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『リハビリテーション』 作者: 紅魚群
最近、無性に体がだるい。
風邪かと思って薬も飲んでいるが、全く効き目はなかった。
症状は日に日に悪化しており、今では時間を止めることすらも困難になってきている。
「いけない…。また私ったら……」
壁にもたれた体を起こし、再びモップを手にして床を磨く咲夜。
しかし手に力も入らないため、上手く磨けない。モップが手から滑り落ち、床に転がった。
それを拾おうと手を伸ばしたとき、咲夜の上体がぐらりと揺れた。
視界がぼやける。
上も下もわからない。
もう一度壁にもたれることもできず、そのまま前のめりに床に倒れた。
咲夜の意識は、そこで途絶えた。
咲夜の部屋。
ベッドで眠る咲夜の傍らには、永遠亭の薬師、八意永琳と、レミリア、美鈴の姿があった。
「あの…咲夜さんは大丈夫ですよね…?」
不安そうな表情で美鈴が永琳に問いかける。
「心配ないわよ。明日にでもなれば、すぐ目を覚ますわ」
「よ、よかった…」
「でもこのままだと、すぐに同じことが起きるでしょうね」
再び美鈴が不安そうな顔になる。
今度はレミリアが永琳に問いかけた。
「どうすれば治るの?」
「ウチ(永遠亭)で時間をかけてリハビリすれば、完全に治すこともできるわ」
「リハビリって、どのぐらいかかるのよ…それ」
「そうね、最低1年はかかるかしら」
「い…1年?ふざけないで。明日までに治しなさい」
「無茶言わないで。この症状を完全に治す薬は、本当に微量ずつじゃないと返って毒になるの。
精神的な治療も必要だし、時間をかけた方が確実よ。それとも貴方、また倒れてもいいからこの子に働けって言うんじゃないでしょうね」
「………」
こうなってしまったのは、レミリアの責任でもある。
しぶしぶだがレミリアは、咲夜を永遠亭に送り出すしかなかった。
こうして十六夜咲夜は永遠亭に収容され、その日から紅魔館に咲夜の姿はなくなった。
咲夜がいなくなって困るのは無論レミリアであり、誰が私の紅茶を淹れるのか、誰が私の食事を作るのか等は、彼女にとって重大な問題だった。
美鈴に咲夜の代わりをしてもらおうかとも思ったが、やめておいた。料理は上手いが不器用そうだし、門を空にするのも不安だ。
とりあえずレミリアはメイド妖精の中でも比較的優秀な5人を集めて、仕事を与えることにした。
「あなたは館の掃除、あなたは庭の手入れ、あなたは私の食事の用意、あなたは地下室のフランの世話、最後のあなたは、私の紅茶を淹れる仕事よ」
主からの直接の命令に若干緊張気味しながらも、はいと返事をして早速仕事にとりかかるメイド妖精。
ひとまず安心するレミリア。
だが予想通り、その仕事内容は咲夜に遠く及ぶものではなかった。
バケツはぶちまけるわ、食事は何だかよくわからない物が出てくるわで、出来ないとまでは言わないがとにかく仕事の質が低いのだ。
「咲夜は1人で全部の仕事をしていたのよね…」
メイド妖精の淹れた薄い紅茶をすすりながら、今更に思うレミリア。倒れてしまうのも無理はない。
もう、私の紅茶を淹れて食事を作るだけでもかまわないから、早く治して戻ってきてほしい。
いなくなってから初めて気づいた、咲夜の仕事の多忙さだった。
500年以上生きてきたレミリアだったが、その中でも最も長い1年だったかもしれない。
永遠とも思える365日が経過し、とうとう咲夜が紅魔館に戻ってくる日になった。
館の者全員で門前に並び、あの頃と変わらない姿で帰ってきた咲夜を出迎える。
最も、ちょくちょく見舞いには行っていたので、一年ぶりに会うというわけではないが。
「皆さん、ご心配かけてすいませんでした」
「咲夜さん…体のほうはもう大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ、美鈴。時間だって自由に止められるし…って、何泣いてるのよ」
「全く。サボった1年分、きっちり働いてもらうわよ」
美鈴が笑い、パチュリーが笑い、小悪魔が笑い、メイド妖精達が笑い、レミリアが笑い、咲夜が笑った。
よかった。本当によかった。
自分の帰館を心から祝福してくれる皆に、咲夜の目頭も自然と熱くなる。
「皆さんも本当にお変わりないようで…。今はお見えになられてないようですが、妹様もお元気ですか?」
「フラン?」
そういえばすっかり忘れていた。この所顔を見ていない。
