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『嫌われ姉妹』 作者: pnp

嫌われ姉妹

作品集: 1 投稿日時: 2009/03/11 03:45:47 更新日時: 2009/03/11 19:00:57
「ちょっと、ちょっとそこの赤いの!」

 何事かと、秋静葉は振り返った。
声をかけてきたのは、氷の妖精チルノ。

「何でしょう?」
「一体、いつになったら消えてくれるのさ」

 突然のチルノの一言に、静葉は言葉を失った。

「え……? え?」
「私の友達、冬が来ないと動き出してくれないんだってば。あんたらがいると秋が長引くでしょ。だから、早く消えなって」
「し、しかし、まだ十一月です」
「もう二十九日でしょう? 十二月からは冬って感じじゃん。どうせ一日二日早くたって変わらないって。早いとこいなくなってよね。レティに会いたいんだから」
「……こ、今年だって、穣子のお陰で豊作だったんですよ!? 私たちだって……」
「あーん、うっさいなあ。じゃあ落ち葉しか出せないあんただけでもいいよ。さっさと冬にしてくれない?」

 どうにか自分達の存在意義をチルノに教えてやろうと努力したが、無駄であった。
暫く口論が続き、さきにチルノが折れた。

「あーあ。秋なんてつまんない。モノを実らせたらさっさと消えて欲しいんだよね」
「ひどい……」
「そもそも、あの豊作だってあんたの妹の功績な訳? 勝手に豊作になったのを自分たちの手柄みたいに喚いてるだけなんじゃなくて?」
「そんな事ない!」
「はいはい。ま、収穫祭も終わったんでしょ? 一秒でも早くいなくなってね」

 そういうと、チルノは飛んでいってしまった。
 確かに、冬を思わせる冷たい風が時折吹いてきている。
それでも、秋が大好きな静葉は、そう簡単に冬を迎えたくなかった。
「今言われた事は忘れよう」
 そう心に決めたが、涙が止まらなかった。






 紅く染まった森を、静葉は一人歩いていた。
穣子は別の所で、自分なりの秋を楽しんでいるのだろう。
 沢山の紅い葉に囲まれて、心が安らぐのを感じていた時だった。

「食欲の秋、スポーツの秋、あと、読書の秋だっけ?」

 聞き覚えのある声。
大きな木の後ろに隠れて、その会話を聞く。

「全く、乙女の敵ね。秋って」
「そうだな。確かに腹が減る季節ではあるよな。動かないお前はどんどん太ってくんだろうな。ところで、誰が乙女なんだ?」
「読書なんて毎日やっているわ。むしろ眠たくなって捗らない位なんだけど」

 そんな会話をしているのは、魔法使いの三人だった。
 暴れまわる心臓を押さえながら、静葉はその会話を聞く。

「スポーツだっていつでもできるじゃない」
「そもそもスポーツなんてしないだろ。アリスは」
「読書とスポーツを両立するのは、とても難しいわ」
「そもそも魔法使いは自宅で研究がメインなのに、食べ物ばかり美味しいから困るのよ」
「まあ、私は適度に動いているけどな」
「食べられる茸は多いけど、化け茸はそうでもないのよね」
「あー! 落ち葉が鬱陶しい! 気持ち悪い虫も多いし!」
「私は早いところ雪解け水が欲しいんだよ。あー、早く冬になってくれないかなあ」
「そろそろ冷えてきたし……きっと冬はすぐそこよ」







 チルノに言われた言葉が、嫌でも蘇ってしまう。
幻想郷の住民は、秋が嫌いなのだろうか……
 そんな筈はないと自分に言い聞かせるも、やはり涙は止まらない。








 涙で定まらない視界でふらふらと歩いていると、いつの間にか博霊神社だった。
 人間三人と、妖怪が二人。それから、半霊が一体と、亡霊が一体。
いつもどおり、賑やかな神社だ。

「ああ、やっぱりここもですか」
「早苗の所も、やっぱりそうなの?」
「勿論。霊夢さんもと言う事は、咲夜さんの所も……?」
「そうなの。本っ当に大変なのよ。妖夢もそうでしょ? それとも冥界はそうでもないかしら」
「いえ。ここほど酷くないですが」
 人間三人と半霊は、いずれも庭掃除を必要とする立場にあるもの。
 逃げようと思えば静葉は、その会話を聞かずに逃げる事ができた。
しかし、怖かった。
 もしかしたら、と言う淡い期待を込め、耳をそばだてる。
 だが、そんな期待は簡単に打ち砕かれた。

