょ、御意。 明日の昼から明々後日の朝まで非番でござる」
「その時間になったら行くから待っていてね」

翼を広げて飛翔するとゆっくりと羽ばたきその場から去って行った。
鴉天狗特有の鋭さは無く、妖怪の跋扈する山にはどことなく浮世離れした存在である。
去って行くはたてを安全圏まで監視し続ける椛は、その間にはたての事を考えていた。

(これで某から離れる。 所詮は鴉天狗様の一時的な暇潰しでござる)

その日もいつもと同じだった。
遠方より鴉天狗が椛を見続けている。優先順位は、はたてが上だ。
千里眼を活用して、はたてに危害が加わろうという時は、刹那の時間よりも速く動ける様に脚に力を貯め躊躇を捨て去っていた。

〜〜〜〜

異常もなく哨戒の任を下番した椛は張った気を緩ませる様に溜息を吐いた。
上番中に異常事態が起こらない日もあるが、何度かは侵入者があったりもした。
特に理性の無い妖獣と戦った際には体に傷を負った事もある。
だが、集団的な戦争に比べれば大した事はない。
最も吸血鬼が決起した吸血鬼異変の時が最後の戦争と彼女は聞いている。
それは彼女が哨戒の任に就く前の話だ。
今回は何も起こらなかった事に改めて安堵し肩の力を抜く。

詰所に戻ると犬走と書かれた部屋に戻る。 余談であるが犬走という姓は哨戒の任に着く白狼天狗に便宜上つけられた姓である。
一人当たり三畳程の場所が割り当てられ、それとは別に収納場所もある。
一部屋には六人から八人の少女が居るが、三分の一は任務中である。

他の少女の居る中、椛はおもむろに服とサラシ、褌を脱ぐと用意していた桶と手拭いで体を清め始めた。
山野や森林を駆け巡り、時に獣や妖怪と渡り合う彼女の体は細身ながら筋肉質である。
良く見れば、首から下は細かな傷にまみれ、所々に大怪我の痕も散見された。
後処理を終えると、椛は布団に包まり泥のように眠りに就いた。

忘れている訳ではなかった。
彼女が最初に話した通り白狼天狗に興味を持つ鴉天狗が居た事は無かったのだ。
だからこそ、一時の気まぐれで自分の元を訪ねていたと思っていた。

「椛! 鴉天狗様がお呼びだよ。 早く起きてよ!」

同僚の少女の慌てた声で椛は目を覚ました。 全裸で寝ていた為、粗相のない様、素早く服を羽織る。
疾風の如く走ると、入り口に待機する鴉天狗の元に行き早々に跪いた。

「鴉天狗様をお待たせするとは申し訳ござらぬ。 何なりと罰を御命じ下され」

ここまでの椛の態度に疑問を持つ者もいるだろう。
だが、彼女のへりくだった行動は白狼天狗にとっては普通なのである。
種族の絶対的な力量もさることながら、連帯責任を課せられ、更には幼少より教育のされた奴隷教育。
山のすべての天狗は白狼天狗を天狗の姿をした物としてしか認識していないのである。

その事をはたて知らず、今までの椛の行動に疑問を持ちながらも圧倒されていた。
どうする事も出来ずに出た言葉は非常に震えている。

「いつもみたいにしてよ。 はたてって呼んでよ」

椛は床に額を擦り付けたまま微動だにしない。
はたては気が付かない。 今言った言葉がどれだけ問題のある言葉であるか。
唾をゴクリと飲み込み、先程と同じく唇を震わせながら言葉を絞り出した。

「服を着て来て下さい。 約束覚えていますよね?」
「……御意」

はたては異質とも言える状況に怯えていた。
椛の了承の言葉があろうとも普段見ている凛々しい表情がこの時ばかりは非常に威圧的に見えるのであった。
周りの白狼天狗は椛を睨み付けている。 いや、もっとおぞましくドロドロとした視線を向けていた。
当然と言えば当然だ。 鴉天狗を待たせ、呼び捨てに呼んでいた事実、更には敬語を使わせた。
如何な重い罰が彼女の所為で下るか分からないのだ。

「暫しお待ち下され」

立ち上がった椛はあっと言う間にいつもの衣装に着替えて戻って来た。
腰には護身用の小太刀を下げ、背中には盾を背負っていた。

「お待たせいたしました。 ではお供致す」
「う、うん」

足元が覚束ないはたてはふらふらと歩み始めた。 少しの段差でもあれば転んでしまいそうな程だ。
身分の上の者に対する気遣いは時として不忠と取られかねないと椛は十分に理解していた。

「御免」

椛ははたてを抱き上げると、詰所から妖怪の山から飛び立った。



上空を飛ぶ椛とはたて。 はたては椛に抱き上げられている。
異質な空気に当てられたはたての体は未だ震えが止まらず、話す事も出来なかった。
目的地の告げられなかった為、目的無く大空を遊覧している。

