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『秋姉妹拷問SS』 作者: 檸檬
部屋はあちこち薄汚れていた。
おそらく白かったであろう壁は、年月の経過によってクリーム色に変色し、天井には雨漏りによる染みが地図を思わせる形でにじんでいた。
これでも神社の本殿ということになる。神が住んでいる家だからである。
豊穣の神、秋穣子は姉の帰りを待っていた。
部屋の中央に置かれたちゃぶ台には多彩なご馳走が並んでいる。
焼きまつたけ。栗の甘露煮。ごぼうとさつまいもの味噌汁。かぼちゃの煮つけ。他にもぶどうやりんごなど、様々な秋の味覚が食卓を彩っていた。
自分達の社へのお供え物で作った料理だった。
秋は穣子にとって、自分が神として生まれてきた喜びを実感できる季節だった。
その喜びを一緒に分かち合いたい姉が、随分と遅くまで帰ってこない。
どうしたのだろう? 今日は一緒に夕飯を食べると約束していたのに。
そう思っていた時だった。
玄関の引き戸が開かれる音がした。どうやら、姉が帰ってきたらしい。
「もう、遅いよお姉ちゃ……、ん……?」
「こんばんは。どうも、お世話になってます。守矢神社の風祝の東風谷早苗です」
姿を見せたのは姉ではなく、青白の巫女装束を纏った少女だった。
ノックもせずに戸を開いた突然の訪問者は、破顔して小さく頭を下げた。
確か、少し前に山の上に引っ越して来た神社の人間だったはずだ、と穣子は記憶している。
「……何の用?」
穣子が露骨に顔をしかめて言った。しかし、無礼な来客はそんなこと気にも掛けず、花の咲くような笑顔で両手を叩いた。
「わぁ! すっごいご馳走! ひょっとしてこれから夕食ですか。美味しそうだなぁ〜」
言いながら、あろうことか勝手に部屋の中にまで入ってきた。どこまでも図々しい人間だった。
穣子は立ち上がって言った。
「ちょっと! 手をつけないでよ。今からお姉ちゃんと二人でご飯にするの。だから、用があるならさっさと言って。それですぐ帰って」
「あら。怒ってらっしゃいますか? ごめんなさい」
ちっとも悪びれるようでもなく早苗が言った。どこまでも神経を逆撫でする口調だった。
「でしたら、手短に伝えましょう。穣子さん」
「……穣子さん? 穣子様でしょう。無礼な人間め」
「ええ、その穣子さんにお願いがあるんですよ。単刀直入に言います。ここから出て行ってくれませんか?」
「……は?」
「それで、今あなた方がやっている人里の豊作祈願や農業に関する神事を、今後一切私たち守矢の神社に任せていただきたいのですよ」
「何よそれ? 意味が分からないわ」
「だってですよ。幻想郷において農業は人の生活と大きく密着した重大な事柄です。それにまつわる神事を取り仕切れば、私たちへの信仰もますます増大することうけあいです。理由は以上です。いいですよね?」
いいですよね、だと?
「駄目に決まってるでしょっ!? だいたい何言ってるのよアンタ……」
半ば以上激昂して穣子が口を開いた時だった。
「あら。そうですか」
ふと早苗の顔から表情が消えた。
次の瞬間。腹を丸太で貫かれたような衝撃が穣子を襲った。
早苗の足の先が、穣子の腹に突き刺さっていた。
「おッ……! がぁ……!」
まったく不意に腹を蹴られた。
呼吸が出来ない。心臓が三拍ほど止まったように感じられた。
たまらず穣子は身体を折ってひざまずいた。逆流してきた胃液を畳に垂らしながら、穣子は涙を絞った。
視界を、早苗の足がふさいだ。
ぼぐっ、体が浮くほどの衝撃が穣子の鼻を押しつぶした。
穣子の体がちゃぶ台を押し倒しながらふっ飛んだ。料理は残らず床の上にぶちまけられた。
「ぁ、ぁぁぁ…………」
「うわっ。やだなあ。足が汚れちゃうじゃないですか、もう」
そんな言葉と共に、早苗はまた穣子の腹を蹴った。
胃液を吐き下し、顔を歪めうめき声を上げることしか出来ない穣子。何を理解するヒマも与えられなかった。
