Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/imta/req/util.php on line 270
『貴様等は私の可愛い教え子だ!『産廃創想話例大祭B』』 作者: 戸隠

貴様等は私の可愛い教え子だ!『産廃創想話例大祭B』

作品集: 10 投稿日時: 2014/05/16 15:02:48 更新日時: 2014/05/17 00:11:15 評価: 19/20 POINT: 1820 Rate: 17.57
新学期が始まったわ。おばさん寺子屋に行って来るわ。
霊夢は寺子屋の児童だったのかい
いいえ、勘違いしないで弾幕の先生になったのよ。
それはすごいねえ。努力したんだねえ。



 弾幕の先生に霊夢はなった。狭き門といわれる難関を弾幕で突破したのだった。


 そして、今日が初の授業だった。寺子屋に霊夢が向かうと、今日から同僚になる慧音が出迎えてくれた。

「貴様が先生になると思わなかったぞ。昔からヤンチャしてどこぞの糞餓鬼よりも巫女ということで凄く扱いづらかった。あの貴様がな」

「慧音、昔のことは本当に悪かったって思っているわ。見ての通りまじめに働き始めたでしょ」

「ふん、それはこれからの貴様の教師としての行動しだいだな。そうだな期待しているぞ」

 寺子屋に霊夢がつくとそこには同僚になった慧音が居て話しかけてきた。期待と不安が両方いりまじって居るらしい。

 貴様貴様とこの慧音はだれにでも言うが、別に悪気は無い。ちょっと、口が悪いだけだ。

「期待にこたえられるように頑張るわ」

 授業開始時刻になった。寺子屋の教室には慧音に教えを請っている慧音曰く糞餓鬼共が揃っていた。

「おい、糞ほどにもかわいくない糞餓鬼共、今日から貴様達に弾幕を教える霊夢先生だ。先生の話を良く聞き、良く敬い、この幻想郷で生き残る術を見につけるんだぞ」

「よろしくね」

 今日は初めての授業なので、慧音は霊夢に付き添っていた。



風魔「やばいぞ、あれは神社の巫女だ」

甲賀「妖怪と一緒に人喰うって噂だど」

戸隠「いや、実際に人喰ったて話だ」

伊賀「こうぇぇ」


 霊夢の前評判は上々だった。恐怖で最初から、寺子屋の糞餓鬼を震え上がらせているようだった。

「授業中よ。私語は慎みなさい」

甲賀「すまねえぇだ。霊夢先生、くわねぇでけろ」

「貴様等が余計なことをしなければ、霊夢先生は食べたりしないぞ」

 霊夢は人を食べたりしないが、そこを慧音は否定しなかった。

「いや、人は食べないわ」

 
 



 初めての勤務は散々だった。寺子屋の児童は終始霊夢にビビッてしまい授業にならなかった。

 慧音は寧ろ威圧して恐れさせてなんぼだと褒めていたが霊夢は先行きが不安だった。







「どうだったんだい授業は?」
「おばさん、大変だったわ」
「そうかい、おばさんは応援しているから諦めず頑張るんだよ」
「ありがとうおばさん」



 弾幕の授業が取り入れられたのは数年前のことだった。スペルカードのルールによって人間と妖怪、おばさん達が対等に戦えるようになった。

 始めのうちは、人間がむやみに襲われ落命することが減ったのでとても良いルールだった。しかし、それが人間の増長を産むことになり力関係が崩れてしまった。

 そこで、寄生型の妖怪である紫は霊夢の胎内から出産して妖怪による人間の口減らしを指示するようになった。増長の結果は繁殖だから人間の口減らしには事欠かなかった。

 今や幻想郷は少し昔の様相だった。弾幕ごっこだったのが、今では弾幕である。つまり、死合いだった。

 弾幕が出せない者、弱い者はただ喰われるのを待つしかない。そこで子供に弾幕を教えようということになったのである。








甲賀「霊夢先生、腕がイテェだよ」
「別に何処か欠損しているわけでないのだから問題ないわ」
甲賀「鬼だ」
「本当の鬼をあなたは見たことあるの?」
甲賀「鬼を見てら生きておれん」
風魔「先生はみただか?」
「同居していたことすらあるわ。それに、これがその時そいつに襲われた怪我よ」
伊賀「こうぇぇ」



 特に鬼はその凶暴性を取り戻し人を大量に食いせしめていた。霊夢も同居していた鬼に襲われて、重症を負った恨みがあった。逃げ出したあいつは見つけ次第八つ裂き!!!