「はたて殿。 本日、用件のある場所は何処でござるか?」

顔を上げればいつもの凛々しい顔つきが飛び込んでくる。
いつもと変わらない。
初めに見た白銀の獅子の顔つき、四季毎に姿を変える顔つき、先程の自分に跪いた顔つき。
何も変わらない。 彼女が憧れた顔つきである。

それが、今はとても怖かった。

「ご用があれば、言って下され。 今の某ははたて殿を守る事が役目故」
「ね、ねぇ、椛は罰を受けるの?」

はたての質問は椛の考えていなかった事をいつも問うてくれた。
今回の質問は椛の目の大きさを変える程の事であった。 すぐに表情は元のものに戻ったが。

「罰などはござらん。 はたて殿は何も心配する必要は無いでござる」
「でも、あそこで私。 椛に迷惑のかかる事を言っちゃったみたいだし」

「はたて。 私は山の皆が平和に暮らせればそれで良いと思っている」
「その為にどの様な事が私の身に起こっても耐えられる。 それが私の誇りなんだ」

椛の頬が赤く染まっていく。
それよりも今までの雰囲気と違う歳相応の言葉遣いにはたては驚いた。

「い、今のは独り言でござる。 聞き流して下され」
「……っぷ。 あはは、変なの。 じゃぁ、私も自分の考えで椛に迷惑をかけない様に言葉を選んで話す事にするよ」
「あっ、これも独り言だからね」

すっかり緊張の解けたはたては椛から名残惜しそうに離れる。
そして、今日の目的の茶屋に取材の名目で向かったのであった。

椛は一部本心を語っていない。
それは鴉天狗であり身分の高いはたてには関係の無い事であったから。

今、この場で、彼女に同行している事さえ、椛にとっては、過ぎた事である。
はたてはその事を知らない。 知る必要が無い。 それが生まれの決定的な差であった。



それからも、椛ははたてに呼び出されて共に外出する事が多くなった。
時に人里。 時に神社。 時に寺。
山野を駆け巡る時もあれば、大蝦蟇の池を訪ね、霧の湖を低く飛ぶ。

はたては満足していた。 そこかしこを走る椛の姿が自分の隣にあるからだ。
かつて遠くから憧れる様に見るだけであった彼女と制限があるとはいえ友となり、その近くを共に飛ぶ事が出来るのであるから。

「本当は嫌なんだけど、今日はこいつも一緒よ」
「げっ、椛? はたて〜聞いてないよ」
「だって文には言ってないもん。 それより今日はここなんかどう? 何でも妖怪化した人形が居る絨毯の様な白い世界があるそうよ」

文とはたてがわいわい言っている間に椛は一歩下がり憂いを帯びた顔をする。
幸せなどは不要であり感じた事も学んだことも理解する事さえ出来なかった。
それが、はたての……自分の為に続いて欲しいと思うようになっていた。

〜〜〜〜〜〜

はたてと出かける様になって随分と時間が経った。
他の天狗に性処理を強要される事は少なからずあったが、概ね変わらずに友の関係をとる事が出来ている。
その日も何事も無く哨戒の任を下番した。

「椛。 鴉天狗様がお呼びだそうよ。 場所は……」

同僚からメモが渡される。 開いたメモには場所が書かれている。
その場所はあの石牢であった。

夜、石牢を一人で訪れた椛を一人の鴉天狗が出迎えた。
奥を指差すと隊長がお待ちだと簡潔に伝えた。
ここに呼び出された理由を椛は察していた。 本来ならば見張りに悪態や唾でも吐きかける権利が彼女にはある。

奥には鴉天狗が待っており、椛は雄達の前に跪き額を地に擦り付けた。

「さて、最近は姫海棠様のご息女殿と御執心の様だな。 どうした恋でもしたか?」
「お前如き白狼天狗とでは釣り合わぬわ!」
「身の程を知れ! このたわけが!」

一同が椛の行動を罵倒し、笑い合った。
一人が手を挙げると笑いはピタリと止まり、話を続ける。

「幸い、怪我や事故が無いのが幸いであるが、これは良くない前例になりかねない。 解るな?」

椛から言葉は返って来なかった。 この状態では何を言おうが弁解にはならない。
例えそれが的を射た発言であったとしても、どうにも出来る状況ではない。
はたてが悪いのでは無い。 そして椛が悪い訳でも無い。
ここに呼ばれた時から、どういう所業が与えられるかは決定していた。

再び、一人が顔を横に向ける。 すると別の鴉天狗が怒声を上げた。

「何をぐずぐずしている。 さっさと立ち上がって服を脱げ!」

慌てたり恐れたりせずに椛は立ち上がり、その場で服を脱ぎ始めた。
命令に服するのは彼女に山の役に立つという誇りがあるからだ、仲間を大切に思う心があるからだ。

名前通りの白い柔肌を見世物の様に晒した椛を一人が羽交い絞めにした。
一人ずつ殴る。 腹を殴る。 胸より下、丹田より上を殴る。
的確とは言い難い殴り方。 相手を破壊するのではなく苦悶する様を楽しむ殴り方。
骨は折れず、ただ青痣だけが増えていく。

