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『洒落怖秘封霖 【非公式】』 作者: ND

洒落怖秘封霖 【非公式】

作品集: 7 投稿日時: 2013/06/05 16:06:51 更新日時: 2013/06/15 00:35:35 評価: 4/5 POINT: 430 Rate: 15.17
【裏S区】

とある所に、S区という村があった。

その裏には、裏S区という村があった。

その裏S区には、不気味な宗教のような”常識”が漂っていたのだ。




『この街の裏に村があるのを知っているか?』

その話は、蓮子からもメリーからも聞いた話では無い。

『お前ら、この話に興味あるんだろ?え?』

クラスでよく僕にちょっかいを出してくる、駒田という奴だ。

男口調から男性のように思われたり、見た目も大分男性ぽいのだが、れっきとした女性だ。

『・・・意外だな。駒田さんからそんな話を聞かされるとは』

てっきり、陸上やらマラソンやらが大好きな脳筋アンド筋肉バカだと思っていたが。

ちなみに、駒田をそう呼んでいるのは僕じゃない。クラスの皆だ。

『ん?いやな。ちょっと私も絶対怪しいと思えてきたんだよ。村人はウロウロとグルグルと歩き続けているような奴らばっかだしな』

ちなみに彼女は国語の成績はあまりよろしくない。

小説やら本が嫌いだと言うのだ。僕には理解できない世界だな。



申し遅れたが、僕の名前は森近霖之助

何故、幻想郷の香霖堂で無く、この現代社会に溶け込んでいるのか疑問に思うだろう。

この世界での僕の肩書きは、とある大学に通う一介の学生・・・という事になっている。

理由は、宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーン(通称メリー)は、幻想郷を超える可能性を秘めている力を持っている・・・と、

胡散臭い紫の言葉から、強制的に監視を求められており、それに僕が選ばれたのだ。

決して燃料費の滞納で押し付けられたのではない。絶対にない。

・・・というか、この世界にも慣れてきた。

もう幻想郷に帰らなくても良いような気がしてきた。何よりここは広いしな

紫に、この世界の永住権を貰えるかどうか交渉する必要がありそうだ。



『ほう・・・裏S区の話をしているのね?』

ニヨニヨと笑いながら蓮子は僕のすぐ横でニヤけている。

『ん、まぁそういう所だ』

『・・・しかし意外ねぇ。脳筋で筋肉バカなアンタが、この世界に首を突っ込もうとしているなんて』

時々、蓮子のジャイアンのような図太さが羨ましくなる

『なんでもねえよ。ちょっと気になってみただけだ。』

『ふーん・・・。ねぇ霖くん。最近、私達オカルト倶楽部の活動が休業状態だという事に気がつかない?』

休業では無い。

最近、”人を攫う猫女”の噂を調査したばかりじゃないか

その結局、猫のコスプレをしている40代男性(無職)だという事が分かって終了したばかりじゃないか。

あの時の君が絶望した顔は今でも忘れられないよ。せめてあの時の顔を忘れてから開業したいものだ。

『・・・少なくとも、もう2ヶ月も活動は休止しているわ』

『え?猫娘の事件は一週間前に・・・』

『うわぁ!!ああああああああああああああああああああ!!!!』

瞬間、蓮子は またあの絶望した顔になった。

『猫娘?何それ知らないわよ?』

そして、すぐに表情を元に戻して猫娘の事件の記憶の抹消を完了していた。

成程、こうやって記憶は改変されていくのだなと感心した。

『おい、猫娘が一体どうしたっていうんだよ』

『何言ってるのよ何で猫娘が噂になってるのよ意味が分からないわ それにそんな事件なんて聞いたこともないわ』

早口で間髪いれずに蓮子は論した。

『・・・まぁ良いや。お前ら行ってくれるんだな?』

『もっちろんよ!!こんな面白そうな噂、バンと来いってのよ!!』

久しぶりの事件に、蓮子は興奮していた。

これは猫娘の事件を調査していた時のテンションと同じだな。




『ところでメリーはどこだ?』

『あれ?そういえば見かけないわね・・・メリー!メリーどこなのー!?』

そんな犬を呼ぶようなやり方で・・・

『メリー!ちょっメリー!!メリー!!』

メリーもメリーだな。僕たちが注目されている中で、出にくいのか

それとも、単に聞こえていないだけか。

どちらにせよ、蓮子もメリーも僕は苦手な部類だ。

『あっ!キャアー!ちょっと霖くんチャック開いてるわよ!』

『えっ!?』

僕は慌ててズボンを見た。

だが、当然チャックは閉まっていた。

『隙有りぃ!!』

『キャッ!!』

蓮子は、イキナリ現れたメリーを締め上げ、手首を捻っていた

『痛たたたた!痛いです〜蓮子ちゃ〜ん!』

『黙りなさいムッツリスケベェ。今から仕事よ!』

蓮子はメリーの手首を捻りながら引きずっていった。





【赤い橋】

『ええと・・・駒田が言うにはこの橋の奥よね?』

そこには、山奥に流れる川を跨ぐ赤い橋があった。

その向こうは、得体の知れない”何か”を感じる林がある。

『じゃぁ、早く行くわよ霖くん!メリー!・・・メリー?ちょっとメリィイイ!!』

メリーが白目を向いて泡を吹いて気絶していた。

手首を捻ったまま引きずっていたので、痛覚が限界点を超えて意識が飛んだのだろう。

そうとも知らず引きずっていた蓮子も蓮子なのだが

『ちょっと置きなさい!メリー!メリー!!』

頬をペチペチ叩いてもメリーは起きない

『ええ!?霖くん今から川で泳ぎたいって言われても!!ちょっ脱がないで!!』

蓮子が僕に向かって叫んだ。

瞬間、メリーの目が「カッ!」と見開いた。

『捕まえたぁ!!』

『うえぇ!?』

それを逃さず、蓮子はメリーの首根っこを掴んだ。

当然、僕は服を脱いでいない。

それを知ったメリーは、ガクリと首を垂れた。

『行くわよムッツリ』

首を掴む力を強めた瞬間、『ひゃ・・・ひゃい』というメリーのか細い声が響いた。






【裏S区】

『うへぇー。私たちの住宅街と変わらねぇー』

例の裏の村にたどり着いた。

人が住んでいる気配もある。電気も通っている。

それぞれの家も大分新しい物が多い。テレビゲームは少し古いが

だが、二つほど奇妙な所があった。

『・・・それにしても、人はどこに居るんだ?』

どこにも、人が居ないのである。

今は、放課後の夕方だとしても、人一人居ないというのは明らかにおかしい

だが、犬は繋がれている所が多い。

栄養はちゃんと取っているそうだ。血色の良い犬が多い

『うわぁーワンちゃーん』

メリーが、楽しそうな声で犬の元へと近づいた。

犬は、特に警戒する事なくメリーにされるがまま撫でられていた。

『大人しいねー。えへへー』

随分と大人しい

いや、これは大人しすぎでは無いのか?