 寺子屋の餓鬼共は思った以上に物覚えが悪く霊夢は困っていた。一ヶ月の指導によって出来るようになったこと言えば教えた覚えの無い土遁の術や手裏剣の投げ方だった。

 

 この状態で妖怪に遭遇すれば忍者のように戦わねばならないだろう。

戸隠「霊夢先生」
「それで、アンタはここで何してるの?」
戸隠「え?」
「アンタはひまわり畑に就職したんでしょ?」
戸隠「え?先生どういうことっすか?」
「とぼけてるの?」
戸隠「はぁ?」

 ついでに、餓鬼にまぎれて戸隠がいるのだがまるで話が合わない。ただ、この間抜け面は戸隠だ。






 別の日の夜、ミスティアの屋台に慧音の誘いで霊夢は居た。


「餓鬼共は貴様の指導のおかげで強くなっているようだな」

「嘘、自信を失ったわ。これから先生としてやっていけるか」

「そんなこと無いぞ、餓鬼の一匹がこの間、妖怪を吹き矢で仕留めたぞ」

 襲われたところをやり返したとの話だ。

「吹き矢なんて忍者みたいなこと教えてないわ」

 餓鬼共は最近、武器に毒を塗ったり食べ物に毒を混ぜて麻痺させるといった卑怯な技を覚えていた。

 霊夢がどんなに、夢想封印等の弾幕を教えても全くそっちの進歩は無いのに。

「そうか?まあいい、今日は私のおごりだ呑め」

 寺子屋の仕事というものは儲かるらしく、慧音は気前が良かった。この間、霊夢は初任給を貰ったが驚く額だった。いったいどんなことでこんなにお金が流れ込むのか興味があるところだが、触れてはいけないところだ。

「ミスティア、何か良いお酒ある?」

「ひまわりの焼酎なんてどうでしょう?」

「幽香のところの酒かあれは良いぞ」

「じゃあ、それもらうわ」

 ひまわりの種と花弁と花粉を独自の製法で焼酎に漬け込んだ酒だ。この酒は色は透明では無く薄い黄金色で少しひまわりの香りがして口当たりがやわらかくなかなか好評だった。

 それに、作っているのが幽香の会社ですぐ近くにあるから安く飲めた。

「どうぞ」

「枡が溢れるくらいいれろよ」

「はい」

 ミスティアに慧音は小銭をその場で払った。ミスティアの屋台の清算方法だった。

「旨いか?」

「ええ、美味しいわ」

「・・・よかったな。幽香」

 友人の酒が褒められて慧音は喜んだ。人間と妖怪が昔の関係になってしまた今は幽香の会社はさらに火の車だった。

「おかわり!」

「呑むの早いな貴様。まあ、私もおかわりなのだが」

「はい」

 その後、三人は下らない話や冗談で久しぶりに笑えた。

「霊夢さん。妖怪と人、仲が悪くなってしまいましたが今でも共存を望んでいる妖怪も居ることを忘れないで下さいね」

 ミスティアがそんなことを言っていたと思う。良酒だったので二日酔いにならなかったが呑みすぎてしまった霊夢の記憶は曖昧だった。









 霊夢や今日は寺子屋に行くのはおよし
 なんで、おばさん?
 いやな、予感がするんだよ
 でも、仕事だし
 そうかい。寺子屋に行っても行かなくても同じことかも知れないね




