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『かわいそうな魔理沙』 作者: pnp
鬱蒼とした魔法の森の一角に、小さな家がある。
そこが魔法を使う程度の能力を持つ人間、霧雨魔理沙の家であると言う事は、幻想郷内でも知る者は多い。
しかし、そこが霧雨魔法店と言う何でも屋だという事はほとんど知られていない。
どちらにしろ、魔法の森は普通の生物が生きるにはあまりに酷な場所であるが故に、ほとんど誰も近づこうとしない。
その誰も近づかないのが魔法の森のいい所でもある。如何わしい研究や実験が、誰の目にも留まらない。
だが、そんな場所に店を開いているのだから、魔理沙は何でも屋として働く気はあまりないのだろう。
森を歩く二つの人影。
同じ魔法の森に住む魔法使いの二人、魔理沙とアリスである。
他愛もない世間話に花を咲かせる二人。
だが、アリスがふと、思い出したように言った。
「そう言えば魔理沙」
「ん?」
「厄を溜め込む妖怪って、いたじゃない」
「ああ。いたな」
「あいつ、どこにいるのかしら」
「なんだ? 悪いことでもあったのか」
「まあ、少しね。あいつに頼むほどの事じゃないけど、念のために」
「そうか。でも、居場所は知らない」
「そう」
特に深く追求するつもりもないのか、言いだしっぺのアリスもそこでその話をやめた。
再び、世間話が続く。
魔理沙は自宅の扉を開けた。
狭苦しく、様々なモノが散乱している小さな家。
地面に落ちた書類を雑に拾っては、最寄の高い場所へと積み上げていく。
一つの山が崩れ、大量の書類が、埃を舞い上げながら床に散らばった。が、気にしない。
キッチンでお湯を沸かす。勿論、魔法で。
あっという間に沸いたお湯でお茶を入れる。彼女は緑茶派である。が、紅茶も好きである。
お菓子は紫が外界で盗んできたらしい、ウサギの形をした饅頭。
ウサギの知り合いがいる彼女は、少し躊躇いを感じながら、饅頭を口に運ぶ。
もぐもぐと饅頭を噛みながら、化け茸の調合を始める。
これをスープにして混ぜて乾かして固形物にしてから、投げたり加熱したりして魔法らしい魔法の効果が出るのを期待する。
それが彼女なりの魔法作成の過程だ。
今日もスープを作り、それを弱火で放置する。
そして作り置きしておいた固形物を取り出し、早速新しい魔法の誕生を願って外へと飛び出した。
「今日こそ、すごいのができるといいけどな」
期待と不安を胸に秘め、固形物に様々な作用を与える。それがどんな結果であれ、全てメモしてとっておく。
だが、やはりその日も大した成果は上がらなかった。
「あーあ、またやり直しかあ」
残念そうに自宅へと帰っていく魔理沙。
先ほどメモした紙をテーブルに置くと、淹れておいたお茶を飲みきった。
暫くボーっと虚空を眺め、思い立った様に椅子から立ち上がる。
狭い家には不似合いな大きい本棚を押す。
床に、隠された階段が現れた。
「今日もやってるか」
グルングルンと腕を回し、魔理沙は秘密の地下室へと歩いていった。
*
霧雨家に地下室がある事を知っているのは、幻想郷内、外界ともに二人しか存在しない。
一人はこの家の家主、霧雨魔理沙。
そしてもう一人は、この地下室にいる、妖怪である。
コツン、コツンと、暗く狭い地下室に魔理沙の足音が響く。
魔法を駆使して作った地下室。
元々は家に置いてある邪魔なものを片付けたり、他人から“借りた”ものを隠しておく場所として使うつもりでいた。
しかし、思わぬ遊び道具が手に入ってしまい、それ以降はそいつの自室としても使われるようになった。
灯りのない部屋は、ほとんど何も見えない。
勿論、電気くらいは通っている。階段を下りたすぐ近くにスイッチは存在した。
