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『しょうかちるの』 作者: みこう悠長
「今日こそ、観念なs」
ぺろん
今日の今日こそ大蝦蟇に勝とうと思ったチルノだったが、いつもどおりの負け。
だが今回は何か様子が違う……。
「ちょっ、いつまでのみこんでんのよ!さっさと出しなさいよ!」
チルノは大蝦蟇の腹の中で蹴ったり跳んだり凍らせてみたりするが、びくともしない。
いつもならぺっとすぐに吐き出されて「おぼえてろよー」なのに、一向に吐き出す気配が無い。
「ね、ねえ。いい加減出してくれないかなあ……」
大蝦蟇のに蛙の胃の中で不安感を隠せないチルノ。大蝦蟇はうんともすんとも言わない。
「ああもう。じゃあ根競べね!おなか、キンキンに冷やしちゃうもん!」
パーフェクトフリーズなんか撃ってみたりするチルノだが、それでも沈黙を保つ蝦蟇。
そして、変化は訪れた。
ちょろ……
「ん?」
チルノが閉じ込められている空間の端っこ。なにやら穴が開いており、そこから液体が染み出していた。
「なに、かな」
興味津々で近寄るチルノ。そしてそれに触れる……。
「なにこれ。なんかぬるって……」
チルノの興味はそこで失せた。単に緩慢な速度で液体が染み出ているだけだ。
本格的にチルノと蝦蟇の根競べが始まった。
◆
「まだー?もう、お腹壊してげりぴー、でしょ!さっさと吐き出しちゃいなよー」
やっぱり内側から色々やってみるけど、全然反応が無い。
「もー。飽きてきたんだよねー。この、このっ」
飛び跳ねて氷の槍でお腹の内側を突っついたりしても全然びくともしない。
と。
飛び跳ねた拍子に、着地に失敗して転んだ。
「あてて。ぬるって滑った……あ」
さっきの液体が、床一面に薄く広がっていた。ぬるぬるするその液体が足を滑らせた原因。
「もー。なんなんだよう。」
疲れたチルノは、その場に座り込んで時がたつのをまった。
◆
「ん……」
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。未だに口も何処も開けてくれていない。
「うわわ、なによこれ!」
驚いたことに、ぬめぬめ液の水位が上っている。チルノは慌てて飛び上がってそこから抜け出した。
そして。
「うわ、な、なにこれっ……服が……」
寝てる間に床についていたお尻の部分。服に穴が開いていた。
「なんだろ……」
胸騒ぎを覚えながらも、さっさとだせー!と抵抗を再開した。
◆
いよいよチルノにも自分が置かれた危機的状況が理解できたらしい。
「ね、ねえ、出して。謝るから、蛙凍らせて遊んでたのあやまるからっ。これじゃ、あたい、食べられちゃうっ」
スペルカードやなにやらは全部試した。大蝦蟇はこたえた様子も無く平然としている。
危機感と諦めから、チルノは負けを認めてここから出してもらおうと思ったが、それにすら大蝦蟇は反応しない。
ぬめぬめとした液体――勿論消化液――の水位は更に上昇を続け、飛んでいても脚が浸かってしまう位になった。
「うう、まずい……ねえ。あたいの負けだから、出して!もう二度としないからっ、お願い!」
危機に瀕して珍しく頭の働いたチルノ。
「そ、そうだわ、この水を凍らせればいいのよ!あたいってば天天才ね!」
めいいっぱいのマイナスKを足元に叩き込む。
が。
「なんで、なんでこおらないの?!」
やたらと融点が低いらしい。
液体といえば0零度で凍るものだと思い込んでいるチルノにはそれが限度だった。
「やだ、やだよ……このままじゃあたい……」
いよいよ脚を引っ込めてもどうしても消化液に浸かってしまうくらいに。
「ひっく……もう、やだ……あたいが、あたいがわるかったからっ……お願い、お願いします……ここから、出してください……」
スカートは半分なくなっていた。どうしても液体に浸ってしまう足先が、熱くて痛い。
そして
羽の先が、液体についてしまった。
「ひあ?わわわ、や、やだっ!」
バランスを崩した拍子に派手に液体に浸かってしまう。皮膚や服などの比較的丈夫だったりpH耐性があるものはすぐには影響が出ないが、致命的なのは、羽根だった。みるみる形を失って、チルノは浮いていることがままならなくなり、ついには消化液の海の中に完全に浸かってしまう。
「わぷ……や、やだよ!死にたくない!あたい死にたくない!!たすけて、たすけて!だれか!だれかたすけてよお!!もういたずらしないから……いい子にするから!たすけて…しにたく、しにたく、ないよお……」
緩慢な消化が、始まった。
◆
変化は程なくして始まった。
分子結合の強い服は割りと残っているが、完全に体が浸ってしまった以上、先に溶けるのは、体。
水位は上昇し、顔を出せば息が出来るという程度の空間だけが残った。そしてそのままずいぶんと時間がたっている。水位はこれ以上上らないようだった。
「あつい……いたい……たすけて、だれか……いい子にするから……おねがいします、おねがい、します、おねがい……。いたいの、やだ、あついよう……いたいよう」
皮膚が薄くなってゆく。粘膜が剥き出しの部位からは、血がにじみ出ている。
ひりひりする。ちくちくする。あつい。いたい。
絶望が、チルノを包み込んでいた。
◆
まだ、しんでないんだ、あたい……
随分時間がたった気がする。もしかしたらそうではないのかもしれない。消化液の海は、薄赤く染まっていた。チルノの血が染み出しているのだ。
体中が燃えるみたいに熱くて、神経を直接引掻くように痛い。事実、神経は剥きだしになって消化液の中に揺れていた。赤く染まった水面の向こうに見えるチルノの姿は、ただの赤い肉塊だった。そこに白や黄色の筋が走っている。場所によっては骨のようなものも覗いていた。
(は、はは……じぶんのこんなすがた、みちゃうなんて、さい、あく……)
ぷかぷかと消化液の溜まりに浮かぶチルノらしき塊。まだ、生きている。
水面から出している顔以外、全て……。
手足を動かそうと思っても、既に情報伝達の経路が消えているらしく動かない。
最近覚えたえっちなことに使う場所が、溶けて消えかけていた。まるで、それをするのが悪いことだったのだと、その罪を消そうとするように、少し、往生際が悪く溶けていた。
ぷつ
何かが切れる音が聞こえた気がした。次の瞬間、消化液の赤色が急激に濃くなる。
基幹血管がついに破れたようだ。その頃にあっては肋骨はすっかり剥き出しになり、真っ赤な中に白さの際立つ肺が顔をのかせている。
横隔膜はどうにか動いているらしいが、白いホースのようなものは消化液の海の底までまっすぐに延びており、それも所々襤褸のように千切れかけている。
動かせもしない四肢は、骨も露になって逆にグロテスクさはなかった。
失血が進み、意識が薄れる。
蝦蟇の胃の中で、意識も体も、徐々に、徐々に、溶かされてゆく……。
(りぐるん……みすちー……るーみあ、あたい、もう、あえないよ……あたい、ここで、とかされて、しんじゃうんだ……)
( ご め ん な さ い )
◆
翌日、湖の畔に得体の知れないものがあると話題になったが、それがチルノ「だったもの」だと誰かが気付いたのは、大分時間が経ってからだった……。
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2009/03/07 17:14:39
- 更新日時:
- 2009/03/08 02:14:39
- 分類
- チルノ
空気読まずに言ってみるwww