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『産廃創想話例大祭B 押し付けレミリア2』 作者: dan

産廃創想話例大祭B 押し付けレミリア2

作品集: 10 投稿日時: 2014/07/15 22:55:55 更新日時: 2014/07/16 07:55:55 評価: 3/3 POINT: 300 Rate: 16.25
※前回投稿したものとかぶってる部分があります
☆で線を引いてあるところから下が新しく追加した文章です





 豪奢な装飾の施された紅魔館のダイニング。
 食事をとっているフランの横に、彼女を監視するようにレミリアが立っている。
 今日の夕食は高級人肉ロースの血液仕立て。フランはそれを小さくナイフとフォークで一口大に切り分けて口へ運んでいく。
その途中、ナイフがほんのわずか皿に触れ、かすかに音を立てた。
「あっ…」
 フランの口から小さく声が漏れるのと同時に、姉が彼女の右手めがけて木鞭をふるった。骨と木が衝突する乾いた音に少し遅れ、姉の怒号が浴びせられる。その衝撃にフランは椅子からずり落ち、右手を押さえ声も出せずにその場にうずくまった。
「フラン!音をたてないようにしろって何度言ったら分かるの!?」
「っ…!ごめんなさい、お姉様。」
「全く…食器も落としてしまって…咲夜!」
 レミリアが手を叩くと一瞬のうちに咲夜が目の前にナイフとフォークをもって現れた。時間を操ることのできる彼女ならではの芸当だ。
「あら、何も言わずとも食器を持ってくるとは感心ね。さすが私のメイドだわ。」
「もったいないお言葉ですわお嬢様。さ、フランドールお嬢様、こちらを。」
 咲夜が差し出した食器を感覚の無くなった手で受け取り、またよじ登るようにして再び食卓へ着く。
「ありがとう、咲夜」
 そう言いながらもフランは内心咲夜を少し恨んでいた。
咲夜がナイフとフォークを持ってこなければもうごはん食べないですむのにな…
「フラン。これじゃ立派な吸血鬼レディへの道はまだまだ遠いわよ。」
 立派な吸血鬼レディになれ。レミリアは自らが幽閉した妹の為を思いありとあらゆる礼儀作法を教え込んでいた。
 時に手が出てしまうこともあったが、それも全部フランの為。少しでも早く吸血鬼として恥ずかしくない振る舞いを覚えてほしいというレミリアの愛ゆえだった。
 もちろん紅魔館の面々もそのことは重々承知していたので、特にそれを咎めたりするようなことは無かった。
「さ、フラン。食事の続きよ。今度は音をたてないようにね。」
「…はい、お姉様。」
 しかしフランの手は姉に何度もたたかれたことによって真っ赤に腫れあがり感覚もなくなっている。そんな手で音を立てないように食事などできるはずもなかった。
「フラン!!」
 再び怒号と鞭。フランの手の甲が裂け、真っ赤な血が迸った。その目からはついにこらえられなくなったのか涙が零れ落ちた。
「泣いたってしょうがないでしょ!…まあいいわ。咲夜、フランの手当と食事の片づけをお願い。私は先に部屋に戻ってるわ。」
「承知しました。さ、フランドールお嬢様。」
 咲夜は手を差し伸べたがフランは下を向き唇を噛みしめており、手を差し出す様子はなかった。
「フランドールお嬢様?」
「ねえ咲夜…わたし、どうして毎日お姉様に痛い事されなきゃならないの…?」
「お嬢様はフランドールお嬢様を愛しておられます。きっとそれゆえの愛の鞭なのでしょうね。さ、手をお出しになってください。」
 咲夜は微笑みながらそう答えたものの、フランはまだ納得しなかったようだった。
 手の甲にくるくると器用に包帯を巻いていくが、どうやらまだ血が完全に止まっていなかったらしく真っ白だった包帯に少し赤いしみを作っていく。
 フランは包帯が巻かれた手とは逆の利き腕で涙をぬぐった。