しかし、遭えて魔理沙はそれを押さずに、暗闇を進んだ。
部屋の先で待つそいつを、怖がらせてやる為に。
もう通いなれて、どこになにが置いてあって、どこの辺にそいつがいるのかも体が覚えていた。
足を止める。
「ひっ」
掠れた、小さな声。
魔理沙は、暗闇で見えはしないが、飛び切りの笑顔で挨拶をする。
「ご機嫌いかがかい?」
「……魔理沙……」
「おーい。ご機嫌いかがかい?」
「……」
返事はない。
呆れた様に息を漏らし、もう数歩歩みを進める。
ジャラジャラジャラ。
金物の何かが石室の床を滑る音。
鎖が引きずられている、と言うのが一番しっくりくる音である。
実際、鎖が存在するのだ。そして、そいつが動くと鎖も動く。
つまりそいつは、鎖で繋がれているのだ。
「魔理沙、魔理沙ぁ」
泣きそうな声で、そいつは魔理沙の名前を呼ぶ。
そいつが、魔理沙の顔を確認できるかできないかくらいの距離まで詰め寄った時。
魔理沙が箒を眼前に向かって振り下ろした。
刷毛の方の柄を持って振り下ろした為、ほとんど木の棒を振っているのと変わらない。
渾身の力を込めて振り下ろしたそれは、魔理沙の眼前にいるそいつにぶち当たる。
「ぎぃっ」
と、小さな声を上げる。
その後も容赦のない魔理沙の暴行が続いた。
息が上がってきた所で、ようやく魔理沙は箒を捨てた。
カランと木製の箒が音を立てて地面を転がる。
そいつの髪の毛を引っ掴み、顔を近づける。
足には足枷がついていて、自由に動けそうにない。
そんなそいつを見ても、魔理沙は尚も満面の笑み。
「ご機嫌いかが、って聞いてんだぞ? 私の名前を呼んでちゃ答えにならないだろう」
「は、はい……」
「よしよし。分かってくれるよな?」
緑の髪。赤い長いリボン。
「雛。お前はいい子だからな」
愛おしそうに微笑む魔理沙。
地下室にいた者の正体は、人の厄を溜め込む妖怪、鍵山雛だった。
「けど、人の話を聞かないのは感心しないな」
「あ……っ」
無理に雛を立たせ、手を後ろに組ませる。
近くに落ちていた手錠をかけて、また箒を握り締める。
「ごめんなさいと言え」
「ご、ごめんなさいっ」
「よく言えました。でも許さん」
意地悪に、残酷に笑う魔理沙。
箒を思い切り横にスイングさせる。
柄が雛の横腹に命中した。
「あぎぃっ!」
「バカか? バカなんだろ? バカだよな? ああバカだ! 大バカ野郎だよお前は!!」
手も足も自由の効かない雛を、箒の柄で何度も殴る。
服の上からなので確認はできないが、恐らくその服の下には幾つもの痣を作っているのだろう。
「言葉もまともに喋れない奴だったのかお前は!」
「痛……ひっ! やぁっ! やめ……」
「認めろ認めろ! 私はバカですと! 他人様の厄を自分に溜め込む精神構造がまともじゃないバカだって!」
「み、認めます! 認めますからあ!」
「口だけじゃ分かんないだろ! 態度で示すんだよ!」
言っている魔理沙自身も、何て訳の分からない事を口走っているのだろうと、内心苦笑していた。
しかし、いい。何の問題もない。
雛を痛めつけてやることができれば、どんなに下らなくてつまらない口実でもいいのだ。
暫く殴られ続けていると立っていられなくなって、雛が地面に膝をついた。
嗚咽を漏らす雛の前に立ち、次なる一手を考える。
息を整えた魔理沙は、作ったような優しい声色で囁いた。
「雛、お腹空いたろ?」
「え……」
何の脈略もない提案に、雛は戸惑った。
「食べ物、持ってきてやるよ」
雛の返事を待つことなく、魔理沙は地上へと上がっていった。
暫くして、大きな箱を抱えた魔理沙が戻ってきた。
「お待たせ」
ドスン、とそれを床に置き、箱のふたを開ける。
雛は相変わらず拘束されたままだ。
「お前はどうしようもないバカだから、どうせ一人じゃご飯もまともに食えないんだろ」
