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『親孝行、したい時に親はなし』 作者: 物理的にも良いけど、精神的にもね☆

親孝行、したい時に親はなし

作品集: 1 投稿日時: 2009/03/13 11:00:00 更新日時: 2009/03/13 21:16:53
アリスは自分の唯一の肉親である、母、神綺から来る手紙が、最近煙たくなっていた。


その理由はというと、母の手紙の文面に必ずと言って良い程に書かれる、この一文に答えを出すのに、何時間も悩む事になってしまうからだ。

『今度の里帰りの時、是非、アリスちゃんのお友達をつれて来てね』

母としては悪意の無い、娘の成長やその娘を取り巻く環境を知りたがる、当然の言葉なのだが、アリスにとっては何より困る一文だ。

そう、アリスには自分の故郷に連れて帰れる程親しい友達が、居ないからだ。

同じ収集家の知り合いはいる。
顔見知りの巫女はいる。
時々世間話をする半獣はいる。
親身になって話してくれる医者はいる。
永遠亭まで案内してくれる蓬莱人はいる。
時々おやつを強請りにくる妖精はいる。

だが、その誰一人として、自分の故郷である『魔界』について来てくれるだろうか?

魔界はこの幻想郷に連なる世界でも、屈指の危険な区画であって、幻想郷内にあるとはいえ、母.神綺が作り出したという意味では、ある意味幻想郷の外界に位置する世界。

誰がそんな場所行きたがるだろうか。
時に、知識を欲しがる者なら行きたがるかもしれないが、アリスはそんな目的で来た者を、自分の友達だと、母を騙し通せる自信はない。

こうして、嬉しいはずの母からの手紙は、年を追うごとにアリスにとって苦痛の手紙と化してしまった。
今となっては、こうして手紙が届いて、返事を書くために机に向うのさえ、母に恨み言を言いたくなってしまう。

「そんなに頻繁に書かなくても、私は平気なのに……。」

自分はそんなに頼りないだろうか、確かにあの頃は母から貰ったグリモワールを暴走させて、大参事を引き起こしてしまった事もあるが、今はすっかり魔力の制御のしかたを知り、人形を操る程度の能力を手に入れた。
それどころか、母が自分を此の世に生んだ時、アリスはただの『魔界人』だったが、現在は魔力を取り込む事で食物の摂取を必要としなくなった、『魔法使い』に転生し、種族さえ変っている。

それでもまだ、母は自分を子ども扱いするのだ。

「もう……嫌になっちゃう。」







「はぁ……はぁ、アリス様、お手紙をお届けに参りました!!」

それから数日後、また魔界から手紙がやってきた。
早すぎる、何故だかは知らないが、最近手紙がやってくるペースが、徐々に速くなっている。

何時も通りの、魔界神の便箋に包まれた、何時も通りの手紙。
心なしか使いの息が上がっていたが、アリスはそんな事を気にしている程、心に余裕があるわけない。
普段なら茶でも飲ませて、一服した後に帰すのだが、その余裕すらない。

アリスは寒気がした。

この手紙を出したら、その返事の手紙にまた返事が来る。

そして、その返事を返したら返事が。

これに答えれば、自分に友達がいないという、その現実を直視するあの苦痛を、延々と味わうことになる。

「いや……。」

「アリス様? 事は一刻を争うのです、急いでください!!」

この使いは何を急かすのだろう?

もしや、母は自分に友達が居ない事を知っていて、面白がって手紙を出しているのだろうか。
この使いも、表面上は急ぐような顔をしているが、内心では自分を滑稽だと、せせら笑っているのではないか。
急かすような事を言われて、しどろもどろに手紙の返事を書くその姿を、今頃魔界から、喜劇でも見るかのように……。

「アリス様!!!」

「嫌!!!!」

その次の瞬間、アリスの指先から熱い物が迸ったかと思うと、魔界の使いはその場に倒れ込んだ。

弾幕ごっこではない、本物の魔法。
相手を殺すための、殺傷能力を持った魔法弾。

長らくその魔力は弾幕ごっこか、人形を操るためにしか使われていなかったとはいえ、仮にも魔界神の娘であるアリスの魔力は、この使いよりもずっと優れた物である。

一体何が起こったかも解らないままの使いは、胸からだくだくと血を流した後、魔力で作られた炎に巻かれ、悲鳴を上げる暇も無くこの世から永遠に消え去る事になった。

これでいい、伝令役は死んだ、これで代わりの伝令役が立つまでは、暫くの間だが、手紙は来なくなるだろう。

魔法の森は生きている、一日もすれば燃えカスなど、直ぐに土が吸収して、端から見ればきっと誰にも解らない。
何かを言われれば、何も知らないと言えば良い。
自分は何も知らずに生活していたと、そう言えば良いのだ。