夏、その日に霊夢が教えていた餓鬼が一人居なくなった。

霊夢がそれを慧音に教えられたのは寺子屋についてすぐのことだった。

おばさんは、霊夢のかわりに巫女をしていたから神格を得てこれを予見していたのだった。

「戸隠がどうやら鬼に喰われたらしい」

「鬼? どうして、鬼って分かるの?」

甲賀「おら、戸隠と一緒にトウモロコシ盗んでいてその時鬼に見つかって襲われただよ」
風魔「俺んちのトウモロコシ畑あらしのはお前だったのか」
「せいぜいトウモロコシ畑のことは後で勝手にもめるのね。それで、襲われてどうなったの?」
甲賀「おらは、遁走の術を会得していたから鬼から逃げられたけども、戸隠は偽忍者だから喰われてしまったんだよ」

 餓鬼共は最近さらに忍者のように成長していた。弾幕の腕は一向に向上しないのに、今では一流の忍者としてやっていける程の実力を付け始めていた。

「あいつ、やっぱり戸隠だったのね」
伊賀「こえぇ」

※風魔は被害届は出さなかった。

 郷で成人を迎えられる子供はここのところ大分減っている。いよいよ、妖怪に対する人々の恐怖は怒りに変っていた。




 この事件の報復で、無関係のミスティアが吊るされたと聞いたのはこの日から三日後のことだった。




「・・・貴様の何処が悪かったんだ?」

 慧音はミスティアが吊るされている刑場で、吊られたミスティアに話しかけていた。

 首吊りで醜くゆがみ糞尿を垂れ流し事切れてるているミスティアを降ろしてやりたがったが郷の住人との会議でそれはしてはいけないことになっていた。

「私にもっと力があれば貴様を守れたのに」





 数日前、郷の重鎮達との会議、今回の郷の餓鬼が鬼に喰われたことによる報復をどうするかと言うのが議題。

霧雨「それで、報復どうすんの?鬼に報復すわけにはいかんだろ?全くしないわけにもいかねえし」

稗田「んだ。鬼は強い」

アーサー「ミスティアとか弱い妖怪を標的にしたらどうだろう?」

妹紅「いいねぇそれ」

霧雨「そうだな、そうすっか」

「貴様等は、どうして考えることが報復することなんだ。もっと、平和的に解決できないのか?」

稗田「奴等と平和だと?」

「そうだ、話し合い。昔のような関係を取り戻そう」

妹紅「慧音は強いからそういうこと言えるんだ」

「妹紅?」

アーサー「妹紅はこの間天狗の妖怪に襲われて、犯されたんだ」

霧雨「まあまあ、今ここで言うことではないだろアーサー」

アーサー「そうだな」

妹紅「奴等はね。化け物なんだ」

「しかし」

霧雨「先生と議論しても平行線だろ?多数決できめるべ」

稗田「んだな」

「貴様等、人間は」

あんちゃん「賛成多数で可決やな」


 人間の汚さを慧音は知っていた。そして、綺麗なところも知っていた。だから、この結果だけが全てでは無いことは分かっている。

 だが、今は半分流れている血に怒りを感じていたのだった。




 それでも、何も出来ず悔しかった。




 