「……」
「食べさせてあげるぜ」
満面の笑みで、箱に手を突っ込む魔理沙。
箱から出された手に持っていたのは、緑色の長細いバッタだった。
まだ生きていて、小さいながら力強い脚でどうにか魔理沙から逃れようともがいている。
雛が息を呑む。
「ほら、あーんしろ」
「え……あ……」
「なんだよ。嫌なのか?」
「あ、あーん」
魔理沙に不愉快な思いをさせる訳にはいかないと、雛は慌てて口を開ける。
ニコリと微笑み、魔理沙がバッタを雛の口の中に放り込む。
雛はすぐさま口を閉じた。
生きたバッタが、口の中でもがいているのがわかる。
細くてギザギザした足が、妙に舌に引っかかる。
足の力が発達しているのを、舌で感じる。非常に気持ちが悪い。
「よく噛んで食べろよ。飲むのは体によくないぜ」
魔理沙の要らぬ助言。
しかし、従わないと魔理沙の気分を損ねる事に繋がる。
雛は、無我夢中でバッタを噛んだ。
ジャリジャリと音が鳴る。
細い脚を奥歯で潰し切る。
顔の部分は若干硬い食感が感じれた。
柔らかくて長細い腹を噛むと、中から妙なモノが流れ出てきた。
猛烈な嫌悪感と吐き気に襲われながらも、どうにか細かく噛み砕いたバッタを胃へと流し込むのに成功した。
魔理沙も満足げに頷いた。
だが。
「おかわりいるだろ? さすがに一匹じゃ、雛もお腹空くだろうしさ」
箱の中に入っていた採集箱にぎゅう詰めにされているバッタたち。
所狭しと脚をバタつかせるそれらが入っている箱の蓋を開け、上を向いて開け放たれた雛の口の上で採集箱を傾ける。
バッタの雪崩れが雛の口目掛けて押し寄せてきた。
零れるのも逃げるのも、魔理沙は無視した。
ほとんどのバッタが雛の口に収まった。
「あぐぁえええぇぇ……」
「ほら、食えって。噛めよ」
命令口調の魔理沙。
逆らうと、魔理沙を怒らせてしまう。
口の中で暴れまわるバッタ達をガムシャラに噛み潰す。
薄い羽が口内に纏わり付いた。
何匹分もの腹に収められているモノが口中を支配する。
決して魔理沙に嫌な思いはさせないと決めていたが、雛は耐えれなくなった。
「うえぇぇっ! おえっ、ごほっ、ごほっ!」
「吐いた……」
信じられないものをみるような魔理沙の目。
それは、完全に雛を見下していた。
「お前、私が誠意を込めて集めてきた食べ物が食べられないっていうのか!?」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
「ダメだね! これは厳しい躾が必要みたいだな」
「食べます、食べますから! 見ててください!」
雛は、吐瀉物に顔を埋めた。
床に広がる、バッタの破片を含んだそれを、綺麗に舐め取っていく。
ズズズズズズズ と汚らしい水音。
雛の荒い息遣いが地下室に響く。
「はひぃ、ひい……ふぇ、あふあ……」
どうにか全てを胃に帰還させる事に成功した。
飲めずに吐いたバッタも完食した。
「ど、どうれすか……」
「……ま、これはこれでいっか」
雛は笑んだ。
どうにか魔理沙の機嫌を損ねずに済んだから。
「じゃ、次のメニューな」
「え……」
「じゃじゃーん。ダンゴムシー」
元はイチゴジャムでも入っていたような瓶に詰められて、ウネウネと動き回る大量のダンゴムシ。
それの蓋をカポンと開け放つ。
「上向け。そんで口開けろ」
「あ……うぁあ……」
「? 何?」
「は、はい……あーん」
従う他ない。雛は涙を流しながら口を開いた。
「ははは。泣くほど嬉しいのか。そっかそっか」
「は、はひぃ。うれしいれす」
「じゃ、遠慮なく食え」
ザー。
ラーメンの麺を細かくしたような形状のスナック菓子を一気に食べるような感覚でダンゴムシを雛の口へと送り込む。
今度は一匹たりとも逃げないし、一匹たりとも零れない。