椛を解放するとその場にズルズルと力無く倒れていった。
鳩尾、脇腹、腹筋、下腹部。 痣の無い場所は無い。

「これ位でへばるな。 さっさと濡らして準備しろ」

もそもそと寝転がったまま、秘裂を弄り始める。
腹部の打撲箇所は見た目通りに彼女を苦しめていた。 体を丸める事も反らす事も困難にしている。
秘裂は彼女が弄る弄らずを問わずに濡れていた。殴られている時に小水が漏れたのかもしれない。

「その体勢だと見えぬぞ。 座り直し我らに見える様に足を開け」

動かし擦っていた指を止めると地面に手を突き座り直そうとする。
体がバラバラになる程の痛みに耐えつつ、息を切らして姿勢を変えていく。
やっとの思いで座り直すと脚を開いて自身の秘裂を膣口まで見える様に見せつけた。

「遅い」
「どうして欲しいか申してみよ」

白狼天狗が逆らえない事は重々承知している。 椛に屈辱的な服従を迫っているのだ。
誇り高き白狼天狗でなければ話す事はないだろう。

「某のココを使って鴉天狗様の逸物を思う存分扱いて欲しいでござる」

慌てず騒がず、一人の若い鴉天狗が口元を歪め装束の脚衣を脱いでいく。

「後ろを向け」

命令を受け変わらぬ痛みに耐えながら姿勢を変えた。
ずぶぶ、と音でも立つかの様に血管の浮き出た立派な逸物が椛の胎内に飲まれていった。

「隊長、招集終わりました」
「うむ、ご苦労」

椛が後背位で責められる最中、非番と次の日上番ではない少女達が全員石牢内に集められた。
中には逃げたい者もいるだろう。 体を震わせ嘗ての訓練の精神的外傷が呼び起こされる。
それも、無駄な事。 涎を垂らして愉悦を浮かべ、これから行われる行為に嬉々としている雄からは逃れる事は出来ない。

突如悲鳴が上がる。 一人の鴉天狗が少女の服をちぎり滾る欲望を発散しようとしたのだ。
それを皮切りにあちこちで悲鳴が上がる。

「静まれい!」

怒号が上がり、一同の動作と下卑た言葉、悲鳴が止まる。
一呼吸置いた後に命令が下達された。

「一人二回罰を与えよ。 一回は身の程を知らぬ椛に一回はそれを止めようとしなかった白狼天狗共に……」
「備品は壊すな、それ以外は好きにしろ……」

歓声と悲鳴。 相反する言葉が上がり。 静まっていた場を混沌とさせた。
集団的な強姦と乱交。 罰というにはあまりにも欲望が先行し過ぎていた。
この場に悪い者は一人もいない。
強姦している鴉天狗も、強姦されている白狼天狗も、そして、犬走椛も誰一人として悪いものはいないのだ。

なぁ、椛。 そう話しかけながらも腰の動きを止めるつもりは無い。
後ろから責め立てられている椛は尻穴に力を入れ、相手の精を絞ろうとしていた。
これから、夜通しで責められるのだ、少しでも早く挿入されている逸物を満足させようと努める。

「お前は姫海棠様と友達になったつもりだろう? 悪い事は言わない彼女の事を思うなら縁を絶つんだ」

上を突き、下を突き、自身の逸物に駆け巡る快感を楽しんでいた。
夜はまだまだ長い。 この責苦もすぐには終わらない、終わらせる考えは雄達にない。

「お前と違い彼女が一度傷を負えば仲間のひいてはお山の一大事となりかねん。 良いな? 一夜の夢と思うて縁を切れ」

目的であった言葉を言い終わると、腰の前後運動を速めていく。
男はもう一つの目的を果たす為に椛の胎内に思う存分精を吐き出した。

〜〜〜〜〜〜〜

その日から、訪ねてくるはたてを椛は拒絶した。
本来ならば許されざる事。 しかし、友を仲間を思う故に仕方のない事であった。

「はたて殿。 この場を訪ねる事はやめて頂きたい。某とはこれきりにして欲しいでござる」
「え? どうして?」

はたての悲しそうな顔が椛の胸に突き刺さる。これまでならば感じなかった感情。
大切であるから離れたい、大事だから関わりたくない。
彼女とは身分が違うのだ、彼女は山に必要な人物なのだ。
椛は自分にそう言い聞かせる。 今までならばその様な事はしなかった。しようとも思わなかった。

「嘘でしょ? 昨日だって普通に話をしたじゃない」

黙して語らず。 それでも千里眼は彼女の周囲を蟻の這い出る隙間なく見張っている。
彼女の顔は哨戒の方向、はたてとは反対側に顔と体を向けていた。

「わかったわ。 でも明日も来るから。 明後日も明々後日もその次も……椛は私の唯一の友達だから」

翼を開く音を聞く、飛び立つ音を聞く、飛び去っていく羽音を聞く。
飛び立ち際に風を受けた。 鴉天狗とは思えぬ力の無い風。
椛の短い髪が乱れる。 彼女はそのまま髪を直そうともしなかった。



