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『卵巡りリベンジ』 作者: pnp
〜注意?〜
この作品は一応、『卵巡りアフター』の続編に当たる作品です。
しかし、それを読んでいなくても、全く問題はありません。
(そちらの方にも目を通していただけると、作者の私としては嬉しい限りです)
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雲の上の冥界に存在する白玉桜には、大変食欲旺盛な亡霊が住んでいる。
名を西行寺幽々子と言い、永い永い時間を亡霊として生きてきていた。
『亡霊』なのに『生きる』と言う表現は、甚だおかしな気もするが、ともかく彼女は永い時間、亡霊の姿で動き回っていた。
先述した通り、彼女は大変食欲が旺盛である。
幽々子の従者である魂魄妖夢も、その食欲には驚きと、少しばかりの呆れと、そして諦めを抱いていた。
ある日の朝食も、幽々子の持つ箸の動く速度は終始一定であった。朝から本当によく食べる。
行儀はとてもいいし、美しい容姿の持ち主である為、食事の風景でさえ絵にはなるものの、食する量はその容姿からは信じられない量だ。
きっと彼女の事だから、ろくに噛んでいないのだろうと妖夢は思った。
次から次へと、机上に置かれたおかずを口へ放り込み、そしてすぐに白米を頬張る。
見ているだけで者まで食欲が沸いてきてしまうほど、おいしそうに食事をしている。
しかし、唐突にその箸がピタリと止まった。
あまりに唐突だったので、咄嗟に妖夢は自身の湯飲みに手を伸ばした。ちなみに、この湯飲みは空であるが、彼女は気付けていない。
「幽々子様! 何か喉に詰まりましたか!?」
「違うわよ」
「そうですか」
ホッと息を吐く妖夢。
止まった箸の先を見ると、黄色と白が見事に調和した鮮やかな卵焼きが二切れあった。
ジッとその卵焼きに目をやる幽々子。
ああなるほど、と妖夢は幽々子が静止した理由を察し、微笑んだ。
「私の分はいいですよ。二つとも食べてください」
「え? 言われなくてもそのつもりだったけど?」
「……そうですか」
我ながら、なかなか機転を利かせたいい気遣いだと妖夢は思ったのだが、あっさり玉砕されてしまった。
先走っていろいろ警戒したのに、何一つ意味を成さず、妙な恥ずかしさを覚えた妖夢は手を付けていた湯飲みを口に持っていった。
そこで、ようやく湯飲みが空であった事に気付いた。先ほどよりも顔を赤くし、乱暴にやかんに入っているお茶を湯飲みへと注ぐ。
湯飲みがお茶で満たされた頃になっても、幽々子は止まったままだった。
さすがに不審に思い、妖夢は問うた。
「幽々子様、どうしたのですか?」
「卵よ。妖夢」
「卵? ……あ」
言われて妖夢は、卵に纏わるある事を思い出してしまった。
食事中にはあまり思い出したくない記憶であった。
「天狗、ですか」
「そうそう」
以前、幽々子は、新聞記者の天狗が考案した『卵巡り』と言う、幻想郷の卵を食べ歩くツアーに参加した事があった。
ツアーと言っても、天狗の新聞記事のネタ集めに同行していた程度のものであったが。
その際食べた天狗の卵を、彼女はひどく気に入ってしまい、天狗を二人ほど拉致・監禁して、卵を産ませようとした。
しかし、生態の関係でそれは失敗に終わった。
悲しさと悔しさのあまり幽々子は、ダイエットの一環と称して、監禁した天狗二人に暴行と拷問を繰り返し、最終的に二人を死に追い遣った。
その凄惨を尽くした現場は、妖夢にとって、食事中にはあまり思い出したくないものだったのである。
逆に言ってしまうと、食事中以外ならば特にどうと言う事はなかった。
「天狗の卵……美味しかったなぁ」
「諦めて下さい。ただでさえ、天狗二人がいなくなって大騒ぎになったんですから」
「去るものは日々に疎し。もはやアレも過去の事ね」
「そうですね」
過去を憂うようなため息をついた後、卵焼きを一つ、幽々子が頬張り、租借する。
程よい塩味が口いっぱいに広がる。実は幽々子は甘い方が好きである。
小さな卵焼きは、あっという間に喉を通っていった。
口の中にほんのり残った塩味を愉しんでから、幽々子はそっと口を開く。
「でもねぇ妖夢。本当においしかったのよ。この鶏卵なんて比にならない程に」
「そこまで言われると少しだけ気になりますが……」
「はぁ……もっと美味しい卵が食べてみたいわぁ」
かなりの量を食べる幽々子だが、思いの外好き嫌いが多い。
しかもなかなかの偏食で、一度美味しい物を見つけると、飽きるまでそれをリクエストする事もある。
だから、あまり小難しい物を気に入ってしまうと、それを買ったり採ったりしなければならない為、妖夢は多大な苦労を強いられる事がある。
また、ある物を気に入り、そのすさまじい需要を補う為に、無理して大量に買い溜めしたにも関わらず、ある日突然飽きたりされた事もあった。
秋の空よりも移り変わりが激しい亡霊である。
「ねえ、妖夢、何かないかしら。天狗以外で卵生で……」
「はあ。うーん……」
顎に手を当て、妖夢は自身の記憶を掘り返していく。
はっきり言って、変な物を気に入って欲しくないので、候補を挙げるのも嫌だった。
しかし、従者として主の願望には極力応えなければと言う、妖夢の律儀さが炸裂した。
何か特定の人物を思いつく為には、人が多く集まったときを思い出す必要がある。
そんな行事はただ一つ。ズバリ宴会だろう。
宴会参加者を一人一人思い出してみる。その時、ある者が脳裏をよぎった。
山の上の神様、八坂神奈子だ。
宴会ではその飲兵衛っぷりを遺憾なく発揮していたが――
酔いが回って饒舌になってきたとき、地底の奥の地獄烏がどう、とかそんな事を言っていた。
妖夢自身はあまり知識が無かったので、幽々子が詳しいのを期待し、口を開いた。
「幽々子様、地底の奥がどんな場所かをご存知ですか?」
「ええ。旧地獄で、地霊殿と言う場所があるわよ。怨霊の管理なんかはそこでやってるって」
「そこに、地獄烏と言う妖怪が住んでいるらしいのですが」
「……烏」
烏、と言うのだから、きっと卵生だろう。
卵が美味いか不味いかは分からない。
だが、そんなものは食べてから判断すればいい。
幽々子は目を輝かせた。
「行くわよ妖夢!」
「え?」
「地獄烏の卵を採りに!」
「も、もう行くんですか……」
相変わらず恣意的な生き方をしている主を、ある意味うらやましく思った妖夢だった。
*
地底の中でも、比較的地上に近い場所に住んでいる黒谷ヤマメは、突如現れた来客に目を丸くした。
「ややあ。これは珍しいお客さんだ」
「おはよう、土蜘蛛。お名前は何と言うのかしら?」
「うん、おはよう。私は黒谷ヤマメ」
「そう、ヤマメと言うの。私は西行寺幽々子。こっちが魂魄妖夢」
「おはようございます」
妖夢もお辞儀をする。
それに軽い会釈を返し、ヤマメが問うた。
「それで、空の上の者が地の下に一体どんな用なの?」
「地霊殿で卵巡りなのよ」
「え? 卵?」
「そうなの」
「よく分からないけど、がんばるねぇ。地霊殿はあっちだよ。道中お気をつけて」
「ありがとう。さあ行くわよ、妖夢」
邪魔してくるかと身構えていた妖夢は、すんなり通してくれたヤマメに拍子抜けしてしまった。
去り際に軽く頭を下げて、幽々子を追う。
小さくなっていく二人を、ヤマメは苦笑いしながら見送った。
地霊殿までの道で、意味不明な言い分で橋姫に襲い掛かられたり、楽しそうに騒いでいる鬼に遊び半分で戦いを申し込まれたりしたが、両者とも幽々子が軽く熨してしまった。