瓶詰めされたダンゴムシ全てが、口へと飛び込んできた。
「うぐうぇ……」
「ほら。噛め。味わえ」
「うう……」
ダンゴムシの大量の脚が口内を擽る。
最初の一噛みで、幾つものダンゴムシが潰れた。
ツルツルしてて硬い表面は、確かな歯応えをもたらしてくれている。
だが、これ以上が限界だった。
「かはぁっ」
一匹も飲めず、噛まれてぐちゃぐちゃになったダンゴムシを吐き出した。
床に拡げられた、唾液交じりの崩れたダンゴムシ郡。
それを見て、魔理沙がため息をついた。
「また吐いたな」
「いえ……た、食べま……」
「バッタも吐いて、ダンゴムシも吐いて。お前は私が嫌いなのか? 私が用意した食べ物なんて不味くて食えないとでもいうのか?」
「違いますっ。違います!」
「じゃあどうして吐くんだよ。食えない以外の理由が見当たらないぜ」
近くに置いてあった鞭を魔理沙は握っていた。
*
天井から伸びた鎖付きの手かせに縛られた雛。
頭の上で手かせを付けられ、貼り付けの状態にされている。
そんな無防備な雛に、魔理沙は鞭を振るう。
バシッ、という軽快な音。
鞭を用いるのが今日に始まった事ではないというのが窺える。
「ほら、バカ雛! いつもの奴だよ!」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさ……あひぃっ!」
「あひぃじゃないだろうが! お前はごめんなさいって百回言えばいいんだよ!」
「ごめんなさいごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」
「その調子その調子」
けれども魔理沙の鞭は止まらない。
それどころか、時間を追う毎に酷くなってきている。
一体何回ごめんなさいと言ったのか、魔理沙は愚か、雛すらも分かっていない。
それでも雛は、泣きながら意味のない謝罪を繰り返す。
魔理沙に着せられていた服が破け、素肌が曝け出された。
いつもの雛の服は、とうの昔にビリビリに破れてしまっていた。
無論、破いたのは魔理沙である。
正確には、こうやって鞭を振るっている内に破れてしまったと言った方が正しい。
血が滲んで真っ赤な肌。そこに、新しい痣が刻み込まれていく。
幾多にも及ぶ長時間の暴行からか、雛の反応が薄れてきた。
そうなってようやく、魔理沙は雛の手枷と足枷を外した。
グラリ、と雛の体が揺れ、そのまま魔理沙の胸へと飛び込む。
魔理沙はそれを、優しく受け止める。
緑色の髪を静かに撫で、耳元で囁いてやる。
「大好きだぜ。雛」
「……魔……理沙……」
「ほんとだよ。本当に、本当に大好き」
首まで伸びている長い髪に、顔を埋める。
極度の緊張状態が続いた為か雛の髪は汗ばんでいた。
「お前は本当におかしい奴だ。狂ってるとしか思えない」
「……」
「だって」
スーッと、魔理沙が体勢を低くしていく。
細い指が頭、額、鼻、顎、首、胸、臍を順番にゆっくりと撫でていく。
着せていた服を脱がせる。下着も剥ぎ取った。
一糸纏わぬ姿となった雛の秘部を、愛おしそうに撫でる。
「私にこんなに殴られて、お前は悦んでいるのだから」
秘部からは、愛液が流れ出ていた。
*
人の厄を溜め込む、なんて自己犠牲愛に近い生き方をしているからか。
はたまた、その自己犠牲愛に近い生き方をできるからこそ、人の厄を溜め込むなんて能力がついたのか。
どちらが先かは本人も知らなかったが、雛は、いつの間にかそういう生物になっていた。
故意に与えられる理不尽な痛覚が、どうしても快感へと変換されてしまうのだ。
しかし、自分で自分を殴ってみても、快感は薄い。
厄を溜め込んでいるが故に得られる全ての生物から感じる嫌悪感は、快感には変わってくれない。
「あいつに近寄ると不幸になる」と言う恐怖から、ほとんどの生物は雛を避ける。