 ミスティアは秋の口に降ろされて、親しかった友人の妖怪達が引き取って行った。その時にいざこざが起こり、それで益々、人と妖怪は険悪になっていった。





 霊夢や今日は寺子屋に行かないのかい???
 稲の収穫時だから寺子屋はお休みなの
 そうなのかい
 まあ、テストの採点はあるけれど


 
 晩秋の幻想郷はいつもなら活気に溢れるのだが、寂しい秋風だけが通り抜けていくだけだった。


 その年は不作だった。





霧雨「んで、冬の食料どうすんよ?」

稗田「わかねぇ」

妹紅「慧音ならなにか良案あるんじゃない?」

アーサー「そうだな」

あんちゃん「せやせや」

「貴様等は」

霧雨「先生、ごたく良いんだ。食料どうすんの?俺達このままじゃ飢え死にっすよ」

妹紅「慧音なら良案有るでしょう?」

「・・・天狗と河童に食料支援をたのもう」

アーサー「おいおい、妹紅の心の傷を考えると」

妹紅「慧音酷い」

「では、どうするのだ?」

霧雨「命蓮寺には食料が備蓄されているとの噂だ」

稗田「襲うのか?」

「貴様等そんなことはやめるんだ」

アーサー「先生はこの会議に次から出なくて良い」

あんちゃん「せやな」


 命蓮寺に人々は押し入り、多大な犠牲を払うことになったがその冬は越せるだけの食料を得ることは出来た。



 
 冬になった。その日も寺子屋では、弾幕の授業が行われていたがまた一人、餓鬼が減っていた。


「ねえ、一人足りないけど、サボりなの?」
甲賀「伊賀のことか?」
「そう、そいつ」
伊賀「あいつは死んだだよ」
「なんで?」
伊賀「命蓮寺の妖怪に食い殺されただよ」
風魔「あいつはいつもビビッてばかっかりでイザって時に力がだせなかった」

 
 命蓮寺に蓄えてあった食糧は元々、いや当然ながら命蓮寺にいた妖怪達の冬に食べる食料だった。妖怪でも穀物があれば人間を食べる必要が無いはずだった。

 その穀物が無くなってしまったから、飢え死にすることよりも肉食を選んだのだった。





 この冬、風魔も死んだ。自分のことを忍者だと思い込み、妹紅に後ろから急に抱き着いて殺されたのだった。








 霊夢やお客さんが来てるよ
 誰?
 私だ。
 慧音。それとアンタは。
 ・・久しぶり霊夢




 雪解けの神社に、慧音が萃香を連れてきた。霊夢に重症を負わせて逃げて行った日以来の再開だった。





 嫌な感じで部屋も時計がカチカチなっている。おばさんがお茶をいれているから居間には三人、丁度人妖の数が一緒だった。


 誰からもなかなか喋り出しにくい雰囲気の中だった。

 しばらくそんな感じで、ついでに霊夢が萃香を怒りを込めた眼で見ていると、おばさんがお茶を入れて入ってきた。

「お前は慧音とか言ったね。霊夢が世話になっているようだね」

「貴様がおばさんか。噂どおりの武人といったところか」

 お茶を渡す動作に一切の隙がうかがえない。普段から、おばさんには隙がなかった。

「それで、今日はそこの鬼を連れてきてなんのようだい?霊夢は昔その鬼に重症を負わされたんだよ」

 おばさんが丁度出かけているときに、霊夢に萃香は襲い掛かった。鬼の本能むき出して、肉食を貪る為に襲い掛かったのだった。

「ごめんよ。霊夢あの時は私どうかしてた」

「謝って済む問題だと思って居るの?私の胸を人に見せられないようにしておいて」

 霊夢は胸を齧られて片方しか残っていない。今はその片方には服に綿をつめて誤魔化している。が、あの巫女服だ隠せていない。

 齧られている間に、なんとか、萃香の頭を殴打して撃退したのだった。

「ごめんよ。私のを瘤取りじいさんみたいに移植するからそれで、許して」

「アンタのなんて、ないじゃない」

「まあまあ、貴様の怒るところは凄くわかる。だが、今日は恨みを晴らさせるためにコレを連れて来たわけではないぞ」

 慧音は春休みの間に、山林を歩き回り昔神社に住んでいた萃香を見つけてきたのだった。人妖の関係が最悪なこの状態で、特に人間から恐れられている鬼だ。だが萃香は比較的に人間に対して友好的な面を持っていた。霊夢との話も聞いていたが何か物事の解決にならないかと思ったのだった。

 山の滝のところで見つけたときは、やはり襲い掛かってきたが、暖をとるために持っていたひまわり焼酎を渡すことにより何とかまともに話が出来るようになった。

 まともに話して、慧音は餓えていて襲い掛かってきたことを知り、霊夢のことは後悔していることも知った。

「・・・慧音!やっぱりそいつを殺させて!女の恨みを晴らさせて」

「霊夢ごめんよ」

「待ってくれ霊夢」

「霊夢や、私もそいつを許せないよ。でも、慧音の話も聞いておやり」

「おばさん」

「頼む」

「どうしても鬼に復讐したいのなら、いつでもおばさんが屠ってあげるよ。でも今はそのときじゃないと思うよ」

「しかたないわね。おばさんと慧音がそこまで言うなら」


 人間の増長はここ数年で、収まったがおかしな方向に収まって昔のような恐れではなく恨みに変ってしまった。妖怪も昔のように恐れさせるということを紫に操作されて襲い始めたが、いまでは恐れさせるために襲うというよりも飢餓から逃れるためにということに変っていた。