どうせ、誰もこの家には来ないのだから。

「お母さんが悪いんだ、私は悪く無い、お母さんが私に意地悪するから、これは私からのお母さんへのおしおきよ」

これで良い、アリスはそう考えた。
今日は胡蝶夢丸を飲まなくても、ぐっすりと眠れそうだ。




予測通り、手紙は来なくなった。
だが、それも一年となれば、流石のアリスも心配になってくる。

母は自分の唯一の肉親。
自分は何を考えていたのだ、母が、あれだけの深い愛情を自分に与えてくれた母が、自分を裏切るわけないではないか。

あの時血迷った行動に出たのは、今となってはアリスも反省しきり、あの後使いの墓を作った。
許されるとは思っていない、でも、そうせずにはいられなかった。

寂しい。

それが今のアリスの本心であって、手紙を自らで止めてしまった後、一年が経過した今、それ以外の心は無い。

帰ろう、魔界に。

帰って謝ろう。

アリスは荷物を纏めると、生まれ故郷に帰るために、博霊神社へと向った。

「ごめんなさい、ごめんなさい、お母さん」







博霊神社の裏手、巨大な石の門のある洞穴の奥、魔界の入り口は存在する。


したはずだった。


今アリスの目の前にあるのは、鉛色の岩の壁。
そこからはなんの魔力も感じれず、魔界があったという痕跡すらない。

門が閉じているのではなく、本当に存在しない。

魔界への入り口が無い。

魔界が無い。

帰れない。


「友人を失うというのは、どれだけ生きても辛いわ。
それが特に、長く付き合った古い友人だったりすると、余計にね。」

「どうして……アンタが此処に」

不意に立っていたのは、隙間妖怪.八雲紫。
紫は全くの無表情のまま、アリスの胸に一枚の封筒を叩きつける。

それは、あの日の、最後に届いた魔界からの手紙。
あの時は何時も通りのと感じた、今は懐かしいと感じる便箋で。

アリスはその便箋の封を開けた。

【ハハキトク、スグカエレ】

まるで、子供に物語を語るように、紫は語りだす。

「魔界神.神綺ちゃんは、ある日自分の力の限界と共に、命の限界を悟りました。
自分が居なくなると、自分が造り、支配する魔界は消えてなくなってしまいます。
そうなれば、そこに住んでいる住人達もただでは済みません、きっと一緒に消えてしまうでしょう。
ですが、魔界神になるような器を持つ、魔界を支え続けるような、強大な魔力を持った者は中々見つかりません。
神綺ちゃんには一人の娘がいました、そこで神綺ちゃんは、その愛娘に魔界神を継がせようと考えました。
仮にも魔界神の娘、ならば器は十分、立派に魔界を守り支えて行けるでしょう。
でも、折角表の世界で頑張っている娘を魔界神に縛りつけ、魔界からそう外に出れなくするのは、かわいそう。
そう考えた神綺ちゃんは、娘に表の世界は楽しいかと、それとなく手紙を出して、聞き出すことにしたのです。」

続けるために息を吸う紫の声が、話し始めた最初と違い、震えているように感じたのは、気のせいではなかった。

「あのバカ魔界神は、あんたの母さんは、あんたが、もしこの幻想郷で暮らしたがるんだったら、自分の我侭を貫き通して、魔界と心中するつもりだったのよ。
冗談じゃないわ、魔界の奴等も、どうしてそんな我侭に付き合って、逃げようともしないで心中に付き合うのよ……!」

アリスはもう何も言えなかった。

何時も何時も、癪に障るような余裕の笑みを浮かべていたあの隙間妖怪が、その美しい顔をくしゃくしゃに歪めて、涙と鼻水が出る事も気にもしないで、悲しみを露にしている。

「『あの優しいアリスちゃんが、お母さんの使いを殺してしまう程、紫の世界に居ることを望んでいるのなら、もう私、止めないわ。
それに、もっと違う理由があったにしろ、それはアリスちゃんが、もう私のことを要らないって……お母さんはもう必要ないって、合図だもの。
だったら、古い神と古い母、古い世界は、喜んで娘の門出をお祝いするわ。
……紫、アリスの事をよろしくね。』
アンタの母さんの、熱にうなされてうわ言のように呟くアンタの名前以外での……最後の言葉よ!」

殺される、白い腕がアリスに向って振り上げられた時、アリスは次の瞬間には、自分の首が飛んでいるビジョンを見る。
だが、その予測は外れ、瞑った目を開くと、もう紫はアリスに背を向けていた。

殺す価値も無い。
そう呟くと、紫は隙間を使う事無く、自分の足で洞穴の外へと歩いていった。
彼女は、もう二度と此処へは来ないだろう。








博霊神社の裏手、巨大な石の門のある洞穴の奥、獣とも妖ともつかない、醜く歪んだ慟哭が響き渡る。

その慟哭はやがて啜り泣きに変わるが、その何れも、冷たい石の壁に吸い込まれ、何処へも届くことはなかった。
拷問も良いけど、精神的にもね☆
うん、酷い。色々な意味で。

初投稿、初書きなので、拙い所は目を瞑ってやってください。
さて、カーチャンの肩でも揉むか……。
物理的にも良いけど、精神的にもね☆
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2009/03/13 11:00:00
更新日時:
2009/03/13 21:16:53
分類
アリス
神綺
さようなら
グロ無し
エロ無し
1. 名無し ■2009/03/13 21:11:37
ちょっと親孝行してくるわ
2. 名無し ■2009/03/13 23:07:19
ババァどもが調子コイててムカつくwww
3. 名無し ■2009/03/13 23:48:43
( ;∀;) イイハナシダナー
てゆうかこれ産廃じゃなくても…。
4. ■2009/03/14 00:57:04
まあ向こうに出すにはちょっと批判を食らいそうな内容だから、産廃でもいいのでは?
産廃はすべてを受け入れ(ry
5. 名無し ■2009/03/14 03:22:26
心に重くくるね・・・・かなり気持ち悪くなった。
でもそれがいい!
6. 名無し ■2009/03/14 03:22:34
うぉおおおおーーん
7. 名無し ■2009/03/14 04:04:11
数ヶ月前におっとおが死んだワシにはマジこたえる・・・
8. 名無し ■2009/03/15 00:55:40
母の愛に泣いたようわああん
9. 名無し ■2009/03/17 17:14:38
私もずっと棚上げして、逃げ続けてきた実家がらみの問題に決着をつけなければならないとおもった
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