 食事を終え地下にある自分の部屋へと戻ってきたフランは、食事の直後だというのにもかかわらずベッドに横になり空腹にじっと耐えていた。
 少しでも粗相をすれば殴られる。その恐怖と、椅子から転げ落ちる際に皿をひっくり返してしまったりで彼女はここ最近まともに食事をとれていなかった。
 今日のお肉、おいしそうだったな…ついさっきまで目の前にあったごちそうのことを考えてさらに空腹が加速する。
 …めーりんのところへいこう。
 美鈴は以前にもお腹が空いた時に何度かこっそり中華料理を作ってくれたことがあったし、なによりいちいちうるさい事を言わない。 
 フランは部屋をこっそりと抜け出して正門前にある門番詰め所へと向かうことにした。
 フランの部屋から外へ出るには階段を上がり、図書館の前を通ってまた階段を上がり、そして正面のエントランスまで行く必要がある。
 その途中で妖精メイドに見つかるのならまだいいのだが、パチュリーさんやお姉様に見つかったらきっとまた何か言われるだろう。現に最近お姉様は私を見るたびにやれ歩き方がどうだの飛び方がどうだのとお説教をしてくる。
 少し早くなる心臓の鼓動とともに静かにドアを開けた。
 もちろん飛んで行った方が速いのだが、もし飛ぼうものなら羽ばたきの音を聞きつけ咲夜がやってくるだろう。フランは抜き足差し足でなるべく音をたてないように階段を上る。普段なら一分もかからず一っ飛びなのだが歩いて登るとなるとそうもいかない。フランのような少女の足、しかも音をたてないように注意しながらだとかなりの時間がかかるだろう。
「疲れたし全然つかないよ…」
 そうつぶやき踊り場に座り込んで休憩を取っていると上からなにやら足音が聞こえてきた。
 やばい。でももう今から逃げようもないし…
そんなことを考えているうちに足音の主がフランの前に姿を現した。
「あら、フランドールじゃない。どうしたのこんなところで座り込んで。」
「パチュリーさん…。」
 本を抱えながら少しの冷たさを含んだ口調で尋ねた。フランは以前パチュリーの魔導書に血をこぼしてしまった事があり、それ以来パチュリーはフランに対して冷たい態度をとっていた。彼女は根に持つタイプなのだ。もやしだけに。
「誰かに用事かしら?もっともあなたにそんなものがあるのかはなはだ疑問だけれども、ね。」
「めーりんのところへ行こうと思って…」
「ふーん…ま、どうでもいいけど。」
そう言うとパチュリーは踵を返しふよふよと飛んで行った。
なんだ、ただの嫌がらせに来たのか。嫌がらせによるストレスよりも部屋に連れ戻されなかった安堵感が勝り、ついほっと吐息を漏らした。
 「そろそろ行こう。早くしないとまたお小言を言われちゃうわ」
フランは美鈴の住んでいる門番詰め所への道のりを急いだ。階段を上り切り、いやがらせパチュリーの住み家の前を通ってさらにまた階段を上がっていく。それを上り切ったならもう出口はすぐそこだ。広大なエントランスホールの正面の扉からではなくいつものようにそこから少し離れたところにある使用人用の小さな扉から外へと出た。
 ここまでくればもう誰も文句を言うようなことはしないだろう。七色の羽を羽ばたかせてはやる気持ちのまま詰め所へと急ぐ。
 思えばいつも嫌な事があったら美鈴のところへと来ていた。お姉様が私を地下へ幽閉することを決めた時、唯一それに激しく反対してくれたのも美鈴だった。その時の主人への反逆が原因で彼女はメイド長を辞めさせられたらしい。今では龍の化身と恐れられたその力を封印され、しがない門番にまでその身をやつしていた。つまるところ美鈴も一種ののけ者だった。
「めーりーん」
フランが詰所の前でそう呼ぶと程なくしてチャイナドレスに身を包んだ美鈴が姿を現した。
「その声は妹様ですね!…おや?どうやら元気がないですね。どうしました?」
「あのね…めーりん、もうごはん食べた?」
なるほど、まただなと美鈴は察した。
「いいえ、まだです。よろしければ妹様もご一緒にどうですか?この紅美鈴、腕によりをかけた中華料理をごちそうしますよ!」
それを聞いてフランの顔が明るくなる。フランは吸血鬼だが、人間の肉や血よりもこの美鈴の作る中華料理が好きだった。
「うん!美鈴と一緒にごはん!ごはん!」
はしゃぎながらその場でぴょこぴょこと飛び跳ねるフラン。包帯の翻る右手を見て美鈴は神妙な面持ちになった。
「…どうしたのめーりん?」
「いえ、なんでもありません妹様。さ、入ってください。すぐに食事を用意しますね!」
「うん!たのしみだなあ、、、」
 美鈴がフランの背中に手をやり室内へと招き入れた。


 フランがちょこんと椅子に座りながら台所で調理に励む美鈴の背中を眺めていた。部屋には油の跳ねる音が響き、そして何とも香ばしい香りが充満していた。
「ねーめーりんまだー?おなかすいたー」
「はいはい、お待たせしました。美鈴特製、秘伝の麻婆豆腐と、妹様の好きな棒棒鶏です!さ、どうぞ召し上がれ。」
「うわーい!いっただっきまーす♪」
蓮華で湯気を立てる麻婆豆腐をすくってご飯と一緒に口いっぱいに頬張る。それを笑顔で見ている美鈴。少しテーブルにたれてしまったがそんなことは誰も気にしない。姉の鞭におびえながらとる食事とは比べ物にならないくらいおいしく感じられた。
「おいしいですか妹様?」
「うん!すっごくおいしい!めーりんもこっちでいっしょにたべよ!」
「ふふふ、ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて…」
美鈴が自分の分の麻婆豆腐をよそいフランの向かい側に座る。レミリアはいつもフランを横から見下しているのでこうして誰かが向かいに座っている食卓というものは美鈴との時だけであった。
「妹様、お嫌ならお話ししなくてもいいんですけど…右手、どうしたんですか?」
美鈴がそのことに触れると、明るかった表情が少し曇った。
「あのね、今日もお姉様に鞭で叩かれたの…。お食事のマナーがなってないって。それでさくやにどうしてお姉様はこんなことするのって聞いたら私を好きだからっていうの。でも好きな人には普通やさしくするものでしょう?めーりん、わたしもうお姉様のことが、ううん、みんなの事がわかんないよ…」
伏し目がちになりながらもそう告白するフランの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「妹様の言うとおりです!本当に妹様が好きならそんなになるまで鞭で叩くはずがありませんよ。それに愛の鞭だなんてただの都合のいい言い訳です。」
「やっぱりそうだよね…お姉様私のこと嫌いなのかな…。」
「…妹様、もしよろしければ私がお嬢様に直々に相談してみますが。」
「うん、おねがい。私もお姉様とお話ししたいから一緒に行く。」
「分かりました!…ささ、妹様、せっかくの麻婆豆腐が冷めちゃう前に食べてください!」
「うん!」
そう言うとフランは再び口いっぱいに麻婆豆腐を詰め込みむぐむぐとやり始めた。
お姉様とも、いつかこういう風にご飯が食べられたらいいのにな…