 人間の盟友だった河童や、やはり比較的に友好的だった天狗も冷たい目で見るようになった。

 いい加減にこんな状況は、慧音は嫌だった。

「もうこんな幻想郷は嫌なんだ」

「それで、慧音はそれを連れてきてどうするの?」

「ああ、私は考えたんだ。私はコレを連れて郷の重鎮達に会いに行く。そこで、これ以上まず鬼と人が無駄に争わないように仲直りさせようと思う」

「そいつと郷の馬鹿連中が仲直りしたところでどうにかなるの?」

「郷の馬鹿・・重鎮達は人々のリーダー的存在で、コレは地上の鬼達のリーダー的存在だから上手く行くはずさ」

 今さら人間と鬼が仲直りしたところでどうしようもないと思うところもある。

「鬼と人間が仲直りしても、他の妖怪はどうするの?」

「そこで、霊夢に頼みがある。紫にあって、人の数が減ったこと妖怪が殺伐としすぎていることを教えて欲しい」

「無理難題ね。だいたいアイツは出産した後何処に行ったかも分からないのよ」

「それなら、寺子屋の餓鬼が諜報活動して探っているところだ。優秀な伊賀忍者だから、必ず見つけ出すさ」

「・・・あいつ等、ああもう一人しかいないから、あいつ伊賀は完全に忍者なのね」

「霊夢の指導のおかげだな」

「私は一度も忍術教えていないのに」

 ものすごく複雑過ぎた気分になった。

「やってくれるか?」

「・・・そこのソレはべつとして、私も最近生きにくいなって思っていたところよ。協力するわ」

 霊夢の怒りや身体の一部を失った悲しみは消えないかも知れないが、許すことは出来るかもしれないなと慧音は思った。

「それで、いつ実行するの?」

「紫の所在を突き止めたら同時に事を起こそうと思うんだ」

「そう」

 慧音は、土産の酒を置いて神社を後にしていった。その帰りの足取りは少しだけ軽かった。

 
 萃香は慧音の家に匿われることになっているらしく連れて行かれたのだった。終始、霊夢に対して謝っていた。




 






 それから、大体一週間したころに寺子屋に慧音が萃香を連れてきて出勤してきた。

 どうやら、草の者(忍者)が紫の居所をつかんだらしく例の作戦を決行するようだった。

「霊夢先生、紫は今は魔理沙に寄生して居るだ」

「魔理沙ということは、ひまわり畑に居るのね」

 魔理沙は人里に戻れず今でも、ひまわり畑で種拾いの仕事で生計を立てている。

「そうなるだ」


 魔理沙胎内で再び紫は成長しているようだ。何としてでも、魔理沙の胎内から引きづり出して話をするしかない。

「それでは、お互いに話がうまくいくように頑張ろう」

 こうして、お互いの目的を達成させるため出発したのだった。







 最近腹の調子が悪いぜ
 そんなに腹を膨らませて変なもの食べたんじゃないかゾイ?
 あ?まみぞう親分と私は違うぜ。
 どう違うんだゾイ??
 妖忌のしゃぶるんだろ??
 なんじぇそれを知ってるぞいおい?何でそれ知ってるんだゾイ??
 妖夢から聞いたぜ。
 妖夢の奴はワシと妖忌の夜の生活を見ていたゾイ?
 だろうな
 ゾイ???あっと、誰か来たぞい
 誰か来たな






