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『アリスがしょーもない魔法で死ぬ話』 作者: かるは
――ペキリ――
「あら……?」
その日、魔法の森に住む人形遣い、アリス・マーガトロイドは聞きなれない音を耳にした。
自分の頭の上から聞こえたのは、小枝が手折られる音に似ていた。
――ポトリ――
「……?」
アリスの足元に、何かが落ちる。
それは、白い糸――否、糸ではない。
糸と呼ぶには太すぎて、植物の蔦の様な質感も纏っている。
アリスは身を屈め、足元に落ちた"それ"をゆっくりと拾い上げた。
「……もやし……どうしてこんな物が……?」
アリスの指に摘まれていたのは、一本のもやし。
豆が発芽した野菜の一種。
一般的に、炒め物やラーメンの具等に使われている。
野菜の中ではかなり早く成長する種である為、比較的安価な値段で売買されている。(参考価格:作者の近所のスーパーでは1袋28円)
主な用途はラーメンや鉄板焼き、野菜炒め。
オイスターソースやコチュジャン、豆板醤で味付けをすれば、それだけでご飯に合う一品料理が完成する。
他の野菜に比べ、痛むのが早い。冷蔵庫で保存していても2〜3日で水分が出てしまうので、なるべく早めに食べるべきである。
以上、説明終了。
「……どうしてもやしが降って来たのかしら?
外の世界では、竜巻に巻き込まれて魚やカエルが空を飛び、竜巻が消えると降って来る……なんて事があるらしいけど……
そう言えば、竜巻に乗ってヤドクガエルが――」
――ペキリ――
――ペキ、ビキ、ポキ――
「なっ、何なんなのよこの音は!
さっきから頭の上の方でパキパキ鳴っt――痛ッ!?」
瞬間、アリスの後頭部に鋭い痛みが奔った。
針が突き刺さったのかと錯覚する程の痛みが、次々にアリスの頭皮を襲う。
それは、無数の針が突き刺さる幻想。
ペキリと音が鳴り、モヤシが足元に落ち、その度に頭皮が鋭い痛みを訴えるのだ。
「あ"っ、ぐぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ"!!!」
痛みに耐えられず、アリスは無意識の内に自分の頭を掻いてしまった。
自分の頭に何かがあるのかと思って、掻き毟ってしまった。
瞬間、
――ベギャリ――
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っっっっッ"ッ"!!!!!!!!!!!」
堪らず、アリスは絶叫する。
何だ、何が起こっている。
分からない。分からないが、先程頭を触った瞬間の触覚には違和感があった。
普段ならば、ウェーブのかかった金髪が自分の指に優しく絡む程度の触感。
指先でキューティクルをくすぐる感触が、普段なら感じられるはずである。
だが、先程の触感は――
――まるで、蔦が絡んだ様な、触感で
ボト、ボト、ボト……
ボトボトボトボトボト!!!
無数のもやしが足元に落ちる。堕ちる。墜ちる。
アリスの頭から、おびただしい量のもやしが落ちる。
「……っ……ぁ、がぁっ!! こ、これって……ッッ!!」
刹那、アリスは理解した。
――自分の髪が、モヤシになっている――
「な"、何なのよ、コレ!?」
状況は分かった。だが、理解が出来ない。
自分の髪がモヤシになるなんて経験、アリスには一度も無いのだから。
激痛で意識が寸断されそうになる最中、アリスの冷静な部分が計算を始める。
通常、毛髪の直径は0.08mmと言われている。
だが、足元に落ちているモヤシの直系はどう細く見ても2mmはあるのだ。
中華料理等で使われる、豆モヤシと呼ばれる種類のもやしである。
2÷0.08=25
毛髪がもやしに変化した事で、その直径は25倍も太くなっているのだ。
だが、頭皮の面積は変化しない。アリスそのものの大きさは、変化していないのだから。
その結果、何が起こるのか……?
例えるなら、乗車率2500%の満員列車とでも言うべきか。
はたまたは、25人乗りの自転車とでも言うべきだろうか?
