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『秘封霖倶楽部 0話 洒落怖秘封霖 【非公式】』 作者: ND

秘封霖倶楽部 0話 洒落怖秘封霖 【非公式】

作品集: 8 投稿日時: 2013/09/29 12:57:53 更新日時: 2013/09/29 21:57:53 評価: 4/4 POINT: 400 Rate: 17.00
【秘封倶楽部】

京都に存在するどこにでもある霊能者サークル

だが、実在の霊能者サークルとは外れた行動をしている。

霊能者サークルというよりも、ただのオカルトサークルと言った方が正しい。





『霖之助さん。外の世界を見てみたくありませんか?』

灯油との物々交換の際に発せられた紫の発言は、こうだった。

『・・・行き成りなんですか?』

『外の世界を見てみたくありませんか?と申したのです。』

『そりゃぁ・・・行けるものなら願ってもない。でも、貴方が許しますかね?』

『ええ。今回は例外です。』

ほら見ろ。僕を持ち上げてから落とすつもりでこんな弄ぶ質問を・・・い・・・いや待て、今何て言った?

『今回は、貴方に外でやって欲しい事があります。その際、一般人に扮して生活してください。』

奇跡だ

奇跡が起こった。

ついに、ついに僕は外の世界へと足を踏み入れる事が出来るのだ。

幻想郷で唯一、僕は外の世界の記録を成功した人物として称えられるだろう。

いや、その前に外の世界で知りたいことが沢山ある。ええと・・・ええと・・・

『まず、その服は無いですわね・・・。』

そう言って、紫はスキマからトラベルバックを取り出し、

『とりあえず、必要な物はここに全て入っていますから。』

と言われて、僕に渡された。

『ところで・・・行くと言われても、どうやって行けば良いんだい?』

『私のスキマでひとっ飛びですよ。』

成程、それは名案だ。

そして僕は、八雲紫の手を取った。

今までは、一生の中でもう一度も会いたくない程彼女を嫌悪していたが、

今は唯一な女神にさえ見えてくる。

そして、いつもは地獄の入口のように思えたスキマも、

今は栄光に輝く扉のように見えた。

さぁ行こう。これから始まる、新しい一日へ。

さぁ行こう、この先にある栄光な世界へ。

僕は振り返り、この店内・・・いや、世界を見渡した。

さようなら、香霖堂。そして幻想郷

初めまして、未知なる世界。

光に包まれながら僕は、外の世界へと足を踏み入れていった。






光の向こうにあったのは、7畳半のワンルームだった。

香霖堂と比べたら狭い部屋だが、この際はどうでも良い。

トラベルバックもちゃんとある。

同時に、この世界の金銭もちゃんとある。これはありがたい。

『ところで紫、家賃はどうなっているんだい?』

返事は無かった。

というか、もうすでにスキマは消えてなくなっていた。

『行ったか・・・。』

こうして、僕はこの世界で一人ぼっちになった。

『ここが・・・外の世界・・・』

窓から見て分かる、この近未来

窓の向こうを見ても分からない、多数の文化。

これから始まる、森近霖之助の第二の人生、僕は胸をふくらませて

まずは扉の向こうの世界から覗き見る事にした。

『あ。そうそう言い忘れていたわ。』

『うわっ!』

扉の向こうには、見慣れた不吉な笑顔が居た。

『貴方にやって欲しい仕事の事なんだけど・・・』

そう言って、紫は一つの書類を取り出して僕に渡した。









書類を見る限り、僕は京都大学の一回生となっているらしい。

この歳で学生とは・・・と、正直笑えたが、実感すれば笑えなくなるのだろう。

そして、僕の仕事は・・・

『この、二人の女学生の監視・・・?』

何か、犯罪の匂いがするぞ。

『決してストーカーの類ではありませんから、ご安心を』

いや、監視の時点で何かいやらしいのだが。

『監視って・・・、彼女達の行動をいちいち君に報告をしたりしなければいけないのかい?』

『はい。まぁ、そこまで頻繁でなくても良いわ。一番の目的は”彼女達を幻想郷に近づけさせない事”なの。』

近づけさせない事・・・?

『ええ、詳しくは話せないけれども彼女達は幻想郷を超える”力”を持っているわ。』

『超えてもらっては困ることでもあるのですか?』

『ええ、とても』

・・・ほう、

自分の縄張りに他者が入り込むことを拒むとでも言うような言い方だな。

『つまり、僕がこの写真に映る彼女達を監視を続けられれば、この外の世界に滞在し続ければ良いというわけだな。』

『簡単に言えば、そう。』

『なら、それ以上の散策は遠慮させていただこう。純粋に外の世界を楽しみたい故で』

紫は顎に手を乗せて小さく笑った。

うむ、いつ見ても不気味な笑みだ。

『では、貴方にこれを渡しておきましょう。』

紫のスカートの中から、長方形の薄い板のような物が現れた。

『ちょっと待て、何故スカートの中から出した』

『落としてしまっては困るでしょう?』

『うん、困るだろうが・・・』

何故、スカートの中なんだ?

・・・散策するだけ無駄だと直感し、僕は紫から渡されたその板を受け取った。

僕の物と用途が分かる能力で見てみたところ、どうやら、これはただの板では無いらしい。

アイフォーンという持ち運び型電話という物だ。これだけで電話だけでなく、この世の情報のほとんどを得る事ができ、

更には財布や切符の変わりにもなるらしい。これは素晴らしい・・・

『外の世界は・・・この板だけで、全てが出来る程進化していたのか・・・!』

これは、幻想郷とは比べ物にならない。

外の世界の者と戦争なんか始めたら、神様もろとも抵抗するべく無く全て破壊されてしまうだろう。

それほどの物だ。これほどの発明が出来るのは。

『これで私に定期的に報告をお願いいたしますわね。』

そう言って、紫は自分の分のアイフォーンを取り出した。

成程、無線機の代わりとして支給されたものか。

しかし、これほどの物を紫から譲り受ける事が出来るとは、今後彼女を見る目が変わるだろう。

『あらあら、遊園地ではしゃぐ子供のような顔をしちゃって』

紫はそう言って、ビデオカメラで僕を録画しながら微笑んだ。

『ちょっと待て、何を撮っている、おい!』

『うふふふふふふ』

紫は、スキマの中へと潜って消えていった。

・・・やはり、彼女は油断ならない存在だ。今後警戒する予定があるな。

その前に、一つ後悔する事があった。

『・・・これ、どうやって使うんだ?』






翌日

ようやく使い方をマスターした僕は、まずメールとやらを覗いてみた。

これは、書いた文章を瞬時に相手に送ることの出来る、郵便局要らずの手紙配達らしい。

それも、烏天狗なんか宛にできないくらいに凄まじい速さで・・・。

そのメールの中には、学校側からのメールが送信されていた。

『ええと、なになに・・・『翌日の9時30分の集会までに経済学部室にて集合。学籍番号10‐930の森近霖之助生は事務室に来るように』』

9時30分か・・・。ええと、今の時刻は


”9時20分”





【京都大学】

普段運動しない僕は、今日ほど運動しなかった事に後悔した事は無かった。

全力疾走したのはいつぶりだろうか・・・。学校が3キロ以内に存在していて本当に良かった。

ある程度の手続きは紫がなんとか回してくれたそうだ。いや、何か妖術でも使ったでもなかろうか。

20分遅刻した割には、やたらとスムーズに教室に連れて行かれた。

『えー、今日から後期が始まると同時に、新しい仲間が増えます。』

涼しい気候と紅い紅葉が散る窓、慧音が営む寺子屋とはまた違った近代的な教室

『・・・から来ました、森近霖之助です。以後、お見知りおきを。』

紹介が終わると、珍しい物を見るように僕へとの視線が多かった。

よく見れば、教室は茶髪と黒髪、目立って金髪の者しか居ない。

銀髪である僕の姿が、やたらと珍しいようだ。

『なにあれ不良?』『でも、見た感じヒョロそうだぜ?』『言葉遣いも悪くないし。』『銀髪眼鏡とかマジ萌え』

しまったな。登校初日からいきなり目立ってしまったようだ。

ここまで目立ってしまっては、”監視”が難しくなってしまう事この上無い。

だが、その中で僕に興味を示さず、じっと窓を見つめる少女が居た。

まるでつまんなそうに、窓の外の紅葉に意を馳せているように。

『じゃぁ、席順の通りに、ここに座ってくれ。』

そして、紹介された席はその少女の隣だった。

その席に向かい、座り込むと、

気配を察知したのか、興味本位でこちらに振り向いた。

『これから、よろしくお願いします。』

挨拶を交わすと、隣の少女は微笑んだ。

『ああ、転校生か。よろしく。私は駒田って言うんだ。』

豊かな胸とカチューシャが無ければ、男と間違われそうな少女は

僕の方を見たと思ったら、髪の方に興味をもたれた。

『へぇー・・・私達と同じくらいの歳なのに、あんたもう白髪生えてんのか。大変だな。』

何か、変な方向に誤解されて同情されているが、今はそれどころでは無い。

『はい、では学園祭の準備ですが・・・』

縁に見せられた写真の一人、宇佐見蓮子が

僕から見て左奥の席に居るのだ。

一瞬、転校生と聞いて僕の方に興味を示して居たが、

もう興味が失せたのか、もう僕に見向きもせず教師が話しているというのに本を読んでいる。

とりあえず、監視するなら これくらいの距離が一番良いだろう。

あくまで僕と彼女達は他人として、僕の正体は出来るだけ隠した方が良い。

『ところでさ、紅葉饅頭って知ってるか?外の紅葉を見るたび、その饅頭の味が忘れられねえんだよ。あーあ、どこに売ってんだろうな、あれ』

隣の奴が全く関係の無い話を語っている。

というかお前ら教師の話を聞け、何か学園祭で冥土の喫茶店を開くと言っているぞ。この世界の最新テクノリジーによって教室の中で幽霊が溢れかえるぞ。

しかし、外の世界では冥土を祭りで呼ぶことが出来るのか。それはそれで見てみたいな。








【廊下】

『転校生はいねがー!!銀色の転校生はいねがぁああああ!!!』

廊下が何か騒がしい。

銀色の転校生か。そういえば宇宙人は銀色の発光する全身タイツを着ているという事実が本に書いてあった。

外の世界では宇宙人も転校生として来ているのか。そこは幻想郷と変わらない所があるな。

『見つけたぁ!!!』

『ごふぁっ!!』

いきなり背中に強烈な頭突きをかまされた。

派手に倒れた後、僕の背中に小さな尻の感触が生じた。

回りづらい首を動かし、後ろを振り向くと、そこには中学生か小学生が僕の背中に乗っていた。

『どうもー!新聞部部長をやらせて貰っている長谷田 唯と申しますがー!貴方が噂の銀色の転校生、森近霖之助さんですかー!?』

ボールペンをマイクの代わりにして喋っているその小学生は、僕にそのボールペンを突きつけた。

何だ、宇宙人の転校生は居ないのかと落胆した後、僕は質問に答えた。

『ああ、おそらくはそうだろうね。』

『おおっとぉ!全てが謎に包まれている銀髪の青年!!ネタの気配がしますので取材を申し込ませていただきます!!』

『断る、早くどけ』

『どきませんよぉ。取材に応じてもらえるまで、私はここをどきません!!』

正直こいつをぶっとばすのは簡単だが、これ以上目立ちたくない僕は大人しく この野郎をどかす方法を考えた。

しかし、こいつは取材のためには方法を選ばない辺り、幻想郷の新聞屋を営む烏天狗を思い出す。

『・・・・・・・・・』

宇佐見蓮子は、見下ろすように僕を見ていた。

いや、この光景を見ていたのだろうか。

『・・・・・・』

だが、結局は何もせずにそのまま歩いて行った。

ああ、助けてはくれないのだな。

いやちょっと待て、ここで行かれたら監視が出来ないではないのか?