香の焚かれた石牢には声が響いていた。
苦しみ、呻き、哀しみ、嘆き、助けを求める。 その負の感情が渦巻く中、艶めかしい女の声が混じる。
雄が喜ぶ痴態を見せつけ、進んで自らを慰め、自尊心も何もかもを捨て去って精を求めた。
誰も彼もが変わっていく。
雄を喜ばせれば優しくしてくれる。 自身の尊厳と引き換えに女から雌へと堕ちていった。
それは耐えきれぬ災厄から身を守る為の適応であった。

だが、雄の好む者は希望を胸に耐える者であり誇り高く凛々しい女である。
その女が雌に堕ちる様は劣情を催すには過ぎたものであった。

その為、椛等は雄にとって格好の捌け口であった。
小振りな胸を鷲掴みにし、後ろから突き続ける。
力任せに、無理矢理に尻に下腹部を打ち付ける。

倒錯的な責苦も拷問も必要ない。 ただ数に任せて襲い続けるだけで良い。
どこの馬の骨とも分からぬ輩が胎内に侵入し、赤子を宿す種を蒔くだけで女の精神には多大な負荷がかかる。
体を傷つけず尊厳も自尊心も壊せる素晴らしい責苦であった。

雄は体を打ち付ける速さを上げ、周期的になされている呼吸も激しさを増していく。
強く膣口の一番奥まで突き入れると体を少し震わせた。
両腕を掴み胸を張らせる形で引き寄せ、後ろから自らに密着させて彼女の胎内で蛆や芋虫の様に気持ちの悪い律動を続ける。
やがて、吐き出せるものが無くなると若干萎えた逸物が抜かれた。
一番奥で吐き出された精は外に出る事も無く、彼女の股には潤滑の為に分泌された液体が泡立っている。
周囲は赤く腫れ複数人の相手をさせられる過酷さを現していた。
腹部の痣は完治しておらず、未だ斑模様になっている。

床に倒れて息を整えている椛に気付いた雄がいた。
彼は自らに奉仕をする少女から離れると、椛の髪を掴み顔を上げさせた。
醜く破顔させ綻んだ口からは少し黄ばんだ歯が覗く。
気付けに頬を強く叩くと自らに跨る様に指示をする。 椛は雄の逸物を呑み込むと上下に前後に動き始めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜

次の日もはたては椛の元を、先日言った通りに訪れた。
椛は今日も彼女を無視した。 話せば、話せると淡い期待を持たせてしまう。 拒絶を言葉では無く態度で示していた。
はたては話す。 独り言の様に話す。 短い短い一方的な話。 やがて、振り向いてもくれない椛に言葉に詰まる。
握り締めた拳を胸元に当て、弱気に顔を俯かせる。

「明日も来るから……話だけでも聞いてね」

またも、耳で羽音を聞いた。 段々と遠くなっていく音を能力で見続けていた。



夜は夜で変わらぬ罰が下される。
白狼天狗の少女達は鴉天狗の雄に服をすべて脱ぐよう命令された。
首輪を装着され一人一人に縄が付けられる。 抵抗する者はいない。 抵抗した所で無駄である事は明白である。
誇りを抱く者は変わらずに受け入れている。 姿勢と目を見れば一目瞭然であった。

石牢の中に悲鳴が上がる。 一人の雄が、とある少女のまだ濡れていない秘裂に逸物を突き入れたからだ。
激しく腰を振り打ち付ける中、他の少女達は怯え竦んだ。
未だ上がり続ける悲鳴に皆が皆、必死で手を動かす。

椛の名が呼ばれた。 少女達の前に歩み出させると、四つん這いで少女達に膣口を見せつける様に命令された。
指で広げ奥の奥まで見せる様に広げる。 その場所は濡れている様な状態ではない。

雄の一人が椛の顔の下付近に座り込む。 頭を掴むと口に逸物を頬張らせた。
乱暴に顔を上下させ、唾液をふんだんに塗させた。
満足のいく硬さに口から笑みが浮かび、口から逸物を抜いた。
口と逸物には吊り橋の様な透明な線が引かれる。

皆に見せつける様に尻が高く突き出させ、雄の逸物は割れ目に飲まれていった。
後には大小高低様々な悲鳴が上がり、石牢の夜は更けていった。



はたては連日椛の元を訪れた。
以前、勇気を出して少しずつ外に出られた様に通い続けた。
少しでも関係が良くなると信じ、無駄ではないと信じて通い続けた。
結果は変わらない。 訪ねて、独り言を話して、自分の無力を噛みしめて帰るだけ。

夜は、はたての知らない所で白狼天狗に対する罰は続いていた。
若い雄からはすこぶる評判が良かった。 罰を与えるという名目で若い雌にありつけるのだから。
今日も少女達は体を夜通しで体を責められる。
嫌がる場所を声の出る場所を態度が変わる場所を責められる。