 魔理沙とまみぞう親分はひまわり畑で種ひろいしていた。そこに、霊夢と草の者がやってきた。



「よう、霊夢久ぶりだぜ。楽園様の巫女様がこんな臭くて汚いところに何の用だ?????」

「そうだぞいおいおいおい??」

 これら、最下層の貧乏人は郷で成功している者にたいしてある程度の敵意を持っている。

「この世に地獄絵図を再現しているところに悪いけど、私は魔理沙のお腹に用があるの」

 これら、郷の住人は最下層の住人にたいしてある程度の敵意を持っている。

 魔理沙は咄嗟にお腹を押さえる、これ以上に腹の調子を崩したらスカになってしまう。


「私のお腹には糞しか詰まってないぜ!!! っは!! お前そういう趣味だったのか?」

「・・魔理沙に用事は無いわ。紫に用があるの」

ゾイ「ワシは紫じゃないぞい」

「あんたには、関係ないわ。ねえ、紫は魔理沙に寄生してないで出てきなさいよ」

 魔理沙様の大事なお腹が急にゴロゴロなりだした。

紫「。。・ひっひっひふーって言ってね」

「腹イテェぜ!!1」

「だから、へんなものくったゾイ」

 出産出産大出産だへっへっへと、魔理沙の産道を駆け下りる紫がこの世に再び転生のときを得て候 

 まるで、輝夜が大罪を犯して月から堕とされるときのように星が堕ちて何もかもが無に戻ったときのように紫は霊夢の前に再び生まれ落ちた。

 服装はいつも通り日傘をさしているのだが、乾くまで蟹のように耐久性に問題がある。

「紫」

「ひさっしブリブリね霊夢☆」

「ウザすぎる。ウザ杉!!!」

「仕方ないじゃない。魔理沙の胎内で育って尚且つ戸隠の作品だし☆」

 なんだか台無しな気分に霊夢はなった。これから、ラスボスだというのに。

「まあいいわ。ねえ紫」

「何?また霊夢の胎内に戻れって?」

 魔理沙よりも栄養が豊富で暖かい霊夢の腹になら紫はもどってもいいと思った。 

「あんなの嫌」

「あんなのって私のこと」

「話が逸脱しているから」

「何の用霊夢お母さん?魔理沙お母さんの羊水が乾いても気持悪いから早くお風呂に入りたいんだけど」

「仕方ない。本題に入るわ。・・あなたの願いどおりに人間は数が減ったのだから、むやみに人を襲わせるのはもうやめて」

「そのようね。うん、そうしましょう。了解!!!!」

「え???????それだけ???」

「ええ」

 なんだったんだ。ここまでの話は魔理沙とアレ、アレだ。まみぞうが出てきてからかなりなんだったんだが、そのなんだったんだがきわみたあっけない紫の納得。

 これはこれで一つの話の帰結としては面白い面白くないは別としていいのかも知れない。




 霊夢は肩から力がなんだか抜けてしまった。



 






 