普段から、雛はそんなこと気にしていなかった。
自分に与えられた役割を全うしていると言う自信があったから。
しかし、あまりに他者との交流が無い故に、前述した快感を感じる事は少なかった。
そんな異常な性癖を、様々な経緯で魔理沙に知られてしまった。
それから、雛は幸せになった。
魔理沙は雛に部屋を与えた。
さっきは虫を食わせたが、普通の食べ物だって与えている。
そして口汚く雛を罵り、意味不明な口実で雛を殴った。
罵られるのも、鞭で打たれるのも、殴られるのも、蹴られるのも、叩かれるのも、縛られるのも、全部が雛を悦ばせている。
雛は毎日、この時間を楽しみにしている。
こんなにも素晴らしいヒトがいてくれたのを、心の底から喜んでいる。
「見てみろ。これ、全部雛のだ」
「やあぁ……恥ずかしいよぅ……」
「恥ずかしいだあ? ド変態のお前に言われても説得力無いぜ。ほんとはいろんな人に見て欲しいんだろ?」
「そ、そんなことないもん」
「嘘付け。じゃあ何だよ、この透明ないやらしい液体はさ?」
秘部に魔理沙の指が入る。
「ひゃあっ」
「ほら。中も既にグチャグチャじゃないか。これを変態と言わずに何と言う?」
「違う、違う……」
「違わないっつーの」
秘部の奥へ奥へと魔理沙が手を侵入させていく。
絶叫でしかない雛の嬌声を一切無視し、常人には耐え難い激痛に狂喜する雛の体を弄ぶ。
「おお。見ろ雛。私の拳が入っちゃったぜ」
「いひぃい! いひゃあぁあああ!」
「お前の秘部は全てを受け入れるわ。なんてな」
握り拳を雛の中で蹂躙させる。
極度の快楽に、液がボタボタと溢れ出す。
「あーあ。遂に性癖を隠し切れなくなったな」
「もっと、もっとぉ!」
「あー? だが断る」
ズポン、と拳を引き抜いた魔理沙。
雛は、息を荒げながらも、恍惚とした表情でいた。
物足りなさなど微塵にも感じない、満足げな表情。
堪えきれなくなり、失禁する有様だ。
あれ以上続けていたら、一体雛はどうなってしまうのだろうか。
「おいおい。室内で漏らしたなコラ」
「ごめんなひゃい、ごめんなひゃいぃ」
「って、今のお前に何言っても無駄か」
やれやれ、と言った感じに魔理沙が立ち上がる。
適当に雛の服で濡れた床を拭き取り、再び雛に手枷を付けた。
自分は鞭を握る。
「漏らすなって言ってんだろうがグズ!」
再び始まった鞭打ちの時間。
しかし、今の雛にとって、この時間は変え難い至福の時なのだ。
完全にスイッチの入ってしまった雛。
罵られ、叩かれるその時間。
もはや快楽に身を委ねる以外、彼女は何も考えられなくなっていた。
「お前は犬以下だな! いや、猫未満だ! 猫だってトイレの場所くらい覚えるんだぜ?」
「あきゃあぁあ!」
「何だってそんなにバカな妖怪なんだよ! 夜雀より鳥頭なんだなきっと!」
「んああぁあん!」
「どうしようもなさすぎて可哀想になってきたぜ。このバカ! ノロマ! グズ! グルグルグルグル回りまくって気持ち悪い! 謝れ! 幻想郷の全ての生物に謝れ!」
「ごめんなひゃいいぃいいい」
「声が小さいもう一度!」
「ごめんなしゃい皆ひゃまぁぁ! 鍵山雛はこうやって苛められるのが大好きな頭のおかひい子なんですぅう! ごめんなさい! ごめんなひゃああ」
「うるさいウスノロ! 恋符で吹き飛ばすぞ!!」
*
気を失っている雛の背中に、魔理沙は黙って薬を塗る。
永遠亭で処方してもらった薬なのだから、効果は絶大である。
いつもの風景だった。
一頻り行為が終わってしまうと、魔理沙は言い知れぬ罪悪感に打ちひしがれる。
行為の最中はそんな罪悪感を感じる事はない。
むしろ、雛を支配していると言う現実が、彼女を高揚させてすらいる。
