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『「ご主人様せめて苦しくない方法にしてくれ」』 作者: 天体観測と月のクレーター

「ご主人様せめて苦しくない方法にしてくれ」

作品集: 8 投稿日時: 2013/07/17 15:33:34 更新日時: 2013/07/18 00:33:34 評価: 10/11 POINT: 1000 Rate: 17.08
「ちゃんと、埋めないと野良犬とかが掘り返してしまいますよ」
「聖様いったいなにを言っているんですか?」


 寅丸が、命蓮寺の庭を歩いていると、急に聖にそんなことを話しかけられたから少し驚いた。

「だから、ちゃんと深く埋めたんですか?」
「何をですか?」

 話がかみ合わないのは、昔からのことなのだが今日は特にかみ合わない。

「あれ、ですよ。あの妖怪。えっと、鼠の」
「もしかして、ナズーリンのことですか?」

 聖はナズーリンのことは普段あんまり眼中にないから急には名前が出てこない。
 
 寅丸のおまけと言ったところだった。

「そう、ナズーリンです。もし、殺してしまったのであれば深く埋めないと駄目ですよ」
「ちょっと、聖様。なんで私がナズーリンを殺さないとならないのですか?」

 当たり前のように、ナズーリンを殺したといわれて寅丸は心外な気持ちだった。

「だって、最近見ませんよ。殺してしまったのでしょう? 殺戒は良くないです。しかし、あなたとは長い付き合いですし。今回は見逃してあげますから。正直に話して下さい。何か悩み事があってついつい殺してしまったのでしょう? 私も昔、近付いてきた命蓮をついつい蹴り飛ばしてしまった経験がありますから。少しはあなたの気持ちが分かりますよ」
「だから、殺していません」

 ながながと、何を言い出すかと思ったら過去の罪の告白だった。寅丸がナズーリンを殺したと聖は思い、少しでも話しやすくしようと考慮しているつもりらしい。

「でも、最近ナズーリン見ませんよね」
「それは、聖様の眼中にナズーリンが入ってないだけで、今日だって朝居ましたよね」

 本当に、聖はおかしなことばかり言うと寅丸は思う。ナズーリンは毎朝、寺に居る寅丸のところには来るからどこかで見かけていてもおかしくないはずだ。

 注意力が足りてないだけなのいだろう。

「そうですか? う〜ん。じゃあ、いいです。さっきの、命蓮のことは忘れてくださいね」
「はいはい、忘れますよ」

 聖は寺の中に引っ込んでいった。説法が始まる時間のようだ。

 やれやれと、寅丸はまた庭を歩き始めた。


「ねえ、ちゃんと重りつけて沈めないと浮かんでくるから気をつけて」
「村紗さんいったい急にどうしたんですか?」

 その後、しばらく庭を歩いていると今度は、村紗にそんなことを話かけられたから寅丸は驚いた。

「だから、ちゃんと重りつけたの?」
「何にですか?」

 今日は村紗とも、話がかみ合わない。普段こんなこと言う人だったかと思う。

「ほら、あいつ。鼠を船に連れ込む鼠の妖怪のあいつ」
「ナズーリンのことですよね」

 実は、村紗はナズーリンとその鼠には、船に糞尿を撒き散らされて迷惑していて嫌いだった。だから、あんまり名前を出したくなかった。

「そうそう、ナズーリン。駆除してくれたんでしょ? もし、水に沈めたのなら重りをしっかりつけないと浮いてくる」
「なんで、私がそんなことしないといけないのですか?」

 当たり前のように駆除とか言われて寅丸は心外だった。

「でも、最近鼠が居なくなって、船内が快適なんだ。星が嫌な仕事引き受けてくれたんでしょ?」
「そんな、仕事していません」

 船内が快適なのは良い事だと寅丸は思う。それを、何故か寅丸のおかげだと思っているらしい。

「でも実際、最近やつらと親玉のナズーリン見なくなった」
「私は駆除していません。それに、私は朝会いましたよ」

 村紗までおかしな事を言うので今日はおかしな日だった。

「そうなの? まあいいや」
「あんまり、おかしなことばかり言っていると誤解されますよ」

 村紗は、どうでも良くなったのか寅丸の元から離れていった。

 つくづく暇な奴だと寅丸思った。それでも、気を取り直し再び庭を歩き始めた寅丸だった。




「寅丸、私は見たこと誰にも言いませんから」
「一輪さんはいったい何を見たんですか?」

 庭を歩き終えて、お茶でも飲もうと休憩室に向かう途中でそんなことを一輪に寅丸は言われ少しうんざりだった。
 
天体観測と月のクレーター
作品情報
作品集:
8
投稿日時:
2013/07/17 15:33:34
更新日時:
2013/07/18 00:33:34
評価:
10/11
POINT:
1000
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17.08
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寅丸星
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0. 30点 匿名評価
1. 100 NutsIn先任曹長 ■2013/07/18 01:09:41
最後のオチから察するに、星は大事な事を綺麗サッパリ記憶から無くしていたようですね。
まぁ、他のみんなの記憶にもちゃんと残らないドブネズミだから、ドジッ虎だったら殺った事を忘れていてもしょうがないか。
2. 100 ぽちぽちぽーち ■2013/07/18 03:47:15
ナズーリンぇ……

最後の最後で目撃者が現れてしまいましたか。まあ星ちゃんならしょうがない
3. 100 名無し ■2013/07/18 07:26:39
さすが星ちゃん
4. 100 名無し ■2013/07/18 15:35:36
全部食べないとダメですよ
5. 100 名無し ■2013/07/18 15:54:33
コメント見てようやく分かったwwwなるほどね
6. 80 名無し ■2013/07/18 20:40:28
何かと不遇な鼠
7. 100 穀潰し ■2013/07/19 02:10:20
都合の悪いことは都合よく忘れる星ちゃん。
次は誰が『忘れられる』んでしょうかね。
8. 90 名無し ■2013/07/19 03:31:21
>>つくづく暇な奴だと寅丸思った。
脱字かな

寅丸のことを苗字呼びする一輪さんが姉御っぽくて良い
9. 100 まいん ■2013/07/21 19:31:23
星がナズーリンは居ると言えば居るのです。
例えそれがお腹の中でもね。
一輪さん、誰にも言わないなら星に言ってもダメですよ。
10. 100 名無し ■2013/07/28 16:25:53
ナズさんも大変だねえ
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