地霊殿に着くとそこの主と、そのペットの猫が立ち塞がったが、幽々子相手では大した障害にはなれなかった。
主に中庭に通してもらい、更に奥へ進んでいくと、遂に地獄烏の元へ辿り着いた。
地底なのに、そこはやたら暑く、妖夢は汗だらけになってしまっていた。
肌にくっ付いてくる服を鬱陶しそうに引っ張ったりしている。
ちなみに、幽々子はいつも通り、何も気にしていない様子であった。
「地獄烏さーん!!」
幽々子の叫び声は、突如巻き起こった爆音に掻き消された。
業火と、眩い閃光と共に姿を現したのは、珍妙な格好をした地獄烏、霊烏路空。
鳥頭で物覚えが悪い彼女だが、記憶の片隅にも無い来客に顔を顰めた。
「どちら様?」
「私は西行寺幽々子!」
「ふーん。何か用?」
「卵が欲しいの!」
何も包み隠さず、単刀直入に言ってのけた幽々子に、ギョッと妖夢が向きなおす。
空は意味が分からないらしく、首を傾げた。
「卵?」
「そう!」
「……ああ、分かった! 間欠泉沸いてるのを見て温泉卵が食べたくなったのね」
「うんうん。美味しいよねぇ、温泉卵」
「美味しいね」
「ゆ、幽々子様。何の話をしているんですか?」
「でも残念。こんなに奥に来ても温泉卵はないよ。ちょっと温度が高すぎる。蒸発しちゃうよ」
「温泉卵はいいのよ。卵を頂戴!」
「温泉卵……じゃなくて、生卵が欲しいの? ここでは卵は売ってないよ」
「じゃあ何を売ってるの?」
「えーっと、えーっと……そう。何も売ってないの。ここはお店じゃないから」
会話がうまく成り立っていない。
埒が明かないので、仕方なく妖夢が仲立ちする。
「つまりですね、幽々子様はあなたの卵が欲しいと言っているのです」
「私の卵?」
空が目を丸くした。
妖夢が「幽々子が欲しがっている」と言ったのは、変なとばっちりを受けたくなかったからである。
空は、はっきり言って頭が悪い。
変な誤解を与えると、同行させられた妖夢まで酷い目に遭ってしまう可能性が高い。
「そうなの! 地獄烏の卵を食べてみたいの!」
「食べる? 私の卵を? 冗談じゃない!」
空が身を縮める。
すると、彼女の周囲の熱と光がどんどん増幅し出した。
空の長い髪が、緑のスカートが、白い服の袖が、ハタハタと揺らめく。
只ならぬ雰囲気を感じた妖夢が、慌てて幽々子を揺さぶった。
「に、逃げましょう幽々子様!」
「卵はどうするの?」
「諦めて下さい!」
「えーっ!?」
「えーっ!? じゃないですよ、もう!」
次の瞬間、爆音と同時に超高温の光の玉が数発放たれた。
小さな太陽の様なそれらは、二人目掛けて飛んできた。
妖夢は刀を抜き、光の玉の中心にある黒い点を狙って刃を突き立てる。
光の玉は爆発し、それによって発生した爆炎が周囲の光の玉を巻き込み、同じように爆発していく。
爆炎の間を縫うようにして、二人は急いで地霊殿を後にした。
地底の入り口付近まで逃げてきた妖夢は、荒れた呼吸を整えながら幽々子を見た。
あれだけ動いたにも関わらず、全然疲れた様子がない。
「妖夢、怪我はない?」
「は、はい」
「よし。それじゃあもう一度」
「いや……もう勘弁して下さい……」
妖夢は頭を下げて懇願した。
戦意を失っている従者に、幽々子は怒り、頬を膨らませる。
「何でよ! まだ卵採ってない!」
「と、採れる筈ないでしょう、あんなの相手に!」
「むう……。よこさないと死なすわよって脅してやろうかしら」
「そんな事したら、余計に私達を殺しに掛かって来ると思いますが……」
幽々子の死を操る能力は、制圧には扱い辛い能力であった。
生かすか殺すかの二択で、弱らせる事ができないからである。
悔しそうに地底の奥への道を見つめる幽々子の背に、明るい笑い声が飛び込んできた。
「あはは。何の事かと思ったら、空を相手に卵を採ろうとしてたのか」
「あら、ヤマメ」
「地獄烏の卵なんて止めておいた方がいい。一筋縄ではいかない相手だし」
ヤマメにも止められ、幽々子はますます不機嫌そうに頬を膨らませた。
一度臍を曲げるとなかなか直らない事を知っている妖夢は、どうにか地獄烏の卵以外で、彼女の欲求を満たす事ができる物を考えた。
しかし、何も浮かんでこない。
困り果てている妖夢の様子を見かねたヤマメが、ポンと手を打った。
「そうそう、幽々子」
「?」
「山の上の神様を知っているかい?」
「知ってるわよ。八坂神奈子と、洩矢諏訪子」
「そう。だが今、神奈子の方はいないらしいんだよ」
「そうなの?」
幽々子が確認の為に妖夢を見る。
妖夢もコクリと頷いた。
「何でも、今でも外で信仰を得ている神様を見学して、神様とはいかなるものであるべきかを勉強する為、外界へ出ておられるそうです」
「ふーん……変な神様ね」
「二柱の内、強い方が不在。残ったのは神社の巫女である東風谷早苗と洩矢諏訪子だけ」
「それがどうかしたの?」
「諏訪子はね、蛙なんだよ」
ヤマメがそう言うと、妖夢もなるほど、と手を打った。
「幽々子様、蛙は卵生です」
「蛙……」
「地獄烏の卵じゃなくてもいいってなら、八坂神奈子のいない守矢神社を攻めたほうがよっぽど楽だと思うんだけど、どうだろう」
ヤマメの提案に、暫く幽々子は考え込んだ様子を見せた。
そして、フフッと微笑み、飛び出した。
「ありがとう!」
「どういたしまして」
軽く手を上げ、地底を飛び去った二人を見送る。
そして……
「面白そうだなー。どれ、私も行ってみよう」
二人を追ってヤマメも地底を飛び出した。
*
山をぐんぐんと登っていき、すぐに二人は守矢神社へ到着した。
冥界からの来客に、境内を掃除していた巫女、東風谷早苗が顔を上げる。
「あら、幽々子さんに妖夢さん。おはようございます」
「おはよう、早苗」
「どうかされました? 朝からここへ来るなんて、珍しい」
「ちょっとね」
幽々子がニコニコと笑みながら早苗に歩み寄る。それに、妖夢も同行する。
もしもヤマメの言っていた事が誤報で、神奈子がいてしまうと何かと面倒であるから、念の為に幽々子が確認を取る。
「神奈子はいる?」
「あー、ごめんなさい。神奈子様は、暫くここへは帰ってこないかと」
「そうなの?」
「はい。外界で、神様の勉強らしいです」
「じゃあ、諏訪子と二人?」
「そうですよ」
「そう」
ヤマメの情報は間違いではなかった。
手を後ろで組んでいた幽々子が、チョイチョイと指を動かし、背後にいる妖夢にサインを送った。
そのサインの意図を汲み取った妖夢が、不自然でない程度に刀に手を付けつつ、幽々子に歩み寄ってくる。
視線は早苗に向けたまま、気配で妖夢のいる位置を大まかに捉えながら、早苗との会話を続ける。
「神奈子はいつ帰ってくるの?」
「さあ……今回は長期滞在してみると言っておられましたが」
「ふーん。じゃ、諏訪子は今、ここにいる?」
「はい」
「そう。それじゃあ……」
幽々子が指で新たなサインを送ると同時に、刀を抜いた妖夢が幽々子の背後から一気に早苗へと近づいた。
悲鳴を上げさせる隙すら与えず、妖夢は握っている刀の刃を、早苗の首筋に当てた。
「え……?」
「諏訪子を呼んでもらおうかしら」
二人の動向が理解できず、早苗は立ち竦んでしまった。
妖夢の目を見るが、冗談など寸分も感じられない。
幽々子は微笑むばかりで、何を考えているのか分からない。
命の危機に晒されていると判断し、早苗がガタガタと震えだした。
持っていた箒を取り落とす。風の音ばかりの境内に、カランカランと小気味よい音が響き渡る。