数十人の嬌声が響く、同じ空間で雄雌が互いの体を貪る様に密着させていた。
未だ自身の体を汚される事を戸惑う少女は泣きながら自身の場所を擦っている。
手を引かれた少女は悲鳴を上げて拒否するが、雄にとっては劣情を催す役目しか果たさなかった。

今日も椛は雄に跨り腰を上下に振っている。 目を瞑り、涎を流し、股を閉じて搾ろうと努めていた
菊門に指が這わされる。 ピクと反応し動きが止まる。
どうした、と聞かれた椛は声も出さずに淡々と動きを再開した。
指はそのまま門から侵入し、一本の指は彼女の胎内を蛇蝎の如く執拗に犯し始めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その日のはたては椛の元を訪れず大蝦蟇の池に居た。
諦めた訳では無い。 ただ、気分を変えたかったのだ。
森の木々に囲まれ木漏れ日の射すそこは神秘的な印象を与える。
自身が山岳信仰の象徴である事を忘れ、もしくは知らず、その場で日光の反射した蓮の美しさに目を奪われていた。
傍にある薄汚れた祠に気が付く。 その場でしゃがむと祠に向かって拝んだ。

(椛とまた仲良くなれますように……)

その場に射す木漏れ日は非常に日差しが強く、池からの照り返しも相まって周囲の気温を上げた。
対照的に木々に覆われた森からは涼しげな風がそよぎ小さく葉を鳴らしていた。
丁度良い気候にはたては最近の目まぐるしい日々が嘘の様に感じ、ゆったりとした気分で落ち着く事が出来た。

ゲロッ、ゲロッ、ゲロッ……。

急に蛙の鳴声が多くなってきた気がした。 ここは大蝦蟇の池だ、彼女は特に気にする事も無い。
池から何かが飛び出て大きな音が響く。 はたてから少し離れた場所に彼女と同じ位の大蝦蟇が飛び出て来た。
池を汚す行為が無ければ襲ってこない事を知っている彼女は取り乱す事は無く、その場で引き続きくつろぐつもりである。

蝦蟇は突然威嚇行動に出た。 何の事か思い当たる節が無く、はたてはその場で止まった。

「一体、何なのよ?」

蝦蟇が跳びはたてを押し潰そうとする。 はっと気づいた彼女は何とか突進を避ける事が出来た。
だが、もう一度来た場合は避けられるかどうか自信が無かった。
目を紅の如く真っ赤に染めた蝦蟇は再度、はたてに向かって襲い掛かろうと脚に力を溜める。

「ちぇぇぇぇえええい!!!」

太陽を背にして白銀の影が舞い落ちる。
大太刀で蝦蟇の頭を潰し、その反動ではたての前に跳び降りた。

「も、椛」
「原因は解らぬでござるが、蝦蟇の様子がおかしい……。 ここは某に任せはたて殿は逃げるでござ……」
「椛ぃぃいいい」

弾力のある頭は見た目が潰れた様に見えただけで痛手を与えていなかった。
蝦蟇は太く長い舌で椛の体を巻き取ろうとする。 椛の体に舌を巻き付け丸のみにしようと引いていく。
椛は両手が自由になるとはいえ太い舌には大太刀の刃が通らず、ただ弾力に弾かれるだけであった。
地面に太刀を突き立て呑み込まれぬよう努めているが、少しずつ引かれていき呑み込まれるのは時間の問題であった。

このままならいずれ。 そう思った椛は突如太刀を離し蝦蟇に向かって思い切り飛び込んだ。
反動でよろめく蝦蟇の目に向かい、己の鋭い爪を突き立てる。

ギィィィィィイイイイイイイイイ!!!

蝦蟇の金切り音が非常に危険な傷を与えた事を物語っていた。
突き立てた爪を、そのまま幾度となく抜いては刺した。二度三度と。
蛙の返り血を浴びて椛の顔は段々と赤く染まる。
蝦蟇は変わらずに叫び声を上げるが椛を離そうとしない。
椛は牙を剥き激昂したまま舌に噛みつき、眼窩から抜いた爪を今度は舌に突き立てた。
力を込めて握った手をそのまま引き、切り裂いていく。
一つ突いては抉り、二つ突いては抉り、離さぬ舌を何度も責め立てた。

堪らず蝦蟇は池に引きずり込もうと舌を巻き付けたまま椛の体を引き付ける。
無理な体勢であったのだろう。 先程まで切り裂かれ続けた舌はブチブチと音を上げて裂けていった。
粘着性の先端に力がかかり椛の服がビリビリと破れていく。

バシャン!