どちらにせよ、その両方を待ち受ける結果は定員オーバーによる車両の崩壊である。
アリスの頭皮はおびただしい数のモヤシによって侵略され、毛穴は限界をとうに超えて拡張され、それでもモヤシは生え続ける。
広がりきった毛穴からは、ドロドロとした気持ちの悪い液体が流れ落ちていた。
モヤシを掻き毟れば、毛穴がこじ開けられ、神経に鋭い痛みが走る。
頭皮を掻き毟れば、余計に状況が悪化する。
モヤシが根元から折れれば、毛穴が無理に広がり激痛となる。
モヤシ塗れの頭から腕を引き抜き、この状況を打開すべき何らかの方法を取ろうとアリスは思考を開始し、
その思考も、腕の一面を覆う、モヤシによって消し飛ばされた。
頭皮だけではない。
腕も、手の甲も、指も。
頬も、首筋も、肩も。
足も、腿も、誰にも見せた事の無い恥ずかしい部分も。
体中のありとあらゆる体毛が、モヤシに変化している。
「あっ、がッ…………い、あ"あ"あ"あ"あ"!?!??!
こ、こんな、こ"んな、事"でぇぇぇぇ!?!?!?」
全身の毛穴が強引に拡張され、激痛を迸らせる。
泣き叫べばその振動がモヤシをへし折り、痛みに変わる。
床に伏せれば地面にぶつかったモヤシが手折れ、痛みを生む。
モヤシを抜けば、拡張された毛穴からは血液と気持ち悪い液体が流れ出る。
全身から生えたモヤシが皮膚に穴を空け、肉を裂き、血を滴らせる。
どうする事も出来ない。
アリスには、どうしてこんな事になっているのかが理解出来ない。
まつ毛もモヤシに変わり、視界がモヤシで埋め尽くされた。
もう、何も見えない。
耳の産毛がモヤシに変わり、耳の穴がモヤシで閉ざされた。
もう、何も聞こえない。
「あ"っ"……ま"、りざ…………助"け……………………」
全身からモヤシを生やし、気味の悪い毛虫の様な姿になりながら、アリスは呟く。
こんな時、助けてくれそうな友の名を。
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「アリスー! この前研究してた『毛穴パックの魔法』の副作用が分かったんだが、大丈夫か!?
あの魔法……間違えて非常食のモヤシ製造魔法の術式が組み込まれていたんだが…………
…………おーい? アリスー? アリスー?
おかしいな……居ないのか……?
って、何だこりゃ!? も、モヤシの毛虫……だぜ……?
し、しかもビクビク動いて……生きてるのか? この巨大毛虫……
も、もしや! これが伝説の生物、グレゴール・ザムザって奴なのか!? ……いや、それは無いな。
しっかし……良く分からんが、気持ち悪いな…………
小刻みにブルブルグニグニ動いてて、しかもモヤシが毛の代わりに生えてるって……うわぁぁ……寒気が……
えーっと、ミニ八卦炉は…………っと、あったあった。
こんなクリーチャーはケシズミにするに限るぜ。こんな気色悪いモヤシの塊、食う気にもなれないしな。
……しっかし、アリスは何処に行ったんだ?
茸狩り……なワケ無いよなぁ……?
アリスー! おーい、アリスー!!!」
モヤシ美味しいですよね
安いし美味いし大好きです
ブタバラと一緒に炒めて焼肉のタレやポン酢で食べるとご飯がどんどん食えるわ食えるわ
しょーもない異変や変化でアリスが死ぬSSが書きたくなったので、とりあえずモヤシで死んでもらいました
かるは
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2009/09/01 17:39:58
更新日時:
2009/09/02 11:29:51
分類
アリス
モヤシ
アリス
モヤシ
毛虫
さぶいぼがががが
うまそー
もやし、もしゃもしゃ
>>1
言われて気付いた。コレって蓮コラの一種ですよね
体中のありとあらゆる場所に穴が空いたアリスか……
>>2
オリジナリティと言って頂けると嬉しいです
今後も独特のネタを提供したいなあ
>>3
モヤシ美味しいです^^
>>4
パチュリーは無害なんだぜ
パチュリーも魔理沙から毛穴パック魔法を借りていて、図書館の隅っこでカイワレダイコンとかエノキが体中から生えているかもしれないんだぜ
>>5
だって魔理沙ですもん
>>6
もしゃもしゃ、もしゃもしゃ
>>7
モヤシと燃やしをかけた高度なジョーク
これは思いつかなかった
脱帽
分かっててやってた説、濃厚……
作者さんの発想に脱帽
ちょっとモヤシ食べてくる