他にも数匹くらいの犬が確認できるが、

どれも僕たちを睨みつけるだけで、吠えも唸りもしない。

ただじっと、僕たちを睨みつけてくるだけだった。

それが逆に不気味で、妖怪特有の嫌な予感を感じた。

・・・いや、この村に妖怪は居ない。それは間違いないのだが。

『・・・・・・なーんか、期待はずれ・・・だったみたい。』

蓮子は気づいていないのだろう。

家の窓の奥を見ると、何か変な陣が書かれているのだ。

それも壁に、大きく

更には、その陣を書かれた紙が部屋一面に貼り付けられているのを見た事もあった。

その陣は、三角の中に丸を書き、丸の中にもう一つ丸を書き、その丸の中に目が書かれており

その目の周りに謎の言葉が書かれている絵だった。

『・・・・・・』

どこにも人は居ない。

不気味なほどに人は居ない。

『・・・どこか集会にでも行ってるのかしら?』

そう、蓮子は呟いていた。

僕たちは、人が一人現れるまでこの場で立ち待っていた。



しかし、しばらく待っても一人も出てこなかった為、

夜の7時くらいで僕たちは解散となった



【教室】

『駒田ぁ!あの村には人一人居なかったわよ!?どう言う事か説明しなさい!!』

『知るかぁ!!私は裏S区の住民じゃねぇんだよ!!』

朝、一時限目の教室に集うと、駒田と蓮子が喧嘩をしていた。

『ぐぬぬぅ・・・!こんな所で終わってたまるもんですか・・・!』

本気で悔しそうな顔をしながら駒田を睨みつけていた

『ちょっと蓮子!駒田さんに喧嘩を売るってんなら私らが相手するよ!!』

近くに居た駒田のファンが、蓮子の前で遮っていた。

『アンタに用無いわよ!!私は!!裏S区に!!用があるのよぉおおお!!!』

『・・・おい霖、あいつはいつも大体あんな感じなのか?』

『何を今更言ってるんですか』

そう答えると駒田は、大きく溜息を吐いた。

『・・・これじゃぁ、宛にならねぇかもな』

『ん?何か言ったかい?』

『いや、何でもない。頑張れよー調査』

そう言って、駒田は僕に微笑みをかけて手を振って去った。

去っていく駒田の後の教室では、駒田のファンと蓮子がこちらを睨みつけていた。





【放課後】

『また、あそこに行くんですか?やったー!』

メリーは、蓮子の活動開始の言葉を聞いて嬉しそうに両手をあげた。

随分とあそこが気に入ったようだ。まぁ、大人しい犬が多いからという理由が大きいのだろう。

『・・・前回の敗因は、ずっと同じ場所を歩き回っていたというのが大きいわ。』

蓮子が、口に手を当てながら嫌な予感がする言葉を呟いている

『まさか、赤い橋の下に行くとか言わないよな?』

『行くに決まってるじゃない?何言ってるのよ』

『痛い、痛たたたたなんだかお腹が痛いよ〜〜』

正直、あの赤い橋の下には絶対行きたくなかった。

赤い橋を渡るとき、かなり嫌な気配を感じたのだ。

得体の知れない、妖怪でも人間でも神様でも無い”何か”が

橋の下で蠢いているのを感じたのだ。

間違いなく命が・・・いや、魂が危ない。

ここは、仮病で場をしのいで行くしかない。

『大丈夫ですか?霖くん。正露丸や胃腸薬なら持ってますよ。』

『これだけ準備があるなら、心配要らないわね。』

メリー・・・僕は今日一日君の優しさを恨むだろう。

『さて、今日もオカルト倶楽部の活動を始めるわよ!』

僕はため息を吐いた。

さて、遺影の写真にピッタリな写真はあったっけな




【赤い橋】

赤い橋

僕たちが見たのは間違いなく赤い色の橋だった。

だが、そんなものはどこにも無かった。

『なにこれぇ!!』

崩れている。

壊れている。

何か、大きな金づちで叩いたかのような跡があった。

『これじゃ渡れないじゃない!!ムキィイイ!!』

蓮子が地団駄踏んで怒っている。

メリーは分かりやすいくらいにガッカリしている。

この中で、一番安心しているのは僕で間違い無い。

赤い橋の残骸を見た。

ただの瓦礫だと思うかもしれないが、恐らく違う。

この橋は、二重底構造となっており、中の隙間に入っていたのだ。

今、僕が見える瓦礫の中の、見る姿も変わった茶色の骨と朽ちた数珠と大量の御札

全て酸化して茶色になっていた為、蓮子やメリーは全く”それ”に気づいていない。

『・・・しょうがないわね。向こうの橋を渡りましょう』

そう言って、この橋の50m先に吊り橋があった。

昨日にあんな橋はあっただろうか。

『・・・昨日あんな所に橋ってあったのかい?』

『さぁ、でも無いよりはマシでしょ。』

とても、僕にとっては迷惑な橋だと

心の中で落胆した。







【裏S区】

この村に来るのは二度目だが

昨日と全く同じだ。

ここには、何も無い。

誰も居ない。

だが、犬小屋には犬が居るし、餌も水も置かれている。

誰かが替えた跡があるのだ。

これはつまり・・・人が

人が昨日、少なくとも僕たちが家に帰った後に世話をしたと考えてもいい。

『本当に誰も居ないわねー。もしかして本当は誰も居ないんじゃないかしら?』

とにかく、蓮子の目は節穴だという事は分かった。

メリーは、何の不信も無く犬とじゃれている。

ここに来て、僕は一つ分かった事があった。


間違いなく村人は”僕たちの存在に気づいている。”


