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『親知らずサニー』 作者: NutsIn先任曹長

親知らずサニー

作品集: 8 投稿日時: 2013/08/25 18:04:08 更新日時: 2013/09/29 19:51:23 評価: 8/9 POINT: 780 Rate: 17.89
光の三妖精、通称『三月精』は博麗神社の社に鎮座している、素敵なお賽銭箱に腰掛け、洋菓子を食べていた。

この菓子は、一見するとクッキーでクリームを挟んだかのような体裁であるが、一口頬張ると蕩け、木の実のような香ばしさが舌と鼻に快感をもたらした。

「これ、美味しいわね」
「お茶が欲しいわ♪ ね、サニー」
「……へ? あ、うん!! 私、もらってくるね!!」

ルナチャイルドとスターサファイアが美味そうに菓子を食べているのに対し、サニーミルクは心ここにあらずといった様子で咀嚼していた。

声を掛けられたことで正気に返ったサニーは、神社の居住部に走っていった。

「……」「……」

見送るルナとスターは、悲しいような、心配なような、複雑な表情をしていた。

この菓子をもらったのはサニーだというのに……。










「え!? 私がお見合い!?」

ゴチンッ!!

「ばかっ!! 変な誤解をするな!!」



サニーの絶叫と、打撃音と、霊夢の怒鳴り声が響いた。



霊夢の話を要約すると――、

サニーを養女に欲しいという夫婦がおり、話をしたいそうである。










――で、サニーは今日、その人と会い、少しばかりお話してきたのである。

三人が美味しく頂いた洋菓子は、その際の手土産である。



次の日。

「サニー、ちょっといいかしら?」

サニーは霊夢に呼ばれ、博麗神社の居間に来た。

「……なんですか?」

昨日の養女の件で、頭の整理が出来ていないサニーは、何となく気が重かった。

「今日のお昼はちょっと豪華にするから、料理を手伝ってちょうだい」

霊夢に言われるまま、台所に立つサニー。

手伝いといっても、殆どサニーが包丁を振るった。

霊夢はただ、料理の仕方に口を出し、作っている最中の料理に口を付け、出来上がった料理を皆で口にした。



その次の日。

今日もまたサニーだけが霊夢の指示で働いた。

今日は掃除である。

雑巾や箒、最近博麗神社でも購入した掃除機の使い方にいたるまで、みっちりと教えられた。

その成果が、一日で磨き上げられた居住部である。



それからも、サニーは霊夢から家事を仕込まれた。

炊事、洗濯、掃除。

それらを組み合わせて、効率良く行なう方法。

そんな日々が、しばらく続いた。










「サニー、ちょっといいかしら?」

時刻は、そろそろ夕飯の支度を始めようかという頃。

手早く家事を終え、おやつの煎餅をいただき、昼寝から目覚めたサニーに、同じく起きた霊夢は話しかけた。

「なんですか?」

サニーは居住まいを正した。

「養女の件、考えてくれたかしら?」

忘れていた。

いや、いつかは聞かれると思って、覚悟はしていた。

「まだ――、よく分かりません」

サニーは正直に、分からないと答えた。

「ま、そうでしょうね」

霊夢も、そう答えるであろうと予想はしていたようである。

「あなたに教えた家事の数々。後は向こうで追々覚えるとして、ここまで出来ればあちらでも問題は無いでしょう」

『あちら』とは、サニーを引き取る家の事だろう。

「召使ではなくて『実の子同様の娘』が欲しいのだけど、家事の技能はあって損はしないわ」
「はぁ……」

霊夢は彼女なりにサニーの事を思い、この花嫁修業モドキをしてあげたようだ。

「後は、相性だけど……。サニーは妖精だから、親子とか家族とかピンと来ないわよね」
「ええ……。人間同様に家庭を持った『同族』の話は聞きますが……」

自然の具現である妖精は、『気が付いたら、そこにいた』というような誕生をする。
生殖行動で子を成すことも不可能ではないが、少なくともサニーにとって、それは親愛や快楽の手段だとしか捉えていなかった。

必然的に、生まれた瞬間に自我を持つ妖精は普通、慈しみ合い助け合う血縁またはそれに匹敵する『絆』で結ばれた『家族』という生活単位を知識以上に理解はしていない。

サニーを養女にしたいと望んだ家庭は、サニーも昔から――数百年前から良く知っていた。
その妖怪の夫婦にサニーは懇意にしてもらっており、確かに、傍から見ると親子のようにも見えたろう。



