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『蟲(3)』 作者: 桜色
里での事を終えた後、森の中の湧水場で喉を潤し、一息をつく。
天にはまだ日があるが、暫くすれば夕闇が覆いはじめるだろう。
「いよいよ時間が無いな」
ここまで幻想郷のパワーバランスを崩してしまう程のこの行い、
恐らく今夜中には感付かれ、私は明日の日の出を見ることも叶わないだろう。
しかし例えそうなったとしても悔いはない。
人間に、妖怪に、この幻想郷に私たち虫の驚異を少しでも感じさせたなら満足だ。
虫の王として私はこれから来る名だたる妖怪達を堂々と迎え撃とう。
リグルの周りに途方もない数の虫たち達が集まり、戦闘体制をとった。
/
宵の闇が迫り始めた頃、森の前には数名の妖怪とその従者がいた。
レミリア・スカーレットとその従者、十六夜咲夜
八意永琳とその弟子、鈴仙・優曇華院・イナバ
西行寺幽々子とその従者、魂魄妖夢
「・・・狩りの時間だ」
レミリアが言った。
「気を抜かないで。森の中は完全に向こうのテリトリーだわ。圧倒的に不利なのはこちらなんだから」
永琳が言う。
「で、纏まって動くの?それともそれぞれ動いて3方から追い詰めるの?」
幽々子が聞いた。
「お前達と馴れ合い気は無い。行くよ、咲夜!」
「はい、お嬢様」
レミリアと咲夜は森に足を踏み入れた。
「仕方ない、私たちも行きましょうか」
「はい!幽々子様」
レミリア達とは儀がう方向へ足を向けた。
「・・・人の助言も全く聞かないのね。私たちはこっちから行きましょうか」
「はい、師匠!」
/
「じめじめして嫌な空気だ」
「本当ですわ」
四半刻程歩いただろうか。
ガサ・・・
小さいながらも自然の音ではない音をレミリアは聞き取った。
「止まれ咲夜」
「・・・!」
懐からナイフを取り出し構えた。
「・・・」
「・・・」
ヒュ!
前方から毒針が来た。
すでに構えは取れていたので、すぐに回避し、来た方向にナイフを投げ返す。
ザ!ザザザザ!
前方で何かが移動する音が聞こえた。
「逃がすか!」
レミリアが詰め寄った。
すかさず咲夜も後を追う。
「!」
レミリアが前方の木にひらりと舞う布を見た。
「そこか!」
ザシュ!
木ごとなぎ払う。
しかしそこに目標の姿はなかった。
「チッ!」
着地し、態勢を立て直そうとした。
だが、着地しようとしたそこは地面ではなかった。
「何!?」
地面と思って着地したそれは、枯葉に擬態した羽虫の大群だった。
本当の地面はそこから数十センチ下。
グラリ・・・
一瞬だがレミリアが姿勢を崩した。
「今だ!」
辺りから一斉に虫達が飛び掛かった。
「・・・なめるなぁ!スカーレットデビル!」
レミリアの体から途方もない魔力が照射された。
弾幕ごっこのそれとは違い、容赦ない無慈悲の力。
飛び掛った虫たちはその魔力で残骸すら残らぬほどに焼かれていった。
「ふん!どうだ!」
魔力を解き、地に降り立つ。
「貴方こそ余り私達を舐めないで!個々の力は弱くても私たちには数がある!」
レミリアは虫たちを焼き尽くしたと思っていたが、それはほんの一部に過ぎなかった。
あっと言う間にすぐに第2派の大群が押しよせた。
「チィィ!」
一瞬、状況判断の為にレミリアは動きを止めた。
結果それが致命的な隙になってしまう。
「今だ!」
パシュ!