『さあさあ!逃げられませんよぉ。観念して全部ゲロっちまいなぁ!!げしゃしゃしゃしゃ!!』





【屋上】

幻想郷の情報はなるべくして隠しながら質問に答えて言って、1時間程でようやく解放された。

授業の時間に大幅遅刻し、遅刻カードを書かれた時は少し癪に触った。

もう二度とあの小学生と関わりたく無いが、彼女は僕に興味を持ったらしく、

『また来るね!!』と言ってどこかへ行った。

これから、あの少女に怯えながら学園生活を送らなければならんのか。嫌だ。怖い。助けて

『・・・宇佐見蓮子は見失うし、案外、キツイ仕事なのかもしれないな。』

ため息を吐きながら、僕は屋上に続く扉を開いた。

扉を開くと、暗黒空間に居た僕を瞬時に光に包むと共に、

見覚えのある後ろ姿が、僕に不安を煽った。

『紫!?』

僕の声に反応した後ろ姿は、こちらを振り返った。

『・・・・・・?』

『どうしたの?知り合い?』

・・・いや、どうやらあの大妖怪様では無いようだ。

紫に写真で見せられた少女の一人、マエリベリー・ハーン

蓮子の友人であり、蓮子よりも重要視されている少女だった。

『・・・あ、あの、誰かと間違えていませんか?』

『・・・・・・ああ、間違えていたようだ。済まない。』

とにかく、彼女も監視対象に選ばれている以上、ある程度接近し、ある程度距離を取った方が良いだろう。

『でさ、この映像・・・。やっぱり幽霊だと思わない?』

『ええと、蓮子ちゃんに見せなきゃ、まだ分からないかな。』

だが、マエリベリー・ハーンと共に語っていたのは宇佐見蓮子では無かった。

常に二人一緒に居るわけでは無いらしい。これは困ったな、想像以上に監視が難しくなるぞ。

『・・・ちょっとアンタ、何見てるわけ?』

『いや、気を悪くしてしまったなら済まない。少し風に当たりたいだけだ。』

そう言って、僕は屋上に一歩踏み入れる。

『ちょっと近寄らないでよ!』

んむ?

『何?私達に何かしようっての?は?痴漢ですか?』

『ちょっちょっと亮子ちゃん・・・』

何だ?何故、何もしていない僕がここまで言われなければならないんだ?

『今、私達が”二人”で話してるんですけどー、邪魔しないで貰えますかー?』

『ね、別の所移動しよ?ね?』

マエリベリー・ハーンは難癖つけてくる女子生徒をなだめながら屋上から出て行った。

二人が出て行き、扉が閉まった瞬間、僕は屋上で一人になった。

『・・・この監視は、想像以上に難しいな。』

秋風で涼みながら、僕は京都の街並みを拝見した。







【下校】

結局、あれ以降彼女達に出会うことは無かった。

一日大学生を味わって、一つ分かった事があった。

監視なんて無理だろ。それも大学生としてなんて。

授業も受けなくてはならない。そして何しろ学園内は広い

昼休みでも、彼女達の一人を探すのも骨が折れる。

こんな事で本当に監視が務まるのだろうか・・・。

僕があせくせしている最中に、彼女達が幻想郷を超えてしまったら笑えないな。

僕がこの世界に居る意味が無くなる。それは困る。

『明日は頑張ろう。うん。』

そう決心して、前を向いた。

そこには、宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンが居た。

『・・・・・・・・・。』

とりあえず、僕は

明日、頑張ろうと決めたから、明日頑張れば良い。

何も、女子大生をストーカーするなんて事はしなくても良い。というかそれはプライパシーの侵害だと先ほど授業で習ったばかりではないか。

とにかく今日は、監視は終わり。家路につこう。

決して自由時間を使って本屋を巡りたいからでも無い。家電店という魔法具を扱う店を見て回りたいからでも無い。

それはあくまで仕事の終わりの話だ。もう仕事が終わりだから良いのだ。

なので僕は彼女達を素通りする事にした。彼女達に”僕が監視している”と考える可能性を下げる為である。

今の僕と彼女たちは他人。そしてこれからも他人

『あのっ』

だから声が掛けられた瞬間、思わず跳ね上がりそうになった。

『なっ何かな』

マエリベリー・ハーンが申し訳なさそうな顔で僕を見ているが、

宇佐見蓮子は不審な顔で僕を睨みつけている。

『先ほどは、その・・・申し訳ありませんでした。亮子ちゃんにも、言っておきましたので。』

先ほど・・・?ああ、あの屋上での出来事か。

てっきり、外の世界の娘は、大体あんな感じの態度を取るかと思っていたが、違うようだな。

『いえ、気にしていませんよ。』

そう言って、僕は彼女達と別れた。

だんだんと彼女との距離が離れていくと、宇佐見蓮子もマエリベリー・ハーンも僕に興味を失っていた。

これからどこに向かうかという話題を、キャピキャピと語り合っている。

さて、僕もそろそろ向かおうか。

この世界の本の流行と印刷技術を見るのが楽しみだ。後、魔法具はどのような物だろう。

外の世界に期待を寄せながら、僕は街の中へと掛け走った。







【翌日】

昨日は眠れなかった。

外の世界の魔法具は想像以上の物だったからだ。

店に入った瞬間、余りの異次元さに感動を抑えきれなかった。

動く階段、数多くの未知な魔道具に目を蘭々とせざるを得なかったのだ。

まず、僕の持つこのアイフォーンという板、

あれを越す程の機能を持つノートが置かれていたのだ。

あれは、幻想郷でも度々流れ着くPCという物らしいのだが、

起動すれば、僕の持つアイフォーン以上に様々な事が出来る魔法のノートなのだ。

正直、喉から手が出るほど欲しかったが、持ち合わせが無かった為、

早苗さんが熱狂していたゲームとやらを見てみた。しかし、外の世界のゲームは凄いな。

きっとゲーム機一つ一つにカメラを持った役人や、異世界に飛んだ役人が居るとしか思えない程、綺麗な画面でキャラクターを動かしていたのだ。

恐らく、幻想郷に見る巨大な桜よりも美麗な物を見ることが出来るのだろう。

いやはや驚きがいっぱいだ。もう幻想郷に帰りたくない程だ。

・・・思わずニヤニヤしていたようだ、周りの人間が不審な目で僕を見ている。

少し抑えよう。金を稼ぐことを考えながら。






【教室】

『おーーっす!森近!』

元気いっぱいな声で、駒田は僕の背中をぶっ叩いた。

『・・・痛いですよ。何をするんですか。』

『ああ悪い。ちょっと強く叩きすぎたか?』

駒田は、少し申し訳なさそうにウナジを掻いた。

『まぁ、そんな事はどうでも良いんだ。新聞見たか?』

『新聞だって?・・・ああ、確か民主党の支持率がまた下がったんだってな。』

『いつの話をしてんだよ。というか違ぇよ。学校新聞の事だよ。』

そう言って駒田は、新聞部で発行されているとされる新聞を取り出した。

『ほら、お前の事が乗ってるぜ。転校生』

僕は、駒田に見せられた新聞を見て驚愕を隠しきれなかっただろう。

・・・新聞の一面を飾っているのだ。僕の他愛の無いインタビューの記録が

『やられたな〜。これでお前、この学園の有名人の仲間入りって事だ。』

ああ、やられた。

あの小学生にはお仕置きをしてやらなければならないな。次に会ったら尻ペンペンしてやる

『ま、とりあえず改めて、これからよろしくな。森近かなめのすけ。』

『それはリンノスケと呼ぶ』

『あっそうなのか?悪かった、これからよろしくな。森近もりのすけ。』

こいつは頭のオツムがよろしくないようだ。

例の蓮子も、例の新聞を読んだらしいが、すぐに丸めて捨ててしまっていた。







【生徒会室前】

『あらおはよう。転校生さん。』

初対面の人に気安く呼び止められた。新聞の力って凄い。

僕を呼び止めた人をよく見ると、彼女の腕には腕章をつけていた。

『・・・生徒・・・会長?』

『あら、私の事をご存知ですの?』

『いえ、腕章が』

僕が指摘すると、生徒会長はクスリと笑い出した。

『ふふ。インタビュー通り貴方は少しおかしな人みたいね。』

しまった、僕の答えたインタビューは少し常識と離れていたか?

くそっ新聞部の野郎・・・いつか覚えていろ・・・

『くれぐれも問題は起こさないようにお願いします。特に、秘封倶楽部や例の倶楽部には注意をお願いしますわね。』

『例の倶楽部?』

『あら、秘封倶楽部じゃなくて、例の倶楽部が気になるのかしら?』

いや、それは気になるだろう。

確かに秘封倶楽部に注意せざるを得ない程の悪評も気にはなるが、”例の倶楽部”に関しては情報は全く持ち合わせていないのだから。

『・・・まぁ、転校生かつ普通の男子生徒の貴方なら、問題はありませんかしらね。』

『はっはぁ・・・』

『とにかく問題は起こしてはいけませんよ?でないと私・・・』

私・・・?

一体何をするつもりだろうか。生徒会長の権限で停学とか留年・・・最悪退学か

『泣いてしまいますわよ。』

『はい?』

『ふふ。それでは良い学園生活を。』

そう伝えるだけ伝えて、彼女は去っていった。

僕なんかより、彼女の方が常識から外れているような気がするのだが・・・、この世界では常識人なのだろうか。

・・・なんだかこの学園生活に不安が生じ始めたが、我慢しよう。我慢さえすれば、この素晴らしい世界を堪能・・・

『あ』

気持ちの切り替えと共に、彼女を見たからか、思わず声を出してしまった。

『・・・・・・何?』

蓮子は、少し機嫌が悪そうに僕を睨みつけた。

『いえ、何でもございません。』

僕がそう返答すると、『あ、そ』とだけ答えて蓮子は去っていった。






教室に向かう途中、女子大生の集まりに睨みつけられた。

そして輪になってヒソヒソと話し始めた。

まさか・・・あの新聞の内容のせいなのだろうか。

ほとぼりが冷めるのはいつ頃だろうか。幸いこの世界は広い。

一週間以内にほとぼりが冷めるのを待つ事にしよう。








【下校】

授業の内容が興味深く、面白かった為忘れていたが、

新聞部の部長に、今日は会わなかったな。

『まぁ、明日出逢えば良いか。』

幸い、明日も登校日だ。

休校日まで、まだ後三日ある。その間まで、あのインタビュー記事についてじっくり話し合おう。

《次のニュースです。》

建物の壁には、巨大なテレビが埋め込まれていた。

一体、どれ程の大きさのブラウン管が埋め込まれているのだろうか。やはり、外の世界の技術は恐ろしい程素晴らしい。

《京都市の山中のとある廃村にある井戸に、三名の人骨が発見されました。解剖した所、骨にこびりついた肉は比較的日が浅く、近い時期に殺害されたと思われます。そして、その肉のDNAから、三日前から行方不明の・・・》

・・・これは、アイフォーンよりは便利では無いな。

好きな時に、好きな時間に情報が得られないと見た。

幻想郷では未知なる科学を持つテレビも、この世界では廃れた産業となっているのだと感じると、故郷に対する侘しさが強くなる。

『ん』

遠くに居るのは・・・蓮子。と

昨日屋上で僕に難癖付けてきた、メリーと一緒に居た娘じゃないか。

街外れに行こうとしているが、どうしようとしているのか。

・・・今日は本読み放題、茶飲み放題の喫茶店を見つけた為、そちらの方に行きたかったが、そういうわけにもいかなくなった。

名残惜しく感じながらも、僕は彼女達を尾行することにした。







【???】

たどり着いた先は、自然に囲まれた・・・いや、此処の事は樹海と呼ぶべきか。

歩き始めて30分、彼女たちに気づかれずに尾行するにはうってつけの場所だが、何故ここまで歩くのだろうか。

しかし・・・この風景は無縁塚を思い出させるな。

ところどころにコーラの空き缶やプラスチック紙の袋などが捨てられている。たまに自転車がある。

更には輪ゴムのような風船、自動車が見つかる事もある。これは珍しい。

自動車は、扉の接合部分にガムテープをくっつけて密集させながら複数の人間が眠っているが、

最近の外界では、この就寝方法が一般的なのだろうか。春初めはまだ肌寒いため、七輪もある。

しかし本当にぐっすり眠っているな、まるで死んでいるようだ。

おっと、そんな事を考えている間に見失う所だった。

歩きに歩いて、たどり着いた先は・・・小屋だった。

この山奥にあるには、ちょっと小奇麗に感じる小屋である。

『・・・確かに、幽霊が映っていたのはここら辺よね。』

『そーそー、私らの倶楽部の周りで、こんなのが撮れてさー、本当に怖かったんだよねー。』

僕に難癖つけてきた彼女は、まるで僕に見せた嫌悪感溢れるあの顔とは思えないくらいに笑顔になっていた。

・・・というよりも、ここが倶楽部?