ふと、早苗がいつの間にか自分の腹の上にまたがっていた。
早苗が腕を振り上げる。体が動かせない。
その姿勢のまま、穣子は顔を殴られた。
殴られ続けた。
潰れた鼻から血が噴き出し、歯が折れて、まぶたが潰れた。
穣子は、ただひたすらめった打ちにされた。視界が血に染まり、思考を苦痛で塗り潰された頃、ようやく早苗は手を止めた。
「……ぁ……ぁぅ……げほっ……ごほっ…………」
ほとんど考える力が失われた頭で穣子は、もう痛いのは終わったのだろうかと怯えていた。
しかし、そうではなかった。
早苗が笑いながら、自分自身の指をしゃぶっていた。
人差し指を口の中に突っ込んで、たっぷり唾液で濡らした。
その指を口から引き抜いて、穣子の顔に向けた。
何をする気? そう思った時にはもう、早苗の指が穣子の左眼に深々と突き刺さっていた。
「ひッ!? がッッッ! ガァアアアアアアアアアっっ!!!」
狂ったような声が部屋中に響き渡った。穣子にはそれが自分の声に聞こえなかった。
今まで生きてきた中で最大の激痛が、穣子の左眼を執拗にえぐり続けた。
早苗は穣子の前髪を鷲掴みにしたまま、じっくり時間を掛けて穣子の眼窩をほじくった。その間、穣子は両手で早苗の腕を掴み、精神の蝶つがいが外れたような金切り声を上げ続けていた。
「ヒギャッ! ヒギャイッ!! ひギャヒイイイぃぃぃぃッ!!!」
「ふんふ〜ん♪ どうです穣子さん。痛いですか〜♪」
早苗は鼻歌まじりに言った。
やがて、穣子にとって永遠にも思える時間の後、ぬぼぉっ、と音を立ててやっと早苗の指が引き抜かれた。
ぼとり。何かが床に落ちる音。
穣子は右目だけでかろうじてそれを見た。
左眼が落ちていた。
血塗れの眼球が、あさっての方向を見ていた。
「ァ……おアぁぁぁ……っ」
「まっ、最初から素直に言う事聞いてくれるとは思ってませんでしたけど。出て行きたくないって言うんじゃ仕方ないですね。自分から進んで出て行きたくなるようにして差し上げます」
たっぷり返り血に打たれた顔で、白い歯を見せながら早苗は言った。
ハイビスカスのような笑顔。ただの人間が見れば、魅力的ですらあっただろう。
だが、穣子には早苗の顔が腐りきった果実にしか見えなかった。
皮一枚剥ぐと、たちまち訳の分からない蟲や蛆が溢れ出てきそうな笑顔だった。
魔物の浮かべる笑みだった。
「教えてあげますよ。この世から出て行きたくなるほどの苦痛を」
ほんの数十秒前まで、穣子にとって幸せだった空間は、地獄へと変わっていた。
〜
どうもみなさん、こんばんは。東風谷早苗です。
今日も信仰を得るためのお仕事中です。
しかし、地道に布教活動をしても、中々信仰は集まりません。
そこで閃いたのが、既存の信仰を横取りしてしまうことです。
そう、欲しい物があればか弱い隣人から奪って自分の物にしてしまえばよかったのです。外の世界ではこうした思想を剛田主義、あるいはジャイアニズムと呼びます。
そういうわけで、私は山の麓にある小さな神社へと出向いてきました。
「それにしても、ボっロい神社ですよね。鳥居も拝殿も無い上に、肝心の神様はこんなオンボロ家屋に住まれて。うちの神社とは大違いです」
私の言葉を聞いて、穣子さんは腫れ上がった血塗れの顔を上げました。
「…………違う。神社の価値は、お金とか大きさじゃない……。ここは、アンタらの神社みたいに金の余ってる奴らが作ったものじゃなくて、人里のみんなが、昔まだろくに食べ物も取れなかった時代に、無いお金を出し合って建ててくれた神社なんだ…………」
穣子さんは片方だけになった目をぎらぎらと滾らせて私を睨みつけてきました。
「だから、当然お金なんて無いよ。けど、私たちや里の人にとってはずっと前から親しんできた神社なんだ…………! アンタなんかに渡すモンか、絶対に……っ」
穣子さんは壁に背を預けたままふらふらと立ち上がって来ました。
凄まじいド根性です。普通ここまでこっぴどくやられれば、気力は萎え、体は骨無し状態と化してしまうものなのですが、そこはさすが神様ということでしょう。