紅魔館のダイニングには裕に20人はかけられようかというようなスカーレット家自慢のテーブルが置かれているが、それを使うのはせいぜいパチュリー、レミリア、咲夜、フランの四人くらいである。
そしてそのうちの三人が今まさにそこで食事をとっている最中であった。
各人の前にはフランが先ほど食べていたのと同じものが並べられていた。人間の咲夜は例外で人肉の代わりに鶏肉、血液の代わりにトマトソースがかけられたものが置かれていた。
「ねえ咲夜、フランのことだけれども…」
レミリアが肉を小さく切り分けながら咲夜に尋ねる。
「はい、少し呑み込みが遅い気がしますね。パチュリー様はどうお考えになられますか?」
「うーん…もっとスパルタでやらなきゃ覚えないわよあの子は。ただでさえ落ち着きがないのにテーブルマナーなんて…ねえ?」
それを聞いたレミリアはうんうん頷いている。
「フランも昔に比べたら落ち着きは出てきたけれど…まだまだね。でもきっといつか一人前の吸血鬼レディになれると信じてる、いや、私がして見せるわ。」
「さすがお嬢様!その言葉を聞いたらきっと妹様も喜びますわ。」
「でもレミィ、なんでそんなにあの子にこだわるのよ。いくら妹だからといってあそこまで熱心にならなくても…」
パチュリーの問いにレミリアは遠くを眺めるような眼つきになった。
「ううん、私はやらなくちゃいけないの。まだ足りないくらいだわ。私があの子に犯した過ちに比べたら、ね。」
少しの間ダイニングが静寂に包まれた。




レミリアを追憶から引き戻したのは少し乱暴なノックの音だった。このような叩き方をするのは美鈴くらいのものだろう。
 レミリアは美鈴のことが嫌いで嫌いで仕方がなかった。そもそも奴がこの土地の地脈と密接な関係さえ持っていなければ今すぐにでも串刺しにしてやったのに。
 現在紅魔館が建っているこの土地は元々風水的に重要な土地であり、それを守護するために美鈴がこの地に括られていたものを譲り受けたと言えば聞こえはいいが要するに無理やり奪い取ったのである。
「誰だ。」
 相手がわかっているからこそレミリアが語気を強めて応える。
「美鈴です。妹様のことでお話があります。」
 妹のことだ?先ほどまでの追憶が鮮明に蘇る。またか。こいつはいつもいつも私たち姉妹のことに横からぐちぐちと口を挟んでくる。確かにあの時はフランを地下に監禁した私が間違っていたかもしれない。しかしそれとこれとは話が別だ。私は今までのフランの扱いに後悔を覚えているからこそ贖罪の為に今までの行いを彼女を立派な吸血鬼レディに仕立て上げてやろうとしているのだ。なぜそれを邪魔しようとするのか、レミリアには全く理解が出来なかった。
「…まあいい、入れよ。」
「失礼いたします。」
 華美な飾り付けのなされた扉を妖精メイドが数匹がかりで開ける。そこには美鈴とその後ろに身を隠しながらこちらを窺っているフランの姿が見えた。
「あら、妹様も一緒なのですか?」
 咲夜が美鈴の腰のあたりからのぞくフランを見て少し驚いたように尋ねる。フランはその問いに小さくうなずくだけだった。
「咲夜さんも、パチュリー様もぜひご一緒していただきたい所存です。」
 美鈴が少し怒気を孕んだ口調でそう告げる。フランが美鈴のそのような姿を見るのは初めてだった。
「…分かったわ。パチュリー様も、よろしいでしょうか?」
 咲夜の問いにパチュリーは気だるそうに頷く。その間もフォークで肉をつつくことを止めなかった。
「で、なんだ?」
「はっきりと言わせていただきますお嬢様、これ以上妹様に暴力を振るうのはお止め下さい。」
「暴力だ?私がいつ暴力を振るったんだ。言ってみろ美鈴。」
「とぼけるなっ!妹様の右手を見てみろ!」
「ああ、ソレか。それはフランが食事の時にかちゃかちゃと音を立てたからだ。躾の内だ。なあ咲夜?」
 咲夜がこくこくと頷く。
「それはあんたが無理矢理右手で食事をさせてるからだろう!そのおかげで妹様はろくに食事が出来なくて夜な夜な私のところへご飯を食べにくるんだ。そんな妹様の気持ちを少しでも考えたことがあるか!?」
「そうなのか、初耳だよそれは。しかしそれなら安心だな、フランが食事を満足にとれなくてもお前が食べさせてやってくれるんだから。」
 先ほどからヒートアップした美鈴が敬語でなくなっていることにパチュリーと咲夜は顔をしかめるが、当の本人たちは特に気にするようなそぶりを見せなかった。
「貴様っ…!」
「咲夜!」
 レミリアの発言に堪忍袋の緒が切れた美鈴が地を蹴ってレミリアに肉薄する。しかしレミリアが従者の名を呼んだ瞬間、咲夜が美鈴の眼前に立ちはだかり喉元にナイフを突きつけていた。
「お嬢様に危害を加えようとは偉くなったものね。お嬢様、こいつはいかほどに処分いたしましょうか。」
「…もうやめてっ!!」
 その時、フランの叫び声がダイニングに響き渡った。その目には涙が浮かんでいた。
「もういい…!私が悪いの!さくや、おねえさま。わたし頑張るから。立派な吸血鬼レディになれるようがんばるから。どうかめーりんを離してあげて…。」
「妹様…」
「だそうだよ美鈴。さ、とっとと出て行け。」
 こう言われてはこれ以上ここにいることは不可能だった。美鈴はフランを残して唇を噛みしめながらダイニングを後にした。


