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『バナナボート数子』 作者: ガンギマリ
あれは深海に沈んでしまった様な夜の出来事でした。
魔理沙さんは何時も通り、アヒルさんボートを漕ぎながら銀色の水面を見つめようと思い湖に足を向けたのです。
湖に向かう最中、靴紐が甘くなっている事に気が付き、彼女は一旦屈み込みました。
すると、誰かが彼女の肩を叩きました。
誰だろう。
魔理沙さんはぼんやりとそう思いながら顔を上げてみると
「こむばむわ」
そこにはアリスさんがいました。
魔理沙さんは急いで靴紐を結ぶと、アリスさんとしっかり手を繋ぎます。
月が舌を出して、さも可笑しそうに笑っている様にも見えますが、今日は気分が良いので許してあげる事にしました。
何時もならケツの穴に注射針の一つでもブチ込んでやるのですが、どうも夜は彼女を素面(しらふ)にさせてしまうそうなのです。
月明かりの化粧は美しくも不気味ですね。
ちなみにアリスさんはというと、魔理沙さんが靴紐を結んでいる間、ずっと蟲に喰われた落葉だけを見つめていました。
魔法の森を抜け、二人は歩く歩くひたすら歩く。
歩きます歩きます。
途中、軍隊らしき男達を見掛けた様な気もしましたが、魔理沙さんはとにかく早く湖に行きたかったので、見てみぬふりをしたのです。
捕まったら最期、二度と日の目を見る事は不可能\\\なのでしょう。
季節外れの手袋をしたアリスさんの手は、乾いたミイラの様に冷たくカチカチでした。
きっと目の前に鐘があれば、魔理沙さんは嬉々とそれを鳴らす事でしょう。
どうかこの夜の二人を祝福しておくれ。
鐘の音は遠く、頭の中では何時までも響き渡るのです。
軍服の男達は、黙って二人の背中を見つめていました。
男達の目はあまりにも乾ききっていたので、たまたま近くにいたリスは彼らを恐れ、ドングリを放り逃げ出してしまいましたとさ。
■ ■ ■
「綺麗だぜ」
金網の様な森を抜けると、後は湖が広がるばかりです。
月が笑う夜なので、銀色に光る水面は尚更美しく、そして切なげに感じます。
ふと、蝉が鳴きながら月へと飛んでいきました。
月に求婚でもするつもりなのでしょうか。
一週間しかない命なのに、全くお茶目な蝉さんです。
アリスさんの頭の中では、蝉さんが命尽きて落っこちてしまう情景ばかりが浮かび、そして泡の様に消えてゆきます。
けれども魔理沙さんの頭の中は、あら不思議。
求婚に成功した蝉が月とズッコンバッコン\\\"いたしごと\\\"をしている様ばかりが思い浮かぶばかりです。
不意に目頭が熱くなりました。
きっと歩き疲れたのでしょう。
何時ものボートで身体を休めましょう。
魔理沙さんはアリスさんの手を引くと、船着き場へと駆け足で向かいました。
幸せになれよ蝉。
セミダブル溺死体。
■ ■ ■
船着き場は基本虹で出来ていますが、稀に汚い人間達の情念が混ざり合っている事もあります。
そんな夜には決まってアサガオが咲いているのでとてもとてもわかりやすい。
魔理沙さんはくりくりおめめを嬉しそうに細めると、きちんと結ばれた靴紐の靴で虹の桟橋を渡るのです。
そして、お尻がドスンと落ちた先は、何時もは見慣れぬバナナボート。
おや?と魔理沙さんは首を傾げますが、アリスさんが嬉しそうに漕げよタコと促すので、魔理沙さんもニコニコニコニコオールを漕ぎ始めました。
ギコ、ギコ、ギコ。
鈍い音を立てながら、古びたオールは水を掻き分けます。
湖を覗き込むと、遥か彼方に見知らぬ展望台が見えます。
目を凝らして見ると、霊夢さんがてっぺんで手を振っていました。
まるでこっちへ来なさい、といわんばかりですね。
魔理沙さんは、べ、と悪戯小僧よろしく舌を出してやりました。
アリスさんは答えません。
月から降るくすんだ落葉を見つめるばかりです。
霊夢さんは、悲しそうに笑うと、展望台のてっぺんで火を起こしました。
あ、という間もなく、展望台も、霊夢さんも、焼けてしまいました。
水面も心なしか焦げてしまった様です。
魔理沙さんがいやんいやんと頭を横に振ると、水面は既に元通りになっていました。
まるでタイの修行僧が飼っているトラの様な気分です。
どうも違和感が拭えません。
アヒルさんボートが恋しいや、と、魔理沙さんは綺麗な綺麗な真珠を溢しました。
そもそもバナナボートは男性器っぽいのでなんか嫌なのです。
カムサハムニダ。
「帰ろう、魔理沙」
アリスさんは、ポロポロと真珠を溢す魔理沙さんの足を掴むと、ブンブンと強い力で振り回します。
ぐっ、と腕に更なる力を込めると、その勢いで魔理沙さんを投げ飛ばしました。
よく飛びます。
魔理沙さんの頭が月へ向かう最中だった蝉に辺り、蝉は死んでしまいました。
まるで絵空事よ、と、蝉さんは短い成虫の生涯を嘆き、旅立って行ったのです。
おっと、こうしている間にも、魔理沙さんは虹を撒き散らしながら直進するばかり。
一歩、一歩、と虹を渡り魔理沙さんを追い掛けるアリスさんはやはり悲しげで、月も笑うのを止めてしまいました。
えっさ、ほいさ、月を登る。
おやま、あざとい軍隊達が、アリスさんに続き汚れた足で虹を渡り始めました。
全員、進め。
前を見ろ。
文句を垂れるな。
靴紐は締めろ。
甘えるな。
月が笑い過ぎて死んじまったみたいです。
コイツは一度死んだ方がいいと思ってたから調度いいです。
月をなくした夜は耽け、やがて虹も消え去った頃。
湖の畔近くにある灯台は、やがて静かに空を指し示したのでした。
〜Fin〜
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2009/04/15 15:13:02
- 更新日時:
- 2010/03/16 20:13:05
本当に割とまともな話で驚いた。
どこか懐かしい文体で哀愁漂いますね。たまにはこんなのもいい感じです。
だが意味不明だ
変な叩きの呼び水になってしまったみたいで申し訳なかった
帰ってきてくれてすごく嬉しい