「渡すモンかと言われても、別にいりませんよこんな神社。私は、あなたが出て行ってくれればそれで充分。後はもっと豪華でちゃんとした神殿を建てますから。もちろん八坂様を祭った社を。なんならあなたも合祀という形でスミっこになら住ませてあげてもいいですよ?」
言った時には、すでに穣子さんが私に向かって足を踏み出していました。
右の拳を繰り出す穣子さん。
私は上半身を横に傾けてそれを回避し、右フックを穣子さんのわき腹に突き刺しました。
ずぶり。柔肉を打つ心地よい感触。さらに返す刀で今度は左肘を顔面にぶち込みました。
それでも倒れなかったので、私は両手で穣子さんの頭を持って、抱き寄せるようにしながら思い切りヒザを顔面にぶつけてあげました。
ぐちゃ、鼻の軟骨が音を立てて潰れた。そのまま手を放さず同じことをもう一度、二度、三度。
「かはっ……! が、ご……!」
穣子さんは口から大量の血と歯の破片を吐きこぼしました。
「どうでしょう? 降参して言う通りにします? それとも死ぬまでやってほしいですか?」
「…………お前が死ね」
言って穣子さんはチョキの形に握った右手を私の顔に突き出してきました。
目潰しです。危ないですね。
私はその指を両手で掴んで止めました。
そして、穣子さんの立てていた二本指を握り、全力で押し倒しました。
ぺきぱきっ、小気味よい音を立て、穣子さんの指が手の甲の部分にくっつきました。
「キャァアアアアアアっっっ!!!」
叫び声をあげて膝を付いた穣子さん。たいへん痛そうです。
そこで私は部屋に逆さまになって転がっていたちゃぶ台を持ち上げました。
けっこう重かったのですが、私はそれを頭上に掲げるように振り上げて、床に手足を着いている穣子さんに向かって叩きつけました。
背中に当たった。凄い音がしました。
「がッッッ!!! おっ……、おぁ……っ! おぁぁ……っ」
穣子さんはたまらずうつ伏せに倒れ込みました。
四肢を投げ出して、体をびくびくと痙攣させる穣子さん。
「あらら、大丈夫ですか? ちょっとやりすぎちゃったかしら」
とりあえず死んではいない様子でした。
穣子さんは倒れこんだまま、小さく肩を上下させ、ひゅうひゅうと細い呼吸音を立てていました。
さて、どうしようかな。そう思ってふと部屋を見渡すと、壁際に奇妙な物が置かれていました。
土の付いた農具です。鍬(くわ)や鎌、スコップなどもあります。
「ああ。なるほど。今年使った農具が奉納されてるんですね。へえ〜」
私は大きな打ち鍬を手に取りました。
穣子さんはびくりと身体を大きく震えさせました。
「じゃ、これ使わせてもらいますね。って、うわぁ、重いですねコレ」
「いや……、何する気なの……? やめて……やめて……」
青くなって震える穣子さん。しかし逃げ出そうにも体が言う事を聞いてくれないようです。
「いきますよ? せーの……、よいしょーっ!」
木の棒の先に無骨な鉄板の刃が付いたそれを、私はちょうど畑を耕すような動作で、穣子さんのだらりと投げ出された脚に向かって振り落ろしました。
太い枝がへし折れるような音を立てて、穣子さんの脚が本来の関節とは違う部分から折れ曲がりました。
「ぎゃびぃいいいい゛!!! びがっ! びがぁぁぁ゛!!!」
全身を痙攣させながら、穣子さんは激痛に操られるように体を海老反りにしていました。
私は同じ事をもう一度。今度は反対の脚に。
「やっ、やだっ! お願いやめてっ! やめ……ギャァアアアアアアアア゛ッッ!!!」
泡を吹きながら泣き叫ぶ穣子さん。両脚はちぎれ飛ぶ寸前の状態になってしまいました。
「けっこう血が出ちゃいますね。でもまだ死なないように頑張ってくださいね。せーの……」
みたび振り上げられた私の腕を見て、穣子さんはとうとう叫び出しました。
「もうやだぁあああっ!!! お姉ちゃああああああああぁんっ!!!」
あらあら。暴れると狙いを外して頭に直撃しちゃいますよ?