こんな学校と離れた所にあるのに・・・倶楽部?

『で、オカルト倶楽部として名高い、秘封倶楽部の貴方にお願いしてここに来たわけ。ちょっと中入ってってよ。』

『・・・じゃぁ、おじゃまします。』

宇佐見蓮子は、少々警戒しながら小屋の中に入っていった。

これではもう彼女の監視は不可能だろう。もうここまでで良いな。

別にここら辺は幻想郷とのつながりは強くもない。心霊映像とやらも何とも無い噂程度だろう。

さて、それではそろそろ僕の時間に向かおうとか。と思った瞬間

女の喘ぎ声が聞こえた。

『・・・?』

それも、一人のではない。

二人・・・、複数は居る。

誰かが野外性交を行っているのか・・・、いや、それにしては男の声が全く聞こえない。

いや、それどころかこれは、小屋の中から聞こえる。

『何が・・・起こっている?』

先ほど、この小屋の中に宇佐見蓮子が入っていったはずだ。

まさか、おかしな事は起こっていないと信じたいが。

だが、女の喘ぎ声は強くなっていく。

恐る恐る、僕は小屋に近づいていった。

女の淫らしい声が漏れている。間違いなく小屋の中だ。

宇佐見蓮子は気づいていないのだろうか、いや、もしくは外の壁に穴が空いているのか。

更に近づく。まさかこの中で、乱交でも行われているのでは無かろうな。

そんな不潔で不愉快な事が、僕の周りで起こっているとは思いたくない。

だからせめて、何かの間違いだと信じたい。

そう信じて、僕は小屋の中を覗いた。



そこから見えたのは、女と女の肌の重ね合いだった。

それも二人では無い。複数人・・・

5人はいるだろう。男は一人も居ない。

こんな生産性の無い性交を見て、僕の頭は軽く混乱しかけていた。

理解ができない。

しかも、ほとんどが学校で見た事のある顔だ。話したことは無いはずだが、少し見覚えがある。

そうだ、思い出した。

その中の一人が、生徒会の書記だと紹介された者

そしてもう一人が、駒田と親しげに話していた者

そして、廊下ですれ違った者、顔はおぼろげとしか覚えていないが。




『あ』

その中の一人と目があった。

瞬時に『危険』を察知した僕は、すぐにその場から逃げ出した。

慌てて逃げ出した代償に、足音が大きかった為、すぐにバレてしまっただろう。

『は?ちょっと!!』

後ろから宇佐見蓮子の声が聞こえる。だが、知ったことか。

僕は今すぐにでもここから逃げ出したかった。

ここに居たら、間違いなく”生命”の危機が生じる。

そう、僕の第6感が警告している。

『ちょっと待ちなさいアンタ!!一体何を見たの!?』

『蓮子!?待って蓮子!!』

後ろから蓮子と共に、先ほどの女が飛び出してくる。

『ねぇ!”何か見た”から、そんなに逃げてるんでしょ!?待ちなさいよ!!!!』

知るか、知るか

僕は、とにかく彼女達から振り切る為に全力で脚を動かした。






【森近霖之助の部屋】

気づいたら、僕は自分の家の前に居た。

202A号室・・・。うん。間違いなく僕の家だ。

無我夢中で走っていたら、いつの間にかここまで走っていたようだ。

これが帰省本能というものなのか。この無意識に今は感謝しなければならないな。

さて、問題はここからだ。

明日の学校はどうしよう。

見た限り、彼女達は学校に居た者で間違い無い。いや、見間違いであってほしいが・・・。

その状態で、明日学校に行ってみろ。何もしてこないとは思えない。

『・・・面倒だな。』

考えるのが面倒になってきたが、どちらにせよ、監視の為には登校しなければなるまい。

・・・だが、後ろ姿にしろ、姿は蓮子に見られたな・・・。

どう言い訳をしよう。あんな僕でも理解不能な物を言葉で説明すれば、汚物を見る目で見られる事は確実だろう。

変な方向にも、良い方向にも目立つのは勘弁願いたい。

とにかく、ここ一週間は何も無い事を祈ろう。

そう考えながら、僕は布団に潜り込んだ。







翌日

僕の願いは、早くも打ち砕かれた。

『・・・・・・』

登校した際、ちらちらと、僕を見る目が怪しい者が居る。

何か、不審な者を見るような目だ。

僕を見てはヒソヒソ話す人も居る。少し近づいただけで小さな悲鳴を上げる者もいる。

・・・何が起こっているのか、分からない。また僕は混乱してしまった。

だが、この状況の答えをしったのは、教室にたどり着いてからだった。

『おう森近、お前沙也加さんを強姦したって本当かよ?』

駒田が、険しい表情で聞いてきたその質問は、僕の許容範囲を超えていた。

『そんなわけが無いだろうが。誰から聞いたんだ?』

『沙也加さん本人からだ。』

そう言って、教室の奥で怯える沙也加本人の姿があった。

『勘弁してくれ、出会って二日も経ってない野郎を、どうして発情できようか。それに、被害者はむしろ僕の方だよ。だって、僕はあそこで・・・』

『うっ・・・うるさい!この・・・ケダモノ!!』

声を遮るように、沙也加なる人物はヒステリックに叫び、教室から出て行った。

そして、僕に降り注がれる不審な目線

どうやら僕は、誤解されているようだ。

いや、妙な噂が立っていると言った方が良さそうだ。

どうだろう、これではターゲットである宇佐見蓮子やマエリベリー・ハーンを監視しにくくなる。

その間に、幻想郷との境界を超えない事を祈ろう。

『あー、それからな森近』

駒田は、僕から離れた席に座った。

『出会って最初に言った友達宣言な、あれは忘れてくれ。私が言える事はそれだけだ。』

・・・忘れるもなにも、僕は君を友達と思ったことは無いがな。

だが、こう堂々と言われると、少し胸に来るものがあるな。

さて、これからどうしよう。

一週間でこの角印が消えそうにもないな。










【生徒会室】

『それで、私の所に来た・・・という事ですの?』

このような誤解を解くには、彼女の権限が一番頼れるだろう。と判断した。

一部始終話した瞬間、生徒会長なる女はクスリと笑った。

『それは、きっとハメられたのね。転校生くん。』

『・・・一体、どうしてこのような噂が流れたのでしょうかね。』

『その守島沙也加さんという人は・・・私は以前から怪しんでいましたの。』

そう言って生徒会長は、茶を口に運んでいった。

『彼女も微々たるものだけど、奇妙な噂がありましてね、転校生くんが言うように、友達と一緒に樹海に入ってからしばらく、行方不明になるのよ。』

『行方不明?』

『そう、他にも彼女は、男子生徒を階段から突き飛ばしたりしているわ。よっぽどの男嫌いと見れる。しかも同性行為が、男に見られるとなると・・・そりゃぁ発狂もするわね。』

行き当たりばったりだ。本当に嫌な事の連続だな。

『私は、貴方を信じますわよ。』

『・・・どうしてです?』

『あら、見た目通りに貴方は卑屈なのね。先ほども言った通り、私は守島沙也加を信用していませんのよ。』

しかし、この生徒会長は只者では無いな。

『貴方は、どこまで知っているのですか?あの・・・倶楽部の事を。』

『あれは学校公認の倶楽部ではありませんから、私はあまり好ましく無いと思っておりますの。それに、以前私も連れてこられたのですよ。その小屋に』

『・・・・・・小屋に?』

『ええ、嫌な予感がしたから、隙を見て逃げ出しちゃったけどね。でも、転校生くんの話を聞く限り、逃げて正解だったわね。私は異常な異性愛者ですもの。』

そう、彼女は小さく微笑んだ。その微笑みは、笑みが不気味なあの大妖怪と雰囲気が少し似ていた。







【新聞部】

『はい?私がそんな根も葉も無い事を広めるわけ無いじゃないですかー!嫌ですなー森近くんは!』

パックに入った牛丼を口にかっこみながら長谷田は答えた。さすがに食べながら話してくるのは気分が悪い。

さすがに一人でここまで広めたとは考えにくかったため、もしかしたら関与しているのかと思い彼女の所に来てみたが、

あまり有力な情報は持っていなかったようだ。

『しかし、周りはすっかり信じきっている者も居たぞ。』

『・・・以前、噂程度には校内で有名になった”裏倶楽部”・・・でしたっけ?それを解明する為に動いた時のお話です。』

長谷田は新聞を丸めて掌を叩いた。

『その倶楽部は常人には理解できない事を行っている変態倶楽部と聞きまして、興味本位に調査しましたが、闇に葬られました。』

『何故?』

『理由を話す前に一つ、その中で私は怪しい人物を三人は見つけました。その中に守島とやらが居るのですよ。』

そう言って、長谷田は丸めた新聞紙を僕の胸に当てた。

背伸びして頭を叩こうとしたのだろうが、背が届かなかったみたいだな。

『・・・だから、私は被告人である森近くんよりも、被害者である守島の方が胡散臭く感じるんですよ。だからそんな濁った記事、載せてたまるもんですかい。』

そう言って、長谷田はPCに文字を打ち込む作業に戻った。

・・・なるほど、ある程度情報を網羅している者は、僕の方を信じているようだ。

これは光明が差してきたぞ。意外と早くこの噂は風化しそうだ。

『あっ、でもそんな事を聞くってことは、森近くんもその倶楽部追いかけてる?』

『え?』

いや、正直もうあの倶楽部を追いかけたくは無いんだが・・・

『追いかけるなら、是非真相を確かめてきてください!!正直、その倶楽部の女と思われる人から勧誘という名の脅迫をされて、調査打ち切りっぱなしだったんですよ。だから私の為に・・・レッツワーキング!!』

『・・・。』

僕はとりあえず、彼女からレコーダーを奪い取って部室を後にした。







【下校】

どうやら彼女・・・守島とやらの奴は僕の先輩に当たるらしい。

彼女を知る少数の人は、哀れみの目で僕を見ていた。が、大半は僕を腫れ物を見るような目で見ていた。

またそのうちの少数は、僕を犯罪者として見ていた。



途中、教師に呼び出されて職員室まで連れて行かれたが、

結果、僕はやっていない物を認めるわけもいかず、教師にも説明をした。

『・・・まぁ、守島はなぁ。前科があるからな。』

『とにかく、君はやっていないんだね?』

と、あまり深く考えていなさそうだった。

『女子生徒がこんなに騒いでいるのですよ!?即刻退学にするべきです!!』

眼鏡をかけた、半端に年の取った女教師がヒステリックに喚いていたが、

『いえ、まだ彼が犯人だと決まっているわけではありませんから、そんなに騒がないでください。佐藤先生』

この中では一番高齢な女の教師が、その教師を宥めていた。

が、火に油を注ぐようにその女教師はヒステリックに叫び、僕の頬を叩いた。

『何してるんですか!!佐藤先生!!』

二人の男子教師がその女教師を抑え、どこかへ連れて行った。

『触らないで!!訴えなさい!!私は絶対にあの男はやっているって確信してるのよ!』

その女教師、どこかで見た事あるかと思ったら、

小屋の中で性交わっていた女達の一人に居た初顔の女では無いか。

『ごめんな、森近くん。先生達は君を信じてみるから。君は学業に専念しなさい。良いね?』

教師の中では、一番身体の大きい体育の先生が僕の肩に手を置きながら僕をなだめていた。

信じるもなにも、僕は本当に何もしていない。潔白だ

彼女を検査すれば、すぐに分かることだと思うのだが・・・、拒否しているのだろうか?

これではいつまで経っても終われない。・・・いや、

”終わらせないようにしている”のか?