『あっ!』

蓮子が、とある方向に指を指した。

指を指した方向には、

『人だ!人が居る!!』

この村の住民だろうか、人が居た。

見た目は、何の変哲もなく、ただの気前の良いおばさんに見えた。

だが、妙に変な所があるように見える。

遠目からだが、じっと僕たちの方を見つめ、表情一つ変えないのだ。

『あのーすいません。ちょっとお話良いですかー?』

蓮子が話しかけてきているが、

その人は全く表情を変えない

『すいません。この村の事なんですけど、何か変な事とかってありますか?』

『・・・・・・・・・』

『例えば、変な宗教があったりとか』

『・・・・・・・・・』

『私が聞いたのは、変な人がいっぱい居るとかー』

『・・・・・・・・・』

面白いくらいに反応しない。

もしかしたら、これは置物なのでは無いか。と思うくらい反応なし。

『・・・あ、あのー・・・』

あまりの反応の無さに、蓮子はさすがに不審に思っている。

じっと、蓮子はおばさんを見つめると

おばさんは、イキナリ満面の笑みになった。

『え』

瞬間、蓮子の顔面に一発、拳を入れた。

『そうかぁ!!あははぁ!!そうだったのかぁ!!!はははは!!!』

更に一発、一発、蓮子を殴り続けていた。

イキナリの事で一体何の事か分からなかったが、

ようやく理解出来た時に、僕は

『おい!!!』

おばさんを、蓮子から引き離すために殴ってしまっていた。

『大丈夫か!?蓮子!!』

『蓮子ちゃん!!』

蓮子は若干頬が腫れているものの、大したことは無さそうだ。

『・・・ケホッケホッ・・・』

口の中が切れたのか、咳と共に血を吐いた。

『はっはっはっはっはっは!!!!』

おばさんは、狂ったように笑っていた。

笑いながら、またこちらに走り寄ってきた。

『!』

僕は、それが”人間”に見えなくなり

容赦なく、おばさんを蹴っ飛ばしてしまった。

『逃げるぞ!!』

僕は、蓮子を担ぎながら全力で走った。

『逃げられねえぞ!!お前はなぁ!!その娘から引き離されて地獄に行くのだぁ!!!』

後ろで、まだ誰かが叫んでいる。

僕には一体何が起こっているのか分からなかった。

『いあい・・・いあい・・・』

痛い、と言っている。

当然だ。蓮子の顔は、口と鼻、そして耳からも出血しているからだ。

病院に向かわなければならない。それだけを考えて村から飛び出した。



そして、吊り橋を見た。

担いだまま、この簡単な作りの吊り橋に、僕は彼女を担いだまま渡れるのだろうか。

『メリー!先に行っていてくれ!!』

『は・・・はい!!』

メリーは、僕の言われたとおりにすぐにこの吊り橋を渡り、この場から逃げていった。

メリーが居なくなったのを見計らってから、

僕は足に力を込めて、この高い川を飛び越えた。

『よしっ』

僕は、そのまま走り続けて、病院までたどり着いた。





【翌日】

『・・・・・・・・・』

今日、蓮子はやけに大人しかった。

当然だ。昨日にあんな事があったのだ。

あの村がトラウマになっていてもおかしくない。

顔に貼られたガーゼと眼帯と消毒液の跡が痛々しかった。

『・・・なぁ、蓮子、何かあったのか?』

『裏S区に行ったんだ。そしたら変人に出会って、殴られたんだよ。』

『笑いながらか?』

『ああ、そうだけど・・・何で知ってるんだ?』

『私は生まれたときから、この街に住んでるんだ。隣村の噂くらいの情報は知ってるよ』

そういえばそうか。

僕は、ここに来てから二年も経っていない

二〇年ほど、この街に住んでる者ならば、知っていてもおかしくは無い・・・か。

『・・・・・・悪かったな』

『何がだ?』

『私が、裏S区なんて余計な事お前らに言っちまったから、蓮子もあんな目にあっちまったんだろ?』

『いや、僕の情報不足が原因だったかもしれないな。』

そう軽く受け流しながら、次の時間の準備をした。

次は経済学だったか。一番興味のある教科だから逃したくないのだ。

それに、もう蓮子も裏S区には関わりを持とうとは思わないだろう。

これからは、普通に日々を過ごすのも悪くない。そう思いながら経済学の教科書を探した。





【放課後】

『今日こそ!!!裏S区の謎を解明するわよっ!!!』

放課後、門の外に出てみればバットを持った蓮子が待ち構えていた。

『・・・止めたんじゃ無かったのか?』

『誰が!!止めたと言ったの!!』

どうやら、こいつは相当な馬鹿だったようだ。

メリーでさえ、昨日の出来事で裏S区の事は避けていたというのに

こいつは”懲りる”言葉を知らないらしいな。

『次からはそうは行かない・・・殴る前に殴り返す度胸って奴を見せてやるわ!!!』

さて、久しぶりに幻想郷に帰りたくなったな。

魔理沙は元気だろうか。霊夢はまた勝手に店の物を持ち出していないだろうか。

紫は大人しく冬眠しているだろうか。していたら最高だな。帰ったら何を食べようか。

『霖くん!!!武器をっ!!武器を持ちなさい!!』

叱咤された。

懲りないと言っても、恐怖はあるらしい。

蓮子の脚は少しだけ震えていた。

メリーも、自分の身を守るためにスタンガンを持っている。

どこで売っていたのだろうか。それは






そして、この後の事をまとめると

村にはまた、誰も居なかった。

向け場の無いこの怒りに、蓮子は叫んでいたが

僕にとっては、安堵できる以外なにものでも無い。

ただ、やはり何かが違うと言ったら

”誰かに見られている”そんな視線を感じることだった。

そして、蓮子に伝えなかったものの、僕は見たのだ。

何人も人が、僕たちを覗いていた目を





【翌日】

蓮子は机の上で上半身を乗せて憔悴していた。

いや、何も考えていなかったが正しいか。

昨日の向け場の無い怒りに、蓮子は壁に八つ当たりしていたのだ。

そしてバットは跳ね返って蓮子の顔に直撃した。

『うるさいわね近づかないで』

これは相当、応えたようだ。

僕が一歩近づくだけで、殺す勢いのある目で僕を睨みつけたのだ。

さすがに今日は行かないだろう。

そう確信して、僕は今日も授業を受けようと教科書を取り出した

『おい』

そして、駒田が割って入ってきた。

『・・・昨日も、裏S区に行ったんだってな』

『ああ』

『そしてまた・・・蓮子は顔を殴られたのか。』

『いや、今度は自業自得だ』

そう言って僕は授業の準備をする。

『・・・・・・なぁ、一つ頼みがあるんだけどよ』

『?』

駒田は、両手を机に乗せて、頭を掲げながら僕に頼みを告げた