それは、彼女がどうしても超えられない存在が幻想郷内に多いのが原因かもしれない。
境界を統治するスキマ妖怪。死を操る冥界の亡霊。運命を手中に収める吸血鬼。外界の神様。死後の世界の最高裁判長。
そして、惰眠を貪って尚、強力な力を持つ博麗神社の巫女。
それらは、魔法を扱う程度の人間である魔理沙では簡単には超えられない、大きな存在。
彼女は負けず嫌いでありながら、おかしな奴らと友好関係を築きすぎた。
気丈に振舞っていても尚、追い越せる日は来ないというジレンマに苛まれる日々。
それでも努力をやめないのは、それをやめた瞬間、彼女が幻想郷で生きるを意味を失うから。
雛を痛めつける事で、彼女は優越感に浸っているのだ。
そして、我に返った時に一気にその報いが襲い掛かる。
つまり魔理沙の行為は、生きているだけで溜まってしまうストレスを発散させる為の八つ当たりにすぎないのだ。
大好きな雛を虐めて、支配して、何でも言う事を聞かせて、非力な自分を無理矢理格上げする。
終わればそんな行為には何の意味も無い事に気づかされ、罪滅ぼしに薬を塗る。
雛を罵れるほど偉くもない。魔理沙も、十分すぎるほど異常だった。
「ん……」
雛が目を覚ました。
「あ、起きたか」
「魔理沙」
「その、ごめんな。大丈夫か?」
「またそれだ。……悦んでるの、知ってるくせに」
「そうだけど……」
「嫌だったら、あなたを殺してでも出て行ってるわ」
雛は笑んでいる。
魔理沙は浮かない表情。
「そんな顔しないで、魔理沙」
「……」
「私は嬉しいの。勿論、さっきの行為みたいなのだけじゃなくて、私の傍にいてくれる事が」
「雛……」
「私の近くにいると、不幸になるのに、魔理沙はずっと私と一緒にいてくれている。それが、とても嬉しいの」
「そうなのか」
「ええ。私も大好きよ、魔理沙」
「……ありがとう」
――魔理沙は気づいていない。
新しい魔法が生み出せないのも。
努力が報われないのも。
紫に、幽々子に、レミリアに、神奈子に、四季映姫に、そして霊夢に勝てないのも。
毎日毎日、こんな罪悪感に見舞われているのも。
全ては雛の内に溜め込まれた厄の影響であると言う事を。
気づけない理由は唯一つ。
雛と過ごすことで、
そんな数多の不幸に気づけないくらい、彼女は幸せを感じているからである。
他作品への多くのコメント、恐縮の極みです。
題名はいちいち分かり辛いですが、この魔理沙は可哀想すぎると思います。
「お前はほんとにかわいそうなやつだ」の意味で用いられる、かわいそうな魔理沙です。
彼女を取り巻く境遇や環境がかわいそうなのではなく、人間的にかわいそうすぎる魔理沙です。
(実際のところ、いい題名が浮かばなかっただけというのが六割くらいありますが)
そして自身のエロネタの知識の薄さに絶望しました。
ご観覧、ありがとうございました。
追記:
雛は神様、という指摘を受けてちょっと調べてみましたところ、
・肩書き:秘神流し雛
・種族:厄神様
とあるのですが、霊夢vs雛の前の会話で
霊夢「妖怪は私の敵 あんたは妖怪」 と言う台詞がありました。
求聞史紀では、「妖怪」と分けて更に「八百万の神」という分類もありました。(雛がどの位置に分類されるのかは不明ですが)
よって、広く分類すればやっぱり妖怪でもいいのではないかな、と思います。
どうしても納得いかない、という場合は、修正版を書こうと思います。
ご迷惑をおかけました。
pnp
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2009/03/15 12:38:14
- 更新日時:
- 2009/03/15 22:48:41
- 分類
- 魔理沙
- 雛
- 微エロ?
東方では人間以外(広義では)妖怪扱いだからね。問題ないと思う。