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『孤独な林檎たち』 作者: ガンギマリ
輝夜ちゃんは、永琳ちゃんから林檎を手渡されました。
「うほぉ真っ赤」
「地味に熟れっちょ(←これ流行んねぇかな)ですね」
こう、林檎を傾けてみると、果肉の隙間に蓄えられた水滴がぽつりぽつりと落ちます。
真っ赤な身体にしがみついている間は、真っ赤な色をした水滴なのですが、空中に飛んでいってしまうと途端に透明になる訳なんよ。
「永琳、ちょ、これめっちゃおもろいわ」
「左様ですか」
「ほら、これ緑とか青とか透明、あっ今度は青うひゃひゃ糞オモロ」
「うふふ」
「は、腹いてぇひゃひゃひゃ」
小さな笑顔の隅っこで、永琳ちゃんは、鈴仙ちゃんに空の色を聞かれた時の事を思い出していました。
彼女の瞳はどうやらフィルターがかかっているらしく、どんな物でも赤く見えてしまうらしいのです。
それはとてもとても、とてつもなく悲しい事なのかもしれません。
例えば油絵の草原、水色の星。
総て、赤く見えてしまうのですから。
「あひゃ、はひゃ、ひゃひゃ」
「うふふ」
「うっ、おぅえッおぇぇええ
ぐぇっ、あがッおげプぶぅおえッはっんぶッぶへへぇがぶッぶひぶひおぅえあがはッひぐッげろげろッ」
「笑い過ぎんのは勝手だけど畳にゲロすんな、殺すぞ^^;」
透明が色を携え、溢れます。
なだらかな曲線から滑り落ちる水滴は、陽の光を受け、ほんの少しの間だけ透明に。
そして林檎の身体を離れた時、初めて外界の色に染まるのです。
雲を透かしてみた水滴、青空の目を映し出す水滴、花の蜜に触れる水滴。
剥がされた水玉模様に未練などありません。
故に林檎は赤い、真っ赤なのです。
「オエップ…ゲロ片付けなきゃ(笑)」
「早くしろ、染みになるって(笑)」
路傍に立ち続けるポスト。
寒空の下、一人きりで子供に夢を届けるサンタクロース。
赤色とは即ち、孤独な存在です。
彼らもまた、水玉模様への未練を捨て去ったのでしょうか。
そもそも初めから未練などなかったのでしょうか。
定かではありませんが、ただ一つ言える事があります。
林檎は球体ですが、地球のそれとはあまりにもかけ離れた形をしているという事です。
いたずらにデコボコで、尚且つ掌で作った様な優しいマルの形。
林檎と地球の違いは、掌で形を作れるかどうか。
そんな些細な違いだと思うのです。
「ヤバい第二波キタ」
「洗面所行け、殺すぞ」
掌でマルを象った時、それが地球になるか、はたまた林檎になるのかは個人の見方によって変わるのでしょう。
美しい曲線とは何か、滑り落ちる水の正体は何なのか。
座礁した船でも見ながら考えてみましょう^^
「おぇっ、おえぇ」
「何やってんの」
「あ、妹紅だ」
何やかんややっている間に、妹紅ちゃんが入ってきました。
すぐに入ってくる彼女です。
月の夜に見かけたらそっとしておいてあげましょう。
決してシカトを促している訳ではありません。
だって俺優しいし(^ω^)
「妹紅、林檎」
「見りゃわかる」
「ほら、林檎」
「見りゃわかる」
「うふふ」
「師匠、ゲロ片付けにきました」
孤独な林檎達、同じ畳を踏み締める。
午前12時の星の下、神の光を受けながらピロピロしている永遠亭の腹の中での出来事でした。
裸足、足袋、ニーソ\\\。
各々、異文化の様な履物が、輝夜ちゃんのヘドで汚されていきます。
彼女が朝に食べた焼魚の面影に浸される孤独達の足先、揃えられた爪の向こう側。
茶褐色の斑模様を携えた林檎が、爪先の位置で転がりました。
■ ■ ■
あの美しい水玉を覚えているか、と聞かれれば、私は首を横に振るしかないのです。
所詮私は孤独な林檎、身体に付着した水滴などに、愛情を示せる筈もないでしょう。
しかし、自由。
水玉は確かに、自由を囁いていた事ははっきりと覚えているのです。
もう、そればかりですよ(笑)
色のない彼らの唇が、声もなく指し示す\\\"自由の世界\\\"。
彼女らの履物、その中に潜む爪先。
自由とは、それらが指し示している世界なのだと、私は薄々思うとる訳なのです。
あの方向にはフィンランドがあるのでしょうか。
私、林檎ですが、一度サンタさんからプレゼント貰いたいと思ってます。
風に流され海に流され、いずれは辿り着いてみましょうか。
まあ、自由!
オホホ、チン毛。
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2009/06/02 15:32:46
- 更新日時:
- 2010/03/16 19:58:27
- 分類
- 浅井健一
相変わらずの奇才ですね。
どうやったらこう、アレな方向にぶっ壊れた文章が書けるんだろう
普通にスゴいと思ってしまうぜ