『私も、裏S区に連れてってくれねえか?』

『終わったんだ。もう』

僕がそう言うと、駒田は鳩が豆鉄砲を食らった顔になったが

すぐに真顔に戻った。

『・・・ああ、そうか。なら良いんだ。』

そう言って、駒田は僕から離れていった。

蓮子は、未だに机にうつ伏せになりながら不貞腐れている。

いや、泣いているのか?涙が蓮子の顔の下から流れているのが見えた。





【放課後】

『今日こそは、秘密を暴くわよ皆ぁ!!』

忘れていた。

蓮子は懲りないのだったな。

昨日悟ったばかりなのに、全く自分の物忘れの酷さには呆れてしまうな。ははっ

『何て思うわけが無いだろうが。お前はとっとと懲りた方が良いぞ』

『黙れ白髪ぁ!!二回も怪我を負わされて、このまま済ますと思ったら大間違いじゃぁあああああ!!!』

二回目は自業自得じゃ無かったのか

・・・だが、これは相当イラついているようだ。

また付き合わされるのかと思うとウンザリする。

・・・いや、疲れるからという理由だからではない。


毎回感じる得体の知れない気持ち悪さが癪に触るのだ。

『今回は強力な助っ人もいるわ。だから今回は絶対に油断はしない!絶対に!!』

”絶対”が二回とは、相当志が強いのだな。

『・・・・・・それで、君はどうしても行くというのだな。』

僕が振り向くと、そこにはバットを持った駒田が居た。

『ああ。あそこで、どうしてもケリつけたい事があるんだ。』

駒田は、目を据えながら裏S区のある方向を睨みつける。

そして、バットを掴む手が強くなっているのが見える。

・・・・・・何だ?

こいつは、裏S区に何の恨みがある?

『でも、本当に良いのですか?ワンちゃんは大人しかったですし、村人もあんな暴力を振るう人ばかりだから・・・』

『何が言いたいのよメリー』

『・・・・・・あの人たちは、”暴力”が当たり前になっているんだと思って・・・』

ほう、

僕が何度か思った考えを言ってくれたな。

犬が大人しかったのも、暴力による支配の影響だと考えられるだろう。

『暴力には暴力で返してやればいい。行くわよ!!』

蓮子、お前 社会の成績は何点だった

一番不安な奴がリーダーをやってしまい、不安しか残らないパーティが組まれた。





【赤い橋】

『あれ?赤い橋が復活している?』

そこには、赤い橋がちゃんと建っている川があった。

昨日までは瓦礫と化して崩れていたはずだが、何があったのだろうか。

材質が新しい事から、新しく作られたものだと言う事は分かる。

だが、何故また新しい橋を作ったのだろうか。

足を踏み入れると、やはり

『・・・・・・・・・・・・』

気持ちの悪い”何か”を感じた。

この赤い橋には・・・何がある。

そう直感しながら、一歩一歩渡っていた。





【裏S区】

相変わらず、誰も居ない村だった。

蓮子が血眼で探しているからか、村人が警戒しているのか。

犬は、相変わらず大人しく小屋で待機していた。

『相変わらず・・・留守の多い村の事ね・・・』

蓮子が辺りを睨みつけながら、首を使って村を見渡している。

その行動は、犬さえも怯えていた。

意味ないだろう。

そう、僕はため息を吐いた瞬間

『あっ!!』

蓮子が声をあげた

『居た!居たわよ!!住民発見!!』

そいつは、一昨日とは違って男性だったが、

恐らく今の蓮子には関係無いのだろう、すぐさま近づいていった。

『お?』

男性がこっちを見ると、蓮子もその場で足を止めた。

じりじり・・・と距離を詰めていく。一昨日の事で警戒しているようだ。

そして、

『はははははははは!!!』

男性は、笑い出した。

『!』

蓮子は、持っているバットと身構えた。

『そうかそうか、そういう事かぁ!!!』

そう言って、男性は蓮子を殴りに掛かった。

バキッ

という音がした。

だが、殴ったのは駒田だった。

『何やってるんだよ。お前は関係無いだろう?』

男性が、殴られた頬を押さえながら、意外そうな顔で駒田を見つめていた。

『関係無い事無いだろうがっ!!てめぇら・・・忘れたとは言わせねえぞ!!』

『いや、君が何の事を言っているのか分からないが、つまり、君は私たちに何かされているのだね?』

男性が、急に流暢に駒田と話を進めていた。

さっきまで笑っていた男性とは違って見えていた。

『だったら話は早ぇよ・・・』

そう言って、駒田は男性の襟首を掴んだ。

『駒田響子』

駒田は、誰かの名前を言葉に出した。

『・・・誰なんだ?それは』

『お前には関係無ぇ!!』

聞き込もうとすると、駒田に叫ばれた。

『駒田響子・・・ああ、確かに知ってるよ』

『!!』

駒田は、血相を変えていた。

だが、駒田の下の名は『響子』では無い筈だ。

『彼女は確か・・・七年程の治療が必要だから、治療されているはずだよ。』

『おい!治療って何の事だ!!お前らが攫ったんだろうが!!!』

『攫う?いやいや、そんな人聞きの悪い。』

何だ?

話が全然見えない

『君は何だ?響子さんのお知り合いか何か?』

『姉だ!!響子は私の妹だ!!もう分かってんだ!お前らが攫ったことくらい!!』

僕は、たった今、何か違和感を感じた。

そういえば、居ない

『だから、彼女は治療が必要だから、ボランティアで治療を行っているだけなんだよ』

『治療って、何の事だって言ってんだろうが!!』

『僕たちは、ただのボランティア団体なだけだよ。』

見渡しても、居ない。

『質問に答えろぉ!!』

『おい、蓮子とメリーはどこだ』

いつの間にか居なくなっている彼女達を、僕たちは見渡している。

『ああ、大丈夫だよ兄ちゃん。彼女たちなら大丈夫。』

男性が、まるで居なくなる事が”当たり前”のように答えた。

『あの子達ね、悪霊に憑かれているから、私達が”治療”させるんだよ。だから大丈夫。大丈夫だよ。』

『・・・・・・おい、さっきから治療って何だ』

男性は、にこやかに答えた。

『悪霊は、自分が強いと思っているから悪いことをするんだ。だから、自分は強いと示すために、粗い方法かもしれないが、暴力を加える必要がある。』

『もっと良いのは、笑いながら殴る事だね。笑うことで、”お前なんか怖くないぞ”と示すことが出来るのだから。』

もう一人、村人が現れた。

『分かるかい?私たちはボランティア団体なんだ。』

『君たちを悪霊から救うために、私たちは戦わきゃいけないんだ。』

『・・・・・・蓮子は、メリーは・・・』

今、殴られているというのか?