「あ……あの……え? 何……を……?」
「諏訪子を呼んでもらえる?」
「こ、この刀……の意味は……一体、何でしょ……」
「そんな事はどうでもいいから、諏訪子を呼んでもらえる?」
表情も声色も一切変えず、幽々子が繰り返す。
一人ではどうしようもないと悟った早苗が、声を張り上げた。
「す、諏訪子様!! 諏訪子様ぁ!!」
発声と同時に、極度の恐怖で涙が溢れてきた。
声が震えていたのを不審に思った諏訪子が、慌てて飛んできた。
「早苗!? どうした……!」
「おはよう、諏訪子」
「幽々子……妖夢……何してるの!?」
只ならぬ早苗の声を聞きつけてやってきてみれば、どういった訳か早苗が人質にとられている。
主犯者であると思われる幽々子も、その助太刀をしている妖夢も、悪びれた様子が少しもない。
諏訪子の無力化を確信した幽々子が口を開いた。
「妖夢、諏訪子が私を攻撃しようとしたら、遠慮なく早苗の首を落としなさい」
「分かりました」
「そういう事だから、諏訪子。変な気を起こさないように。あなたが妖夢を狙うのなら、私が能力で早苗を殺す」
言ってから幽々子は、次に早苗に向きなおし、微笑んだ。
「あなたが逃げようとするなら、あなたを殺す。死んだらマズい身だものね、あなた」
「……!」
「あなたが死ぬと、大好きな二柱まで巻き添えを喰らう事になりかねないでしょ?」
早苗は毎日、信仰を集める事で、神奈子と諏訪子を生かしている。
早苗の死は、その信仰が途絶える事。
信仰を失ってしまえば、二柱が消滅するのは時間の問題だ。
大好きな神奈子と諏訪子を消す訳にはいかない。
早苗は黙って首を縦にぶんぶんと振った。
諏訪子が幽々子を睨みつける。
「何が狙いなの?」
「それはこの後、冥界で説明してあげるから、一先ず神妙にお縄に付いてくれればいいのよ、あなた達は」
「先に説明して」
「嫌よ」
「そうか。なら……」
諏訪子が視線を足元に落とした。
その直後だった。
「同行なんてお断りだっ!」
唐突に話を切り、諏訪子が目一杯の弾幕を張る。
狙ったのは、妖夢と幽々子の二人。
輪を描いた弾幕が、二人目掛けて飛んでいく。
まさか、こうも簡単に抵抗をしてくるとは思っておらず、妖夢の対応が一瞬遅れた。
諏訪子の狙い通り、手にしていた刀は弾幕に弾かれ、宙を舞う。
大失態に妖夢の頭の中が真っ白になった。
幽々子も同様に、想定の範囲外の展開に付いて行けていない。
その性格ゆえに、臨機応変にキビキビと物事に対応できるタイプではないのだろう。
呆気に取られている二人に追い討ちをかけようと、諏訪子が身構えた。
しかし、どう言った訳か、弾幕を放とうとした手が動かない。
何事かと諏訪子が自身の腕を見ると、白い紐のようなものが絡まっている。
それを確認するや否や、今度は何かに思い切り脚を引っ張られ、うつ伏せに転んでしまった。
即座に後ろを振り向くと、そこには土蜘蛛の少女が一人、薄く笑いながら立っていた。
「ヤマメ?」
幽々子が驚きの声を上げる。
諏訪子を拘束したのは、ヤマメの出した蜘蛛糸であった。
頑丈な蜘蛛糸に縛られてしまい、諏訪子は身動きが取れない。
「くっ……だ、誰だよあんたは!」
「旧地獄から来た妖怪、黒谷ヤマメ。いやあ、面白そうだからこっそり後を付けておいて正解だったよ」
笑いながら蜘蛛糸を手繰り寄せる。あれよあれよと言う間に諏訪子はヤマメに捕まえられてしまった。
手元まで寄せた諏訪子に更に幾重も蜘蛛糸を巻きつけ、ガッチリと拘束した。
獲物の肩にポンと手を置き、絶望に淵に立たされているであろう早苗に言う。
「さて、東風谷早苗。これ以上抵抗すると諏訪子がちょっと酷い目に遭ってしまう。それが嫌なら、おとなしく幽々子の言う事に従うことだ」
「そんな……」
「嫌なの? じゃあ酷い目に遭わせるからね」
そう言うとヤマメは、諏訪子の首に蜘蛛糸を巻き付けた。
そして、その蜘蛛糸を思い切り引っ張る。
首を締め付けられ、呼吸ができない諏訪子が首の蜘蛛糸に手をやる。
「うぐ……! か……ぁあ……!
「ほらほら。見えてる早苗?」
諏訪子のそんな姿を見せ付けられ、早苗は泣きながら地面に手と膝を付いた。
「お願いします! 止めてください! 諏訪子様を放して!」
「逃げない。抵抗しない。これを誓ってくれればそれでいいのよ」
幽々子の囁きに、早苗は即答した。
「誓います! 誓いますから!」
「よろしい。ヤマメ、止めてあげて」
「はいよ」
プツリと首に巻かれていた蜘蛛糸が切れ、諏訪子が開放された。
ゲホゲホと噎せ返る諏訪子に、早苗が駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「ああ……大丈夫……」
「さあさあ二人とも、目指すは冥界よ」
ヤマメの蜘蛛糸による拘束と、妖夢の刀による脅しと言う厳重な警戒態勢のまま、五人は冥界目指して神社を飛び去った。
*
守矢神社を飛び立ってから、二人は抵抗する事も無く、冥界の“地下室”に監禁された。
監禁されたその場所が、いくらか前に二人の天狗が生命を絶たれた場所だとは、二人は知る由もない。
人質役も、卵を産んでくれる筈の存在も手に入れた幽々子だったが、ここで再び問題が発生した。
「あの、幽々子様。以前の天狗たちの失敗は、卵を孕む事ができなかった事が原因でしたよね」
「そうね」
「今回も、それと全く同じ道を辿ってしまうような気がするのですが……」
「そう。そうなのよね……」
「え!? まさか知っててあの二人を捕まえたんですか!?」
「そうだけど?」
さすがの幽々子も、前回の大失敗の原因を忘れてしまう程惚けてはいなかった。
しかし、起こると分かりきっている失敗の原因の打開策を考えもせずに、平然と脅迫、監禁をやってのける神経は、はっきり言ってどうかしていると妖夢は思った。
遊び半分で付いてきていたヤマメが尋ねる。
「天狗って、何の話?」
「以前、天狗の卵を食べようと思って、二人ほど拉致ったのよ。でも、片方は卵を孕めなくて、もう片方は卵生ですらなかったの」
「そっか。それは残念だったね。それで、今回も諏訪子を孕ませる方法が見つからない、と」
「そうなのよ」
ヤマメも一緒になって、どうにか諏訪子を孕ませる方法を考える。
卵には興味がなかったが、地底には無い面白さを秘めた幽々子の計画に参加するのが、どうしようもなく楽しいようだった。
「卵生で欲求不満な生物が必要って訳なのかな?」
「欲求不満じゃなくてもいいわ。無理にでも性交させるから」
「卵生なら何でもいいと言う訳でもない気がしますけど……鳥と蛙で卵ができるとは思えません」
「……いいこと思いついた」
突然、ヤマメがポツンと漏らした。
二人の視線が彼女に集中する。
「奇跡を起こすんだ」
「……はい?」
妖夢が間抜けな声を出した。
あまりにも間抜けで、声を出してしまった本人が赤面して俯いてしまうほどだ。
しかし、幽々子はその言葉の真意を汲み取っていた。
「なるほど、奇跡を起こすのね!」
「そう。奇跡を起こすんだよ」
「あ、あの、お二人とも何の話を――」
「そうと決まれば早速実行よ! 来なさい妖夢! 逃亡に警戒するのよ!」
「え? え? 幽々子様は奇跡を起こせるんですか?」
「私にできる訳ないでしょ、そんな事」
「私だって無理ですよ!?」
「知ってるわよ、そんな事。いいから来なさい」
妖夢の疑問に答えぬまま、幽々子は監禁した二人の下へと掛けて行った。
妖夢が慌ててそれを追い、ヤマメはゆっくりと二人の後に着いて行った。
