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『殴り屋本舗』 作者: 狼狐
「すいませーん、アリスさんいますか?」
ある晴れた冬の日。目を覚ました私が暖炉に薪をくべていると、どんどん! とドアを叩く音と私を呼ぶ声が聞こえた。どうやら客らしい。
こんな季節に、しかも魔法の森までわざわざ誰が何の用だろう、と思いつつ、足早に玄関へと向かってがちゃりとドアを開いた。
「しっつれいしまーす」
「お邪魔いたします」
「おぉ、綺麗な家だな」
ドアを開けた途端、屈強な男が三人ほど押し入るように家の中に足を踏み入れてきた。慌てて用事を尋ねる。
「ちょ、ちょっと? 何の用ですか?」
「あ、申し送れまっしたー。ワタクシたち、殴り屋の者ですよん」
「依頼の時間とおりにやって参りました」
「すぐ始めるかい?」
「へ?」
なぐりや? 初めて聞く言葉だ。だがそんな物を頼んだ記憶はない、何かの間違いだと口を開きかけ――その口の中にものすごい衝撃が飛び込んできた。
不意打ちで喰らったその衝撃で、体が吹っ飛んで壁に叩きつけられた。げほげほと咳き込むと、手の上に血の混じった折れた歯がいくつも転がった。
「あぁああああぁあ……」
「すいませーん、忘れてまっした。入ったらすぐ、って内容でしたねぇー」
「嫌がるふりをするけど気にせず続けてくれとも仰ってましたよ」
「んじゃ、始めるか」
「「「お殴りいたします」」」
男たちの声で、ようやく自分が殴られたのだと気づいた。おかしい、なんで私はこんな目にあってるの?
混乱しきっている私を気にすることなく、私を最初に殴った男が近づいてきて、私の髪を掴んで無理やり持ち上げた。
「ひぃぃぃ……」
「一人何発だっけー?」
「三発ですよ」
「依頼金は終わったら勝手に持ってけ、って話だったな」
「んじゃ二発目ーっと!」
そういうなり、硬く握り締めた拳を私の顔面へと叩き付けた。またも吹き飛ばされそうになるが、髪が掴まれているので動けなかった。
その髪のせいで、私の頭皮がギリギリと引っ張られる。痛い、痛い痛い痛い! 視線を鼻へと向けると、……何も見えなかった。ぐちゃりと潰れてしまったのだ。
「やめ、お願い、やめて……」
「三発目ー」
だが、容赦されることなく、今度は軽い蹴りを入れられ、ごとりと床に転がされた。起き上がる間もなく、再び拳が私の顔面へと降ってきた。
起き上がろうとして頭を上げていたせいか、衝撃で後頭部が床に叩き付けられる。余りの痛みに、意識を手放しそうになるが、気絶は出来なかった。
「痛い痛い痛い痛いぃぃぃいぃぃいいぃいぃいい!!」
「はい僕の分しゅーりょーっと」
「じゃあ次は私がやります」
「お前は先に金をもらっていろ」
さっきまで私を殴った男がどこかへと離れ、別の男が近づいてきた。思わず顔をかばうが――衝撃は、鳩尾へと喰い込んだ。
「ぎゃひゃぁっ!! おぇぇぇえええぇぇえぇ……」
思わず朝食が口の中から溢れ出す。ツン、と酸っぱい臭いが私の鼻を刺激した。
「あ、ご安心下さい。嘔吐物や血液等はこちらで片付けます。では二発目」
にこやかなにそう告げると、二番目の男は四つんばいで吐き出していた私の腹を蹴り上げ、仰向け状態にした。
そして、手を握らず開いたまま、私の肺へと振り下ろした。肺の中の酸素が、私の口から吐き出され、一瞬呼吸困難のような状態になる。
「かひゅっ、かひゅぅぅー……はぁはぁはぁ……」
「はいラストです」
苦しみのあまり視界がぼやけてきたが、今度は私の目に衝撃がやってきた。眼球が潰れるような痛みとともに、目の前が全く見えなくなる。
「あぁああぁぁぁ……!」
「数十分もすれば回復します。ご安心をば。……さて、私も料金探しを手伝ってきます」
「さって、最後は俺か」
さっきまで殴っていた男の声が遠のき、残ったらしい男の一人が近づく足音が私の耳に響く。
また殴られるのかと、思わず身構え――たが、いつまで待っても何も起こらなかった。
おそるおそる構えを説解いた瞬間、脇腹に鋭い衝撃が走った。
「ぎゃぁっ!」
「次は何処にするかな。顔か、腹か、背中か」
男の声と足音が聞こえる方向がグルグルと変わる。どうやら、私の周りを回っているらしい。いつくるかわからない衝撃に、私は怯えきっていた。
と、ぴたりと足音が私の目の前で止まった。前から来る! と警戒したと同時に、私の後頭部を思い切り殴りつけられた。
「はい騙されたー。グルグル回ってたのは途中から僕なのでしたー」
「うるさいぞ。あと一発だし、とっとと終わらせよう……ん?」
男の声が頭にぐわんぐわんと響き渡る。どうやら、さっきの一撃は私の脳をトコトン揺らしたらしい。どうにでもなれと、私はあっさり意識を手放した。
*
「うぅ……あれ?」
目が覚めると、私はベッドの中にいた。……夢? いままでのは全部夢だったのだろうか?
鼻を触れば、手に感じるのはいつもの感触。本当に夢だったようだ。ふぅ、と安堵のため息を吐き出した――とき、部屋の中に声が響き渡った。
「あ、目覚めたねーん」
「やれやれ、殴られ中に意識を手放したら回復して最初からという契約など結ばなきゃよかった。またやり直しですよ」
「それにしても永遠亭印の薬はよく効くな。ここまでとは思わなかったが。……さてと、それでは改めて」
「「「お殴りいたします」」」
その言葉に、私は崩れ落ちることしか出来なかった。
殴り屋に依頼したのは変装した魔理沙です。理由はアリスだから。
狼狐
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2009/02/19 13:01:33
- 更新日時:
- 2009/02/19 22:11:02
- 分類
- アリス
- ボッコボコ
というか魔理沙自重wwまぁ1日4500回もバットで殴られたりしてるから余裕かもしれませんがw