 美鈴のいなくなったダイニングでレミリアが先ほどとはうってかわった口調でフランに語りかける。
「ねえフラン、私は別にフランが嫌いで厳しくしているわけじゃないの。あなたに立派な吸血鬼レディになって欲しいからなのよ。」
 レミリアのその言葉を咲夜とパチュリーもうんうんと頷きながら聞いていた。
「…な」
「ん?なにかしら?」
「ふざけるな…」
「ち、ちょっとフランドール…?」
「妹様…?」
「お姉様はあの時もあなたの為だからって言って私を495年も地下に閉じ込めた!もうたくさんよ!あなたのためあなたのためって…それってほんとはぜんぶおねえさまのためじゃない!」
「フラン…私は本当に…」
「うるさいうるさいうるさい!もうおねえさまなんか嫌い!」
 癇癪を起したフランが手を閉じたり開いたりを繰り返す。その動作のたびにダイニングの飾りや家具が跡形もなく吹き飛んでいった。
「ちょっとフラン!やめ、ぐふっ!う…」
 めちゃくちゃに作った破壊の目がレミリアを捉えたらしく、口から尋常でない量の血を吐きだしその場に崩れ落ちた。
「レミィ大丈夫!?ちょっと咲夜!時間を止めて何とかしなさいよ!」
「は、はいっ」
 咲夜が懐中時計に手を伸ばす。すると一瞬にして部屋は元通りとまではいかないがきれいに片づけられ、錯乱するフランには掌につける特注の手かせがはめられていた。
「ふーっ、ふーっ!離せ!はなせえええ!!」
「妹様落ち着いてください!パチュリー様、お嬢様を診てください!」
 パチュリーがレミリアの下に駆け寄って治癒魔法を唱える。レミリアの顔にだんだん血色が戻ってきた。
「レミィ!しっかりして!聞こえる!?」
「ううん…なんとか、ね。」
 応急処置が終わり、状況が少し落ち着いたころ、扉が勢いよく乱暴に開かれた。どうやら騒ぎを聞きつけた美鈴がダイニングへ戻ってきたらしい。
「凄い物音がしましたが大丈夫ですか…って妹様!?それにお嬢様も!」
「…美鈴!私のことはいいからフランを連れて出て行け!」
「は、はいっ」
 レミリアが未だ痛む身体を少し起こして怒鳴りつけた。
「妹様、さ、行きましょう。」
 フランの手を取って少し強引に部屋の外へと連れだした。

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「妹様、どうして…」
「もうわたしがまんできないよめーりん…おねえさまはいつもわたしのためわたしのため…そんなのみんな嘘。ほんとはお姉様は自分のことしか考えてないの。パチュリーさんやさくやもそう。私に優しくしてくれるのはめーりんだけ…」
「妹様…」
「ね、めーりん。私、どうしてみんなに嫌われてるの…?生まれた時からそう。羽がみんなと違うから?なんでも壊しちゃうから?…それとも「キチガイ」だから?」
「そんな…キチガイだなんて…」
「だってみんな言うもの。お姉様もパチュリーさんもさくやもみーんな、すぐキレるし私はキチガイだって。」
「そんなことありません!妹様は素敵で、可愛くて、私の大事な人です。キチガイだなんて絶対に言わせません。」
「ふふふ、ありがとめーりん。でもいいの。自分でも思うわ、テーブルマナーも、お勉強も、じっと椅子にすわっていることもできない。毎日ぐちゃぐちゃに潰されたお姉様の夢を見る、こんな私がキチガイでないはずがないもの。」
 知らなかった。妹様がそこまで思い詰めてたなんて。美鈴はフランの言葉にだんまりを決め込むしかなかった。