「朝起きたら境内一面、落ち葉落ち葉落ち葉! 掃除してもバッサバサ落ちてくるし!」
「私も山の上の神社で、緑が多い所ですから……本当に大変なんです」
「時間を止めても骨の折れる仕事よ。現実の時間なんかで、よくやる気になるわね。落ち葉掃除」
「ここの落ち葉は本当に酷いですね……ああ、冥界に住んでてよかったです」
「さっさと冬になってくれれば、雑草とかも死滅して万事解決なのに」
「本当ですよね」
「美鈴も冬になればさすがに眠らないし」
「冬は庭仕事が減りますから……今年も蓄えはあるし、早く冬が来て欲しいです」

 妖夢の一言に釣られたように、幽々子が寄ってきた。

「妖夢! お鍋が食べたいわ!」
「冬まで待ってください」
「えー? いいじゃない」
「ダメです。季節感にはこだわらないと」
「むう。そういう所に忠実なんだから。あー、冬が待ち遠しいわ! 早く冬の妖怪が現れないかしら!」

 彼女らの話を聞いて、そこに居合わせた橙も目を輝かせた。

「紫様も冬が待ち遠しいですよね!」
「え? うーん。まあ、秋よりはね」
「だって、冬は藍様のお尻尾解禁の季節ですものね!」
「そういえば、あんたは冬になると藍の尻尾にしがみ付いてばかりね」
「だって、暖かいし寝心地抜群なんですよ! 冬は寒いからって、お触りが許されるんです」
「そうなの」
「ふふっ。早く寒くなって欲しいです」

 猫はコタツで丸くなる、と言う童謡すらも無視されてしまっている。






 もはや思い込みも、自己暗示も効かない所まで、静葉は追い詰められてしまっていた。
あれが、幻想郷内の有力な者たちの秋に対する思いなのだ。
 泣きながら家へ向かう静葉。

「うわ。まだいたの?」

 あからさまに嫌そうな声を出したのは、チルノだった。

「早くいなくなれって言ったじゃん」
「……」
「おーい」
「うるさいっ!」

 堪えきれなくなって、静葉はついにチルノに手を出した。
パチン、と乾いた音が響く。
 赤くなった頬を押さえて、チルノが喚き散らす。

「殴った! あんた、殴ったなぁ!」
「あ、あなたが秋の悪口ばっかり言うから……」
「霊夢も魔理沙もアリスも咲夜も紫も幽々子もみんな秋の悪口言ってるじゃない! 今からあいつらも叩いてきなさいよ!
「……っ!」

 当然のことだが、そんな事をする勇気も、戦闘力も静葉にはない。
できる筈がない事はチルノも分かっている。挑発に拍車がかかる。

「できないの? できないの? バーカバーカ! 弱いものいじめー! 最低ー! ちょっと豊作にしたくらいで調子に乗っちゃってさぁ!」
「……」
「言っとくけどあんたなんていなくたって豊作くらいできるのよ? 山の神社の巫女は奇跡を起こせるし、紅魔館の吸血鬼は運命を操れる。八雲紫は凶作と豊作の境界を弄れるんだから!」
「うう……」
「あ、違ったわ。ごめんごめん。あんたは落ち葉増やすくらいしかできないか。そうやって紅魔館のメイド長の仕事を増やして給料を上げやってる訳ですね、わかります」
「うええん……」
「泣いた泣いたー! あっはっはっはっは! 弱虫毛虫ー!」

 遂に泣き崩れた静葉の周囲を飛び回り、チルノがゲラゲラと笑う。

「さてさて。これから私情に任せて他人を殴る危ないのがいるって霊夢に報告だわ」
「な……!」
「あー、そうだ。霊夢に何言っても無駄だよ? ちゃんと証人がいるんだから。ねえ、みんな?」

 言った直後、チルノの後ろの草むらが揺れた。

「見てたよ」
「見てた」
「見てたー」
「見てた」

リグル、ミスティア、ルーミア、そして大妖精。
勝ち誇った様にチルノが微笑む。

「じゃあね、秋のお姉さん。行こ、みんな」
「冬の虫たちもそろそろ動きたがってるだろうなぁ」
「冬独特の雰囲気って、歌いたくなるよね」
「そーなのかー」
「もうすぐレティさんに会えるね、チルノちゃん!」






