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『蟲(終)』 作者: 桜色
先に来たのは永琳と鈴仙だった。
「この辺りね。ん?・・・これは!」
永琳は風の中に何かを感じ取った。
「毒ね。しかもこの毒、対人間に特化した猛毒だわ。これだけ薄まってもこの強さなら近くに居る人間ならば・・・」
鈴仙はその能力を生かし、かなり先の方まで見通していた。
そしてその能力で、数十メートル先に2つの倒れている人影を見た。
「師匠・・・誰か倒れています!・・・二人、・・・あれは咲夜さんとレミリアさんです!」
二人は木陰に身を潜めると、辺りの様子をそっと伺った。
「ウドンゲ、2人の様子はどうなの?」
「はい」
鈴仙は目を凝らして2人を探った。
だがその表情は見る見るうちに曇っていった。
「師匠・・・2人からは・・・一切の生命波長が・・・ありません」
「・・・そう。まさかあの二人が・・・」
ザシュ!
ザシュ!
ザシュ!
今度は鈴仙の耳に足音が聞こえてきた。
「っ!!師匠!何か来ます!とても大きい物が!」
二人は足音の方向をに神経を集中した。
「もうそこまで来てるんでしょ?私は逃げないよ。出てきたら?」
リグルの声が二人に届いた。
「どうします師匠?」
「はいそうですか、と出て行くわけにもいかないでしょう?」
「・・・来ないならこっちから行くよ?」
ザシュ!
ザシュ!
ザシュ!
二人のもとへどんどん足音が迫ってきた。
ヒュン!
大きな風切り音が響くと同時に、二人の周囲に有った大きな木が数本倒れ落ちた。
ヒュン!
更にもう一度。
「クッ!ウドンゲ!距離をとって!」
二人が離れた直後、隠れていた木は刃物で一刀されたようにすっぱりと切られた。
「何よあいつ!?」
10mほど先には見た事の無い大きさの蟷螂がいた。
それはリグルの魔力を受け、完全に妖怪化した蟷螂の姿だった。
そしてその背中にはリグルが乗っていた。
「(はぁ・・・はぁ・・・さすがに魔力使いすぎちゃったかな・・・)」
さすがにコレほどに魔力を分け与えたのはリグルにとっても初めてのことであった。
だが、そのお陰で蟷螂は素晴らしい変化を遂げた。
「はっ!」
「えーい!」
永琳と鈴仙は同時に弓と弾丸を放った。しかし・・・
ガキィン!
金属のような大きな音と共に弾かれてしまった。
「何あの装甲!?」
「ただ大きくなっただけじゃないよ!この子はにねカナブンの装甲を持たせたんだ!」
もちろんその装甲もただのカナブンのものではなく、魔力で強化してある特製だ。
「ちょ!何!あのふざけた固さは!」
「ウドンゲ!ぼーっとしてないで避ける!」
2度3度と鎌を振り回してくる。
「二人とも下がって!」
背後から声がし、とてつもない速さで誰かが飛び込んできた。
2人は咄嗟に道を空ける。
シュバ!
鋭い剣閃と共に蟷螂の右の鎌が身体から切り離された。
「こいつは私に任せてください!」
妖夢が最前線に躍り出た。
「ダメ!妖夢!貴方はここから離れて!早く!」
永琳が叫んだ。
「え?・・・う!ゴホッ!ゲホッ!な・・・何だ!ゲホッ!」
急に妖夢が咳き込みだした。
「この辺りの空気にはまだ対人間の猛毒が残ってるわ!早く風上に退避して!」
「・・・!」
妖夢はすぐその場を離れようとしたが、すでに蟷螂は次の一撃を振り下ろした。
キィン!