 それからしばらくしたある日…
「とても可愛らしいですわお嬢様!こちらの服も…ああっこちらも良くお似合いで!」
「うるさいなあ…早く決めてよ…」
 主を着せ替え人形にして楽しむ咲夜と、めんどくさそうに鏡の前に立っているレミリア。今日は神社で行われる宴会に参加する予定の日だった。
「まだ楽しみたいのですがしょうがないですね…ではこれで行きましょう!」
 そう言った次の瞬間、レミリアの衣装が一瞬で咲夜の手に持っていたものの一つと入れ替わった。傍から見たらそれこそ手品のように見えるが、これも彼女の持つ時間停止の能力のなせる技である。
「あら、結構いい感じじゃない。大人っぽくて。」 
ワインレッドのドレスに身を包んだレミリアが自らの身体を見やりながら言う。普段から子供っぽいと評されるレミリアは少し背伸びしたような恰好が好みであった。
「じゃあ咲夜、行くわよ。パチェやあいつは何て言ってた?」
「パチュリー様は魔法の実験で忙しいとおっしゃってました。」
「そう、残念ね。じゃあ行きましょうか咲夜。」
「そうですね。では日傘を用意いたします。」
 時刻は宵の口、まだ少し夕陽が残っていたのと、明日のことを考えてのことである。
「お願いね。この間買ったミッチェル&ネスの日傘があったでしょう?」
 お嬢様はストリートブランドが好きなのだ。
「こちらですね。さ、行きましょうお嬢様。」
 咲夜が窓を開ける。紅く染まる空へと、レミリアがその漆黒の羽を広げて飛び立った。その後をついて咲夜が飛ぶ。
 二人の影が夕闇の中にぽつんと落ち、そして溶けていった。


 博麗神社

 予定された宴会の開始時刻まではまだ時間があったが、もうすでにあちらこちらで歓声が上がっており酒を酌み交わしていた。車座のできている辺りから少し離れた場所に着地したその瞬間、スカートがふわりとわずかに浮き上がる。
 お賽銭箱の前に見慣れた紅白の巫女服に身を包んだ霊夢を見つけた。
「もう始まってるみたいね。霊夢、ごきげんよう。」
 ドレスの裾を摘まんで気品のある挨拶。しかし、霊夢はそれに反応しなかった。それどころか軽蔑したような目でこちらを見ている。
「ちょっと…どうしたのよ霊夢…機嫌でも悪いの?」
咲夜の問いに霊夢はばっと文々。新聞をレミリアの眼前に突きつけた。
「あら、妖怪の山のブン屋の新聞じゃないって、え…?何よこれ…」
そこには「悪魔レミリア、妹への度重なる虐待!」との見出しが大きく躍っていた。
「まさかあんたがここまでやるとは思ってなかったわ。正直軽蔑するわ。」
 目を丸くして驚くレミリア。その横では咲夜も同じ顔をしていた。
「ちょっと見せて!」
 レミリアが霊夢の手から新聞をひったくって眺める。そこにはいつ、どこから撮影されたのかも分からないような写真と応えた覚えのないインタビューが載っていた。しかし、レミリアがフランに行った「躾」の部分の記述は事実に忠実に沿ったものであった。
「そんな…私は違っ…」
「お、なんだお前来たのかよ。ってかよく顔出せたな。今幻想郷はお前の虐待の話でもちきりだぜ。」
 レミリアを見つけた魔理沙が横からひょいと入ってきた。気付けば車座になっていた連中も全員がこちらに視線を向けている。すっぱ抜かれた虐待犯は、のんべえたちの酒の肴には十分すぎるくらいだった。
「ちがう!あれは…あれは…」
「じゃあこの新聞に載ってる写真はなんだ?鞭でひっぱたかれたフランが血を流してるじゃないか。」
「それは躾の一環で…」
「うそつけ!」
「フランの気持ちも考えろ!」
 レミリアが一言発するごとにやいのやいのとヤジが入る。咲夜がそれを制するも一向に止みそうな気配を見せなかった。
「まあいいや、あとはプロに任せるとするぜ。おーい、文ー!」
 魔理沙ががなり声で文の名を叫ぶと車座の真ん中から待ってましたとばかりにレミリアの下へと歩み寄ってきた。
「あやややや!レミリアさんじゃないですか!どうですか今回の記事、よく書けてるでしょう?ま、インタビューの所は想像ですけど…。」
「ちょっと!ふざけないで!お嬢様の名誉にどれほどの傷をつけたか、貴女分かってるの!?」
 すでに涙目のレミリアに代わって咲夜が文に詰め寄るも、文は全く動じる様子もなかった。
「お嬢様の名誉に傷ねえ…では逆に聞きますが咲夜さんにレミリアさん、あとここにはいませんがパチュリーさんも。貴女方いったい今までフランドールさんをどれだけ傷つけてきたんですか?それに比べたらレミリアさんの受けた傷なんてちっぽけなものだと思いますけど。しかも貴女、それって言っちゃなんですけど自業自得ですよね?ま、私が記事にして、こうやって糾弾されることで、フランドールさんに今まで振るった理不尽な暴力の贖罪が出来る。そう思えば感謝こそすれ、恨み言なんか言えないんじゃないですか?」
「っ!貴様…!」
 文が薄ら笑いを浮かべながらお得意の毒舌を咲夜に浴びせかける。咲夜は言い返すことが出来なかった。
「っていうかお嬢様泣いてますけど大丈夫ですかぁ?お家に帰っておしめを取り換えてもらった方がいいんじゃないですかぁ?」
 咲夜の後ろで俯きながらしくしくと泣いているレミリアを見て文がさらに畳み掛ける。文の性格の悪さは折り紙つきなのだ。
「クソが…お嬢様、もう行きましょう。」
「なんだ逃げるのかー」
「いい気味ウサ!」
 咲夜がヤジを無視しレミリアの手を取って飛び立つ。
 辺りはすっかり暗くなっている。レミリアお気に入りの日傘はもう必要なかった。