『治療しなきゃいけないんだ。分かるね?』






気づいたら僕は、彼らを殴っていた。

下手をしたら殺していたかもしれないほど殴っていた。

『・・・・・・・・・・・・っ』

だが、不思議と罪悪感は無かった。

早く、蓮子とメリーを探さなくては。

『・・・おい、治療室はどこにある』

『・・・・・・治療を・・・受けるのかい?君には・・・悪霊は居ない・・・』

『良いから言え』

男性は、観念したように下唇を噛みながら答えた。

『・・・・・・治療室は、治療室だ。病院にあるよ・・・』

下唇を噛んでいる為、聞き取りづらかったが

なんとか、理解することは出来た

『病院・・・?』

ここら辺に、病院なんてあるのか?

僕は、できる限り探し回った。





【廃病院】

この村に病院といえば、ここしか無かった。

他に病院らしい所など、どこにもない。

診療所の一つもこの村には無いのだ。

代わりに、家のどこかには必ず、妙な陣の書かれた板か紙が貼られている。

ここは、巨大な宗教施設なのではと考えるようになった。

いや、推測ではなく、それはほとんど確定に変わっているのだが。

『おらぁ!!!』

駒田が、回し蹴りで扉を蹴っ飛ばした。

飛ばされた扉の向こうは、やはり廃病院だ。

崩れそうな天井、剥がれた壁、軋む床

とても、営業しているとは考えにくい。

『響子!!迎えに来たぞー!!帰るぞ!!おい響子ーー!!』

駒田が叫ぶ。だが、返事は無い。

『響子!返事しろ響子!!』

ずかずかと、病院の中へと入っていく。

『・・・蓮子、メリー・・・』

彼女の名前を呟きながら、僕も病院の中へと入っていった。

途中で見えた診察室、レントゲン室、手術室・・・

どれも、扉が壊れて中が見えたが、

誰かが暴れたとしか思えない程、無残に物が散乱していた。


そして、ついに廊下の端にたどり着いた。

そこには、二階に行く階段と地下に行く階段があった。

『二階に行く階段は・・・』

ダメだ、途中で階段が壊れている。

二階にはどうしても行けないようになっているのだろう。

『・・・・・・なら、地下に行ってみよう。』

そう言って、僕たちは地下に下りる階段へと降りていった。






【地下】

地下に続く扉を開いた瞬間、笑い声が聞こえた。

『はははははははははは!!』

『ひゃひゃひゃはやひゃひゃ!!!』

村人が発する独特な笑い方

間違いなく、彼らの”治療”が始まっている声だった。

『ここが・・・治療室なのか?』

ここは、前は精神病楝だったのだろう。

鉄格子の部屋がいくつも並んでいる。

ガンッ!!