剣でその一撃を受け止めるが、咳き込む妖夢に次の一撃を繰り出す余裕は無い。
「ゲホッ!ゲホッ!・・・クゥゥゥ!」
「ウドンゲ!撃つわよ!」
「はい!」
効果は無いだろうが、妖夢を援護する為に有りっ丈の弾を打ち込む。
そこに更に背後からレーザーの様な一閃が加わった。
幽々子だった。
ほんのその一撃を受けた蟷螂の力が少しだけ緩んだ。
「今よ!妖夢!直ぐにここから離脱しなさい!」
幽々子が叫んだ。
妖夢はなんとか鎌を押し返すと、風上へと駆け抜けた。
「固いわね」
「弾では全く効果が無いですね」
「妖夢は呼び戻せないし・・・」
「では私が引き受けましょう」
3人に新しい声が混ざった。
「紫!遅いわよ!」
「愚痴、お小言は後で聞くわ。それよりもう1匹居るわよ・・・」
「え!?まだ何か居るんですか!?」
もそ・・・
ゴソ・・・
蟷螂の背後からまたも大きな何かが現れた。
「蟻かしら?」
「そうだよ。もうこれでこっちの手の内は全部だよ」
「師匠、信用できますかね?」
「できるわけ無いわね」
だが紫がそれを肯定した。
「本当よ。他に気配も無いし、リグルは自分達の誇りにかけて私たちに向き合ってるわ。
ぐだぐだ言ってても始まらないし、始めましょう。私と幽々子で蟷螂は始末するから、蟻はお願いね」
「・・・分ったわ」
永琳は懐から薬剤を取り出した。
「で、どうするの紫?」
「私と幽々子の力で叩き潰すのは簡単だろうけど、あいつの執念は半端では無いから確実に絶命させる方法を取るわ」
「私の力で?」
「ええ、私の能力で身体に風穴を開けるわ。そこに幽々子の死蝶を有りっ丈叩き込んでやって」
「普通には殺せないのね?」
「あれはもう妖怪よ。普通の虫と違って物理的な攻撃や死蝶を叩き込めばどうにかなるものじゃないのよ。
おそらく身体の中心には核となる物があるはずだからそれを探し出すわ」
「師匠、どうします?」
「私の知りうる限り最強の殺虫毒を打ち込んでやるわ。でもそのためにはウドンゲ貴方の一撃が必要だわ」
「何でもしますよ!」
「恐らくあの蟻も特殊な装甲をしてるわ。その装甲に1mmでもいい、弾を撃ち込んで穴を開けて頂戴」
「私の力でできるでしょうか?」
「やるのよ!体内に直接この薬を叩き込まないと確実に殺れるとは思えないもの」
「・・・分りました!」
/
4人はそれぞれの敵に向かい合った。
「いくわよ!」
紫が先陣を切って躍り出た。
振り下ろされる鎌を上手くかわしながら、蟷螂の身体を入念に調べる。
背後からは幽々子が援護射撃を浴びせかける。
「紫!早くしてよね!」
「分ってるわよ。それより無駄打ちして余計な魔力使わないでね」
「ウドンゲ!貴方は一撃の為だけに集中して!」
「分りました!」
鈴仙は大きく息を吸い込むと、ゆっくりと魔力を集中し始めた。
永琳は蟻の注意を引きつけると、吐き出してくる酸や手足の攻撃を避けながら鈴仙の時を待った。
「・・・よし!ここだわ!幽々子いける?」
「いつでも行けるわよ!」
「はあぁ!」
紫がスキマを展開し、強大な力を持ってその装甲を打ち抜いた。
蟷螂の装甲にはぽっかりと穴が開いた。
「幽々子!全力でお願い!」
「紫!下がって!」
幽々子は舞い踊る様に身体を翻すと、死蝶を放った。
その数は紫ですら見たことも無い途方も無い数。