 そのころもう一方の郷の重鎮達が集まるところでは、いつものように会議が行われていた。 



霧雨「それでよぉ。どうすんだよ。飯もうねぇぜ」

霧雨は村人

稗田「腹減った」

稗田は人狼

アーサー「何か打開策は?」

あんちゃん「せやで、なんかないんかいな???」

あんちゃんは占い師

妹紅「私を食べるとかそういうのは論外だかんね」

妹紅は妖藍

霧雨「打開策、打開さくっと、サクッとなんかないかよ?」

稗田「はらへり〜」

妹紅「私もへった」

アーサー「妹紅か良かったら家の城来るか?食物ならあるぞ」

あんちゃん「ただし、妹紅はアーサーに性的に喰われるけどな」

 アーサーはセックス依存症で女に見境が無い。

妹紅「・・・・」

霧雨「で?どうすんの?」

稗田「わかんねぇ」

霧雨「河童から食料借りてくるしかねえか?」

河童はきゅうり

あんちゃん「せやな」

「貴様等はそれをなぜあの時しなかったんだ?」

霧雨「これはこれは慧音先生じゃねえか」

アーサー「もうここには貴女の席は無い」

あんちゃん「せや」

「下らぬ会議など、もはや不要だろう。今日は、貴様達に紹介したい者があって来たんだ」

慧音は霊媒師ではない

「・・やあ」

萃香は村人ではない鬼だ

妹紅「鬼?え?鬼だ!!嫌だ!!慧音の馬鹿!!!!!」

 妹紅はもはや妖怪全般が大嫌いだった。

アーサー「慧音先生、戯れも対外にしてもらいたいのだが」

あんちゃん「せやで」

「貴様等餓鬼共は私が戯れでこんなことをすると思うのか?」

 ここに居る連中に勉学を教えたのは慧音だ。昔からの付き合いで冗談が通じないことは皆わかっていた。

霧雨「まぁ、待て。戯れではないならよ。何故鬼を連れてきたんよ? 俺達を皆殺しにする気かよ?」

「そう警戒するな。今日が貴様等の命日と決まったわけじゃないぞ。いや、それよりも、命が繋げるかもしれない」

霧雨「なんよ?鬼でもくうのかよ?鬼喰った所で神格は得られねぇよ。だいたいよ。食う前に殺されちまう」

「喰う喰われるという発想をもうやめないか?」

稗田「でも、鬼は人喰うぞ」

アーサー「そうだな」

あんちゃん「次霧雨のセリフやで」

 あんちゃんはナレーターや下衆やないで。

「じゃあなんよ?」

 霧雨はいまさらだが郷の重鎮たちの中でも中心的な存在だった。

「今日は、コレと貴様等を仲直りさせに来たんだ」

「もう喧嘩やめようよ。食糧がないなら、鬼の力と人間の知恵でどうにか乗り越えられるよ」

 そもそも萃香は紫に出された指示に従て来ただけだ。もはや、口減らしの指示は完遂していたから戦う理由などない。

 それよりも、また人を集めて宴会したい気持ちが本音だった。霊夢には確かに悪いと思っている。

「喧嘩ってお前ぇ。・・あ〜あーあああ。喧嘩? ふざけるなよ。お前等妖怪が俺達に一方的に被害与えているのが現状だろ?」

 霧雨達、人間から見れば喧嘩などという生ぬるいものではない。殺すか殺されるかがもはや日常だった。

 そして、一方的に殺されているのが人間で被害者だと思っている。 

「霧雨、貴様の言もよくわかるが、このような状態をいつまで続ける気だ?」

「そりゃあ、先生よ。先生よ。先生よ俺にもわからんね」

 霧雨は大物ぶって話しているが、一人娘の非行も更生させられないような小物だ。

 先のことなど何も見えてない。考えてもいない。本当は迷えるただの仔羊(村人)だった。

アーサー「どちらかが滅びるまでだろ? 妖怪は人間が滅びたら存在出来なくなるから必然的に生き残るのは人間になるが」

妹紅「そうだね。そんな時が来ればいいな妖怪は皆いなくなれ」

あんちゃん「あんちゃんはな、元々幕末の日本から来たんやが別に今と変わらんかったで、大丈夫やろ?」

稗田「わかんねぇ」

「結局、貴様等は何も考えて居ないのだな」

 他の馬鹿共も同じだった。結局は皆自己の利権しか考えて居ない。

「じゃあよぉ。先生どうすればいいんだ?」

 霧雨はようやく、素直に話を聞くつもりになった。いつもは髭ばかり気にしている霧雨だが、久しぶりに慧音の顔を正面から見たのだった。

「初めから言って居るだろう? 仲直りしろと。貴様等が仲直りすれば郷の餓鬼どもだって納得するはずさ。それで、協力しあいこの食糧難をどうにかしよう」

「そうかよ。そうなのかよ。なんか納得いかねえが、それでこの食量難が解決するのならそれもしかたねえか」

「じゃあ、鬼の私と仲直りだね」

「……たしかおめぇさんは萃香とか言ったな。仲直りだぜ」

 霧雨は脂の乗った中年男性らしい手を差し出した。萃香はちょっと気持ち悪い気分だったが、本音は隠しその手に握手した。

 何とか、これで仲直りができたという事だ。

「ふぅ、何とかなったか」

 何とかなった。課題は山積だが何とかなった。

妹紅「何とかなってない。慧音の馬鹿!アホ!歯周病!密猟者!」


 ただ、妹紅を慧音が慰めるにはもう少し時間が必要なのかもしれない。

 

 