両者供池に落ちたが、椛はすぐに上がる事が出来た。
返り血で真っ赤に染まった個所は池に落ちた際に綺麗になった。

「ふぅ、はたて殿。 大丈夫でござったか?」

椛の体を見たはたては言葉を失った。
先程の揉み合いではつきそうもない打撲の跡が体のそこかしこについていたからだ。
久々に話す機会が訪れた。 息を飲んではたては気を落ち着かせる。

「あ、ありがとう。 ねぇ、その体、大丈夫?」
「この程度何ともないでござる。 それより、ここは何か嫌な気がするでござる。 早々に立ち去られよ」
「違う! その痕は今ついたんじゃないでしょ?」
「はたて殿には関係の無い事でござる。 気に召される事もないでござる」
「もしかして、私の所為? 私が椛の元を訪れたから?」
「はたて殿が気に病む事は無いでござる。 もう、某の事は忘れて下され」
「私は……私は……」
「某の事を大切に思うて下さるなら。 身を案じて下され。 はたて殿、体は大事でござる」

椛に言われ、その場から力無く飛び立つ。
椛の双眼は、はたての姿をしっかりと捉え、その身に危害が加わる者が近づかぬ様に安全圏に出るまで目を逸らす事は無かった。



「んんんっ、んごぉぉぉぉおおお」

石牢の中。 数人の鴉天狗の雄に責められている白狼天狗の少女が居る。

「ええ? 椛、監視の届かぬ場所で何をしていた? 話せ!」

口には喉の奥まで逸物が収まっている。
話す事はおろか、口をきく事も出来ない。 塞がれた喉は思うように呼吸が出来ず彼女に涙を流させ苦しませた。
苦しさから顔を逃そうとするが、雄の力は容易に顔を元の位置に戻させた。
何とか息をしようとする喉奥は目まぐるしく収縮を繰り返し、雄の逸物を搾る時と同じ刺激を与えた。

「おおお、良い。 出るぞ椛。 しかと受け止めよ」

喉奥にぶちまけられた白濁液は彼女の食道ではなく、気管支に流れ込んだ。
先程とは違う苦しさに彼女は雄の尻を叩いて苦しさを訴えた。

「ブボッ、ゴボッ」

逸物と喉奥の僅かな隙間から息が吐き出され無様な音が響く。
射精から僅かに萎え隙間が空くと鼻から盛大に噴出した。

「残念だが、まだ終わりではない。 お前が話す気になるまではな」

数人の精が椛の腹を満たし膨れている。 息を整えられず休む事も出来ずに次の雄が椛の口を犯していった。
最初に口で逸物を丁寧に奉仕させ、次いで全体を万遍なくしゃぶらせる。
段々と硬度を増し雄の気分が乗って来ると頭を乱暴に掴み、喉奥に突き入れた。

「オゴォォオオ」

反応は同じ、息の出来ない苦しさと喉に異物の当たる感覚。
異物を吐き出そうとする反応から咳き込もうとする苦しさ。
今夜、何度目かの地獄の苦しみである。

「さてと、これだけ聞いても話す気はないのか?」

話そうとも話せぬ状況は雄の方が良く知っていた。
その上で椛に問うているのだ。
先程までの雄たちが感じていた感覚がこの雄にも襲い掛かる。
同じく椛の頭を乱暴に扱うと喉の奥で爆発させた。

「んむぅぅぅううう!!!」

今度は食道の方に流れたが、突如放たれた粘液に表情から苦しさが見て取れた。
射精が終わった逸物は多少萎え抜かれた。 口からは糸を引き、支えを失った体はその場に静かに崩れ落ちた。
四つん這いの姿勢で床に付く程頭を下げた椛は息も絶え絶えの状態で呼吸を整えている。

「少し責めすぎましたね隊長。 少し体を洗わせても良いでしょうか?」
「椛、汚れた体を綺麗に致せ」
「……はい」

もそもそと立ち上がり馬の水飲み樽の様な水溜めにふらふらと歩んで行った。
そこに着くと何の疑問も持たずに顔を近づける。

刹那。

「がぼぉぉおおおおお!!!」
「椛、言え! 監視の届かぬ所ではたて様に何をした!」

髪を乱暴に掴まれ、椛は水に力任せに沈められる。
それが何度も行われた。 何度も何度も。
やがて、腕から力が抜けて垂れ下がると蘇生させられ、更に水に沈められた。

水責めが終わると全身の力の抜けた椛は頭を掴まれ、喉奥を責められ続けた場所に戻された。
それとほぼ同時に別の者達が現れた。

「隊長、今日の非番者を集め終わりました」
「うむ、ご苦労。 お前達、この椛の姿が見えるか? 千里眼持ち前に出よ」

男の言葉に目に涙を浮かべ、数人の少女が歩み出た。
部屋の様子と未だ揺れている水桶からこの場で何があったかを察した。

「今日、椛がはたて様と何をしたか言ってみよ」
「わ、私の口からは言えません。 私達は何も見ていません」

何を言っても罪になる。 何も言わなくても罪になる。
白狼天狗の身分は物と同じ、鴉天狗と話をするだけでも罪になる。
少女の回答は模範解答であった。 それに良いとか悪いとかはないのだ。
彼女達に残された選択肢は罰を受ける事だけなのだ。

「それ、見た事か! 言えぬ様な事をしたのではないか!」

そこからはいつも以上の苛烈な罰が始まった。
椛は再び喉奥を責められる。 それも休みもなく連続で犯された。
他の少女に対しても同じだ。 備品である天狗衣装を破き、何の愛撫も無く突き立てた。