『ちょっとアンタ』

気づけば、僕は秘封倶楽部・・・監視対象者達の後ろにピッタリついていた。

『おっと、済まない』

僕は、他人のフリをして彼女達を通り過ぎようとした瞬間、手を掴まれた。

『すまないが、話してくれないか?』

『少し、聞きたい事があるわ』

そう言って僕の手を握っているが、手が震えている。

振り向いて顔を伺えば、目をこちらに合わせてくれていなかった。

マエリベリー・ハーンも、僕に対してかなり警戒している。

『・・・何が聞きたいんだい?随分と早く帰りたそうにしているが』

『アンタ、あそこで何を見たの?』

宇佐見蓮子は、うつむきながら僕に質問を投げかけた。

『・・・・・・・・・』

あれを、話しても良いものかどうか。

いや、信じてもらえるならば万々歳なのだろうが、どうにも信じてもらえそうにない。

冗談か、イカれた人間として僕の印象を付けそうな気がする。いや、そうなるだろう。

『言って、君は信じるかな?』

『・・・・・・そうよね。』

そう言って、蓮子は僕を握る手を緩め

『ふんっ!!』

思い切り、足を踏んづけてきた。

『いっ!』

しかも小指を思い切りだ。痛い、痛い、痛い、とっても痛い。

『・・・今後一切、私たちに近づかない事ね。近づくと同時に、警察に追放してやるわ。』

そう言って、僕に携帯の画面を突きつけてきた。

それは、警察市街局の[通報]ボタンだった。いや、ボタンの画面だった。

『よく肝に免じておきなさい。B級犯罪者が』

そう言って、二人は僕から遠ざかっていった。

マエリベリー・ハーンは宇佐見蓮子の腕にしがみつき、小走りで僕から逃げるように走っていた。

『・・・全く、とんでもない物に巻き込まれたものだ。』

これで。彼女達を監視するリスクが高まった。

これ以上目立つのも不味い。が、彼女達の誤解を解くつもりにもならない。

要は、彼女達を”幻想郷の侵入”から守れば良いだけの仕事だ。

そう簡単に彼女達が幻想入りなんてするわけがない。紫だって馬鹿じゃ無いはずだ。

ほとぼりが冷める事は無いかもしれないが、近づきやすくなる時期はあるはずだ。

その時まで待つ事は、決して遅くないだろう。

『・・・・・・が、いくらなんでも近すぎじゃないか?』

僕の目の前に、いきなり彼女達に近づける時期を作り出す物が落ちていた。

僕の足を踏みつけた時に落とした、ビデオカメラのテープだ。







【森近霖之助の部屋】

部屋を貸してもらう時に、いくつか紫から物を支給された。

ビデオカメラやカメラが、その中の一つである。

監視者を撮影するために送られてきたものなのだろうが、ここに来てから四日、全く使った形跡が無い。

『・・・まさか、あの時の乱交映像が入ってるわけじゃ無いよな?』

恐る恐る、僕はそのテープをビデオカメラに入れる。

パカリと開いた”そこ”に入れた物は良いものの、どうやって再生すべきなのだろうか。

『・・・これか?』

そう言って押したボタンは、電源を消すボタンだった。

また起動させるのに時間がかかる。

『これか』

そして押したボタンは、レンズの部分が前に突飛つするボタンだ。

『・・・・・・』

何も考えずに押した赤いボタンは、録画ボタンだった。



10分後

ようやく、三角系のボタンでテープを再生する事が出来た。

実を言うと、最初の一分は消し方が分からず、録画されたままだったため

僕の部屋が映し出されたままだ。

そして一分後、画面が変わる。

『おっ確かに僕が言った、あの小屋と同じ場所だ。』

できれば、もう一度は見たくなかったがな。

そしてしばらく経つと、小屋の周りに女の子達が集まりだした。

小屋の中で交わっていたあの顔と、全く同じで吐き気を催した。

『・・・・・・』

我慢してみてみるが、特に変わった様子は無い。

そして、ある窓を移したとき、何か違和感があった。

『・・・?』

顔だ、顔が映っている。

髪の長い女の人が映っている。

そしてカメラは女の人を通り過ぎ、ただの森を移していた。

もう一度、窓の方にカメラを向けたら、その女の人は消えていた。

そこで、映像が終わっていた。

『・・・・・・・・・ふっ』

これは、俗に言う心霊映像というものか。

写真に映った幽霊写真ならば知っている。

写真に幽霊が映れば微力の妖気が写真に宿り、幽霊はその妖気を頼りにうろついたりもする。撮影者をつきまとったりする。

そして、限りなく暇なこの世界の、もっと他の世界を見ようとする。地縛霊ならば最もだ。そこしか動けないが、

心霊写真を用いることで、他の場所も見ることができる。だから幽霊写真に限らず、死者が映る物には妖気が漂うのだ。

だが、面白い事にこの心霊映像には全くと言って良いほどの妖気を感じない。

つまり、これは

『間違いなく、これは偽物だな。しかも、仕組まれた・・・』

仕組まれたにしても、これは酷い。

映像に映る幽霊は、肌が塗られたかのように白いし、硬い

顔は見えないが、肉の感触というものが感じられない。

こんなものを信じる者が本当にいるのか?と疑うほどでもある。


だが、問題はこれが心霊映像じゃなかったという事では無い。

『何故、この偽物映像を蓮子に見せた・・・か。』










【翌日】

一事件目の教室にたどり着くと、冷ややかな視線が僕に降り注がれる。

うん、昨日と同じだ。

唯一違うのは、宇佐見蓮子の顔が少しやつれているという事だけだ。

僕が席に座ると、僕の周りには誰も座らない。うん、これも昨日と同じだ。

駒田に関しては、僕を見ないふりしている。が、やはりチラチラ見てくる。

しかし・・・このビデオテープはどうしようか。

本人に返すべきか・・・いや、そもそも彼女からは『近づくな』と言われているのだ。

しょうがない、このビデオテープは僕が責任を持って処分しておこう。

『あーーーーー!!!』

宇佐見蓮子が、僕の方を見て叫びだした。

他の連中は、宇佐見蓮子の方に目を向けていた。

『ちょっちょっとアンタ!!何アタシの物を盗んでんのよ!!』

『人聞きの悪いことを言うな、これは校門で拾ったんだ。』

『だったらそれは私のよ、返しなさいよ!』

言われなくても返すつもりだ。僕のじゃないんだからな。

『全く、折角手に入れた心霊ビデオなのに。こんな悪漢に触れられるなんて・・・秘封倶楽部を汚された気分よ。』

随分な言われようだな、悪漢とは。

『そもそも、その映像は偽物なんだから、どのみち汚されてると思うけどね。』

僕がそう口走ると、急いで席に戻ろうとしていた蓮子がその場で止まった。

『・・・今、何て言ったの?』

『聞いてたのか?嫌な奴だな。まぁ損は無いし何度でも言うよ。その映像は100%偽物だよ。』

『何でそんな事分かるのよ』

『妖気を感じなかった・・・と言っても信憑性に薄いから、別の方向で言うが、その幽霊は人形だ。肌を見れば一目瞭然だろう。』

僕がそう言うと、宇佐見蓮子はビデオテープをじっと見ていた。

『・・・やっぱり、偽物?人形?』

『何か、心当たりがあるんだね。』

僕がそう言うと、蓮子は僕の方へと近づき、睨みつけた。

『貴方、本当はあそこで”何を”見たの?』

『僕に近づかないと言ったばかりじゃないのか?』

『一般的な強姦魔と比べたら、貴方は余裕がありすぎるし恐ろしい程冷静だわ』

『一般的な強姦魔とは何だ?この世はそんなに恐ろしい世界になっているのか?』

『他の国に行けばいくらでもあるわよ、そんなの』

嫌だな、そんな国

『・・・て、そんな事話してるんじゃない。昨日言った答え、取り消すわ。一生に一度だけ貴方を信じてあげる。』

『この質問が終われば僕はポイというわけか。』

『当たり前じゃない。正直、貴方に嫌悪感だって湧いてくるわ』

『じゃぁ離れなよ。無理して僕に構わなくても良いぞ。』

『いいえ、私の為に聞くわ。貴方、昨日あそこで”何を”見たの?』

・・・まぁ、多少でも信じてもらえるなら、それに越したことは無い。

頭の中に入れてもらえるだけでも、それで良い。

『まず、このクラスの中に変態が居る。』

『貴方?』

『違う。何で僕がそう名乗らなくてはならない?』

ガタリ、と誰かが席を立つ音がした。

『まぁ、君が手に持っている映像を見て調べれば分かる事だよ。君がその映像を偽物と確信したとき、その時にその変態の正体が―――』

『キャッ!』

僕の話を遮るように、女子の一人が蓮子に体当たりしてきた。

その様子を、僕は警戒して見ていた。

その女子は、蓮子からテープを奪い、床に叩き落とし、

終いには足で踏みつけたのだ。

『ああ!ごごごめんなさい宇佐見さん!!テープ踏んづけちゃったぁあああ!』

その女子の大声がクラスに響き渡る。顔を見るとあの小屋の中の一人

駒田と良く話している奴だ。

『あっ、あ―――!ちょっと!ちょっと!!』

蓮子が必死に彼女の足からテープを取ろうとしていたが、

もうすでにテープはバラバラになっていた。

『あ―――・・・』

落胆するように、宇佐見蓮子はバラバラになったテープを両手で救っていた。

『うひゃぁあ!!蓮子さん!危ないですよ!!強姦魔!あの強姦魔の近くにいますって!』

『え?いや、本当に彼は・・・』

『早くこっちに来てください!早く!』

『ちょっちょっちょっと!?』

宇佐見蓮子は、無理やりあの女子に連れて行かれた。

・・・成程な、あくまで僕を悪者にしたてあげようとするわけだ。

あの臆病の仮面を被った猫かぶりは、変態倶楽部の一員に違いない。

だが、一体なんの目的があってこんな事をするのだろうか。

何故、ここまでして”隠す”必要があるだろうか。

正直、確かに不快感は否めないが、ここまで僕を攻撃しなくても良い気がする。

そこまで、”あれ”を知られたくないのか。

それとも、”他に知られたくない事実”を隠しているのだろうか。

大分、男を嫌悪視しているようだしな。何かが怪しい。












【新聞部】

『ふーん・・・秘封倶楽部に嘘の映像ですか・・・』

一応、情報収集を任されていた僕は、長谷田に報告してみた。

『森近くんが言うには、その倶楽部は百合性交を行う倶楽部・・・って事になるね。』

『そうなるな。』

『そして、その倶楽部の活動を偶然見てしまった・・・と』

『そうなるな。』

『・・・だとしても不自然じゃありません?この倶楽部、新聞部の私が追いかけてる記事なんですが、この倶楽部結構有名なんですよね。』

ああ、生徒会長や、二年三年四年の半分くらいが存在を知っているくらいだしな。

『守島は間違いなくクロとして、佐藤先生もクロ。そのテープ踏みつけていた子は灰色・・・うーん、他はともかく、守島が何を隠すんでしょうね。』

『本人は知ってるのか?自分が既に結構な人に存在をバラされているって』

『知ってるでしょうね。結構な人に指摘されましたもの。今はさすがに言われてませんが。』

『風化したのか。』

『いえ、匿名の嫌がらせが起こったのです。特に守島のクラスでは豚の血が塗りたくられてたそうですよ。守島の席含めて』

成程、さすがにそれじゃぁ、嫌気も指すわな。

『だからでしょうか、彼女の話題はタブーになりつつあるんですよ。代わりに新しく入った二回生、三回生には馴れ馴れしく話しかけてくるんですけどね。』

『・・・・・・』

『まぁ、とにかくその三人は怪しいって訳ですっかね。いや、リストに入っているもうひとりを加われば、4人かな』

『6人だ』

『・・・え?』

『僕が見た限りでは、6人居た。』

僕がそう答えると、長谷田はしきりに黙り込んだ。

『・・・それは・・・恐らく・・・いや多分・・・』

長谷田の顔は、少しだけ青ざめていた。

『引き込んでるんじゃないですかね?何も知らない一年坊に・・・』





【生徒会室】