 紅魔館
「お嬢様、大丈夫ですか?」
 咲夜がレミリアの頭を撫でながら言う。大人っぽい、という理由で選んだドレスは今の彼女には全く似合っていなかった。
「うっ…ひっく…どうして…?どうしてこんなこと言われなきゃなんないの…?私は…わたしはただフランに…」
「分かってます。お嬢様はよくやっておられますよ。」
 頭を撫でようとする手をレミリアが振り払う。
「嘘よ!だってみんな私を虐待犯って言ってたじゃない!」
「それはお嬢様の愛を知らないからですよ。きっと説明すれば分かってくれます。だから、ね?」
「それも嘘よ!フランだって全然わかってくれない!」
「そんな…」
「そういえばあの時美鈴が言ってたわ。私のやってることは暴力だって。もしかしたらそうなのかもしれない。ね、咲夜、あなたはどう思う?」
「…お嬢様がなさっているのは躾だと、咲夜めは思います。」
その答えを聞いてふうっと一つ息を吐く。どうやらだいぶ嗚咽も、そして思考も落ち着いてきたようだ。
「咲夜、やっぱり私、間違ってたわ。ううん、間違ってたんだと思う。」
「えっ?」
突然のレミリアの告白に咲夜は素っ頓狂な声を出してしまった。
「だって、フランに嫌な思いをさせて、貴女にも嫌な思いをさせて、幻想郷のみんなにも嫌な思いをさせて。正直ね、私、なんでフランやみんなにあんなふうに言われたか分からないの。今でも私のやり方は間違ってないって心では思ってるの。でも多分、間違ってるのは私の方だと思うの。」
「お嬢様…」
「べつに咲夜を責めてるわけではないの。むしろみんなが私の敵になった中でもずっと信じてくれて感謝してるわ。ごめんね咲夜。私はもう自分がわからないよ…」
「お嬢様、たとえお嬢様がどのような選択をなさろうとも、咲夜はついていきます。ですから、ご自身の選択に自信をもってください。」
「うん、ありがとう…咲夜、とりあえず着替えの準備をお願い。ドレスは疲れるわ。」
「はい、かしこまりました。」
 そういってレミリアが自室に向かって歩き出し、咲夜もその後をついていく。
「今日はお歩きになられるのですね。」
 不思議に思い咲夜が訪ねた。
「ええ。時間が欲しいの、すこしだけ、ね。」
 お嬢様のような方にもそんなふうに思うことがあるのか。少し驚くと同時に己の能力にばつの悪さを感じた咲夜であった。