「ぐぁ!」
リグルはその間隙を縫ってレミリアの体に毒針を突き立てた。
あっと言う間にレミリアの体に毒が回り始め身体の自由が奪われる。
しかしここで油断は出来ない。吸血鬼の身体能力はどの種族よりも優れていると聞く。
更に2度、3度と毒液を注入する。
「お嬢様!」
即座に時を止め、駆け寄ろうとした。
しかしあることに気付き、立ち止まりを余儀なくされた。
リグルとレミリアの周辺は、咲夜が時を止めるよりも早く、蜘蛛の糸で囲むように覆われていた。
その糸は隙間も小さく、間を通り抜ける事も無理そうだ。
迷っている間に咲夜の能力は解け、時は動き出した。
「迂闊に触らない方がいいよ。その糸は特製だから一度絡みついたら人間の力でなんか取れる代物じゃないし。
そして、そこから動かないでね。こいつが人質よ」
咲夜を横目に見ながら警告した。
しかもいつの間にかリグルの手元には咲夜が先程投げた銀のナイフが握られていた。
「主の弱点を持ち歩くのは不用意だと思うよ?」
「クッ!」
ふわり・・・
咲夜の周りにも糸が舞った。
それはあっと言う間に周りの木に取り付き、咲夜を中心としてまるで鳥篭でも作るかのように張り巡らされた。
もはや咲夜は鳥篭の中の鳥・・・。
「残念だったね二人とも。ここは私のテリトリー。ここに居る限りあなた達に勝ち目なんて無い」
「・・・殺してやる」
レミリアが呪詛の言葉を吐く。
「その覚悟は出来てるよ。でもその前に貴方にも咲夜にも私たちの苦しみを知ってもらうわ」
「咲夜に何かしてみろ!八つ裂きでは済まさんぞ!」
「威勢だけはいいね。でも動くことも出来ない貴方には私を止める事は出来ない」
ポタッ・・・
一滴の水滴がレミリアの傍らに落ちた。
「それに私は吸血鬼の弱点も調べてきたもの」
「・・・なんだと?」
「そーれ、皆頼むよ!」
ポタポタ・・・
ザザザザ・・・・
空から水が降りそそいだ。それはまるで雨のように。
その水がレミリアから魔力を全て奪い去っていく。
「がああああぁぁぁあぁあ!貴様!き・・・さまぁあ!」
「雨とか、流水に弱いんでしょ?身動きすら取れなくなってしまうんだってね。
毒だと回復も早いし、こちらの用意も大変なんだけど、
皆にお願いして水を一滴ずつ運んでもらうだけで押さえ込めるのならこっちの方が確実だしね」
上空には夥しい数の葉虫達が、水場から運んできた水をレミリアに向かって落としている。
「お嬢様!お嬢様!」
咲夜が悲痛な叫びを上げる。
「さて夜の王、そこでよく見ていてね。貴方の大事な者が殺される様を・・・」
「ふざけ・・・るな・・・」
「大丈夫、貴方もすぐに後を追わせてあげるから」
【鳥篭の鳥】に向かう。
「ねぇ、仲間から聞いたんだけど、紅魔館では殺虫剤と言うものを使ってるよね?」
「・・・何よ藪から棒に?」
「使ってるでしょ?害虫駆除のためだって」
「・・・ええ使ってるわ。パチュリー様にお願いして作って貰ったわ」
「あれをかけられた私たちはどうなると思う?」
「知る物ですかそんな事!」
「・・・神経をやられ、呼吸が出来なくなり、苦しみ、悶え、死んじゃうの・・・」
「・・・」
「貴方にはそれを身をもって体験してもらうわ!」
パチンと指を鳴らすと、数匹の虫が飛来した。
「この子達の毒はねで私流の殺虫剤・・・じゃないな、殺人剤を作るの」
「何をする気・・・や、やめて・・・」
虫たちは微々たる量ではあるがその毒をリグルに預けた。
リグルは受け取った毒に魔力を足し、増強する。
「よし出来た!じゃあ次は君達、出番だよ」
多くの羽を持った虫が集まった。
羽虫たちは一斉に羽ばたきだす。
すると咲夜に向かってゆっくりと風の流れが起こり始めた。
そしてリグルは殺人剤を風の流れに乗せた。
「ちょっと!やめてよ!・・・グ!」
効果は覿面に現れ始めた。
「あ・・・ぁぁあ・・・うぅ!」
「咲夜!くそう!やめろ!貴様ぁ!」
「おじょ・・・おじょ・・・さまあぁぁぁあぁ!あ!ああああああああ!」
顔を歪め、喉を押さえ、胸元を掻き毟り、
「ギィィィィ・・・!ヒィ!うぐぐぐぐ・・・ぐ・・・」
瀟洒なメイドは泥まみれになりながらのた打ち回った。
「・・・・・・お・・・さま・・・もうし・・・わ・・・ありま・・・」
そして程無くして咲夜の一切の生命活動は停止した。
「・・・咲夜・・・咲夜!咲夜!咲夜ぁああぁぁぁぁ!」
悪魔の頬に水ではない物が伝い落ちた。
「これでも効き過ぎかぁ・・・もっと苦しんで貰いたかったのに。本当に人間って脆いんだね」
「この三下妖怪が!・・・よくも!よくも!」
「何と言っても良いよ。今宵の勝者は私。勝者にこそ正義があるの」
そしてこの者達との戦いに終わりを告げるため、ゆっくりとレミリアに近づいて行く。
レミリアの眼前に愛する従者の物だった銀のナイフがギラついた。
「さぁ、貴方の番だから悲しまなくていいよ。向こうでお幸せに。向こうで会えるかは分らないけどね」
クスッと笑った。
そして・・・
リグルはレミリアに馬乗りになると
銀のナイフをレミリアの胸に突きおろした。
「・・・さて、これで場所は感付かれたかな?」
/
「!」
「幽々子様!」
2人は激しい魔力の照射に気付いた。
「これはレミリアね!向こうが先に見つけたようね。行きましょう!」
「はい幽々子様!」
「師匠!」
「行くわよ!ウドンゲ!」
「はい!」
/
3本目です。
今回は紅魔コンビ。
次で終わりになる予定。
この連休中には書き終えたい^^;
しかしホントひっどい話しだなw(カイテルオマエガイウナ←
こんな作品にも需要があるのか心配でつ^^;
桜色
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2009/03/20 13:58:30
- 更新日時:
- 2009/03/25 00:04:35
- 分類
- 咲夜
- レミリア
- 残酷描写
- 虫
- リグル
最後はリグルにとって何の救いもない話が見たいな
あと、ここのリグルは割と賢いな。