『勧誘でしょうね。一時期、守島と友人関係にあった事はありましたが、あれは目をつけられていたのね。』

生徒会長は、ため息を付きながら茶を飲み始めた。

『まぁ、仮に引き込まれそうになっていても、私は全力で否定していたでしょうね。昨日も言いましたが、私は異常な異性愛者ですから。』

『いえ、別に聞いてはいませんが・・・、異常な異性愛者って、どう言う意味です?』

『理解できないなら、理解する必要はないわ。』

理解はできなくても、激しく気になりはするんですがね。

別の意味で”危機”を感じたりもしますし

『まぁ、分からなければ、一つヒントを出して上げても良いわね。』

ヒント?一体何を言おうとしているのだろう。

考えている間に、生徒会長は僕の頬を摩ってきた。

『私から見ても、貴方の肌は白くて綺麗な肌をしてるわね。』

『・・・はぁ』

『それで、お願いがあるのだけれども・・・、貴方のその肌、私の物にしてもよろしくて?』

『すいません、触らないでください。』

僕は、彼女の手を手で弾いた。

『・・・そう、そういう事言うの。』

『何がそういう事ですか?』

僕がそう質問すると、生徒会長の目が少しだけ赤くなっていた。

目に涙を浮かべている。

いや何だ、何だよこれは

『うっうっ・・・ただちょっとだけ、貴方の肌に触れたかっただけなのに・・・』

彼女の目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。

『分かった、もう分かったから泣き止むのをやめてくれ』

僕がそう言うと、ピタリと泣き止み

僕の肌を触りに来た。

『私が言いたいのは、こういう事よ』

『・・・なるほど。』

つまり、話を勧めていくにつれ、自分が有利になっていき、見事に相手を引き込むというわけか。

『私もこれと同じような事をされたわ。”貴方は私達を非難するつもり?”と言われて。私は”その通りよ”って言ってやったけどね。』

『中々芯が通っていて好印象が受けますね。ところでそろそろ、僕の顔を撫でるのを止めてもらえませんか?』

僕がそう言うとピタリと手は止まり。

『まだ良いじゃない』

と言って、再び頬を撫でるのを再開させた。こいつは何がやりたいのだ。









『・・・ところで貴方、明日も私と話してくださる?』

『・・・?ええ、呼ばれればすぐにでも来ますが』

『ふふ、貴方は優しいのね。刺されちゃうわよ?』

『縁起でもない事を言わんでください。』






【下校】

昨日と同じ、蔑された目が僕を刺してくる。

覚悟していたため、そこまでのダメージは無いが、ロッカーの中に絵の具をぶちまけられたのは予想外だった。

おかげでカバンが汚れてしまった。洗い落とさなければな。

『・・・・・・あ』

遠目で見えたが、蓮子はまた昨日の女に捕まっている。

昨日と違って、蓮子は少し不機嫌そうだが。

少し、聞き耳を立ててみよう。

『・・・だから、そいつが言ってる事は嘘に決まってんじゃん。守島を襲った奴なんだよ?そんな奴の言う事信じる気?』

『でもねー、その守島先輩が襲われたって事実すら、ちょっと疑わしいのよね。』

『何?守島先輩疑う気?』

『いや、そういうわけじゃないんだけど、どーにもあの転校生、女を襲うような奴じゃないのよ。寧ろ興味無さそうな・・・』

『やっぱ疑ってんじゃん。宇佐見さん最低』

『・・・何でそんな事になるのよ。意味わかんないわ』

確かに理解はし難い。

ほとんど、その守島という奴しか見ておらず、宇佐美蓮子の意見をほとんど受け入れていないからか。

他人の意見をまともに聞いていないように思える。

『・・・・・・』

で、当の守島は

下校途中にすれ違った時に、僕の顔を覗き込んでいた。

その時に見えた彼女の顔は、少し追い詰められているような顔をしていたような気がした。

『あ、当の転校生が居るわよ。ちょっと!アンタ・・・』

宇佐美蓮子が僕の存在に気づき、こちらに近づこうと歩み寄ったが、

『ちょっと手を話しなさいよ!!』

『やめなさいって!アンタまで犯されたらどうするのよ!!』

『だからそれを確かめるのよ!!』

そう言って蓮子は手を振りほどき、僕に質問を投げかけた。

『アンタ本当に、守島先輩を強姦したっての?』

『していないな。僕はそう主張する。』

『証拠は?』

『逆に、僕が彼女を強姦した証拠はあるのか?』

僕がそう主張すると、蓮子は考えた。

『・・・でも、現にその噂が流れてるのよ?火の無い所に煙は立たないじゃない。』

『その火は、僕が点けたものじゃない。むしろ僕は被害を受けた者だ。』

僕がそう言うと、蓮子は睨みだし

『あくまで、アンタは被害者を装う・・・ってわけなのね』

『まぁ、物的証拠が無い限り・・・確定的とは言えないからね。それとも守島先輩とやらの膣をかき回して、僕の精液を探すかい?』

『何で、アンタは警察に捕まらないのかしら』

『物的証拠が無いからだよ。既に解放された後さ。教師や警察にも聞いてみるといい。』

そう言って僕は去ろうとすると、

後ろから袖を掴まれた。

『・・・じゃぁ、やっぱりアンタは強姦なんてやってないのね?』

『僕はそう主張させてもらうよ。あくまで主張だがな』

『ねぇ、じゃぁやっぱりあの倶楽部と関係があるの?』

倶楽部

・・・それは、秘封倶楽部では無い事は確かだ。ならば

『私が、あの時行った小屋は・・・アンタの主張通りなら、噂の変態倶楽っ・・・!』

ガンッ!と鈍い音がした。

さっきまで蓮子と一緒に歩いていた女子が、鉄パイプを持って立っていたのだ。

話している最中に取ってきたのだろうか。

そして、その鉄パイプは

僕の上にも振り下ろされた。

意識が失う瞬間、何度も、何度も僕の頭を叩く感触が連続して現れ、意識が失うと比例して、その感触は遠のいていった・・・






【保健室】

目を開けると、知らない天井が視界に入った。

あれからどうなったのか、興味本位で半身を置き、窓を探した。

窓から映し出された光景は、辺りはもう夜になっていた。

その夜の中で、パトカーやら救急車やらが止まっている。

保健室の扉が開かれた。

『森近くん!!』

体育の教師が、僕の元に駆け寄り、肩を掴んだ。

『大丈夫か!?怪我はなんとも無いか!?』

『ええ・・・なんとか・・・。』

僕がそう言うと、体育の教師は安堵の息を吐いた。

『君だね?鉄パイプの犯人から暴行を受けた被害者は』

扉から現れたのは、小説の挿絵でよく書かれている刑事とやらの人だろうか。

次に救急隊員と思われる白衣を着た青年たちに頭を確認された。

『・・・うん、軽傷みたいだが・・・とりあえず病院に運ぼう。歩けるかい?』

そう言って手を貸され、僕はベットから下り、立ち上がった。

『意外と元気そうだな。酷く殴られたと聞いていたのだが』

『・・・あの、宇佐美蓮子は・・・』

宇佐美蓮子と聞くと、刑事は唸りながらしばし考えた。

『・・・宇佐美というと、連れてかれた女性の事かな?』

『連れて行かれた?』

『ああ、介護とか言いながら、複数の女生徒達に連れて行かれたらしいんだ・・・。が、近くの病院にも搬送されていない所を見ると、どこか誘拐されたのかもしれないな。』

ああ、間違い無い。変態倶楽部に連れて行かれたんだな。

・・・しかし、連れて行かれたから何だと言うのだろう。

『とにかく君には話を聞く必要があるな。校内では強姦されたと容疑されているんだって?それと関係あるのか聞きたい。』

『・・・関係はあります。それはでたらめで、恐らく誘拐した奴らは・・・噂を流した者達だと思われます。』

『なるほど。確かにこの学校には、そんな倶楽部があると噂されてるみたいだねぇ。』

本当にあります。なんて言っても信じてはもらえないだろうな。

『・・・多分、その中の一人に守島という女性も含まれていると思われるのですが。』

『守島?・・・先ほど、こちらに電話を寄越した者か?』

『え!』








【???】

木の葉が風に揺らぎ、梟が悲しげに鳴く声によって、私は目を覚ました。

目を覚ましたと共に、殴られた頭部がじんじんと痛む

目を覚ました場所は、間違いなく私の部屋でも無いし、学校の中でも無い。

・・・そうだ、思いだした。ここは

『・・・蓮子ちゃん?蓮子ちゃん居るの?』

『!』

声のする方に、目を向けてみると

『メリー・・・?』

親友、メリーが裸の状態で辺りを見渡していた。

『キャッ!蓮子ちゃんその格好!』

『え?・・・・・・うわぁ!!』

気づくと、私も裸だった事に気づく。

なぜ、こんな事になっているのだろうか。

誰がここまで連れてきたのだろうか。殴られた所までは覚えている。

『・・・・・・〜ッ!』

殴られた頭部がじんじんと痛む。

何故、私達がこんな理不尽な状況に置かれているのか、混乱していた。

秘封倶楽部を作ったのはいい物の、どこにも”怪異”なんてものがあらず、トイレの花子さんでさえ見つからなかった。

そんな私達に今、”怪異”と呼べる状況下に居る事は間違い無いのだが、

・・・こんなに恐ろしい状況下だことは思えなかった。

『蓮子ちゃん?』

また、別の人の声が聞こえた。

それは、先ほどまで私と話していた亮子の声だった。

『亮子!?アンタも捕まっていたの?』

『・・・・・・ううん。違うよ。蓮子ちゃん・・・。これは、”お祝い”だよ』

『・・・は?』

こんな生まれたままの姿にひん剥かれて、肌寒い小屋の中に置かれて”お祝い”だと言われると、

意味が分からなくてイライラした。

『あのね、蓮子ちゃん。言ったら驚くかもしれないけれどね、私・・・』

亮子は、モジモジしながら、しばらく間を持ち、そして間が終わると、再び口を開かせた。

『出会った時から、蓮子ちゃんの事・・・好きだったんだぁ・・・』

『・・・・・・は?』

何を、言っているの?こいつは

『いやいやいや、だって私は女、そしてアンタも女、どう考えてもおかしいよね?』

『何もおかしくないよ。何がおかしいの?』

『あのね、普通は女の子って男の子を好きになるじゃない。だからそれは・・・』

『男の子?あんなのただの獣じゃない。普通はあんなのと恋なんてしないよ?』

おかしい、何を言っているのか分からなくておかしい。

むしろこれはドッキリであって欲しいと思う自分が居る。こんなの怪異じゃないと言って欲しい自分が居る。

『いやだって、アンタのお母さんだってお父さんと出会ってアンタが生まれたんだよ?だからこんなの・・・』

『うるさい!!!!』

亮子の大声が小屋に響く

『ね・・・ねぇ?亮子ちゃん・・・。何で・・・こんな所に連れてきたの?』

メリーが、怯えた声で彼女に問いかける。

『・・・大丈夫だよ。メリーちゃんも愛してあげるから。』

『え?』

『蓮子ちゃんだけじゃない。メリーちゃんや、守島先輩や、蝸牛先輩。佐藤先生や・・・みーんな』

『ちょっと待って、いやちょっと待って!!!』

何で、そこで守島先輩や蝸牛先輩や佐藤先生が出てくるの!?

だって、守島先輩は優しい先輩で、蝸牛先輩は真面目な先輩で、佐藤先生は堅気な先生で・・・

『おおかしい!!絶対におかしい!!!こんな事を・・・アンタ何をやってるのよ!!』

『ううん、作ったのは私じゃないよ。うーんと昔から、この倶楽部はあるの。』

『・・・・・・もしかして、噂になってる・・・変態倶楽部・・・』

『違う!!!』

別の人の声がした、恐らくそれは・・・蝸牛先輩の声だ。

『変態なんかじゃない。寧ろ私達、新女性世界が正しいんだ。』

『女性世界・・・?』

『だって、元々人類は女性から始まったじゃないか。女性がいなかったら、誰も産まれないじゃない。だから、男なんて汚らわしい存在がおかしいんだよ。男と共存している事自体おかしいんだよ。』