七色の光を放ち、美しく優雅に、そして吸い込まれるように紫の空けた穴へと飛び込んでいった。
「・・・師匠!撃てます!」
「こいつの横腹をそちらに向けるわ!そこに思いっきり打ち込んで!」
「わかりました!」
「やぁ!!」
永琳が蟻の横面に攻撃を叩き込んだ。
それはいとも簡単に弾かれてしまったが、蟻は永琳に向け方向を変えると、
その強力な顎で食いつこうと突っ込んだ。
永琳はそこで立ち止まり、魔法障壁を展開し顎での一撃を受け止めた。
一瞬蟻の動きが止まった。
「今よ!」
「いっけぇ!」
全身全霊の魔力を凝縮した弾丸は、見事蟻の横腹に命中し、そこには小さな穴が開いた。
「良くやったわ!後はそこにこの薬を・・・おっと!」
装甲に小さな穴が開いたとはいえ、その程度の事では蟻はひるまない。
尚も酸を飛ばし、その手足でなぎ払い、踏み潰さんと攻撃の手を緩めない。
「さて、どう攻めたものかしら・・・」
「師匠!その薬私に任せてください!」
「貴方は十分に仕事をしたわ。あまり魔力も残って無いんだからそこで休んでいなさい」
「大丈夫です!師匠、たまには弟子を信じてくださいよ!」
「・・・分ったわ、じゃあこれは預けるわ。私はどうしたらいい?」
「そのまま10秒でいいので引きつけていて下さい!」
「了解!」
鈴仙は受け取った薬を自らの弾の中に封入した。
そしてしっかりと狙いを定めた。
「師匠!さっきみたいに動きをとめる事は出来ますか!?」
「結構無茶振りするのね!やってやるわ!」
「お願いします!」
「天文密葬法!」
蟻を囲むように多くの結界が展開され、蟻に向けて一斉に弾を打ち出した。
行き場を失った蟻はたじろぐようにその足を止めた。
「お望みどおり止めたわよ!」
「・・・そこだ!」
鈴仙は残った力で最後の1発を打ち出した。
撃ち放たれた弾は、先程鈴仙が撃ち抜いた所、装甲の穴に寸分の狂いもなく飛び込んだ。
「師匠成功しました!下がってください!」
弾から体内に永琳が作った特製の薬が染み出した。
永琳が下がると、巨体が一瞬動きを止めた後、ぐらりと崩れ落ちた。
同時に横からも大きな音と共に、蟷螂が倒れ落ちた。
「やりましたね師匠!」
永琳に駆け寄る。
「良くやったわウドンゲ!」
「油断するな!」
紫が鈴仙と永琳に叫んだ。
ブシュ!
蟻は残った最後の力で酸を吐き出した。
「きゃぁ!」
その最後の抵抗は、鈴仙に直撃した。
「・・・!嫌ぁ!熱い!熱い!師匠!助けて!」
「ウドンゲ!」
見る見るうちに服は溶け、皮膚がただれ、肉が焼けていく・・・。
「し・・・しょう・・・私・・・まだ・・・死にたく・・・」
「大丈夫!私が助けてあげる!」
ガクッと崩れ落ちる鈴仙を受け止めた。
残っていた酸が永琳の服や腕を焼く。
「・・・・・・・・しょ・・・・う」
ズルリ・・・
永琳の腕の中から鈴仙は溶け落ちていった。
骨すら残さずに・・・
「・・・ああああ!うわぁぁぁぁああぁぁ!ウドンゲ!」
「・・・クッ!」
目の前でまたも出た犠牲に幽々子が顔を伏せた。
「まだ終って無いわよ!リグル、出てきなさい!」
巨大な虫の影から虫を統べる者が現れた。
もう力など残ってはい無い。
しかし逃げるつもりも隠れるつもりも無い。
残ったのはこの身体一つと、王としての意地だけ。
同胞達は皆死をも怖がらずに戦った。
だから私も指1本になろうとも戦い抜く!
「うわあああああ!」
拳を振り上げ、3人に飛び掛った。
だが・・・
幽々子が高出力光線を放つ。
リグルの右手はその光線によって消滅した。
「ウドンゲの仇!喰らえぇ!」
永琳が弓を引き絞り、強大な一撃を撃ち放つ。
その一撃がリグルの両の足を吹き飛ばす。
「行け!」
紫がスキマから超高速の物体を打ち出す。
それはリグルの左半身を粉々に打ち砕いた。
ドサリ・・・
手も足も失い、芋虫のようになったリグルだが、それでもなお目の前の4人を睨み付けた。
「・・・痛い?これでまた私たちが仕返しされる理由が出来てしまったのかしら?」
「理由なんて・・・数え・・・るのも・・・バカら・・・しいくらい・・・あるよ・・・」
「でももうこれで終わりね・・・」
「終わ・・・りだ・・・ね。でも・・・これは・・・何度でも・・・何度でも・・・繰り返すよ・・・私たち虫が・・・生きている限りは・・・」
「煩い!もうこれで終わりだ!」
「そうね、これで終らせましょう」
「・・・皆、後は頼ん・・・だよ・・・!」
そして3人の最後の攻撃がリグルに向かって放たれた。
/
「妖夢!大丈夫!?」
幽々子が妖夢の元へと駆け寄った。
「ゲホ!・・・幽々子様・・・何処ですか・・・幽々子様・・・目が・・・目が見えないのです・・・」
「なんですって!?永琳!お願い診てあげて!」
すぐに永琳が駆け寄り、容態を確かめた。
「・・・無理だわ。視神経が完全に破壊されたわ。これでは私の薬でどうにかなるものでも無いわ」
濃度は低かったとは言え、猛毒を吸い込んだ妖夢の肉体は深刻なダメージを受けた。
半霊である妖夢は人より耐性が少しではあるが高かったため、幸い命に係わる程の事ではなかったが・・・
妖夢の目からは永遠に光が失われた。
「ああ・・・妖夢・・・妖夢・・・」
「うう・・・幽々子様・・・」
永琳は愛弟子が最後に立っていた場所に戻った。
赤黒く変色した土をギュッと握り締める。
「ウドンゲ・・・」
永琳自身も酸によって火傷を負ったが、それはもう徐々に回復し元通りに成りつつあった。
しかし心に負った大きな傷は癒えない・・・
戦いは終った。だがそこに勝利の喜びや達成感など無かった。
残った物は深い悲しみと心の傷だけ・・・
虫を統べる者は消えた。
多くの犠牲者を出し、生き残った者の身体にも心にも大きな傷を残し・・・。
それは結果としてリグルの望んだ事、リグルの勝利だったのかもしれない。
しかしまたすぐに虫たちの中から彼らを統べる者は生み出されるだろう。
彼らはまたいつか人間に、妖怪に、牙をく剥く日を淡々と伺うっているのかもしれない。
長々と書き連ねました。とりまこれで完結です。
こんな駄文に最後まで付き合ってくれた方々ありがとうございます。
おまいたちになら掘られても良い←
グロとか残酷描写とか初めてだったので、これで良かったのかどうか全く分りませんw
表現方法?文章力?おいしいのそれ?^p^
永琳とか幽々子とか『死』という概念がなさそうなキャラには、
心を傷つければ良いじゃない!ということにしました。
色々反省点もありつつ次の作品に生かしたいと思います。
追記:加筆修正しました。
桜色
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2009/03/21 06:30:57
- 更新日時:
- 2009/03/25 00:09:28
- 分類
- 虫
- 残酷描写
- 微グロ?
- リグル
妖夢がテラ不憫で萌える
オチがお先真っ暗でよかった、流石に全滅ENDはキャラ的に無理ですもんね
リグル無駄死プギャーってのも見てみたかったなw
どーせなら最後リグルが後悔しながら死んでいく方がすっきりする
ところで死んだ奴はやっぱ
えーきさまのところにいくのかねぇ