 部屋に着いた途端にウォークインクローゼットへ向かうレミリア。先ほどの言葉通り早くドレスを脱ぎたいらしい。
「咲夜、お願いね。」
 そう言うとレミリアが「人類は十進法を採用しました」のポーズをとる。すると一瞬にしてドレスからネグリジェへと召し物が変わった。
「こちらでよろしいでしょうか。」
「ええ、ありがとう。」
 レミリアが普段よりもそっけなく返事をする。二人の間に気まずいとまではいかないがなんとなくむずむずするような間が訪れた。
 咲夜は迷った。気まずいなあ、何か話題を振った方がいいのか。
 完全で瀟洒なメイドの二つ名を持つ咲夜だが、彼女は頭の回転がいいわけでもなく、かといって仕事ができるわけでもなく、そして話術に長けているわけでもない。どちらかといえばどんくさい咲夜は複雑な仕事や迷うようなことがあるとそのたびに時間を止めてうんうんうなりながら長考をするのだ。
「お嬢様、今夜は鳥の島の続きはどうなさいますか?」
 そんな彼女が二、三分出して考えた答えは昨夜咲夜がベッドの上で読んで聞かせたレミリアお気に入りの絵本の続きの話であった。
「…今日はいいわ。咲夜、貴女も今日は自分の部屋で寝なさい。ちょっと、一人になりたいな。」
 普段の添い寝まで断ったレミリア。よっぽど神社での一件が心に突き刺さったらしい。
「…そうですか、承知いたしました。では、失礼いたします。」
 咲夜が少し肩を落としながら部屋から出ていった。
 レミリアも下を向きながらクローゼットから出てベッドにどさりと横になる。天蓋付きの豪華なものである。
 どうしてこんなことになっちゃったんだろう。どうして。きっと全部あのブン屋のせいだ。いつもあちこちこそこそと嗅ぎまわってなんにでも首を突っ込みたがる。あいつさえいなければ…
「違うよね…。」
 レミリアが小さくつぶやく。本当は自分でもわかっているのだ。確かに最初はフランへの贖罪。そして、妹を立派な吸血鬼にしてあげたいという純粋な思い。その二つだったこと。が、なかなかうまくいかないことへの苛立ちからその思いが変質したこと。そして、だんだんと罰を与える行為に快感を覚えていったこと。
「ごめんね…フラン…。」
 美しい瞳に涙をたたえながらレミリアが呟く。涙を布団で拭った拍子に、ベッドの上から兎の耳のついた頭巾を被ったぬいぐるみが一つ転がり落ちた。



 レミリアと咲夜が帰った後、美鈴がフランの手を引いて博麗神社にやってきた。
「こんばんわ〜。…で、どうでした?」
「ふふふ、バッチシよ。あの子、泣きべそ掻いて帰っていったわ。」
霊夢がにやにやと楽しそうに答える。
「あいやー…なにもそこまでやらなくても…」
 美鈴が頭をぽりぽりと掻きながら参ったような表情をしていると、二人に気付いた妖怪たちがぞろぞろと美鈴とフランの下へ集まってきた。
「あやや、いいんですよ美鈴さん。少しやり過ぎなくらいがちょうどいいんです。これだけ言ってやればレミリアさんも懲りるでしょう。」
「鬼に横道なし!こんな可愛いお嬢ちゃんの為ならまたいつでも喜んで協力するよ。な、萃香?」
「まあおさぁけぇがあれば私は何でもいいけどね。でも、たまにはこんなのも面白いじゃないか。いい酒の肴になるよ。」
「私達もヤジを入れてやったウサ!ヤジ入れて人のためになるんだから二兎を得たようないい気分ウサ!」
「二兎なのかー?」
「みんな、ありがとう…これでお姉様も分かってくれるかな…」
「ええ!フランさん。きちんとあなたの思いをレミリアさんに伝えるんです。直接、貴女の言葉で。そうすれば、きっと分かってくれるはずです。」
 文のその言葉を聞いて妖怪たちも賛同したようにうなずく。
「はい!じゃあ帰ろう美鈴。お姉様のとこへ…」
「ええ、…ちゃんと一人でお話しできますか?」
「もう!フランはそんな子供じゃないもの!」
「そうですね、じゃあ…行きましょう!」
「うん!」
 再び美鈴がフランの手を引き、紅魔館のある方角へと飛び去っていった。