*







 家に帰る気分にもなれず、誰もいない所で時間を潰した静葉。
 帰宅したのはもう暗くなってからの事だった。
鈴虫の音も少なくなってきた秋終盤、まさかこんな気分で冬を迎える事になろうとは。
 穣子は大丈夫だっただろうか。
それだけが気がかりで、家へ帰ってきたのだが……

「あ、お姉ちゃん来たわよ」
「……霊夢さん……」
「お姉ちゃん!」

 霊夢と早苗の二人が、穣子を取り押さえていた。

「な、何を……」
「チルノがあんたに殴られたーって言うから、退治しに来てみたら、こいつしかいなくて」
「代わりにこの子に罰を受けてもらう事にしたんです。妹さんですから」
「そ、そんな……!」
「あんたが悪いのよ。頭に来たからって相手を殴ったりするから」
「お姉ちゃん! 助けて! 助けて!」

 穣子も泣き叫んでいるが、この二人を追い払う力は、この姉妹にはない。

「まあ、殴っただけだし、そう罪は重くないわ」
「そうですよ」
「終わったら、二人で即刻姿を消してね。罰として秋の期間を短縮するわ」

 そう言って、二人は穣子を連れて歩いていってしまった。

「で、どうするんですか、この子」
「さあ。素っ裸にして人里に晒すとか?」
「なんかこの子、いい匂いがしますね」
「このまま鍋にぶち込んで煮込んでやろうかしら」
「殺しちゃうのはよくないですよ」
「じゃあ裸体で晒しましょ」


 小さくなっていく三人を見ながら、静葉は地に膝をついてむせび泣いた。
 風神録購入記念。
秋姉妹が可愛すぎました。そしてボス戦BGMが最高でした。
 紫の能力は完全に把握できていないのであしからず。
また、静葉が喋らなかったので、こんな感じだといいなあ、という作者の希望がそのまま表れています。
 因みに作者は、秋姉妹も季節の秋も大好きです。

 グロと言うよりいじめ作品なので、ここに投稿していいのかわかりませんが、ひとまずここに投稿。
問題があるようでしたら削除します。
pnp
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2009/03/11 03:45:47
更新日時:
2009/03/11 19:00:57
1. ■2009/03/11 13:34:38
胸糞悪くもニヤニヤが止まらない
実に良いいぢめ…。
2. 名無し ■2009/03/11 15:36:03
社会が狭いのは怖い
3. 名無し ■2009/03/11 15:46:12
これは胸糞悪い。
誰かおっ死ぬ話よりもこういう陰湿ないぢめは耐えられない俺はまだまだだな。
4. 名無し ■2009/03/12 04:18:24
いじめっ子チルノがいいね。
家で泣きながら縮こまってる姉妹を想像すると……ウフフ
5. 名無し ■2009/03/12 19:27:07
大好きなレティのために子供っぽい残酷さを最大限に発揮するチルノがかわいい。
このチルノもいじめたい。報復とかじゃなく。
6. 名無し ■2009/03/13 21:10:30
ヒドスw
でもまあいいかってなるあたり、どうしようもない俺w
7. 名無し ■2009/04/13 10:08:50
>勝手に豊作になったのを自分たちの手柄みたいに喚いてるだけなんじゃなくて?
確かに春に種撒いて夏に育って初めて秋に収穫できるんだから
実りを秋だけの手柄にされては他の季節の神様も心中穏やかではなかろうな
8. 名無し ■2009/04/18 22:10:12
これはひどいwww
とは思うが
秋姉妹は季節について見直すべき というか穣子が豊作にさせたのにも農家の方々の苦労があるわけで・・・
9. 名無し ■2010/02/26 08:01:42
いや、秋が無くなって夏から冬へダイレクトに移行するようになったって、やっぱり落ち葉は落ちるだろうが。紅葉しなくなるだけで。
むしろ雪と落ち葉がぐちゃぐちゃになって余計に大変だ。
10. 名無し ■2010/05/18 22:52:00
少なくとも現代日本じゃ秋は過ごしやすいと好かれてるからその分の反動が幻想入りしてるとかw
レミリアや紫らにもできるってのは痛いとこついたなー
11. 名無し ■2010/07/20 15:59:38
サナエの神に対する所業に、山の二柱がガクブル状態になるところまで妄想した。
12. 名無し ■2011/05/15 21:19:45
おwwいww霊ww夢wwなwwぜww裸wwでww晒wwすwwんwwだww

絶対に許さない
絶対にだ
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