そう思いましたが、ちゃんと狙い通り両腕に命中しました。
穣子さんの身体はいまや四肢の全てがあらぬ方向に垂れています。まるで糸の切れた操り人形のようでした。
穣子さんはもう叫ぶ気力も残っていないようで、はぁはぁと小さく息をするのみです。
「ふぅ。とりあえずこれでもう立てませんね。さて次はどれ使ってほしいですか? 好きな道具を選んでいいんですよ?」
穣子さんは口が開きっぱなしで、目も裏返える寸前でした。
「聞こえませんか? なら、鎌で首を切り落としてしまいますよ? 映画みたいに、本当に天井まで血が飛ぶのか、試してみたかったんですよ」
その言葉を聞いて飛びかけていた意識を取り戻したらしく、穣子さんは震えながら言いました。
「も、もうやめて……、わかったから、言われた通りに出てくから…………。これ以上酷いことしないで…………っ」
「えー。それじゃつまんないですよぉ。せっかく面白くなってきたのに」
穣子さんは泣きながら命乞いを始めてしまいました。
でも、元々の目的からすれば、この神社が八坂様の物になればそれでいいのですし、あまり遊んでても駄目ですよね。帰ってお夕飯も作らなきゃいけないし。
「ん〜、そうですねぇ。分かりました。では次で終わりにしましょう。あそこの奉納された農具の中から穣子さんが選んだ物を使って、それで最後です。もう穣子さんをいじめるのはやめてあげます。約束します」
「ほ、本当に?」
「ええ。私も神です。約束は守ります」
「…………どれでもいいの?」
「もちろん」
穣子さんは、少し視線を巡らせて、やがて震える指である物を示しました。
農作業用の麻製の軍手です。
土と汗の汚れが染み付いたそれは、なるほど凶器としてはこの上なく不適当です。
「分かりました。ではこの軍手を使いますね」
私は両手にそれを被せました。
「では穣子さん。ちょっとお口を開けて下さい。出来るだけ大きく」
「え、どうして……?」
「黙って言われた通りにすればいいんですよ。歯医者さんで虫歯の治療をするときみたいに、大きく口を開けて下さい」
といっても穣子さんに歯医者に行った経験は無いと思いますけど。
穣子さんは逆らう事が死に繋がると理解しているらしく、素直に口を開けました。
私は軍手を着けた手を穣子さんの開いたままのお口に突っ込みました。
「オゴッ!?」
穣子さんは唾液をこぼして声をあげます。
私はそのまま口に入れた手を、喉の奥、さらに奥までねじ込んでいきました。
「オゴォッ!? ホゴォぉぉっっ!?!? おおぉぉぉぉぉぉぉぉぅ!!!!」
喉から食道、その奥の奥まで、私が腕をどんどん押し進めていく間、穣子さんはずっと低いくぐもった音を漏らし続けました。
やがて私の腕は肩の近くまですっぽりと穣子さんの中に入っりました。粘ついた肉の感触が私の腕を包みます。
気管を塞がれた穣子さんは、呼吸困難の苦しみから全身を暴れさせています。
「えっと、たぶんここらへんかな?」
私は穣子さんの胃袋と思しき部分を引っ掴みました。軍手のおかげで手が滑りません。
そのまま腕を一気に引き抜きました。
どうなったと思います?
「ヴォ゛オ゛オ゛オ゛オ゛お゛お゛お゛お゛ーーーーーーーー!!!!!!!」
豚が絞め殺されるような声で絶叫する穣子さん。
歯と歯の間からピンク色の肉が飛び出しています。
ぬらぬらとぬめって震えまくるそれは、まるで何か別の生き物のようでした。穣子さんの食道から胃袋までが、裏返して脱いだ靴下のような形でまるごと口の外に引きずり出されているのです。
「オ゛ーーーーーーーー゛!!!! オ゛オ゛ーーーーーーーー゛!!!!」
折れた手脚までもバタつかせながら暴れ狂い悶絶する穣子さん。悲鳴はすでに声になっていません。
「うん。胃袋は健康なピンク色ね。煙草やお酒の影響も見られません。健康は大事にしないといけませんよ」
言って私は穣子さんの胃袋を両手でぎゅっと掴み。思い切り引き千切りました。
限界まで伸びきって、ぶちぶちと二つに剥離した胃袋。血はそんなに大量に噴き出すことはありませんでした。
穣子さんは目と鼻からゲロを吐くような勢いで透明な液体を溢れさせました。
「胃袋は全摘出してもすぐには死なずに、苦しみながらゆっくり死ねるんですよ。ああでも神様だから物食べなくても生きられるんでしょうか?」
ちなみに私は神様ですけど食べないと生きられません。ついでに食べ過ぎると体重も増えます。
「さて、それじゃ約束ですから、私もうこれで帰ります。胃の方はとりあえず元に戻してあげますね。半分だけですけど」
言って引きずり出すのと逆の手順で残った肉を口の中に収納してあげました。穣子さんの頬がリスみたいに膨らんでいます。
明らかに元の場所に戻っていませんが、大丈夫でしょうか?