『いやだから男の相手が居なかったら誰も産まれな』

『うるさい!!!!』

『・・・もし、男の人が居なかったら・・・皆幸せになれたと思うのよ。』

言っている事が滅茶苦茶だ・・・。

そもそも、女だけの世界になれば・・・世界のバランスなんてしっちゃかめっちゃかになるだろうに。

それは男も同じだ。男だらけの世界になれば、バランスはしっちゃかめっちゃかになる。

『そっそれはおかしいよ!』

メリーが反論する。

『だって・・・人類の歴史は男の人が築き上げてきたんだよ!?そりゃぁ嫌な人だって居るかもしれないけど・・・それは女の人だって同じじゃない!!』

『美しくない・・・美しくないんだ!!そんなのは!!』

話を・・・聞こうともしていない。

拒否しているんだ。私達の意見を・・・男の人の意見を

『・・・大丈夫だよ。守島先輩も、最初はおかしかった。男の人の方が好きって、彼氏も居るっておかしかった。』

『いや、おかしいのアンタ達・・・』

『だけど、ちゃんと私達が”教育”したおかげで、ちゃんとした見識を持つようになれたんだ。』

『教育・・・。教育・・・!?』

蓮子は、身の危険を感じた。

『嫌!!止めて!!私は異性愛者なのよ!?そっちの気は一切無いわ!!』

『でも、メリーちゃんといちゃいちゃしたりしたじゃないですか。』

『メリーさんだって、女の子同士の方が良いですよね?』

『え・・・・・・』

メリーは、しばらくの間何も答えなかった。

まさか、メリーにそんな気が・・・と一瞬思ったりしたが、どうやら違うようだ。

メリーの表情は、恐怖で歪んでいた顔だ。ここから失言してしまえば、何を言われるのか想像がつくから。

彼女達を否定すれば、私達が犯されると思っているから。・・・なるべく、何も悪い方向を願っていない。

『だって、私達 新女性世界員32人だって、もう男の人は害獣だってみなしてますよ?』

『さっ32人!?』

『ええ、だから私達全員、責任もって貴方達を世界から救ってあげますから。安心してくださいね。』

亮子は、私の胸を鷲掴みにし、こちらに迫ってくる

『いっ嫌・・・こっち来ないで・・・!』







【学校】

守島から掛かってきた電話、それは予想だにしていない言葉だった。

《・・・転校生くんが、居場所を知っていると思いますので、どうか転校生くんを頼ってください。》

何か、企んでいるのだろうかと思われた。

そして外へ飛びだし、警察の皆を誘導する事にしたのだが。

『おい、森近』

一人の男子生徒に呼び止められた。

『お前・・・沙也加を強姦したって本当なのか?』

『それは沙也加本人に聞け。僕たちは小屋に行く。』

『・・・小屋?』

そう言って僕たちは再び走り出し、パトカーに乗り込んだ。

パトカーの外から窓ガラスを叩く、先ほどの男子生徒が居た。

『何の用だ?僕は今、それどころじゃないのだが』

正直、秘封倶楽部の二人の事はどうでも良いが、

あの変態倶楽部の物的証拠を握る良い機会である為、僕は久々に楽しくなってきていたのだ。

だからか

『俺も連れてってくれ。俺は・・・沙也加の彼氏だ』

その言葉を聞いた瞬間、運命の女神は僕に微笑んでいると確信したのだ。







【???の麓】

『こちらは警察です。すみませんが、ここを通してもらえませんか?』

パトカーと止めた目の前には、佐藤先生が立っていた。

『・・・森近。お前は強姦だけでは飽き足らず、また何かをしたのか?』

『何を誤解しているかわかりませんが、僕は捜査に協力しているだけです』

『・・・捜査?』

刑事はパトカーから降り、佐藤先生の前に立った。

『この先、二人の女子生徒が誘拐されたとの報告があったのですよ』

『・・・何を根拠でそんな事を?』

『今からそれを捜査しに行くんですよ。では、これで』

そう言って、刑事は佐藤先生を押しのき、前に進んだ。

『待ちなさい。ここから先は何も無いわ。』

『だからそれを今から操作しに行くんですよ。』

そう言って、前に進む。

『ほら森近くん。どこにあるか案内してくれ。このままでは遭難してしまうよ。』

『分かりました。』

僕は刑事さんの言う通りに歩いて行った。瞬間

『!』

僕は佐藤先生に押さえつけられた。

『何をしている!!』

佐藤先生を引き剥がそうと、沙也加の彼氏である町田と警察官が引き剥がす。

『痛てててて!!』

佐藤先生が爪を立て、引っ張ると共に佐藤先生の爪が皮膚に食い込む。

『ふーっ!!ふーっ!!!』

佐藤先生の顔は、鬼にように怒り狂っていた。

あの時に見たヒステリックの顔と、ほぼ同じだ。

『この!引き離せ!!』

『うるさい!!この先には何も無い!!何もないんだ!!!!!』

『それを今から探しに行くんだ!!』

『ぅぅうおおおあおあああああああああああああ!!!!!』

とうとう引き離したと同時に、佐藤先生の絶叫が森に響いた。

『押さえつけろ!!』

そして先生を押さえつけ、僕たちは前に進んだ。

『何も無いんだぁああああ!!!何もないから先に進むなぁああああああ!!!ああああああああああああああああああ!!!』

無駄な叫びを繰り返す佐藤先生の姿は、目も当てられない程愚かしい姿に見えた。

『行くぞ』

そう言って、僕たちは森の中へと入っていった。







【???】

『守島先輩が居ないよ?』

もう一人、また部屋に入ってきた。

その間に、私の乳房は形が変わりそうな程揉まれ、いじられていた。

『・・・まぁ、新人だからしょうがないんじゃいかしら。』

メリーは泣きながら身体をいじられている。暗くて見えないが、女に汚されているのは間違いないだろう。

『あっもしかして新入りの子?私もやらせてー』

『うん良いよ。でもアンタの分の潤滑剤は無いよ?』

また、新しい娘、新しい娘が入ってくる。

その度に、私達は絶望する。

絶望して、絶望する。


『しかし、やっぱり守島先輩もまだ汚れてるのかなぁ。』

『じゃぁ、やっぱりあの彼氏さん、潰した方が良いかもね。どんな噂流すー?』

『うん!やっぱり守島先輩、綺麗な身体だから。男の気はちゃんと消さないといけないしね』

守島先輩・・・彼氏居たんだ。

そう思ったが、もはやどうでも良かった。

『しかし、よく働いてくれるよね。守島先輩は。』

『うん。あんなに素直に私達の為に働いてくれる人、居ないよ?私守島先輩大好き!』

『だから、この場に居たら絶対、人生で一番素敵な場所になれたのにねー。』

『ねー。』

ああ、そういえば

よく・・・この変態倶楽部の事を調べているうちに、守島先輩の言葉が出てきたけれども、

彼女も・・・被害者だったんだ。

こいつらに・・・脅されていたんだ。だから、行動を露にして、

皆に『怪しい』『目立つ』行為をされていたんだね。

やっぱり、転校生の強姦説は大嘘だった・・・。そうだったんだ・・・。

ごめんなさい・・・って、今考えても・・・届かないよね。

助けて・・・なんて言っても、届かないよね。図々しいよね。

『うわぁ・・・あああ・・・ああああああああああああ!!!』

自己嫌悪

その自己嫌悪から、私は叫んでしまっていた。

無駄だと分かって居るのに。前に来た小屋は、恐ろしい程山奥にある。

いくら叫んでも、届きはしないなんて事は分かって居る。

分かって居る・・・のに。

泣き叫ばずには、いられなかった。

『あわわ大丈夫だよー蓮子ちゃん。ちゃんと慣れるから。私たちのやってる事も理解できるから。ね?』





瞬間、光が私を包んだ。

扉を開ける大きな音が、私達を包んだ。

『・・・・・・・・・・・・』

そこに居たのは、・・・・・・

『・・・・・転校生・・・くん?』

銀髪の、眼鏡をかけた。あの・・・転校生だった。

『・・・きっきゃぁああああああああああああああああ!!!!』

周りが叫ぶ。恐怖とおののきに支配される。

その後、女の警察官がこの部屋を懐中電灯で照らした。

『ああ・・・助けてください!!そこの男が!!そこの男が私たちに!!』

『”貴方達”が、この男を殴ったんでしょう?』

女の警察官の後ろには、何人もの警察が居る。

テレビでしか見た事の無い刑事さんが居る。

『こいつぁ酷ぇな・・・。気色悪い匂いがプンプンする。』

『・・・アンタ達、何しに来たの・・・?』

『ん?おじさん達は、こういう者ですよ?』

そう言って刑事さんは、警察手帳を私達に見せた。そして懐中電灯で照らした。

『まぁ・・・つまりだ。強いて言うならばだな・・・。この状況を説明して欲しいんだ。それも、正直な答えでな』






僕が扉を開けた瞬間に見えた光景は、想像以上に禍々しい物だった。

独特な女の匂いがキツく、不快感極まりないおぞましい匂いを発せられる。

そして複数の全裸の女性。その中に、マエリベリー・ハーンと宇佐見蓮子も居る。

一般人が見たら、極度の女性不信になる事間違いないだろう。

途中で僕たちを襲ってきた女性もそうだ。まさかナイフを持って襲いかかってくるとは思わなかった。

当然、公務執行妨害と傷害罪、殺人未遂で全員パトカーに乗せられていった。

『てめぇら何してんだ・・・』

沙也加の彼氏という者が、その光景を見て絶句していた。

『ちっ違うんです!!私たちは!!私達は脅されてここに居るんです!!』

『それは目の前で放心している宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンに聞けば分かる事だな?』