いつもは嬌声が上がり淫らに狂う者もいるが、今日この場に限っては悲鳴以外の言葉は上がらなかった。
獣を超えた雄の責めは底を知らなかった。
気絶や失神をした者であっても休ませず、水を浴びせたり叩いたりして無理矢理行為を行わせた。

椛は意識が朦朧としながらも雄の上に跨っていた。
他の雄が脇の下から腕を入れ、体を揺する。 力無く垂れ下がっている両腕には逸物が握らされていた。
下から突いていた雄が胎内で精を吐き出すと、脇下から腕を入れていた雄が椛を支え立ち上がらせた。

「うぐぅ……」

無防備な椛の腹に拳がめり込んだ。 鳩尾の下、胃の辺り。
鍛え抜かれた筋肉もこの場ではまったくといっていい程働かなかった。
次いで二発目。 三発、四発と続く。
治りかけていた痣に新しい彩が加えられた。

「うぐぉ、おごごごごご」

周りの雄が離れると、腹を抱えて蹲った椛は体内に放たれた精液を戻し始めた。
今晩、胃の中に何度も放たれ続けた精液は尋常な量ではなく、胃液と混ざった白濁の泡立ちは彼女の顔をゆうに超える面積に広がった。

「うぼぉぉぉぉぉ。 うぉぉぉぉえええええ」
「ふむ、我らの精を残さず飲み干した椛の忠節しかと見た。 これは調査せねばならぬのう」

一人の雄は椛の件を保留とし、叛心はないと思った。
ベシャ、今し方まで吐いていた大量の精液の海に力なく顔を着く。
尻が突き出された状態で気を失いかけている彼女に雄は更に逸物を捻じ込むのであった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

次の日。 椛の元をはたては訪ねなかった。
いつも通りの哨戒に戻った。 と椛は思った。

「体が痛いでござる」

服の下には体中に痣が残っている。
股は散々に打ち付けられた所為で未だ赤く腫れていた。
服の上からでは判らない箇所が多い中、首から上も所々に痣がある。
昨夜は興奮し過ぎた雄が少々無理を働いたからだ。

何も異常は起こらない。
季節外れの冷たい風が彼女を吹き付け、心と傷を少し痛めさせた。



その夜は何も罰が起こらなかった。
一部の鴉天狗は不満を唱えたそうだが、罰の口実が無くなった為にその日を境に下される事は無くなった。

時間が経てば経つ程に白狼天狗の少女達の体も心も癒されていくのであった。



はたては悩んでいた。
自身の悪い行いを次の日には良くしようと日々歩み続けていた。
良かれと思った事が相手に全然通じず、話し合おうとしても取り合ってもらえなかった。
長い間、屋敷内に閉じこもっていた弊害がここで現れた。
相手依存の状況に対する経験が浅すぎたのだ。
相談できる者は家族にしかおらず、また唯一関係のある文に対しても相談する事は出来なかった。

あの日から悩んだ。 悩み続けた。 頭の中には椛の為にどうすれば良いか、しか浮かばなかった。
良い案は浮かばなかった。
当然だ。 会わない事が最善であると向こうから言われたのだ。
彼女は考える事に疲れては眠った。 涙で枕を濡らす事は一度や二度ではなかった。

考えが浮かばぬままグルグルと脳内が回っていた。
どうにもならなかった。 どうにか出来る気がしなかった。

どうにもならなくなり、彼女は父に相談した。
父が何をしているかは詳しく知らない。 ただ、少し偉い人であるという事しか知らなかった。

「お父様。 少し相談したい事が」
「おお、良いぞ。 私に相談できる事なら何でも言ってくれ」

〜〜

その日も何事も無く哨戒の任を終えた。
息を吐いては緊張を続けた肩の力を抜く。 ずっと持ち続けた盾を背負い、太刀も背中に背負った。
暑さが目立つ時期ではあるが、森の木陰には太陽の日が通らずに涼しい風がそよいでいる。
空を飛ばずに避暑をしつつ詰所に戻って行った。

ところが、近づけば近づく程、何か普段とは違う雰囲気に包まれている事に気付く。
だが、住処はここしかないのだ。 身構えつつも足取りを変えず進んでいった。

戻った椛を出迎えたのは白狼天狗の少女と散々自分を嬲り倒した鴉天狗の雄であった。

「椛、今まですまなかった。 私の立場上訓練は避けて通れなかったのだ」

鴉天狗の隊長は椛に言い訳を含んだ謝罪した。
その後ろから陰口が聞こえる。

「こんなことなら椛ともっとヤっとくんだった」
「やめろ、今度は貴様一人の首ではすまないんだぞ」

軽く頭を下げると椛は疑いつつも先に進んだ。

「椛、おめでとう。 雲の上の存在になってしまったけど、私達の事は忘れないでね」

祝福する同僚達。 だが、その視線は嫉妬、憎悪、羨望などのドロドロと入り混じった気色の悪いものであった。

更に構わずに進む。 すると先には、はたてが居た。
はたては、目に涙を浮かべ椛に抱きついた。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