あまりにゆっくり追ってしまった為、ヤマメは道に迷って少し困ってしまった。
「くっそー……逃げ場がない」
諏訪子は、“地下室”から逃げる術を探していた。
しかし、窓もない、排水溝や換気扇すらない、小さな通気口と出入り用の扉が一つあるだけの殺風景なその部屋に、逃げられる場所などなかった。
おまけに下手に騒ぐと亡霊と半霊がやってきてしまう。
「私らのどっちかが逃げて、霊夢にでも報告すれば……」
逃げる方法を考えていると、部屋にある唯一無二の扉の向こうから、足音が聞こえてきた。
カラン、コロン、と言う下駄が地面を叩く音。
幽々子が近づいてきている証拠だ。
少し錆びている鉄の扉が、ギィギィと音を立てて開かれる。
まずはじめに、半霊の使う刀の尖端がぬっと姿を現した。
それに続いて、部屋の雰囲気とは正反対の華やかな雰囲気の亡霊少女が、にっこりと微笑みながら入室してきた。
「御機嫌よう」
二人とも何も言わない。
幽々子は軽い足取りで早苗へ歩み寄った。
座り込んでいる早苗の前に立つ。
「な、何でしょう」
「早苗」
幽々子が笑みを深くする。
「今日からあなたは、孕ませる役を担ってもらうわ」
ヤマメと幽々子が打ち出した計画とは、あまりにも単純明快なものだった。
早苗の持つ『奇跡を起こす程度の能力』を用いて、早苗に『雄』の役をしてもらう、と言うものだ。
男根を生やし、卵生の生物が卵を作るような精液を分泌させる。
それができたら、後は諏訪子と早苗が肌を合わせ、卵を産ませる、と言うものだ。
一通り説明すると、早苗は呆然と幽々子の顔を見つめていた。
「そ、そんな事……できる筈が……」
「できる、できないの問題じゃないのよ。やるのよ。できないならできるようになるまで私が教育する」
「諏訪子様は神様なんですよ!? 神様と性行為なんて罰当たりな事が……」
叫び声に近い声色でこの計画に反対した早苗の頬を、幽々子が殴り飛ばした。
仰向けに倒れた早苗の胸倉を引っ掴み、尚も笑顔で言い聞かせる。
「立場を弁えなさい。 嫌だ嫌だで通る状況だと思っているのかしら? 二柱が心配でしょ? 消したくないでしょ? だったら私の言う事を素直に聞いていればいいのよ」
「あぅ……うぅ……」
「三日間の猶予をあげるわ。それまでに奇跡の力とやらで、しっかりと準備をしておくのよ。逃げ出したりしたものなら……どうなるか分かってるわね?」
それだけ言うと、乱暴に胸倉から手を離して地面へ早苗を叩きつけ、幽々子はその部屋を後にした。
全く意図が読めない意味不明な幽々子の命令に、諏訪子は呆然とした。
そんな諏訪子と、早苗の目が合った。
――諏訪子は、どんな気持ちなのだろう。
想像するのも嫌で、早苗は泣き崩れた。
「ごめんなさい……ごめんなさい、諏訪子様……」
性行為をしようがするまいが、結局二柱を苦しめる事に変わりはない。
祀る神に苦しみしか与えられない自らの非力さを早苗は嘆き、泣いた。
結局早苗は、諏訪子との性行為に向け、準備を始めた。
何とも珍妙不可思議な奇跡の内容であったが、それは僅か一日で実現した。
早苗は、諏訪子を孕ませる事ができる体へと変貌したのである。
*
朝、妖夢が監禁した二人を見回りに行くと、早苗の体が既におかしくなっている事が分かった。
大急ぎで妖夢は、その事を幽々子に伝える。
「まあ、もうできるの?」
「そうみたいですよ」
「仕事が速いわね。ふふっ、実は変態なのかしら、あの巫女」
「さあ……」
「……あれ? と言う事は妖夢、あなた見たのね? 早苗の」
「な!? い、いいえ、見てません! あっちの自己申告ですよ、自己申告!!」
「妖夢ったら、そんなに恥ずかしがらなくたっていいのに」
狼狽する従者の額を人差し指でちょこんと押し、幽々子は微笑んだ。
そして、昨日よりも軽い足取りで、幽々子は二人の元へと向かった。
額で湯が沸かせそうな状態で、妖夢も主を追った。
部屋に到着すると、まず諏訪子にとてつもない剣幕で睨まれた。
それを笑顔で受け流し、早苗へ歩み寄る。
「よくやってくれたわね。この仕事の速さ、完璧よ」
「……」
「さあ、早苗」
幽々子が諏訪子を指差した。
「思う存分、愛を営みなさい」
「――」
早苗の心臓の鼓動が激しくなりだした。
心の準備はした筈だったが、いざその時を迎えてみると、猛烈な罪悪感に見舞われてしまう。
早苗は、相手を―諏訪子を見る。
自身が祀る神と子作りをするなど、巫女である早苗にとって―いや、人間として、決してあってはならない事だ。
なかなか始まらない性交に、幽々子が業を煮やした。
「もう! 何浸ってるのよ、ちゃっちゃとやる! それとも何、やっぱりやらないの?」
「い、いいえ……」
生き延びる為には、仕方の無い事――
何度自分に言い聞かせても、罪悪感は一向に晴れてなどくれない。
こんな大罪を背負ってまで、生に固執する意味はあるのかと早苗は思った。
神を犯すくらいなら、いっそ死んだ方がマシだと。
しかし、自分の生きる環境は、自害すら許さない状況にあることを、すぐに思い出した。
自分が死んでしまえば、二柱は信仰を失う。信仰を失った二柱は消滅する。
そもそも、我が儘な幽々子の意志に背くなどしたら、それだけで諏訪子に手を掛ける恐れもある。
這うように諏訪子の前へ行く。
「さ、早苗……」
「諏訪子様……ごめんなさい。私には、これしか……考え付かないのです」
そう言うと早苗は、諏訪子を真正面から押し倒した。倒された勢いで、諏訪子の頭から帽子が落ちる。
諏訪子の小さな体の上に乗っかった早苗が、耳元で囁いた。
「やはり、嫌ですか……?」
「――」
「しかし、覚悟を決めてください、諏訪子様。こうしないことには、諏訪子様も、神奈子様の身も危ないのです」
「それは分かってるけど……!」
「ならば、いいと言って下さい。そうしないと、私は……」
その先を言う前に、早苗がボロボロと涙を零し始めた。
頬を伝った雫が顎から落ちて、パタン、パタンと、諏訪子の頬を濡らし始めた。
震える声で、早苗は言葉の先を続けた。
「私は……罪悪感で押し潰されてしまいそうです……」
神と言う存在でありながら、自身を祀る者と性交しようとしている自分を、諏訪子は恥じていた。
しかし、早苗には早苗の苦しみがあるのだ。
罪悪感も、苦しみの度合いも、ほとんど同じだったのだ。
「……いいよ、早苗」
「え?」
今度は、諏訪子が囁いた。
「私も耐える」
「……諏訪子様……ごめんなさい……っ!」
都合よく作り上げた男性器が、諏訪子の中へと入っていく。
その痛みに、諏訪子は身を震わせる。
早苗は何度も何度も謝罪を繰り返しながら、懸命に体を動かした。
ようやく情事を始めた二人を見て、幽々子はホッと胸を撫で下ろした。
「ああ、よかった。始まった始まった」
「……」
「雰囲気的に和姦みたいね」
「……」
「いくらか時間が経ったらまた来るから。膣内射精を確認できなかったらもう一度よ」
「……」
「さて、お茶にしましょうか。今日のおやつはザラメ煎餅にしようかしら」
「……」
「妖夢、鼻血が出てるけど」
「うぇ!?」
*
地下室から戻ってみると、ヤマメが状況を知ろうと、冥界にやって来ていた。
二人が座るテーブルに、鼻にティッシュを詰め込んだ妖夢がお茶と煎餅を運んできた。
「もうできたんだね、あの巫女」
「ええ。いい雰囲気よ」
「それは楽しみだ。ところで、妖夢はどうして鼻にティッシュをつめてるの?」
「早苗を見てたら興奮したみたい」
「ち、違います!!」
妖夢が即座に幽々子の言葉を否定した。