『!』

壁に何かを打ち付ける、大きな音がした。

『はひゃ!!はひゃはひゃはひゃはひゃ!!!』

僕は、物音がした扉を開いた。

そこでは、血まみれの男を殴っていた 一昨日の女が居た。

『ゴフッ!!』

駒田は間髪いれずに女性を殴り倒した

『大丈夫か!?アンタ!早く逃げろ!!』

駒田がそう叫ぶと、血まみれの男性は

次第に笑っていき、笑う声が大きくなっていった。

『罪深かったよなぁあああああああ!!罪深かった!あれは罪深かったんだなぁあああああああ!!!』

そう叫んだあと、男は意識を失った

『・・・パパなぁ、綺麗になって帰ってくるからなぁ・・・』

そう、言葉を残したあとに、男は息を引き取った。

『・・・なぁ、なんだよこれ・・・』

駒田の表情は、訳が分からず怯えている表情をしていた。

正直、僕も焦っていた。

蓮子もメリーも、ここに居たら、いずれはこうなってしまうのか・・・

『おふっ!!おふっ!!おふぅっ!!』

隣で、笑い声とは違う声が聞こえた。

『・・・あはは・・・はは・・・』

そして、笑い声にしては弱い声が聞こえた。

『!!』

その声を聞いた駒田は、すぐにこの部屋から出て

音のなった隣の部屋へと急いだ。

『響子!!』

扉を壊した、その先には

『・・・・・・っ!』

少女と交わっていただろう、豚のような男性と、

一人の、ボロボロの少女だった。

少女は、両目が潰されていて、体中には痣があって、

腹には、誰との間か分からない子供が入っており、大きく膨らんでいた

『誰だ君たちは。今は治療中だ。出て行きなさい』

男性は、虫を追い払うように手を払った。

『・・・・・・・・・・・・・・・』

駒田は、何も言わない。

ただ、少女をじっと見つめているだけだった。

『・・・・・・・・・』

少女も、じっと駒田を見つめていた。

いや、目が無いからか、分からないのだろうか。

『・・・・・・あー、この声・・・おねえちゃんだー』

少女が、口を開いた。

目が無いからか、口でしか表情が読み取れなかった。

だが、少女の表情はニコやかだった。

『あのね、お姉ちゃん。私、すごい悪い悪霊が憑いてるんだって。』

『だからね、悪い物を取り除くために、まず目を取ったの。』

『これだけで大分悪い物は取れたんだけど、まだ足りないって。』

『だから、何度も殴られて、そして村長様や聖人様に、聖なる物質を入れて貰っていたんだ。』

『もう、何百回も、ずっと、ずっと毎日入れていったから、後、もう少しだって』

『あと、もう少しで私、綺麗になって帰って来れるんだって。』

『ちゃんと、目も治るから大丈夫だよって、皆言ってくれてるから。』

『大丈夫だよ。もう少し、もう少し治療を受けてから、帰るから。』


『いつまでそこで立っているのだ、早く出て行きなさい。』

そう、男性は僕たちに通告した。

その言葉を聞いた瞬間、駒田はスイッチが入り

豚のようなその男に、全力で殴りに掛かった。




『ああああああああああああああああああああああぁぁあぁああああああああ!!!』

『あああああああああぁぁあぁぁあぁああ!!!』

『ぁああああああぁぁぁぁあああああああああああああああああああぁぁぁあああああああああぁぁああああ!!!!』




『・・・・・・・・・』

駒田は憔悴しきっていた。

男性を殺したあとは、その場で座り込んでいた。

『おい、大丈夫か?』

『・・・・・・・・・』

反応が無い。まるで屍のようだった。

屍といえば、男性の方は

もはや、人の形をしていない。肉片と血が部屋中を飛び待っていた。

そして、変わり果てた姿となった駒田響子は

まるで死んでいるように、その場で眠っていた。

『きゃぁあああああああああああ!!!』

『・・・!』

蓮子とメリーの声がした。

そうだ、まだ彼女達が残っていた。

僕は、急いで声のする方へと向かった。





『関係者の方ですか?すみませんが、治療中ですので今はお引き取りを』

僕を止めようとしてた者は、片っ端からぶん殴ってやった。

これで、この場の敵は全滅したと言って良いだろう。

蓮子とメリーは、今にも犯される寸前だったらしく、服が破けて肌が露出されていた。

その前にも何度か殴られたようで、二人共、顔が痛々しく腫れていた。

『・・・・・・・・・』

『大丈夫か?蓮子、メリー』

僕は、彼女達の手を握ると、彼女達は泣いていた。

『うっ・・・ひく・・・・・・うっ・・・』

メリーは、僕の服を掴んで、僕の胸で泣いていた。

当然だ、この状況は怖いに決まっている。

殴られ、犯されそうになる者の気持ちは、何よりも怖い。精神が崩壊してもおかしくないのだ。

『・・・もう、帰ろうか』

僕がそう言うと、蓮子は俯き、『うん・・・』と、涙を流しながら答えた。

『ごめん・・・ごめんね・・・霖くん・・・メリー・・・。私が・・・こんなワガママ言わなきゃ・・・』

『・・・帰ってから散々軽蔑してやる。今はここから逃げるぞ』

そう言って、後ろに振り向くと

村人が、沢山の村人が後ろに居た。

『すみません。お友達の方ですか?まだ治療は終わっていないので、お引き取りをお願いしたいのですが』

『ふざけるな。僕たちは今から帰る』

そう言って、僕はいつでも殴れるように戦闘体制に入った。

『それは困るんですよ。僕たちも、こんな事はしたくないのですがね?”治療”は人類に必要不可欠な要素なのです。』

『だから、僕たちは貴方達から救ってるんですよ。悪霊から引き離すためにもね。』

『・・・さんざん殴って、さんざん犯す事が”治療”だというのか。随分イカレた常識だな』

『普通の人たちには受けいられない事は承知していますが、これが一番正しいやり方なのです。』

ダメだ、こいつらには常識は通用しない。

・・・・・・蓮子が言ったように、”暴力には暴力で返せばいい”のだろうか。

それが一番正しい。そのような気がする。

『それでは、治療を始めましょうか。』

ガンッ!