『はぁ!?この子も被害者なんですよ!?この子にそんな酷い事するつもりですか!』

『どちらにせよ・・・全員に話を聞くことに変わりは無いんだ。お前ら全員、こちらで保護させてもらうからな。』

言い終えた瞬間、女性の一人が瓶を投げてきた。

『!!』

僕はそれを腕で防いだが、中身がこぼれた。

どうやらそれは潤滑剤のようだ。床にも散乱していてツルツルしている。

『おい!奴らが逃げるぞ!!』

女たちは、宇佐見とマエリベリーを引きずって隠し扉から逃げていった。

『逃がすな!!』

床の潤滑剤で走りにくく、上手く走れないのは仕方無い。

幸い、僕は人間と比べて夜目が効く方だ。潤滑剤を避けて走れば、あっという間に彼女たちに追いつくことだろう。








【森の中】

『見つけたぞ!!』

『!』

僕は、奴らを発見し捕獲する覚悟を決めた。

『こっ来ないで!!大声あげるわよ!?』

『それは嬉しいな。刑事さんが見つけてくれるぞ?』

『・・・っ!!』

瞬間、奴らは石を投げてきた。

最後の抵抗なのだろうか。なんとも侘しい抵抗だ。

『・・・いい加減にしろよ』

僕は、ボソリと呟いていた。

『お前らは・・・人が嫌がっているのに無理矢理勧誘する奴らなのか?少なくとも、彼女の体の痣を見れば、抵抗したのは間違いないが』

『男は猿だ。知的生命体でも無い。』

『猿はお前らだろう?』

ギリリ、と歯ぎしりの音が聞こえた。

『自分の欲望のために、気に入った他人を同調圧力。共同絶交・・・いや、これでは猿以下じゃないか。』

『・・・男は、女を軽蔑し生きてきたじゃない。男の方が野蛮よ!!』

『野蛮も何も、女を軽蔑して生きている奴の方が異端だ。同時に男を軽蔑して生きている奴も異端だ。全員がそうだと思うな』

『うるさい!!男は美しくないじゃいか!!!』

『自分の感情論、美的センスを他人にまで押し付けるか。お前らは』

これではただの我が儘な子供だ。・・・いや、最近の子供でさえ自乗くらいはするだろうな。

周りの反応がそうだ。女の同性愛にどうこう言うつもりは無い。が、

非難しているのは、この非常識で迷惑極まりない行動だ。

それも社会とは間違った理論で、それ以外の全てを否定している。

『僕から見たらお前らは・・・ただの強姦魔に等しいね。』

『うわぁああああああああああああ!!!』

一人の女が、どこから隠し持っていたのか、ナイフを僕に突きつけた。

『おい森近!見つかったのかあいつらは・・・』

そこで現れた沙也加の彼氏が駆け下りて来て、

『・・・っ!』

そして、そのナイフに刺された。

血が、彼の腹部から噴出されている。

その血を見て、虚ろだったメリーの目は色を取り戻し、

『いやっいやぁああああああああああああああああああああ!!!』

正気に戻り、悲鳴を上げた

『そこか!!』

後ろから刑事の声が聞こえた。

そして警察官達は、彼女達を取り押さえていく。

『離せ!!離せこの変態ども!!!』

『変態はお前らだ!!逮捕する!』

これで多くの女性達は捕まった。マエリベリーはガタガタと震えている。

『・・・・・・』

僕は、来ていた上着を脱ぎ、マエリベリーに着させた。

『・・・転校生・・・くん』

マエリベリーは、僕の顔を見て、少し顔が赤かった。

しばらく裸で居たから風邪を引いたのだろう。早く家に帰らせてやらなければ。

だが、その顔は終わり、急激に青ざめた顔になった。

『転校生くん!!後ろ!!』

そして、後ろを振り向くと、また別の奴がナイフを持って振り上げていた。

が、瞬間に別の女性に取り押さえられた。

『守島先輩!?』

ナイフを振り上げようとした女性は、守島の名前を呼び叫んだ。

守島は、ナイフを持っている女性の顔を殴った。

殴った、殴った、殴った。殴った・・・

『どっどうして・・・』

『浩介くんは!!傷つけないって!!!言ったじゃ!!!ないですかぁあああああああああ!!!』

その形相は、失望と絶望の入り混じった顔をしていた。

そして、何度も、何度も女性の顔を殴りつける。

殴る殴る殴る殴る殴る・・・

『止めろ!!』

刑事さんが、守島さんの腕を掴む。

『もう、気絶している・・・』

そう言うと、守島さんはカタカタと震え

終いには、泣き出してしまった・・・。

『浩介・・・』

『早く彼を病院に!!早く!!!』

警察官が慌てだし、携帯を取り出す。

だが、ここは携帯の電波が届かない。

電波の届く場所まで、下山する必要があった。

『・・・・・・・・・』

メリーは、僕の腕にしがみつき動かなかった。

蓮子は、座りながら僕の顔を覗き込んでいた。

『・・・その、大丈夫か・・・?蓮子』

僕が、宇佐見蓮子に言葉を投げかけると、

『ぅ・・ぅわ・・・あああ・・・』

涙を流し、そして、

裸のまま、僕に抱きついた。

『うわぁああああああああああああああああぁぁ・・・・・・』

僕の胸の中で泣き、泣き、泣き続けていた・・・。










【翌々日】

この大事件は。当然新聞部にも行き渡り、

5時間にも渡る質問攻め、取材を繰り返し、

学内の新聞にも、その記事が行き渡っていた。

『勿論!森近くんが冤罪だった事も、ちゃんと載ってますよー!』

それは有難い。これで時間とともに、この事件の事と強姦の噂は消えていくだろう。

まぁ、童貞かどうか判別する機械があれば直ぐに解決したと思うのだがな。

まだ見てはいないが、この世界の技術なら出来ていてもおかしくはないだろう。

見つけるまで童貞は大切にしておこう。その技術を目の当たりにするまでな。

『しかし、まさか守島も冤罪だったなんてねー。これは超意外で、新聞にしても、超良い記事が書けましたぜ〜旦那』

『まぁ、彼氏が居るって事自体で、潔白を想定する人は居ただろうね。』

そして、守島の彼氏こと浩介は、

なんとか内蔵を避けていた為、大事には至らなかったらしい。

お見舞いに果物を買って病室に行ったら、守島と浩介が接吻している所を見てしまい、

そのまま果物を持って帰ってしまったがな。この世界のレモンはかなり酸っぱかった。

『しかし、まだだ。まだ終わらんよ・・・!』

『まだ、気が済んでいないのか?』

『ええ。まだ残党が残っていると言われてるのですから、そいつらを追って、解決するまでが流れですぜ。』

残党

・・・その事を聞いて、少しだけ嫌な予感がした。

『ん?』

『おっ』

そんな事を考えている内に、駒田とバッタリ出会った。

『・・・・・・』

駒田の目が泳いでいる。まぁ、一度疑った疑いは、そう簡単には取れないだろうな。

第一、僕はそんな事気にしていない。さっさと帰るか。と思い歩き出した。

が、

『うっ』

後ろから思い切り抱きしめられた。

『ごめん森近!!私・・・私は無実だったお前を疑った!そして絶交した!!私は馬鹿だったんだ!!!本当にごめん・・・ごめんなさい!!』

『いや、全然気にしてない。気にしてないから早く離し・・・いっ息が・・・』

『うううううゴメン!ゴメン!!ゴメン森近!!』

締め付ける力が、更に強くなってきている。

『あ・・・あの、駒田さん?森近くんが死にそうになっているから、そのへんで・・・』

『うわぁあああああああん!!』

首が変な音がした。

そこからだろうか、意識が無くなったのは。





【保健室】

一昨日見た天井が、また僕の視界に入った。

そうか、僕はあのまま意識を失っていたんだ。

正直、鉄パイプで殴られたよりも苦しかったな・・・。

『随分、面白い事に巻き込まれたわね。転校生くん』

『・・・生徒会長が、保健室でサボっても良いものなのか?』

『あら?貴方が心配で来てあげたのに、そんな言い草は無いんじゃない?』

何が心配だ。新聞を握り締めながら楽しそうな笑顔しやがって

『どうせ、僕の話が聞きたくて、ここに来たんでしょう?分かってますよ。もう』

『ふふふ。察しが良いわね。そうよ、変態倶楽部を壊滅した一人、貴方に一つ聞きたい事があるの。』

聞きたい事と言われても、パトカーに乗ってあの小屋にたどり着いて全員捉えるまで、30分も経っていないのだがな。

その30分を5時間かけて聞き出そうとしたあのチビ眼鏡先輩の事は忘れられそうにない。主に恨みに関して

『一体、貴方は”何人”捕まえたのかしら』

『・・・警察の人にも、同じことを聞いたんですけど、”30人”です。』

『あら、やたらと多いのねぇ。でも、それで”全部”かしら?』

『何が言いたいのです?』

『今、警察は取り調べを受けている人たちや、親族にも聞き込みを行ったらしいのだけど、どうにも倶楽部は”32人”居るみたいなのよね。』

32人・・・、つまりは

『残りは二人だけじゃないですか。それとも、二人は宇佐見蓮子やマエリベリー・ハーンの事では無いですか?』

『さぁ、事実はどうなのかしらね。ウフフ・・・。』

やれやれ、この人は苦手だ。そう思い窓の外を見た。


鉄パイプを持って、マエリベリー・ハーンの頭を殴った光景が見えた。






【???】

メリーを呼び出し、私は新女性世界が崩壊寸前の今、やるべきことを行った。

今からでも遅くは無い。一度、体験したメリーと蓮子なら、また新女性世界の再建が可能のはずだ。

だから、私は

『メリーちゃん。好きだよ。』

メリーの頭を鉄パイプで殴った。

死んだかもしれない。でも、それで良い。

あの夜、私はメリーちゃんが捕まったと聞いて、集合場所の山小屋に集合した。

だが、もうそこは警察が集ったあとだった。

それを見て、私は確信した。新女性世界が崩壊したのだと。

私は、認めなかった。

だって、女の子を好きになるのは、当たり前じゃない。私は女の子なんだから。

そう言ってくれたから、私は男という生き物から、メリーを救わなくちゃいけないんだ。

メリーを脚を掴み、引きずりながら私は唄う。

これから始まる、新女性世界へと向かい、私は唄う。

『・・・何をしている』

後ろから声が聞こえた。私が忌み嫌う男の声だった。

あんな声を聴覚に入れてしまった自分が憎い。耳が腐ってしまうじゃないか。

私は、無視して歩き続ける事にした。







【???】

メリーを引きずりながら歩く”女”は、そのまま前に進んでいった。

『おいちょっと待て!!』

メリーには、蓮子よりも強大な力を持っているという。が

それが何かの弾みで爆発し、幻想郷にまで影響してもらっては困る。

これは・・・多少乱暴な手を使わなくてはいけないか。

『ちょっと止まれ!』

『うう!!ううううううううううううううううう!!!!』

その時、女は暴れだし、僕を振りほどこうとした。

だが、離すわけが無い。こいつは残党だ。だから捕まえなくてはならないからだ。

『私に触れるな!!汚い男がぁああ!!』

瞬間、僕の体の中に冷たくて硬いものが入ってきた。

腹部を見ると、それはナイフだ。ナイフが僕の腹部にささっていた。

『・・・・・・え』

更に、女は懐からナイフを取り出し、また僕の腹部を刺した。

何度も、何度も、何度も、何度も・・・

『・・・・・・おい・・・』

そして、完全に僕に興味を失くしたのか、女は再びメリーを引きずり、歩いて行った。

僕は、目が霞み・・・意識が朦朧とし始めた。

僕と女の距離が、だんだんと離れていく・・・

身体が、言う事を聞かない。

・・・・・・死?

ここで・・・死ぬのか?僕は

人気の無い、こんな所で?

・・・ああ、こんな事なら監視なんて放って置いて街の中を堪能すれば良かったかな。

だが、さすがにあんな状況をほうって置ける程、僕は非常では無い・・・筈だ。

いや、放って置いても良かった筈だ。なのに、何故僕は”彼女達を助けたかった”のだろうか。

そんな事を考えているウチに、血を失うのを感じた。感じていった。

このまま、死

死ぬ・・・死

・・・・・・・・・

『うわぁあああああああああああああ!!!』

向こうから、叫び声が聞こえた。

それは、山小屋の扉の前で聞こえた悲鳴だ。

蓮子の声だ。

ガツンッ!と頭部を叩く音がした。

『メリーを離せ!!この・・・変態倶楽部が!!』

蓮子の手には、鉄パイプを持っている。

女は、頭を抑えて泣き始めた。

『・・・うるさい・・・うるさい!!』

そして、ナイフを持ち蓮子に襲いかかった。

『止めろ・・・止めろ!!』

とっさに身体が動いた。

さっきまで、全く身体が動かなかったハズなのに。

いつの間にか、瞬時に身体が動いていた。

そして、また

ナイフが僕の胸に刺さった。

『・・・・・・あっ』

これは・・・ヤバイ。

ヤバイ内臓器官に、刃物が通った。

僕は、そのまま

地に吸い込まれるように倒れていった。

『・・・ちょっと、嘘・・・』

宇佐見蓮子が、僕を見下ろす

『そっそもそも・・・そもそもアンタが悪いんじゃない!!アンタがメリーちゃんとずっと一緒に居るから・・・私が一緒に居れなかったんじゃない!!』

宇佐見蓮子は、僕をしばらく見た後、

再び、女を殴り始めた。

『だったら!!その!!メリーの血は何!?転校生くんの血は何!?何!?何なのよ!!!!』

『ぎゅっぎゅぅううう・・・!!』

しばらく殴った後、蓮子は疲れたのか、息切れを起こしたまま鉄パイプを捨てた。

そして、その間にメリーは腰を動かし、立ち上がった。

女は、息遣いを荒くし、血まみれのままメリーに向き合った。

メリーは何も言わない。何も言わずに女を見下ろした。

そして女はフラフラと立ち上がり、メリーに近づき、メリーの乳房を鷲掴みにした。

だが、メリーは動かない。反応もしない。

ただ、じっと女の方を睨みつけている。

まるで、便所の汚物にこびり付いた蛆虫を見るかのように、冷たい目をしていた。

『・・・メ・・・メリー・・・・・・?』

パァンッ!と、頬を叩く音が聞こえた。

女は、メリーにビンタをされたのだ。

それに続くように、蓮子は殴る構えを取って

思い切り、振り上げ

『くたばれ・・・このナベサブがぁあああああああああ!!!』

思い切り、女をぶん殴った。




女は、ピクリとも動かない。

空を見たまま、ピクリとも動いていなかった。

一体何が彼女達をここまで病的に刈り上げたのか分からない。

昔、男に何かされたのだろうか。

いや、それとも天性の者なのだろうか。

『ちょっと転校生くん!大丈夫!?すぐに救急車くるから頑張って!!』

蓮子が、僕にしがみついて声をかけていた。

『起きて!ねぇしっかりしてよ!!転校生くん!!転校生くん!!』

・・・いや、僕は転校生くん等という名前では無いのだがな。そんなに連呼しても意味は無いぞ。

『・・・・・・大丈夫ですよ。私が、私が何とかしますから・・・だから・・・』

メリーが、僕の手を握り、額に付けた。

手から、涙の雫が付着し、肌を通って地面に落ちた。

『だから・・・死なないで、霖之助くん!!』

そこから先は覚えていない。

視界が黒くなって、僕の意識はそこで途切れたのだから―――







【病院】

目をさましたら、またもや知らない天井が僕の視界に映った。

『・・・・・・あ』

と、同時に見覚えのある女性の顔が見えた。

『・・・紫か。何の用だ?』

『いえ、何だか大変そうだったので、ちょっと助けに参っていたのよ。』

『どうせ、活動報告をしろとでも言うのだろう?今はそれどころじゃないんだ。後日にしてくれ。』

『あら、貴方は一度、死んだのに私にそんな態度を取るの?』

・・・何か身体に違和感があると思ったら、

そうか、僕は一度死んでいたのか。

『それは済まない事をした。礼はまた、今度行うよ。』

『あら楽しみにしてるわ。でも今は・・・ちょっとそれどころじゃないわね。』

そう言って、紫はスキマの中に入っていった。

『それじゃぁね、店主さん。中々格好良かったわよ。惚れ惚れちゃったわ。』

そう言って、紫はスキマの中に入っていった。

全く、あいつは何を考えているのか分からん野郎だ。

扉の方から、物が落ちる音がした。

『・・・・・・霖之助・・・くん・・・』

そこには、蓮子と頭に包帯を巻いたメリーが立っていた。

手に持っていたであろうメロンは、地に落ちて割れていた。






『・・・・・・森近、霖之助・・・って名前よね。』

そこから、秘封倶楽部の活躍・・・いや、蛮行の数々を、宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンから聞かされた。

なるほどな。女の子二人だけで色んな所に回る事ばかりやってるってわけか。そりゃぁ女同士のデートと思われても仕方が無い。

だが、本人たちは『何で私達には彼氏が出来ないのかしら』等とぼやいているらしい。

『私は宇佐見蓮子。秘封倶楽部の一員よ。』

『そして私が、マエリベリー・ハーン。皆からはメリーって呼ばれてるよ、よろしくね。』

彼女達は、急に自己紹介を始めた。

もはや、僕が強姦魔等というでたらめは全く考えていないだろう。

『そうか・・・。これからは友達として、よろしく頼むよ。』

これで、ふりだしに戻ったとも言うべきか。

あんな不名誉な噂は、今もなお校内に残っているだろうが、

大事件となった変態倶楽部の影に隠れて、もうそんな噂は消えつつある。

これで全うな大学生活と共に、街中を探検し、外の世界の技術を見て回ることができるという事だ。これは嬉しい限りだな。

明日はどこに行こう。ようやく自由になった身だ。今テレビでやってるファンタジーな巨大遊園地に行くのも良いな。ナズーリンの仲間であろうネズミの妖怪の同種が働いていると思われる、例のディズ・・・

『何か勘違いしてないかしら?』

ニ・・・ん?