だが、本物の親子となると――。










その妖怪の夫婦は、子宝に恵まれなかった。





たった一人しか存在しないスキマ妖怪と、

幻想郷の守護神である、元・人間の巫女の夫婦は、

普段から可愛がっている日光の妖精を『娘』にしたいと望んだ。










「結局、フラれちゃったわね♪」
「まぁ、なんとなく、そーなると思ったわ」



博麗神社の鳥居の上。

八雲 紫と博麗 霊夢は、眼下の境内の様子を見ていた。

そこでは、サニー、ルナ、スターと、博麗の巫女が一緒になって池の中を覗いていた。

彼女の先代の巫女から、そこで金魚を飼っていた。



「小煩い親にドヤされるよりも、今は遊びたい盛りなのよ」
「今は、ね……」

霊夢の言葉に、含むところを感じた紫。



サニーが池の中に手を入れると、紅い魚の群れは散り散りになった。
何をしてるんだと、巫女がサニーに怒鳴り、それをルナとスターが宥めていた。



「もう何百年かしたら、また聞いてみるわ」
「その頃には、私達の愛の結晶が出来ているかもよ♪」



境内にチルノと大妖精がやって来て、ボール遊びを始めた。
サニーと巫女は、もう仲直りしていた。



「その頃には――」

霊夢は火照る身体を扇子で扇いだ。

サニーのお酒も、もう少しマシになっているかしら?





家事を教えてくれたお礼だと、

サニーから自家製のお酒を振舞われた霊夢。





キツい『神殺し』の酒で酔い、ボンヤリした霊夢の頭に、

チルノが暴投したボールが直撃した。




 
思いつきで書いた短編です。

某氏へのリスペクトでもあったりして♪


2013年9月29日(日):頂いたコメントに返事いたしました。

>KD様
二人とも、人ならざる者だからね。

>県警巡査長殿
日の光は、誰にも囚われる事は無かった……。
チルノはさいきょーだが、ノーコンだった……。

>3様
『殿』をつけんか!!
あと、言葉の頭とケツに『サー』をつけろ!!

>ギョウヘルインニ様
「月と星、邪魔ね……」
「鴉天狗がダッチワイフを欲しがっていたわね……」
「「ゲッゲッゲ……!!」」

――のわーんちゃって♪

>5様
投げ返したボールはチルノの脳天に直撃!!

「H〜☆」

>6様
『子はかすがい』と申しまして……。
ペニスを生やした霊夢と紫に、口と秘所を串刺しにされて攻められるサニー……。

>はと様
面倒なら、三月精全員を養女にするのもアリだね♪
サニーは、巫女のヘルプぐらいはするだろうね。

>まいん様
霊夢の神化は私の脳内設定ですけどね。
風の噂だと、コレを投稿した日の近くは、リスペクトした某氏の誕生日だったとか……。
NutsIn先任曹長
http://twitter.com/McpoNutsin
作品情報
作品集:
8
投稿日時:
2013/08/25 18:04:08
更新日時:
2013/09/29 19:51:23
評価:
8/9
POINT:
780
Rate:
17.89
分類
サニーミルク
博麗霊夢
ルナチャイルド
スターサファイア
八雲紫
チルノ(チョイ役)
大妖精(名前のみ)
ゆかれいむ
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POINT
1. フリーレス KD ■2013/08/26 13:55:38
何か儚げな二人がすごい良かった
2. 100 県警巡査長 ■2013/08/26 20:03:12
サニーを養子ですか。
養子になったら、なったらでまた違った幸せが訪れていたでしょうね。
でも、いつもの『妖精』として過ごすのが彼女にとって一番なのでしょうか。

あと、チルノ。最近某球団の選手が幻想入りしたみたいだから、ボールの投げ方についてご指導を受けた方がいいんじゃないかね。
3. 100 名無し ■2013/08/26 21:24:55
そうちょ
4. 100 ギョウヘルインニ ■2013/08/28 22:40:06
これは、この後残り二人が邪魔になってきてなんかされちゃったりしますかね。
5. 80 名無し ■2013/08/31 23:53:35
チルノ散るの?
6. 100 名無し ■2013/09/01 18:46:37
ゆかれいむはドロドロ昼ドラに発展?
7. 100 はと ■2013/09/02 22:38:00
サニーミルクがどんな家庭内暴力を受けるのかと心配しましたが、問題無さそうですね。
願わくばルナチャイルドとスターサファイアにも良い未来がありますように。

博麗の巫女になったサニーミルクを一瞬想像。
8. 100 まいん ■2013/09/25 18:33:50
曹長の神になった霊夢は相変わらず素敵だ。
紅い魚?何の事かしら?うふふ。
9. 100 ふすま ■2014/06/17 23:30:19
サニー…不幸だな。
オチが秀逸でした
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