何かを殴る音が聞こえた。

村人の群れの向こうで、駒田がバットを振り回していた。

『治療してやるぁああ!!てめぇらを治療してやるぁああああ!!!』

血まみれの姿のまま、バットを振り回し、村人たちを撲殺し続けている。

『はははははははは!!』

『ひゃひゃはやひゃひゃや!!』

『はははっははははっはっはははっはっは!!!』

全員、笑いながら撲殺されていた。

『てめぇら!!ふざけんな!!ふざけんなよ!!!』

駒田が叫ぶ、そして、村人は笑う

『はははははははははあっはははははは!!』

『ひゃひゃひゃはやひゃひゃははひゃ!!』

『ふひー!!ふひひひひひひひ!!!』

『ああああああああああ!!ああああああああ!あああ!!ああああああああああ!!』

笑いながら殴られる村人、

絶叫しながら殺し続ける駒田

飛び散る脳みそと肉片

僕たちは、その光景を、ただ見ることしか出来なかった。

入れなかったのだ。その戦いに。割って入る事が出来なかったのだ。

『・・・霖くん・・・』

メリーが、ガタガタ震えている

蓮子が、呆然とその光景を見ている。

それに対して、僕は

一刻も早く、ここから脱出したかった

『ひゃひゃやひゃひゃ!!らおいえほあえはひゃはひゃぁえぁれ!!!』

『ひぃー!!ひっひっひ!!!』

『えいおgふぁsdgふぁsdgふぁsdじょgfsdじゃlじょいうぇらぎおrうぇ!!!!』

『はーっはっはっはっはっはっはっは!!!!』

『ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』







【赤い橋】

気づいたら、ここまで走って逃げていた。

体中、切り傷と打撲でいっぱいだった。

途中で転び、途中で転び、途中で斬られたのだろうか。

いや、切れたと言った方が良いのかもしれない。

『・・・・・・・・・』

もう二度と、あの村には行こうとしないだろう。

謎は、まだ残っている。

それが気にならないと言ったら、嘘になるが

それ以上に、もうこれ以上あの村に関わりたくなかった。

『・・・・・・帰ろう。』

僕はそう呟き、眠る二人を担ぎながら下山をする事にした。

だが、川の向こうから何かが流れてくるのが見えた。

何だろうか、と

ここまで流れてくるのを観察していた。

人形?では無いようだ。

木でも動物でも無いようだ。

人間だった。

駒田だった。

殴られすぎて、斬られすぎて、骨は全て砕かれて、中身がはみ出ていて

人の形をしていない、駒田の死体が流れてきたのだ。

ただ、駒田だと分かるように顔を残して。










【二日後】

今日は、駒田の葬式だ。

一昨日、駒田の死体を見つけた僕は、すぐさま警察に連絡した。

駒田の死の報は、駒田の家族にも届けられ、

そして今日、ひっそりと葬式は挙げられる事となった。

『・・・誠に、残念な事になってしまいましたなぁ・・・』

駒田の葬式は、意外な事に人が少なかった。

いや、まだ誰も揃っていない。と言った方が正しいか。

この葬式に来ているのは、僕と蓮子とメリーと、ファンだった子達だ。

僕は、彼女を守れなかった悔しさに虚しく項垂れ

蓮子はうつむいたまま前を向こうとしない。

メリーはずっと泣いている。

遺影に映る彼女の顔は、とても幸せそうで

死に様を想像すれば、やるせない気持ちになってきた。

申し訳ない。

そう、自己嫌悪に陥って頭を抱えた。

だが、

本当に誰も来ない。

もう、準備が整ってから一時間が経った筈だ。

なのに、何故ほとんど誰も居ないのだろうか。




すると、葬式から

ずかずかと、蛍光色の僧職と、後ろに喪服を来た人たちが並んで入ってきた。

笑顔で、皆の手には紙と、

御祝儀が持たれていた。

『・・・アンタ達は?』

駒田の親父さんが、その集団に声をかけた。

『お父さん。彼女はこのままだと地獄に行ってしまいますよ。』

『・・・何?』

『だから、私達がここに来たのですよ。』

『・・・おい、何を言っている?』

親父さんは、彼らの手に持っている御祝儀を見て、

彼らに掴みかかった

『おい、それは甥の御祝儀じゃないか!何故貴様が持っているんだ!!』

すると、彼らは親父さんを殴った。

『出て行け!!駒田さんの親父さんの身体から出て行け!!』

『止めて!!』

そこで、駒田のお袋さんも割って入ってくる。

『何してるの・・・アンタ達!?』

そして、その集団は紙を駒田の棺桶にペタペタと貼り続けていた。

その紙には、あの村で見た陣と真ん中には名前が書かれていた。

間違いなく、駒田の名前でない名前が、ずらりと

棺桶が侵食されていく。

まるで彼女が彼らに侵食されているかのように

『何してるのよ!?止めて!!』

ファンの子も彼らを止めに入ったが、

『ははははは!!』

その子を殴りつけ、押さえつけた。

その間にも、彼らは棺桶に陣の書かれた紙を貼り続けている。

『アンタ達おかしいわよ!!!何でこんな酷い事を!!!』

駒田のお袋が、絶叫した。

駒田の親父さんは、

『娘から離れろ!!外道者がぁ!!!』

そう言って、片っ端から彼らを何度も殴った。

だが、

『ははははははあははははははははあ』

『ひゃはやひゃひゃひゃひゃひゃは!!!!』

彼らは、笑い声を更に大きく、そして、親父さんを殴り返した。

親父さんの血が、辺りに飛び散っていく

『嫌ぁぁぁぁああああああああああああ!!!』

蓮子が、絶叫しながら逃げていく

メリーが、泣きながら逃げていく

いつか聞いた、笑い声が葬式の中で響く

二度と聞きたくない笑い声が、葬式の中で響く


地獄


それは、きっとこの場所の事を言うのだろう。

駒田の棺桶は、完全にあの陣に埋め尽くされていった。

これでは、もう二度と駒田は浮かばれない。

駒田の遺影の笑顔が、とても悲しく見えた

笑っている

葬式なのに、笑っている。

結婚式のお祝いかのように、笑っている。

死人を真ん中に置いて、笑っている。

親族の絶叫

絶叫

絶叫

僕は、この場所に耐え切れなくなって

逃げ出そうとした。

後ろには


大量の青い人間が僕たちを睨みつけていた。

目が無い 目から黒い液体 顔がありえない程細い 分かった、あれは血だ。血なんだ


僕は、そこで気絶した。






【翌日】

気がついたら、僕は部屋に帰っていた。

誰が僕をここまで運んでくれたのだろうか。

それは知らないが、僕は部屋に居る。

身体をまさぐってみると、どこにも変な所は無い。

ただ一つ

ポケットには、あの陣が書かれた紙がねじ込んであった。




【学校】

『・・・・・・・・・おはよう。霖くん』

蓮子の挨拶には、元気が無かった。

当然だ、もう完全にトラウマになったのだ。

あんな事があれば、妖怪だってトラウマになる。

メリーは、今日は欠席するそうだ。

当然だ、昨日の出来事はショックが大きすぎる

半妖の僕だって、あれは正直、何が何だか分からなかった。

初めて、本当の”恐怖”を垣間見た気がする。

『ねぇ、駒田って裏S区の近くで死んでいたのよね?』

教室の端で、噂話が聞こえる。

昨日のことは、噂になる事は間違い無いと思っていたが

正直、体験した者である僕たちには、その話題は面白く無かった。

『しかも、葬式の仕方が何かおかしかったって聞いたけど・・・』

『ちょっと、聞いてみようか。』

そう、彼女達はそう言って、蓮子に近づく

『ねぇねぇ、蓮子さん』

蓮子は、ピクリとも反応しない。

『あんたさぁ、駒田さんと一緒だったんでしょ?』

蓮子は、ピクリとも反応しない

『ほら、あの裏S区って場所でさぁ。』

グルリ、と蓮子の首が彼女の方へ向けられた。

ガタリ、と蓮子は立ち上がった。

『うわぁ!!ああああああああああああああああああああ!!!!』

瞬間、蓮子は またあの絶望した顔になった。

そして、この教室から逃げていった。

・・・彼女の傷は大きい。

今、裏S区の話題は出さない方が吉だったな。そう思いながら

今日は、教科書を出さずに窓の外を眺めて呆けていた。






【赤い橋】

放課後、またあの橋に向かってみた。

橋は、やっぱり壊れていた。

一体誰に壊されているのか、それが分からないが。

何度も立て直されている事から、結構大事な橋だと分かる。

だとしたら、”いつ直されている”のかが問題になるが。

これくらいの川だったら、飛び越えられるのだ。

飛び越えた際、革の底で見たのは

『・・・・・・・・・人間・・・か?』

骨と、皮と、肉・・・そして、内蔵が揃っていた。





【裏S区】

この村には、相変わらず人が居なかった。