はたては、謝った。 ただ、謝った。 勝手に行動した事を謝った。
この時、椛は何が起こったかは知らなかった。
ただ、周りの祝福と普段とは何かが違う禍々しい空気から何かを察した。

椛は牙を奪われた気がした。
椛は爪を奪われた気がした。
椛は誇りを奪われた気がした。

彼女が事実を知るのはまだ後になるが、彼女は姫海棠はたての物となった。
はたてが友人を救う為に彼女の身を引き取ったのだ。

牙を奪われたのは気のせいではない、物に牙は必要ない。
爪を奪われたのは気のせいではない、物に爪は必要ない。
物に危険なものは必要ない。

誇りを奪われたのは気のせいではない、物に誇りなどは必要ないのだ。

胸元で泣く嘗ての友人を一瞥してはすべてがどうでも良くなった。
虚ろな瞳で虚空を見つめては、すべてを諦めた。

〜〜〜

後日談

姫海棠家に引き取られてから彼女の生活は一変した。
すべてがすべてお家に相応しい様に教育がされたのだ。
今までの生活は見直され、作法や礼儀も徹底的に教え込まれた。
それは、彼女の数百年という人生や性格すべてを否定されたのと同じであった。

はたてが頼んだとはいえ、当主(父)の意向に逆らう事はできず、会合等では度々椛の体は利用された。
こんな筈ではと思うも、もはやはたての力ではどうする事も出来なかった。

とある日に姫海棠家に招待された文は椛と共に山を逃げ出す。
元々、変わり者であるが、その時どの様な考えがあったのか?
その答えは永遠に闇のなかである。 両名は山から逃げ出した罪で掟に従って即刻打ち首にされたのだ。

すべての友人や知り合いを失ったはたては再び、昔の様に部屋に閉じこもった。
暗幕に囲まれた部屋は日の光が入らず、光と言えば彼女の携帯カメラしか存在しない。

目の下に大きなクマを作り、時に現れる元友人の幻を見ては謝っていく。

彼女のカメラに映った文と椛の姿は迷いの竹林の前である。
捕まる前に何を考えてそこを訪れ、写真を撮ったのか? 今では解る筈も無い。

その表情は何かしらの表情を浮かべてはいない。
今では彼女達が何を言いたかったのか解る筈も無い。

泣き疲れ果てた彼女は在りし日の幸せを夢みて気絶する様に眠りに就くのであった
もっと鬱展開に出来ると信じていましたが今の技術ではこれが限界でした。

匿名評価ありがとうございます。
コメントと評価もありがとうございます。楽しみに読ませて頂いております。

>1様
あや〜ん

>NutsIn先任曹長様
憧れは憧れのままにしておけば彼女にとっても、椛にとっても幸せだったでしょうね。

>3様
言われて初めて気づきました。 文の辺りは確かにもっと掘り下げればよかったですね。
このはたても同じですね詰めが甘い。 彼女には是非立ち直って欲しいものです。
そして、地の底まで堕ちて欲しいです。

>孕ませ大好き様
椛は可愛いけど、隠しているってシチュが良いと思いました。
はたてに関してはどこかで見まして、ほら封建制の山に非生産的な存在が居るのはおかしいって感じで。

>6様
私が悪ですと? ありがとうございます。
はたては進歩する努力をしたが、社会と運が悪かった。 まさにその通りでございます。
ただ、もしかしたらこれが善であったかもしれません。
まいん
https://twitter.com/mine_60
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2013/05/05 05:45:18
更新日時:
2013/06/22 00:05:42
評価:
4/6
POINT:
420
Rate:
14.83
分類
はたて
鴉天狗
白狼天狗
椛に憧れたはたての話
白狼天狗の扱われ方の話
6/22コメント返信
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0. 30点 匿名評価
1. 100 名無し ■2013/05/05 15:00:43
もみじーん
2. 100 NutsIn先任曹長 ■2013/05/05 15:30:17
小さな親切、大きなお世話。
安直な救済の結果。
後日談が全てを物語っていますね。
真相はどうあれ、これが一人の少女の招いた結果であることに変わりは無い。
3. 90 名無し ■2013/05/05 21:39:54
最後付近でで力尽きてしまった感が残念なので
文のポジションとかはたての家での立場とかも掘り下げられそうですし

結局はたては己の中途半端な憐憫と罪悪感で椛を殺してしまったようなものですね
長年の引きこもりで培われた精神を克服できるのはまだまだ先の話ですがはたてに先は残されているのやら
4. 100 孕ませ大好き ■2013/05/06 07:19:42
椛の口調が可愛かった
はたての親父さんって超えらい人なんですね
6. フリーレス 名無し ■2013/05/15 21:44:53
引きこもり如きがどうすることも出来ない相手と対峙した故の悲劇
静動の判断すら不可能
彼女の罪は己の未熟の理由である引きこもりと運が悪かったこと
まあ、糞なのは鴉天狗と天狗社会だけど 物であっても敬意は必要 所詮畜生どもということか
まあ、真の悪は作者様と他の読者様と俺だが
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