 レミリアの部屋の扉の前。フランは緊張していた。
「妹様、大丈夫ですか?」
 付き添いの美鈴が少し不安そうな顔で尋ねる。
「ちょっと怖いけど…大丈夫。みんな言ってたもん、ちゃんと話せばわかってくれるって。」
 スカートの裾をキュッと握りしめて言う。その姿は確固たる意志を感じさせた。
「良かったです。では、行ってらっしゃいませ。」
「うん。めーりん、ありがとね。じゃあ行ってくる。」
 美鈴が廊下の端の方へと去っていく。それを確認したフランがすうっと大きく深呼吸してレミリアの部屋のドアをノックした。
「…誰?」
 中から少しくぐもったレミリアの声が聞こえた。
「お姉様、私よ。お話がしたいの。」
「フラン…?」 
 しばらく反応がなかったが一分ほどしてからレミリアが自らそのドアを開けてフランを中へ迎え入れた。普段は妖精メイドや咲夜に開けさせるので恐らく彼女がドアノブに触れるのはこれが初めてだろう。
「そこのテーブルに座りなさい。何か飲むのなら咲夜を呼ぶけれど…」
「いらないわ。今はお姉様と二人っきりでお話がしたいから。」
「そう、で、話って何かしら?」
 何かしら、と口では言ったもののレミリアも何のことかは薄々感づいていた。
「あのね、その、まずは、ごめんなさい。この間のこと。」
 予期していたものとは違う言葉に少し戸惑うレミリア。この間の、という一言がなければ何のことかわからなかったであろう。
「ダイニングでのこと?いいのよもう。気にしてないわ。」
「そっか、よかった…。」
「ふふ、それが話したかったことかしら?」
「ううん。まずはお姉様にあやまりなさいってめーりんに言われたの。」
 美鈴の名前が出たが、特にレミリアは顔色を変えるような様子は見せなかった。しばらくレミリアの様子を窺っていたフランだったが、意を決したように口を開き始めた。
「…お姉様。どうしてフランにいじわるするの?たたいたり、ごはんをくれなかったり…お姉様はこの間言ったよね、立派な吸血鬼レディになって欲しいからって。さくやはお姉様は私のことを愛してるからって言ってた。でもそんなのフランには嘘にしかきこえないよ…。好きな人には優しくするってめーりんがいってたもん。おねえちゃんはとてもやさしくて迷惑をかけても叱ったあとはいつも頭をなでてくれるって友達のこいしちゃんがいってたもん…」
 レミリアはそれを黙って聞いていた。
「フラン、私はあなたを愛してる。それだけは確かだわ。…だからこそ、少しだけ私の懺悔を聞いてほしいの。」
フランが明確な拒絶の意思を示さなかったことを肯定と捉えてレミリアは話し始めた。
「紅霧異変に負けた後の宴会で幽閉されていたあなたを見た魔理沙と霊夢が言ったわ。なんで閉じ込めているの、って。その頃の私は貴女のことが正直嫌いだったわ。羽の形も変だし、気がふれてると思ってたからね。でもそのことを二人に話したらたったそれだけの理由で実の妹を閉じ込めることの方がよっぽど理解できないし狂ってる、それに私達には狂ってるようには見えなかったし普通の可愛い女の子だった、って言われたわ。その時思ったわ、もしかしたら私は間違ってるのかもって。その日から貴女を地下から解放して向き合おうと思ったの。貴女は優しかったからこんな私を許してくれた。私はそんな優しさに報いる為に、貴女を立派な吸血鬼レディにしてあげたいと思ったの。初めは本当にその一心だったわ。でもね、思い通りにならないことに腹が立って…。だんだんと貴女を撲らなければ落ち着かなくなっていった。ごめんなさい。2度も同じ過ちを繰り返して、貴女を傷つけたわ。」
「…私がされたことは正直ゆるせないよ。でもね、もういちどお姉様と仲良くなりたいの、昔みたいに。」
 その言葉を聞いた瞬間、レミリアがフランをギュッと抱きしめた。
「フラン、ごめんなさい。私が間違ってたわ。」
「ふふふ、抱きしめるなんてお姉様…。このヒキョウモノ!」
 フランがこつんとレミリアの頭を叩いた。
「もう、フランったら…」
 完全に修復、とまではいかないながらもお互いが歩み寄りの姿勢を見せた吸血鬼姉妹。かつての二人には絶対に見られなかった光景がそこにはあった。




「フラン、早くしなさい。置いていくわよ。」
 ChopShopとswaggerのコラボキャップに、鮮やかな街並みがプリントされたロカウェアのアウター。オーソドックスながらもジャストなサイジングにより派手なアウターを引き立てるジーンズに身を包んだレミリアが玄関から急かすように言った。足元はもちろんまばゆい白のair force1である。
「まぁーってよおねーさまー」
 咲夜に連れられやっと出てきたフランをまじまじと見つめるレミリア。ファッションには人一倍うるさいのだ。
「あら、なかなか決まってるじゃない。」
「ありがとお姉様!」
明るめの青のデニムジャケット、インナーには花柄の髑髏の描かれた白いstussyのシャツに薄いベージュのハーフパンツを合わせている。足元はステンドグラスに描かれたマリア様のランダムパターンが落とし込まれている青を基調としたブーツだ。
「お嬢様、妹様、そろそろ…」
 咲夜が手元の懐中時計に目をやりながら告げた。今日は博霊神社の宴会の日。遅れるわけにはいかない。
「そうね。さ、行きましょうフラン。」
 そう言ってフランの手を取ると、夕闇の中へと飛んで行った。咲夜がその後をついて飛んでいく。
「もうお姉様ったら…」
 薄暗い中でもフランの頬が紅潮するのが見て取れた。楽しい夜になりそうね。だって、こんなにも頬が紅いから…。
産廃創想話例大祭Bではあんなものにも関わらず沢山のコメントを頂き感謝。

実際反則というか失格というか下手くそです
dan
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2014/07/15 22:55:55
更新日時:
2014/07/16 07:55:55
評価:
3/3
POINT:
300
Rate:
16.25
分類
レミリア
フラン
咲夜
美鈴
その他仕掛け人の皆さん
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POINT
1. 100 NutsIn先任曹長 ■2014/07/17 00:12:20
後日譚では、頑ななお姉様が周囲からいぢめられてしまいましたか……。
だけど、実は中国も含めた幻想郷の皆さんは、この姉妹を身内のように愛おしく思っていたのですね。
先の宴会では嗤われたお姉様。
次回は、妹様同伴で笑いに囲まれることでしょう。
2. 100 ギョウヘルインニ ■2014/07/18 22:07:42
実はフランドールにコントロールされているレミリアの図
3. 100 名無し ■2014/07/19 05:35:42
ハートフルいいよー。おめかしして来たのに精神的にズタボロにされちゃったレミリアが可愛かった。
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