何を勘違いしているのだろうか。と思った矢先、蓮子は一枚の紙を突きつけてきた。

紙には・・・[入部希望届]と書いてある。しかも、[入部先]には『秘封倶楽部』と書かれた紙があった。

『ここにサインしなさい。今日から貴方は・・・秘封倶楽部の一員よ!!』

『ちょっと待て、ちょっと待っていただきたい。これは拒否できるのだろうな?』

『え?できるわけ無いじゃない。』

マジかよ

『いや待ってくれ。何で急に僕が君たちの倶楽部に入らなくてはならないんだ?これは横暴だ。変態倶楽部と全く変わってな』

『私達の裸を見た事、忘れてないわよね?』

『・・・・・・あれは、ほとんど不可抗力だろう』

僕がそう言うと、蓮子はじっとりした目で僕に近づいた。

『私、このままだとお嫁に行けないわよ?』

『いや本当に待ってくれ。ちょっと傷口が痛む・・・』

『霖くん・・・私からもお願いします。秘封倶楽部に・・・入って頂けませんか?』

りっ霖・・・くん?

いつの間にか、彼女達は距離を狭めてきていた。

『そっそのっ。きっと、霖くんが入ってくれると、倶楽部はもっと楽しくなりそうで・・・私も・・・安心で・・・』

メリーの顔がみるみる赤くなっていく。

裸で森の中歩いたからか。風邪がまだ治っていないようだ。頭部の傷も治っていないし、大変だな。

『どーん!!』

いきなり、蓮子は僕に抱きついてきた。

ぎゅっと、僕を抱きしめ・・・痛てててててて!ちょっまだ傷が治っていないのに抱きしめてくるなっ

『アンタには、本当に感謝してるのよ。』

蓮子は、囁くように語りだした。

『だから、私達の見る光景を、貴方にも見て欲しいの。きっと、怖いことばかりかもしれないけど、この世界の本当の姿が見れたら、きっと楽しいじゃない。』

『・・・・・・』

『でも、本当に嫌だったら謝る。・・・ま、それで私が諦めるかどうかは分からないけどね。』

そう言って、蓮子は僕の顔に近づき、ニッと笑った。

ああ、そうか。

僕は、彼女達の笑顔が見たくて助け出したのだな。

悲しい顔を見たくなくて、助けたのだな。

そして、この世界にたどり着いた瞬間に、僕は彼女達から逃げられない運命なんだ。

僕はその入部届けの紙を持ち上げ、その紙をまじまじと見た。


この入部届けに名前を書いた瞬間、僕は新しい世界を観るだろう。

この狭い外の世界とはまた別の、広い外の世界。

きっと、僕は彼女達を監視するためだけではなく、この広い世界を隅々まで見るために外の世界に来たのかもしれない。

そう思うと、僕はとてもワクワクした。

これから始まる新しい世界は、きっと僕を満足しくれるだろう。

『・・・そうだな、逃げられないのなら。しょうがないな。』

そう言って、僕は彼女に微笑み返した。






〜蛇足〜

怪我も治って、学校に復帰すると、守島と浩介の姿が見えた、

二人は、腕を組んで仲良さそうに歩いていた。

二人共笑顔だ。清々しい程の笑顔だった。

ちなみに、あの変態倶楽部にはあと一人の残党が居るらしいが、

一人では何もできるはずが無いので、放って置いても良いだろう。

勝手に自然消滅する。そう決まっているのだ。

・・・しかし、あの二人のいちゃつき具合は凄まじいな。

大学を卒業したとともに、結婚するらしいと、新聞に書いてあったが、あながち嘘でも無さそうだ。

『おっはよ!霖くん!!』

背中を思い切り叩かれた。間違いなく蓮子だ。

『・・・痛いじゃないか』

『ごみんごみん、今日から学校復帰かぁ〜。今日の放課後、秘封倶楽部の活動開始だからね!!』

『おい、早い、何だか早すぎるぞ』

『問答無用!放課後、校門の前で待ってなさいよね!』

そう言って、僕の横を並んで歩いている。

どうやら僕より先に行くつもりは無いらしいな。

『おはようございます。霖くん。』

次に、メリーが挨拶に来た。

『今日から、秘封倶楽部の新活動開始・・・ですね。』

『ああ、一体どんな事をやらされるやら。』

僕としては、外の世界の文学を読みあさりたかったのだが、それは入院中しか叶わなかったそうだ。

もう少し、入院してても良かったのだがな。惜しかった。

『勿論それは探検よ!今日は、幻の珍書・・・完全自殺マニュアルを探すわよ!』

探してどうする

もしかして死にたいのか?死にたければ屋上から飛び降りれば良いだけだがな。

『さぁ、新しくなった秘封倶楽部、活動開始!!』

まだ放課後でも無いのだが。・・・まぁ

暇はしなくて済みそうだ。この世界ではとことん彼女に付き合ってやろう。





〜蛇足2〜

中間テスト後

蓮子は憔悴しきっていた。

『あ〜!!テストなんて消滅すれば良いのに〜!』

そう言って、自分の名前が書かれている順位に向かって叫んでいた。学年243位だったらしい。

『でも・・・霖くん凄いですねぇ・・・』

そういうメリーは、学年34位だった。

かくいう僕は、学年一位を取っていた。

しかし実に簡単な物で成績が決まるものだ。教科書に書かれた事をそのまま答えるだけで僕の中身を評価される。

一種の暗号を解いている気分だ。

『あちゃ〜・・・またやっちまったぁ・・・』

横に居る駒田も、少し困った顔をしていた。

どうやら彼女は、蓮子の一つ下の244位だったらしい。

『・・・・・・・・・ふっ』

あ、ちょっと笑った、あいつちょっと笑ったぞ。

言っておくが、蓮子。お前駒田の一点上なだけだからな。レベル変わらないからな。

『・・・・・・』

そこで、僕の順位をガン見している女性が居た。

『・・・貴方が、森近さん?』

『ええ、そうですけれども。』

『私は、桐谷真澄と申します。学園一位の現状はどうでしょうか?』

いきなり自己紹介されたと思ったら、何かイヤミらしい事を言われた。

『いえ、別に』

『そうですか』

正直の感想を答えると、ちょっと悔しそうな顔をしていた。

『・・・しかし、学園一位の自覚は持った方が良いでしょう。そんな顔で一位を取られても不愉快ですからね。』

いや、何を言っている?あれはただの暗号を解いているだけだろう?

『では、私はこれで』

言いたいことを言っては、そのまま彼女はどこか去っていた。

『・・・何だ?あいつ』

駒田が、不信な目で桐谷真澄を睨みつけていた。

更に嫌見たらしく、蓮子がドヤ顔していた。

『・・・何故、君が誇らしげな顔をしている?』

『だって、私には学園一位の霖くんが居ますからね。んふー』

こいつ・・・僕を出汁に使ってるな

『そんなんで満足してちゃ駄目だよぉ。蓮子ちゃんもちゃんと勉強して・・・ね?』

『えー?やだー。私は新境地を見るんだもん。勉強なんかクソくらえだよー。』

何でこいつは大学に居るのだろうか。いや、何で京都大学に入れたのだろうか。

・・・世の中、分からない事ばかりである。

『そんな事よりも今日!霖くんの学園一位祝いに皆でパーティしない!?』

『おっそれ良いな。』

『うん。大賛成〜!』

『おぉーっと!学園一位さん!!今のご心境はどうですか!?』

何かが割って入ってきた。

『おはよう学園一位さん。今日は一位を取った貴方のために、私の家でパーティを開こうと思うのだけれども。』

また何かが割って入ってきた。

『おっ!丁度良いわね!じゃぁ生徒会長の家で宴会するわよ!!』

『酒は出ないわよ』

『え』

酒が出ないという言葉で、蓮子は固まった。

が、蓮子以外は盛り上がっていた。





・・・さて、これから始まる人生には何が起こるだろうか。

八尺の女性に出会ったり、完全な変態倶楽部に出会ったり、変な宗教に襲われたり、完全悪霊箱に魅入られたり、

はたまた、別の世界線に飛ばされたりするのだろうか。

『霖くーん!こっちこっちー!』

まぁ、今はそんな事を考えている事は無い。

これから先、始まるであろう新しい世界が待っている。

僕が見たかった世界を、これから歩きまわって見つけに行くのだ。

二人の、秘封の女子大生と一緒に・・・

『ほらほら!今日も秘封霖倶楽部の活動!開始よ――!!!』





【秘封霖倶楽部】

蓮子とメリーが二人の時は、秘封倶楽部と名乗っていたらしいが、僕が加わってから一月経って名前が変わった。

秘封とは二人の意味を指しているとか何とか。良く分からないが、一ヶ月も倶楽部に属しているからか、僕の名前も載せると言い始めた。

語呂は前のと比べて良いとは言い難く、いつもどおり【秘封倶楽部】と言われる事が多い。

これは、その【秘封霖倶楽部】になる前の活動記録である。
前回、五話目は長くなりそうですと言いましたが、本当に長くなりました・・・。

次回からは、また怪異を・・・洒落怖を元にした活劇を執筆する予定です。
新しくなった秘封霖倶楽部を期待していただけたら、幸いです。

最後に、この小説はfuta氏の洒落怖秘封霖と東方projectの三次創作です。原作の方も面白いので、是非見てください。
ND
作品情報
作品集:
8
投稿日時:
2013/09/29 12:57:53
更新日時:
2013/09/29 21:57:53
評価:
4/4
POINT:
400
Rate:
17.00
分類
森近霖之助
秘封倶楽部
秘封霖倶楽部
宇佐見蓮子
マエリベリー・ハーン
レズ
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POINT
1. 100 名無し ■2013/09/30 03:33:07
出会い編も本編に劣らずの大冒険ですな。
病的なレズビアンぶりが並々ならぬ狂気を感じてガクブルでしたわ。
誤字が所々あったのがちと残念ですが、面白かったですよ。
2. 100 NutsIn先任曹長 ■2013/09/30 06:43:12
このシリーズが定義する『怪異』っていうのは、我々が住まう世界に寄生、侵食する、別の理の『セカイ』なんですね……。

蓮子とメリーが霖之助を『仲間』と認めたのは、紫が危険視する彼女達の『力』のおかげか?
それとも霖之助の白馬の騎士様っぷりの成果か?

何にせよ、秘封霖倶楽部活動開始!!
これからこのように、幾つの反吐の出るような『セカイ』を彼女達は滅ぼしていくのだろうか?
霖之助と秘封倶楽部の別れの時は来るのだろうか?
次回作も期待しています。
3. 100 名無し ■2013/10/02 17:23:02
本家とは似て非なるこの雰囲気が好きです。
4. 100 名無し ■2014/01/31 16:33:12
いや、あの、こんな場所でこんな作品があるとはおもいませなんだ
続編をお待ちします
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