それを見ていたヤマメはあははと笑い、お茶を啜った。
幽々子は、お茶より先に煎餅を手に取り、齧った。
からかわれた妖夢は、顔を真っ赤にしながら、台所へと行ってしまった。
「いつ卵ができるか、見当は付く?」
「さあ。そもそも、卵ができるかも定かじゃないわ」
「きっと蛙の卵の味を知らないんだろう? 不味いかもしれない。よく考えてみれば、デメリットだらけじゃないか」
「長らく生きてると……って、私は既に死んだ身なんだけども、こういうおかしな事もあってほしいものなのよ」
「そっか」
短く返事をし、ヤマメは再びお茶を啜った。
「地上も楽しい奴がいるんだね」
「こんな事をしてるのは私くらいなものよ」
「そりゃそうだ。こんな事が日常茶飯事だったら、是が非でも私は地上へ引っ越してくるよ」
少し笑いながら言ったヤマメの言葉を受け、幽々子は齧って砕いた煎餅を飲み込み、そういえば、と切り出した。
「地底からの外出はご法度なんだっけ?」
「うん。なるべく避けないと、博麗がうるさい。でも、最近は結構緩くなってきてるよ。鬼が一人、当然のように地上で生活してるし」
「萃香ね」
「そうそう。あー、私も鬼くらい強ければ、私も地上で堂々と生活するのになぁ。河童なんぞに舐められる事もないだろうに」
「神様を背後から捕縛するほどの者が言う言葉かしら」
「あれは、あんたがいたからできるんだよ。一人だったら捕まえて、それまでだ」
「そうなの。あ、まだお茶飲む?」
「いただこう」
ヤマメが湯飲みを差し出し、幽々子がそれにお茶を注いだ。
それとほぼ同時に、妖夢が洗い物を終え、台所から二人の下へと戻ってきた。
椅子に座り、急須を手に取った。
そして、その異様な軽さに首を傾げた。
「あれ?」
「あなたのお茶、無いから」
「……そうですか」
「悪いね。私が二杯目を飲んじゃった」
*
雑談を交えた楽しいティータイムが終了し、三人は挙って地下室へと赴いた。
監禁している二人の抵抗に警戒しながら、慎重に扉を開ける。
事は既に終わっていた。
くすん、くすんと静かに泣いている早苗と、より一層、憎悪を強くしたかのような諏訪子の剣幕。
「ちゃんと最後までやったでしょうね?」
幽々子の問いに、早苗が無言のまま頷いた。
自己申告とは何とも信憑性の無い確認の方法であったが、それ以上の追求はしなかった。
「さて、明日から毎日やってもらうからね。早くいい卵を産むのよ」
「誰が産むもんか、そんなもの……!」
諏訪子が憎々しげに口を開く。
「こんな事、許されると思うな! 絶対に今までの生活に戻って……お前を後悔させてやる!」
早苗の方を向いていた幽々子は横目で諏訪子を見やり、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
――いつまで、そんな強気な態度でいられるかしら?
言葉として発さずとも、幽々子の瞳はそう言っていた。
彼女は、何も卵だけが楽しみと言う訳ではなくなっていた。
以前、犬走椛が終始見せ続けたような、反抗的で強気な態度。それを、いかにしてぶち壊してやるか。
それもまた一興であった。
諏訪子は、抗いようの無い絶望の中に、ほんの小さな希望を見ている。
椛も彼女と同じであった。最初から最後まで、ここから逃げようと、生き延びようともがいていた。
しかし、それらの希望は本来存在しない――いわば、妄想の産物なのだ。
全てが絶望で塗りたくられないよう、無理矢理にでも希望を見出し、自身を鼓舞しているのである。
それが、幽々子の瞳にはあまりにも滑稽に映り、おかしくて仕方が無かった。
黒いインクを缶ごとぶちまけられた紙の、僅かに残った白い部分を指し、「まだこの紙は使える」と言っているようなものなのだ。
その白を広げていき、黒を消し去ることなどできない。
紙に染み込んだインクを完全に取り去る術もありはしない。紙の地色の『白』は、『黒』を消す要素など含んでいないのである。
希望だけで満ち溢れている訳でもなかった『日常』が『希望』に見えてしまう時点で、彼女らはもう終わっているのだ。
「まあ、精々抗ってくださいな」
バラリと扇を広げ、優雅な手つきで自身を扇ぎながら、幽々子は地下室を後にした。
*
それから暫くの間、早苗と諏訪子は性交を強要された。
見張りの幽霊が付くようになり、射精の確認はそれを通して行われた。
何日か経ったが、諏訪子が孕んだ様子は見られない。
幽々子は肘をテーブルに立て、掌に顎を乗せ、ため息をついた。
「できないわねぇ」
「やはり無理があったのではないでしょうか」
「そんな筈はない……筈」
「希望的推測ばかりで信憑性に欠けます」
「仕方ないでしょ」
タンタンと指でテーブルを叩く幽々子。
それに特に決まったリズムはない。
ただ思考が滞っている事実にイラついているだけである。
「またダイエットに移行しなくちゃいけないのかなぁ」
「最終的にはそれしかないでしょう。今更手放す訳にもいかないですし」
「そうね……」
いつものように冥界に来ていたヤマメも、同じように考えていた。
しかし、彼女にとってはそう深刻な問題でもないので、のんびりと考えを巡らせていた。
すると、幽々子が言った。
「他に原因があるとしたら、効率の問題かなぁ」
「効率?」
ヤマメが聞き返す。幽々子はうんと頷き、続けた。
「今は一日一回、性交させてる訳だけど、その効率を上げていけば、卵ができる確立も増えていくんじゃないかなぁって」
「なるほど」
「でも、早苗があの状態ですよ。そう何度もやらせるのは無理じゃないですか?」
妖夢が言い、それに同意するように幽々子も頷いた。
束の間の沈黙の後、ヤマメがポンと手を打った。
「なら、早苗自身を改造すればいいんじゃないか?」
「改造?」
「ほら、なんか、こうさ。媚薬とか、精力剤とか」
「精力剤か」
幽々子は虚空を仰ぎ見て、その伝を探した。
そして、唐突に妖夢を指差した。
「妖夢! 永遠亭に行ってくるのよ!」
「はい?」
「そこで精力剤を買ってくるの! ありったけ! 超強力な奴!」
「はあ。せーりょくざい、ですね? そう言えば伝わりますよね? 変な造語とかじゃないですよね?」
「大丈夫だから早く行ってきなさい」
幽々子に使役され、渋々妖夢は財布を持って永遠亭へと出発した。
*
広い竹林を抜けた先に、月の住民が営業している永遠亭がある。
「せーりょくざい、せーりょくざい……」
聞き慣れない言葉で簡単に忘れてしまいそうだったので、妖夢は道中、ずっとその言葉を口にしていた。
誰にも会わずに永遠亭に辿り着いたからよかったものの、もしもその様を見られていたら、かわいそうな子だと思われるか、その手の嗜好を持つ父兄らに目を付けられていた事だろう。
「こんにちはー」
妖夢が永遠亭の扉を開けると、すぐに返事が返ってきた。
「あら、いらっしゃい。珍しいお客さんだわ」
鈴仙が店の番をしていた。
「幽霊や亡霊にも薬は必要なんだ」
「私が使う訳じゃないのよ」
「そう。何が欲しいの?」
「せーりょくざい」
恥ずかしげも無く言ってのけた妖夢に、鈴仙はちょっと身を引いた。
「そ、それはまた変な物を。えーと、ちょっと待ってて」
鈴仙は部屋の奥へと消えていった。
恐らく師匠である八意永琳に、「精力剤はあるか?」と聞いているのだろう。
あらゆる薬を作る永琳に掛かれば造作もないことであろうが。
鈴仙が帰ってくる間、妖夢は色取り取りの薬に目をやっていた。
数分後、鈴仙が永琳を連れて戻ってきた。
永琳は巾着袋を持っている。