 2年後の秋、郷では豊作が大いに祝われていた。



 あの後、霧雨達郷の住民と、紫や萃香といった妖怪が正式に手を組んで幻想郷を復興させたのだった。

 霊夢の胸も勇儀にコブ取り爺さんのように移植してもらって治った。勇儀からすればほんの一握り与えただけだから、酒の一杯で良しとしていた。裏で萃香が暗躍しているのも霊夢は察していた。

 妹紅は相変わらず河童を恨んでいるが、慧音が何かにつけて気を揉んだので以前と比べればましになった。

 なんだかんだで、以前の幻想郷は戻りつつあった。

 アーサーやあんちゃんという不穏分子もまだまだ存在するがおばさんが牽制しているからしばらくは大丈夫だろう。





 戻らぬミスティアの屋台があった場所で、豊作祝いのひまわり焼酎を呑みながら慧音はそう心の中でミスティアに語りかけたのだった。



 
トガ!
戸隠
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2014/05/16 15:02:48
更新日時:
2014/05/17 00:11:15
評価:
19/20
POINT:
1820
Rate:
17.57
分類
産廃創想話例大祭B
霊夢
慧音
おばさん
ミスティア
萃香
霧雨稗田
妹紅
アーサーあんちゃん
忍者
簡易匿名評価
投稿パスワード
POINT
0. 30点 匿名評価
1. 100 名無し ■2014/05/17 00:52:49
不覚にもミスチーのセリフでウルッと来てしまった。ふざけているようでまじめでもやっぱりふざけている。それが良い味出ていた。一番乗りおめでとう。
2. 80 あぶぶ ■2014/05/17 07:46:49
気づいたら序盤で死んでいた作者さんに趣の深さを感じた。
3. 100 名無し ■2014/05/17 20:37:43
霧雨の親父さんが良い味出してた。
あんちゃんとかアーサーが自然に溶け込んでいてすごい。
急に人狼っておい!
4. 100 名無し ■2014/05/17 23:07:52
のっけから生きては死んで愉快だぜ
5. 100 名無し ■2014/05/17 23:34:59
良い結末ですね、さすがおばさん
6. 100 名無し ■2014/05/18 16:25:56
この何ものにも縛られない作風は戸隠氏しか出せないと思う。それでいて読みやすくて不思議でした。それに登場人物のほとんどがオリキャラなのに違和感がないと思った。口が悪いけど慧音先生が素敵でした。妹紅と関わりが薄いのも珍しい。
7. 100 NutsIn先任曹長 ■2014/05/20 00:12:37
いつもの戸隠ワールド増量版♪ で、大団円といったところですか。
幻想郷の平和に裏で貢献した忍びについては、慧音、霊夢の両先生が内申点を奢ってくれたそうだ♪
8. 80 まいん ■2014/05/22 20:45:13
戸隠ワールド、今日も平常運転ですね。
愚かな重鎮の尻拭いに奔走する慧音と教え子を失う霊夢
あっけない最後でしたが、それはそれで。
内容は面白かったですが、過去作を見ていないと分からない内容があったので、少し残念でした。
9. 100 名無し ■2014/05/23 23:31:11
とががが
10. 100 名無し ■2014/05/24 13:30:59
この慧音先生良い
11. 90 名無し ■2014/05/25 22:39:47
この慧音先生すき
12. 60 pnp ■2014/05/26 15:00:10
要所要所でシリアスになり、そこがやけにかっこいいから不思議
14. 100 名無し ■2014/06/02 00:03:33
先生かっこいい
15. 100 名無し ■2014/06/08 16:30:06
けーねのキャラがいい
16. 100 名無し ■2014/06/18 23:34:42
魔理沙好き
17. 80 んh ■2014/06/20 19:42:16
たまに無性にかっこいい文があるのが癖になる
18. 100 名無し ■2014/06/20 21:21:42
この忍者たちすごい
19. 100 県警巡査長 ■2014/06/21 23:21:48
戸隠さん、すごい…。
20. 100 名無し ■2014/07/05 22:44:59
まじめに書けば優勝できてたんじゃ?
名前 メール
評価 パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード