勇者王誕生！

「準備はいい!?　メルラン！」
「ええ！　準備万端よ！」
「わーおねえちゃんたちすごーい」

　ルナサが椅子に座っているメルランの後ろに立ち、ゲームセンターに置いてある「太鼓の●人」によくつかわれるような木のバチを一本ずつ持っていた。
　一方メルランはというと、長野県の某高校の前期選抜試験の面接試験まで来て緊張しきってションベンちびりそーうわーマジやべーよどーしよーアヒャーといった感じの中学生（過去の作者）のような面持ちで背筋をピンと伸ばしたまま口を閉じて座っていた。
　リリカはというと心底どうでもいいのか床に体育座りの格好のまま、まるでレイプされた後のような死んだ魚の眼のような冷めたまなざしを姉たちにまざまざと向けていた。

「それじゃいくわよ！　無印版勇者王ガオガイガーのOPテーマ、『勇者王誕生！』」

　ルナサはそう言い放つと、バチで思い切りメルランの頭を叩き始めた！
　メルランの口からは、頭をバチでリズミカルに叩かれるたびに、まるで勇者の雄叫びのようなリズミカルさを伴った「ガッ」という音が発せられる！　以下がその全貌だ！


「ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー！
　ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー!!

　怒れ　鋼のサイボーグ　赤いたてがみ　金の腕
　光り輝くGストーン　地球の希望　守るため
　今こそ　立ち上がれ
　人の心の幸せを　壊すゾンダー許せない
　ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー！
　ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー!!
　ファイナルフュージョン承認だ！
　今だ！　超人合体だ！
　空間湾曲！　ディバイディング・ドライバー！
　奇跡！　神秘！　真実！　夢！　誕生！
　無敵の　ドでかい守護神　ぼくらの勇者王！
　ガッガッガッガッ　ガオガイガー!!

　走れ　頑強ロボ軍団　朱（あか）い眼差し　銀の胸
　獅子の絆はGストーン　宇宙の未来　救うため
　今こそ　発進だ
　人の魂食い破る　ゾンダーメタルを打ち砕け！
　ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー！
　ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー!!
　ファイナルフュージョン承認だ！
　今だ！　超人合体だ！
　鋼鉄粉砕！　ゴールディオン・ハンマー！
　夢幻！　不思議！　究極！　愛！　誕生！
　夕陽に　雄々しくそびえる　ぼくらの勇者王！
　ガッガッガッガッ　ガオガイガー!!

　ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー！
　ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー！
　ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー！
　ガガガッ　ガガガッ　ガオガイガー！
　魔力！　気力！　超力！　ガッツ！　誕生！
　ヒーロー！　くろがねの巨神　ぼくらの勇者王！
　ガッガッガッガッ　ガオガイガー!!」


　演奏を終えたルナサは、額から流れ出る玉のような汗をバチを持った右手と反対の左手に作った拳で拭い去った。だがしかし、キラリと光る汗と、「やり切った」とでも言わんばかりのルナサの表情を創り出した演奏は、床に座って膝を手で抱えた姿勢――別名体育座り――を敢行して姉たちの身を削るような激しい演奏を半分寝ながら聞いていたリリカにとっては、どんなに歌うのが上手な歌聖よりも美しい音色に聞こえたとかそんなことは一切なく、ただの安眠を妨害する雑音にすぎなかった。

　ちなみにメルランは頭の叩かれ過ぎで�Hになった。
　元からかもしれないという説は、馬鹿と紙一重は天才だとか、なんつーか、そういうアレでどうか、ひとつよろしく。


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