「いらっしゃい。どうも、お待たせしてしまって」
「いえ」
「はい。ご所望の精力剤よ」
巾着袋を妖夢に手渡す。
妖夢がそれを開けて、中身を確認する。
よくある錠剤型の、一見何の変哲もない薬である。
しかし、結構な量が入っている。
中身を確認している妖夢に、永琳が説明をする。
「人に使うものだけど、妖怪用がよかったかしら?」
「いいえ。人用で」
「なら、それでいいわ。原則は一日一粒。悪くても二粒。それ以上の服用は禁止。とりあえず十五粒、最大約二週間分が入っているけど、お薬は用法、用量を守って正しくお使いください」
「は、はい。それで、御代は?」
「ああ、それは廃棄処分する予定だったものだから、無償で提供させていただくわ」
「ただですか!?」
「そう。絶対に使い方を誤らないようにね」
「はい。ありがとうございました」
妖夢は何度もお辞儀をし、永遠亭を後にした。
妖夢が去った後、鈴仙が口を開いた。
「精力剤なんて何に使うんでしょうね……」
「さあ。あの子が使うのか、主の頼みなのか。私は後者だと思うけど」
「私もそう思います」
*
「ただいま帰りました」
「おかえり。買えた?」
「はい。と言うか、無料でもらえました」
いいながらどうぞ、と巾着袋を幽々子に手渡す。
地上には無料で精力剤なんてくれる者がいるのかと、ヤマメは感嘆した。
幽々子は巾着袋の中を覗いてみた。
確かに大量の薬が入っているが、見た目だけで薬の効果を確認などできない。
実際に飲ませてみるのが吉だろうと、早速幽々子は地下室へと出向いた。
元気よく扉を開け放つ。
急に大きな音がなったので、ボーっとしていた早苗がビクリと体を震わせた。
幽々子は諏訪子には目もくれず、早苗へと歩み寄り、にっこりと微笑んだ。
「早苗、口を大きく開けなさい」
「え?」
「いいから速く」
幽々子の頼み事など、ろくな事がないのは十分承知している。
しかし、反抗すると何をされるか分からないので、止むを得ず早苗は恐る恐る口を開けた。
開いた口の中に、幽々子が妖夢の貰ってきた薬を一粒、ポンと投げ入れる。
突然口の中に何かを入れられた早苗は驚いてそれを吐き出そうとしたが、幽々子に口をふさがれてしまった。
「むぐぅ!?」
「いいからいいから。毒物ではないわ。薬よ、薬」
強引に、薬が胃へと運ばれていく。
飲んだことが分かると、幽々子が身を引いた。
その瞬間、早苗は体内で込み上げてくる熱い何かを感じた。
「う……えぇ……?」
「効いてる?」
「あ、あぅ……ああっ……!」
低く呻り出した早苗を見て、諏訪子が声を荒げた。
「幽々子! あんた、早苗に何を飲ませたんだよ!」
「何って、精力剤だけど」
「せ、精力剤!? そんなもん飲ませて……」
「す、諏訪……子……様ぁ」
妙にとろんとした、甘ったるい、飼い主に餌を求めている猫のような声で、早苗が諏訪子の名前を呼んだ。
諏訪子がそちらを向くと同時に、早苗が諏訪子を押し倒していた。
「きゃっ!?」
「ごめんなさいごめんなさい諏訪子様! でも、でも、でも、耐え切れません! 耐え切れないのです!」
「ま、待って早苗! 待っ……!」
ろくに濡れてもいない諏訪子の秘部に、強引に早苗が入り込んでいく。
ほとんど強姦であった。
泣き喚く諏訪子に何度も何度も謝罪しながらも、早苗の動きが止まることはない。
その様子を見て、幽々子はパチパチと小さな拍手を送った。
「よしよし。効き目バッチリね」
「そうみたいだ」
ヤマメも同意した。
「……」
「妖夢、鼻血」
「わあ!?」
*
精力剤の効果による激しい性交を垣間見たヤマメは、幾らか気分が高揚していた。
冥界を後にしても、すぐに地底へ帰ろうと言う気分にはならなかった。
もう少し地上で遊んでいようと決めた。
冥界以外に彼女が行きたいと思うところはただ一つ。それは、河童の住む大きな河である。
河童達は、河を汚すなとか言ってきて、昔から土蜘蛛とは犬猿の仲である。
ヤマメからすれば、外界被れのお前達河童こそ幻想郷を穢しているではないか、と言いたいのだが、外界の技術に甘んじている面もあるし、あまり強くは言えなかった。
河へ行くと、早速見慣れた河童を見つけた。
「おーい、にとりー」
「……げげっ、土蜘蛛!?」
あからさまに嫌な顔をしたこの河童は、名前を河城にとりと言った。
小さな機械を弄っている真っ最中であったようで、ドライバーのようなものをブンブンと振り回し、ヤマメに喚き散らしてきた。
「何をしに来た、地底の妖怪のくせにっ!」
「あはは。まあそう怒らなくても」
「えーいうるさいうるさい! いいから地底へ帰れ!」
「その言葉、伊吹萃香に面と向かって言ってみてよ。面白そうだし」
にとりの喚き声など痛くも痒くもないので、もう少しおちょくってやろうとヤマメは彼女に歩み寄る。
その間もにとりは何かを喚いていたが、ヤマメは全部笑顔で無視していた。
にとりが弄っていた機械を見る。何の機械なのは、ヤマメにはさっぱり理解ができなかった。
「何を弄ってたの?」
「見るな!」
「何に使うの、これ」
「触るな!」
「そんな酷いこと言わなくたっていいじゃん」
「近づくな! 変な病気に感染したらどうする!」
基本的に、ヤマメは優しい。地底でも明るくて人当たりがいいと評判の人気者である。
しかし、そんな彼女にだって当然、喜怒哀楽全ての感情が備わっている。
嬉しければ喜ぶし、不快を感じれば怒る。
ただ、怒りやすいか否か程度の差なのである。
「ちょっと、にとり」
明らかな口調の変化に、にとりは思わず顔を上げた。
「さっきのは酷すぎやしないかい?」
「な、何が」
「変な病気にどうとかって、あの辺り」
ヤマメは怒っている。
それはにとりにもひしひしと伝わってきた。
喋っているヤマメの表情に、先ほどのような気さくな雰囲気は一片もない。
「あんた達にとって、私の能力がいかに恐ろしいか、私は分かっているつもりだ。でもね、言われて嫌な事は嫌なんだよ。それは地底とか地上とか、生活環境に関係なく」
「だから、それが――」
「そして私はあんたの一言でとても傷ついた」
忌み嫌われて地底に住めども、心が死ぬ訳ではない。
確かに、にとりの一言は、あまりにも辛辣で、心無い言葉であった。
しかし、嫌っている相手に自身の非を認めると言うのは、なかなか耐えがたいものである。
そして、にとりも例外でなかったらしかった。
「じ、事実だろ」
「……」
「ふんだ。地底暮らしのくせに」
にとりは遂に、地底に住む全ての妖怪を悪く言い出した。
堪忍袋の緒が切れたヤマメが、蜘蛛糸を出した。
「言わせておけば、この河童め!」
「わわっ!?」
あっと言う間に蜘蛛糸がにとりに絡まり、拘束した。
「よくも地底の住民を侮辱したな! 許せん!」
「や、止めろ! 放せったら!」
「いいや、やめないね」
「わ、分かった、謝るよ! 謝るから!」
「その必要はない! 粛清してやる!」
いとも簡単ににとりを捕まえたヤマメは、再び冥界を目指して飛び立った。
冥界へ着くや否や、ヤマメは捕まえたにとりをポイと幽々子の前に投げ捨てた。
蜘蛛糸でぐるぐる巻きにされた河童を目の前に投げ付けられた幽々子は、ポカンとその河童を見やり、次にヤマメを見た。
「何、こいつ」
「河城にとり。地底の妖怪を侮辱した哀れな河童」
「そうなの。それで、それがどうかしたの?」
やはり状況が掴めていない幽々子に、ヤマメは先ほどの一連の流れを説明した。
そして、こう付け加えた。
「そんなどうしようもない奴だから、迷惑でなければこいつもあいつらと一緒に監禁しておいてやりたいんだけど」