フランのことはレミリアもなんとなく苦手だったので、咲夜がいなくなってから一度も会いに行っていなかった。
でも今日は折角咲夜が帰ってきた日だし、久しぶりに皆一緒に食事でもしようかしら。
「まあ多分元気よ。メイド妖精に世話を頼んだけど、特に暴れて脱走するようなこともなかったし。まあ鍵があるから、脱走なんて心配いらないけど」
「メイド妖精にお世話を…?」
咲夜の表情が、わずかに曇る。
「妹様のお世話を、メイド妖精だけに任せてたんですか?」
「え?そうだけど……。だ、大丈夫よ。優秀な奴を選んで頼んだから」
「…………」
咲夜は長年メイド長をやっていただけあって、メイド妖精のミスの多さや無責任さは痛いほど知っている。
次第にレミリアも不安になってきて、慌てて辺りを見回した。
「ちょ、ちょっとそこのあなた!」
庭先で植木の手入れをしていた妖精に呼びかける。
ちょうど、フランの世話を頼んだときに一緒にいたメイド妖精だった。
「フランの世話を頼んだメイド妖精がどこにいるかわかる?ほら、1年くらい前に…」
「……?えっと……あの子はたしか"妹様が怖い"って言って、そのあとすぐにやめちゃいましたけど」
「え…?」
レミリアの全身からさぁっと血の気が引いた。
じゃあこの1年間、いったい誰が鍵のかかった地下室にいるフランの世話を…?
「フラン!!」
気付いたときには、レミリアは走り出していた。
自身が出せる最速のスピードで館に突入し、閃光のように通路を駆け抜ける。
地下室への扉の前まで来ると、すぐさまそれを叩き壊した。
もう長い間誰も通っていないのが、階段に溜まった埃の量で分かる。
レミリアは階段を駆け下りると、両手でドンドンとフランの部屋の扉を叩いて叫んだ。
「フラン!!お願い!返事をして!!フラン!!!」
しかし中からは何も返事はなかった。
扉は鋼鉄製、魔法や結界でも守られている。完全防音にもなっており、レミリアの声だって部屋の中には届いていない。
「―――お嬢様っ…」
いつのまにかメイド服に着替えた咲夜が、鍵を持ってやってきた。
レミリアはひったくるようにそれを受け取ると、鍵穴に突っ込み、扉を開けた。
部屋の中の光景に、レミリアは言葉を失った。
滅茶苦茶に壊れたベッド。バラバラに崩壊した本棚。
床にも本の切れ端や、ズタズタに破けた服が散らばっている。
部屋の中央に、フランが横たわっていた。
髪は抜け落ち、爪が剥がれ、全身の皮膚がミイラのようになっている。
背中の羽根もどす黒い色に変色しており、もはやここがフランの部屋でなければそれが誰だかわからない状態だった。
だがなによりも目を引いたのは、壁一面にびっしりと書かれた、紅い血の文字。
それを見たレミリアは吐き気を抑えることができず、今朝食べたケーキを床にぶちまけた。
おねえさまごめんなさいもうわるいことしませんこわしたりもしませんだから
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ
翌日、フランとレミリアは永遠亭に収容された。
今度のリハビリは、何年かかるか判らない。
久々の投稿。コピペネタ改変2回目です。
貴重なインスピレーションもなんだかとっても捻りのない内容に…
字がちっさいのは仕様です。フォント系タグで挟むと文字サイズが最小になっちゃうんだよね。なんででしょう?
でも最後の血文字は赤色にしたかったんです。…読みにくくてすいませんm(_ _;)m
あと携帯からだと赤がわからないかも。書き終わってからいろいろ気付きました……
通読感謝!
紅魚群
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2009/06/11 15:10:54
- 更新日時:
- 2009/06/12 00:20:31
- 分類
- 紅魔館
- グロなし
つか文字の色って変えられるんですね!
シンプルにまとまっていて面白かったです。
幸せな空気がぶち壊しになるのはいいね
フランもか・・・
レミリア「もう二度と妹を閉じ込めたりしないわ」
ハッピーエンド!
まで幻視した
なんというか、無駄なところが全くないな。
とばかり思っていたが……妹様、(作品的に)とばっちりもいいところw
ご存命だとは思わなかった、流石吸血鬼
作者名に期待して飛びついたが、いやはや今回もご馳走様でした(合掌)
レミリアは血を見ただけであのときの光景を思い出して嘔吐するようになったまで幻視した
ミイラっての見て同じ事考えてた。
元ネタ知らんがぐさっと来た
赤ぃ怖い