大丈夫でした。気管を塞がれたままの穣子さんは、あっという間に酸欠に陥り、ちゃんと窒息死してくれました。
穣子さんの顔は紫イモのように紫色に変色し、鼻と耳からは真っ黒い血が噴き出しました。
動かなくなった穣子さんをそのまま放って置いて、私は晩ご飯用に台所から料理をいくつか失敬して、家に帰りました。今夜はご馳走です。
〜
ガラガラと、引き戸の滑る音。
「ただいま穣子。ごめんね遅くなっ…………」
玄関口から現れたのは、この質素な神社に住むもう一人の神、秋静葉だった。
人里で貰ったと思しきぶどう酒と果物を抱えた静葉は、部屋の中のあまりの惨状に目と口を丸くして絶句した。
ひっくり返った食卓。血塗れの妹。だらしなく舌を垂らした、開きっぱなしの口。千切れかけた両手脚と空っぽになった左目。
ぱりん。手にあったぶどう酒の瓶が落ちて割れた音。
〜
その後の事を少しお話しましょう。
妖怪の山の麓、穣子さんの神社はめでたく私たちのものになりました。
里の人たちは初めは穣子さんの肩を持って、私たちを受け入れてくれなかったのですが、ちょちょいと奇跡を起こして見せると、すぐに守矢神社を信仰すると約束してくれました。
「八坂様は風雨の神でもありますから、乾季でも好きなときに雨を降らせることが出来ますし、台風や水害なども防げますよ」
結局、いつの世でも人は『分かり易い力』を求めているのです。目に見える奇跡ほど人の信仰を惹き付ける物はありません。
もちろん大きな奇跡にはそれなりの代償や反動が付き物です。
無理に雨を降らせれば、その分、乾期が長引く。無理に植物を成長させれば、味や栄養が落ちたり、作物が病気をしやすくなる。自然の理に反した奇跡は、結局マイナスにしか働かないことがほとんどです。
でも、そうなっても誰かのせいにしちゃえば問題ありません。例えば、「天気が良かったのに農作物が育たないのは、前に住んでいた神様が邪魔をしているからです」なんて言ってみれば、みんなコロっと信じてくれました。
「違う! 私は何もしてない! 私は祟り神なんかじゃない!」
静葉さんは生贄にでも捧げられるかのように、元・自分の神社だった場所で磔にされていました。
穣子さんを殺したのもなぜか静葉さんと言う事になっています。世論というのは恐ろしいもので、一度落ち目になった人にはとことん冷たいのです。天狗の新聞で好き放題叩かれた静葉さんは、すでに信仰を失いただの人間同然になっていました。
縛り付けられた静葉さんの足元には大量の藁が敷き詰められています。私は里の人を代表する形で、それに火をつける役目を仰せつかったのです。
「はいはい。みなさーん、石を投げるのはやめて下さい。これは公開処刑ではありません。大地の怒りを鎮めるための神聖な儀式なんですよー」
「うっ、うっ……、ねえ、信じて? 穣子は殺されたの。私は何もしてない……」
もちろん知ってますよ。だって私が殺したんですから。
「やだ……、お願い助けて……、いや、いや……ぁぁぁあああ!!! 熱い! 熱いィイイイ!!!」
火はあっと言うまに静葉さんを包んで、丸焼きにしました。
それは同時に、元々そこにあった一つの信仰が、まるごと消滅した事を意味しました。
代わりに建てられた守矢神社の分社には、毎年けっこうな額のお賽銭と、秋の収穫期には農作物などが奉納されるようになったのでした。
終
メッセ特典の早苗さんイラストが素敵です。まだ店頭で手に入るのだろうか。
自分の作品に出てくる早苗さんはよく笑いますが、本質的には無感情・無表情です。
例えて言うなら天剣の宗次郎とか朝倉涼子みたいなそんな感じ。
次回は、そういうところもテーマに入れて書いてみたいです。
檸檬
- 作品情報
- 作品集:
- 3
- 投稿日時:
- 2009/09/14 14:28:50
- 更新日時:
- 2009/09/15 14:03:45
- 分類
- 秋穣子
- 静葉
- 東風谷早苗
- 拷問
- グロ
次回も早苗さんらしいので期待
こんがり焼けたおねえちゃんは俺が責任もってビールのつまみにするよ
というかこの早苗さんはもうだめかもしれんね
>早苗は鼻歌まじりに言った。
の部分が一瞬「鼻糞ほじり」に見えてすごく混乱した。
秋姉妹の不憫さにゾクゾクしました。素晴らしい。
世間の流れって凄いわ。
久しぶりにマジで興奮しましたね。
しかし現実というものは恐ろしい
闘わなければ生き残れない幻想郷は地獄やでぇ…