「私は一向に構わないわ」
「ありがとう」
「河童も卵生なのよねぇ。うふふ。早苗がお気に召してくれれば、河童の卵も堪能できるかもしれないのね」
こうして幽々子は、にとりも早苗らと同じ部屋に放り込んだ。
蜘蛛糸から開放されたにとりが顔を上げてみると、部屋にの中には、沈みきった表情の早苗と諏訪子がいた。
精力剤の効果とは言え、諏訪子に強姦染みた事をしてしまった自分を、早苗は呪っていた。
諏訪子も、そんな早苗に少しばかりの失望を覚えてしまったらしく、目を合わせようともしない。
「ふ、二人とも、何してるの」
恐る恐る、にとりが口を開いた。
すると、座っている場所からピクリとも動くことなく、諏訪子が全てを説明した。
幽々子が妖怪の卵を食らおうとしていると知り、にとりは声を荒げた。
「そんなバカな事があってたまるか! どうして逃げないんだよ二人とも!」
「逃げれたらとっくに逃げてるよ」
そう言われてにとりは、部屋の周囲を見回した。
あまりに殺風景な部屋で、絶望を通り越し、苦笑がもれた。
「今の私たちにできるのは、耐えることくらいなんだよ」
諏訪子はそう付け加え、下半身のズキズキとした痛みを堪えながら横になった。
*
次の日から、妖夢が早苗に薬をやりにきた。
月の頭脳こと八意永琳が作った精力剤の効果は覿面で、飲む度に早苗は激しい性的欲求に駆られ、諏訪子を犯した。
諏訪子は初めこそ嫌がっていたものの、慣れたのか、抵抗に意味を感じなくなったのか、はたまた悦びだしたのか、大して抗うことをしなくなった。
にとりは、いつ自分が諏訪子の役をやらされるか、と言う不安を抱きながら毎日を過ごしていた。
そんなある日の朝の事であった。
薬の入っていた巾着袋が少し軽くなってきた頃である。
幽々子が目を覚ますと、妖夢は慌しそうに荷造りをしていた。
どこへ行くのだろうと、幽々子が首を傾げ、尋ねた。
「妖夢、どこへ行くの?」
「あ。おはようございます幽々子様。今日から紅魔館で咲夜さんにいろいろと習いに行く日なんです」
「そうだったっけ」
「そうなんですよ。ここ最近、いろいろとバタバタしてて忘れてましたが」
荷造りの手が止まっているのに気付き、妖夢が慌てて準備を再開する。
適当に要るものを詰め込んだ大きな鞄を担ぎ、妖夢が一礼する。
「では、行ってきます」
「気をつけてね。レミリアの期限を損なわないように」
「肝に銘じておきます。あと、精力剤の投与を忘れないようにして下さいね」
「ええ。あなたがいない間に卵が採れたら残念ね」
「いえ、別に私はいいですけど……。何がともあれ、行ってきます。お体にお気をつけ下さい」
「あなたもね」
幽々子が珍しく自分の身を心配してくれているのが嬉しかったのか、妖夢は軽く笑んでもう一度一礼し、冥界を後にした。
冥界に住む幽霊に適当な朝食を作らせる。サンドイッチを所望した。
それができるまでの時間で、幽々子はイチゴのジャムを塗った食パンを食べる事にした。
食パンを二口食べた所で、精力剤の事を思い出した。
「忘れないうちにやっちゃおう」
食パンを食べながら巾着袋を掴み、地下室へ向かう。
鼻歌なんて歌いながらゆっくりとそこへ向かう。
しかし、ふいに幽々子は足を止めた。
そして、パンを噛みながら「んー?」と声を漏らし、虚空を眺める。
「どれくらい薬を飲ませるのだっけ」
初日は幽々子が早苗に飲ませたが、それ以降は妖夢に任せっぱなしであった。
薬を買いに行ったのも妖夢であり、薬の用法についての注意を受けたのも妖夢である。
つまり幽々子は、どれくらい薬を飲ませるものか、明確には知らないのである。
「一錠……いや二錠?」
薬の減り具合から導き出そうとしたが、そもそも最初にいくつ入っていたのかを知らないのに、分かる筈がなかった。
口をモゴモゴと動かし、食パンを口へと器用に入れていく。
それを全部口に収め、租借しながらもう一度考えた。
――一錠かもしれないが、もしもそれが本来の用量より少ないのなら、効率が落ちてしまう。
効率を求めている幽々子に、「服用のし過ぎによる身体への影響」など考える余地はなかった。
そもそも、長らく薬など使っていないし、朝食の内容を昼に忘れてしまうような彼女が、そんな細かいことまで気を配ることはできなかった。
「そうだわ! 飲み溜めさせておいて後の手間を省けばいいのよ」
彼女なりの最高のアイデアを考え付いて、幽々子は嬉しそうに再び地下室へと向かいだした。
地下室に着くと、幽々子はおはようと挨拶した。
妖夢でなく幽々子が来た事に全員が少しだけの違和感を覚えたが、ただそれだけであった。
すぐに早苗に近づき、笑む。
「さあ早苗。今日もがんばりなさい」
「……」
早苗は黙って口を開いた。習慣とは恐ろしいものである。
小さな粒が喉を通って、妙に体が熱くなって、諏訪子を犯して、犯した後に泣いて――
そんな、悪夢のような一日の始まりを告げる錠剤が口に運ばれる。
……筈であった。
しかし、その日は違った。
まるで、小さな袋に入ったラムネ菓子を一気に食べた時のように、口の中に大量の精力剤が転がり込んできたのである。
驚いたが、吐く事は許されず、早苗は巾着袋の中の錠剤――十粒――を、全部一気に服用してしまった。
「う……うげぇ……っ! ごほっ、げほっ」
「よしよし。それじゃあがんばってね」
何も知らない幽々子は、地下室を後にした。
明らかにいつもと服用する量が違い、にとりは不安を覚えた。
恐る恐る、地面に手と両膝を付き、咽ている早苗に近づき、その肩を叩いた。
「早苗、大丈夫かい?」
「けほっ、がふっ、うえぇっ……っぐぅ……あぃ……げふっ……」
にとりが声をかけても、早苗は咽るばかり。
苦しそうだったので、にとりは早苗の背中を摩ってやった。
「何だってあんなに一杯飲ませたんだよ」
「うぶっ、っくぅぅ……あぁ……ああ……あ」
不意に早苗が咽るのをやめた。
そして、
「あっはははははははは!!!」
今度は大きな声で笑い始めた。
ギョッとしてにとりと諏訪子が早苗を見る。
身を案じてくれていたにとりの小さな体を殴り飛ばし、早苗が諏訪子に飛び掛った。
「さあさあさあさあさあ諏訪子様諏訪子様! やりましょう、ええやりましょう!!」
「お、おい早苗!? ちょっと!」
「ちゃっちゃとやって卵産んじゃいましょうよ。そしたらここから出られるかもしれませんよねえ! うんそうですよきっとそう!!」
「どうしたの早苗! ひゃあっ」
精力剤を用いた頃から、確かに早苗は溢れる性欲を抑えきれずに暴走気味だった。
しかし、今回は誰の目から見ても異常だ。
諏訪子の脚を無理矢理広げ、遠慮とか配慮なんか一切なしに、欲を満たすだけの暴力的な性行為を始めた。
おまけに奇跡で生やした早苗の男根は、精力剤の影響であろうか、一般的なそれを大きく上回るほどの大きさにまで膨張している。
小さな諏訪子の体にはとても不釣合いだった。
「痛い痛いぃ! や、やめて……早……苗…」
「ああっ、いきます! いきますよ諏訪子様! 全部受け止めて下さい!」
一度目の射精が行われた。
普段とは比較にならない程の精液が諏訪子の中へと流し込まれていく。
受け止め切れなかった精液がドロリと流れ、地面に広がっていく。
「あ……あぁうぅ……」
不自然な熱を感じながら、諏訪子がふるふると体を震わせた。
こんな形でも、僅かに快楽を感じている自分が情けなくて涙が出てきてしまいそうであった。
早苗もぶるぶると体を震わせている。