だが、今回も前回とは相違点がある。

今度は、犬も居ないのだ。

どこか遠い所にでも行ってしまったのだろうか。

だとすれば、都合が良い。

もう二度と関わりたく無いものだ。この村には

『・・・・・・にしては、窓という窓が新聞紙で覆われてるな・・・』

そうだ、今度は中が見えなくなっている。

新聞紙を貼って、まだ残っているのか

新聞紙を貼って、どこか行ってしまったのか。

それが分からない。

だが、もうどうでも良い事だった。

誰にも出会わない事を願いながら、僕はある場所へと向かった。




【廃病院】

地下へと続く階段は、埋められていた。

もうここで”治療”が行われることは無いだろう。

そういえば、二階はどうなっているのだろうか。

途切れている為、行くことは人間では不可能だが

『・・・・・・っと』

ある程度、無理をすれば登れる事は無い。

そう、やって登ってみたが

後悔した。

『うわっ』


壁や床や天井一面に、あの陣の書かれた紙が貼られていた。

更には、赤い黒い血が飛び散っている跡が残っている。

しかし、そんな物よりも僕が目に止まったのは

真ん中の机の上に置かれた譜面立てに立てられている

「ヤサニタ マモル」と書かれた紙だった。

誰かの名前だろうか

そこに立つ異様な雰囲気を放つ紙に、僕は違和感しか感じない。

『ははははははははは!!!!』

笑い声が聞こえた。

あの声だ

僕は、すぐさま振り返った。

誰も居ない。

『ははははははははははは!!!!』

だが、声は聞こえる

『誰だ・・・おい、誰だ!』

僕が問いかけても、誰も答えない。

『ははははははははははは!!!』

ただ、笑い声だけが聞こえる。

声のする方向へと、歩んでみる。

すると、ある箱の前にたどり着いた。

『ははははははははははは!!!!』

箱の中には、

大量の笑い袋が入っていた。

袋を押すと、笑い声がする昔流行った玩具だろう。

僕は安堵すると、笑い袋を箱に戻した。

もう、ここには何も無いな。そう感じたときに

僕は、静かに下へと下りた。





しかし、帰る途中に何かを思いついた。

あの笑い袋、一体誰が押したのだろうか。

誰かが押さなければ、あの笑い袋は鳴らない筈だ。

つまり

少なくとも、僕は見られていたのだ。

もう一人、あそこに人が居たのだ。

僕は、後ろを振り返った。だが、誰も居ない。

僕は急いで、家路についた。




裏S区の調査は、これで打ち切られた。

蓮子も、順調に元気になっている。

メリーも、元気を取り戻している。

僕たち秘封倶楽部は、もう二度とあの村の事は絶対禁句になったが

また、懲りずに他のオカルトに首を突っ込んでいくだろう。

今回の事に、またなるかもしれないというのに。

『もうそれは、言わない約束でしょ・・・』

しまった。と思った時にはもう遅かった。

蓮子はトラウマを思いだし、震えだした。

僕は、彼女の手を握って落ち着かせた。

『・・・・・・ごめんね・・・霖くん・・・メリー・・・駒田・・・・・ごめん・・・・・・』



裏S区は、まだ街の裏に残っている。









【蛇足1】

猫娘

そんな事を言われているかもしれないが、私は

この街の裏にある「  村」の村長だ

私は、彼らを引っ張っていかなくては鳴らない。

服は、これは猫に見えるが、そうでは無い。

ちゃんとした、村長の制服のようなものだ。

二つ頭のトンガリ帽子と、毛皮の服

この街に住む人達に住む悪霊を追い出さなくてはならない。

それは、決して終わらない戦いなのだ。

終わらないからこそ、私たちは戦わなければならない。

悪霊で苦しめられている人たちは、まだ何万人も居る。

早く浄化して、普通の人間に戻してやらなければならない。

さあ、今日も仕事だ

一人でも多く、彼らを悪霊から救ってやらなければ。

私は、いつもの正装に着替えて

悪霊に囚われた子供達を、救いに行く







【蛇足2】

おねえちゃん

私、ずっと昔・・・昔の話

おねえちゃんのお人形を壊しちゃって、

『この悪魔!』って言われちゃったよね。

私、お姉ちゃんと比べて頭が悪いし、運動も出来ないし、目も悪い。

私は、おねえちゃんの妹じゃないのかな。って思ったら

違ったんだ。村長様が言ってくれたの。

「お前は。悪霊に囚われているんだ。だから、私達が救ってあげるよ。」

だから、私これから綺麗になるよ。

本当におねえちゃんの妹になれるんだよ。

悪い物が、全部無くなって、また一緒に暮らせるんだよ。

今度は、本当の私と一緒に

悪い目も、これから交換してくれるんだ。

村長様と聖人様の綺麗な物が、私の中に入って綺麗にしてくれるんだ。

あと、もう少しだよ。あと、もう少しだよ。

あと、もう少しで・・・・・・

また・・・一緒に・・・・・・

あそ・・・・・・べ・・・て・・・・・・

・・・・・・・・・





『おい、死んじゃったみたいだぞ。響子ちゃん。』

『そうか、だけど。三年も聖人様に綺麗にしてもらえたんだ。身体は凄い綺麗になっているだろう。』

『だから、これから赤い橋にするって話らしいぜ。』

『良いなぁ・・・それ。じゃぁ、これでしばらく、この村の安泰だな。』

『ああ。これでしばらく安心して暮らせるよ。』





【終】
お久しぶりです。初めての人は、初めまして。今回は、新規投稿というよりは、pixivで書いてる小説の新作という形で投稿させていただきました。

この小説は、pixivで描かれているfutaさんが書いた漫画の設定をベースにして書いております。

ちなみに、これは最初の小説では無いので、他の話が気になったお方はこちらまでどうぞ。

【八尺様】 http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1822265

【完全変態倶楽部】 http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1828637

また、新作が久しぶりに投稿する事になるかもしれませんので、

その時は、またお願いいたします。では、さようなら
ND
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2013/06/05 16:06:51
更新日時:
2013/06/15 00:35:35
評価:
4/5
POINT:
430
Rate:
15.17
分類
霖之助
森近霖之助
秘封霖
秘封倶楽部
宇佐見蓮子
マエリベリー・ハーン
現代入り
裏S区
簡易匿名評価
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POINT
0. 30点 匿名評価
1. 100 NutsIn先任曹長 ■2013/06/06 06:55:27
幻想を見る現実世界の住民である少女達と、現実世界を見守る幻想郷の住民である青年のトリオですか。
あなたの作品の主人公である、我等がヒーロー霖之助。今回はベースの話通り、秘封倶楽部の御守か。
まあ、あの二次創作のメリーと蓮子が『真の恐怖』に出合ったら、こうなるわな……。

現実世界の隠れ里。
存在するのに誰も触れない。
触れられないわけではないが、恐怖という警戒色に塗れているため触れる事をためらう。
そこではこちらと異なる常識が支配している。
そこに住まうは正義の味方。
こちらでは狂信者と呼ばれる有志の集団。
彼らは清い者の体を二つのセカイの物理的な『架け橋』として、
今日も彼らの正義を行う――。

犬=監視するもの
『裏』の住民=執行者
橋=あの世とこの世を繋ぐ、清きもの=巫女

あんな無体が行われても警察が何もしないのは、霖之助の上司である紫が手を回しているのかな?
今回の現実世界の異変は、『最小限の犠牲』で収束したし……。

忘却と適応。
秘封倶楽部の二人は、その能力に特に秀でていますね。
普通、そんなに早く回復できない、或いは永遠に回復しないでしょうに……。



では、作者様に――。
あなたの霖之助無双の、何か心にクる新作を楽しみにしています。
2. 100 名無し ■2013/06/06 16:34:48
ふざけんな!すげえ怖えじゃねえか!
特に八尺様は洒落にならない程 怖え…
3. 100 名無し ■2013/06/06 21:47:59
何故、赤い橋がある事が村の安泰なのだ?
それはともかく非常に楽しく読ませてもらいました。
5. 100 名無し ■2013/06/12 18:29:42
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