まるで体内にある精液全てを流し込まんとしているようであった。
暫くすると、ピタリと震えが止まった。
そして再び、早苗が腰を動かし始めた。
「え!? さ、さなっ、ぇああっ、ぎ、ひぃぃっ!」
「どんどんいきますよ諏訪子様! 今日中に孕ませてあげますからね! オールナイトで膣内射精し続けてあげますからね! いひひひひっ! いひひひいぃいぃ!」
半狂乱状態の早苗が、和姦と強姦の境界が曖昧な性行為を再開した。
諏訪子はその多大な負荷に耐えれそうにないらしく、もはや性的な快楽を感じてなどいられなかった。
止めて止めてと泣き叫びながら、変わり果てた子孫の体を自分から引き剥がすのに必死であったが、人間の三大欲求の一つとされていることを処理している早苗をどかす事など不可能であった。
にとりは、そんな二人を唖然として眺めていた。
早苗の異常は明らかである。
このままでは諏訪子は勿論、自分の身まで危ないのではないかと危惧し、扉へ向かって走った。
ドンドンと扉を叩き、助けを求める。
「ゆ、幽々子!! 妖夢でも、ヤマメでもいい! 誰か助けて! 早苗がおかしいんだよ! おい! 聞こえてるだろ!? 助けて! 助けてぇ!!」
しかし、返事はない。
二度目の射精が行われたらしく、背後で諏訪子が絶叫している。
恐ろしくなって、にとりは泣きながら助けを求める。
「お願い! 助けて!! おかしいんだよ早苗が! おい! 卵ならあげるから、お願い助けて!」
やはり返事はない。
言っている間に三度目の射精が行われていた。
「嫌だ嫌だぁ! こんな形で初めてなんて嫌だよお!! 魔理沙! 魔理沙助けて!!」
遂ににとりは、遠い地上にいる魔理沙に助けを求め出した。当然の如く、魔理沙は愚か、幽々子からすら返事はない。
四度目の射精。諏訪子の腹が精液で膨らみを帯び始めていた。
にとりの泣く頃に、彼女の希望であり、絶望でもある西行寺幽々子は、サンドイッチと緑茶と言う和洋折衷な朝食を、幼稚かつ優雅に摂り始めた。
ピーナッツバターサンドイッチの甘みと緑茶の苦味がベストマッチなのだ、とか幽々子は一人で呟いている。
前者がストロベリージャムに、後者がコーヒーになったとしても、きっと彼女は同じ事を言うだろう。
少女一人が食べるには多すぎるサンドイッチを片っ端から平らげていると、ふいに空間に亀裂が入り、古くからの友人がぬっと姿を現した。
「あら、紫」
「幽々子、ちょっと来てもらえる?」
「何?」
「霊夢の手に余る異変よ。応援に来て欲しいの」
「まあ。それは一大事ね」
紫がスキマを大きく広げ、幽々子を迎える。
山のようにサンドイッチが積まれた皿を持って、幽々子はスキマに飛び込んだ。
「そんなもん置いときなさい!」
「腹が減っては戦はできないのよ。お一ついかが?」
「全くもう。……あら、このブルーベリージャム、おいしいわね」
勿論幽々子は、地下室にケダモノ一人と生贄二人を飼っているのをすっかり忘れている。
異変が解決できる三日後まで、彼女はこれを思い出すことはなかった。
サンドイッチを盛っていた皿を返しに、一度冥界に戻ってきたにも関わらず思い出せなかった。
*
十六度目の射精で、ようやく早苗は一息ついた。
既に諏訪子の下の穴二つは、拡がりすぎて使い物にならなくなってしまっている。
遊び飽きられて放置された人形の様に、諏訪子は地面に横たわっていた。
膣と尻から、白濁した液体がドボドボと流れ出て、“液溜まり”を形成している。
「ゃ……ひぃ……いい……」
「さてさて、にとりさん、出番ですよ」
壁に凭れて俯くにとりに、早苗が歩み寄る。
そして、おやと首を傾げた。
にとりは、首から血を流している。
「あら。いつの間にか死んでるわ、この河童」
にとりは、服のポケットに入っていた電工ナイフ―刃渡り10cm程の工業用のナイフ―を首に刺し、自害していた。
諏訪子のように、悲惨な陵辱に遭う前に、死を選んだのである。
「困りましたねー。諏訪子様はもうゆるゆるだし」
にとりと諏訪子を見比べる。
どちらで抑え切れないこの性欲を処理しようかと考えていた。
すぐに早苗は決断した。
「口でやりましょ諏訪子様!」
「は、はぇ……うぶぐぅっ」
ようやく開放されたと思った矢先、早苗は諏訪子の口に男根を突っ込んだ。
あまりに急な事で、ろくに呼吸をする事もできない。
苦しくなって、諏訪子は我武者羅にもがいた。
その際、歯が早苗の男根に当たった。
「痛っ」
思わず早苗は身を引いた。
そして、力いっぱい諏訪子の顔を蹴り飛ばした。
「うぎゃあっ」
「何やってんですか、痛いじゃないですか!」
「あうう……」
「ああっ、忌々しい」
怒った早苗は、にとりの死体に近づき、首からナイフを引き抜いた。
そして血に染まっている刃を握り締め、仰向けに倒れる諏訪子の上に馬乗りになった。
「こんなものがあるから悪いんだっ」
ナイフの柄で、諏訪子の口当たりを殴り始めた。
「あぎゃあぃうぃあがあぐああっ!!?」
「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ッ!!」
フェラチオに歯が邪魔だと判断し、ナイフの柄で強引に歯を折り始めたのである。
「やぶぇでえ!! やべでざな゛っぐ、ぎええっ!」
コロンコロンと、白と赤のコントラストが美しい歯の破片が、殺風景な地面に転がる。
早苗の手からの出血と諏訪子の口からの出血が、地面に広がる精液の水面に赤い斑点を加えていく。
まるで真っ白の布に、薄い赤の水玉模様をつけたようにも見える。
ただ、その材料は子種と血液なので、グロテスクな印象が強すぎる。
歯を全部折った所で、早苗はナイフを捨て、フェラチオの続きを始めた。
「おおっ、快適快適」
歯が無くなったことによりできた小さな窪みと、ツルツルとした歯茎の質感は、いとも簡単に早苗を絶頂へと導いた。
本日十七度目の射精にも関わらず、その量は衰えるどころか、新たな感覚でイかされたことにより、増量していた。
口では収まりきらず、鼻から精液が溢れ出てきた。
口を男根で塞がれているので鼻で息をせざるを得ないのに、鼻まで塞がれてしまった。
呼吸をしようと、懸命に空気を吸う。
プクーっと、鼻に精液の幕の提灯が完成した。
*
結局諏訪子は、精力剤の飲みすぎでおかしくなった早苗に、夜通し中に出され続けた。
朝になってようやく二人は眠った。
その頃、ヤマメが白玉桜を訪れていた。
「おはよー幽々子」
声を上げてみたが、返事が無い。
「? 幽々子ー? 妖夢ー?」
まだ起きていない、と言う事はないだろうとヤマメは思った。
どうして出てこないのかが分からず困っていると、幽霊がふよふよと漂ってきた。
そして、幻聴の類で、近況を知らせた。
「……ほう。二人とも外出中か。なら仕方ないな」
そう言い、ヤマメは踵を返した。
しかし、ふともう一度、白玉桜を見返す。
「三人の管理は大丈夫なのかな」
もしかしたら、外出を察して逃亡を企てているかもしれない。
確認の為、ヤマメは地下室へ向かってみることにした。
諏訪子が目を覚ました。
まず目に入ったのは、眠っている早苗。
そして、近くに落ちているナイフ。にとりが自害に使ったものだ。
それを手に取り、眠っている早苗を見る。
もう早苗に同情の余地などない。
これだけ甚振られたのだ。諏訪子は明確な殺意を抱いていた。
「……」
殺そうと思ったが、そこで思い出してしまったのは神奈子のことだった。
早苗が死んでしまったら、神奈子はどうなってしまうのか。神奈子は何を思うのか。
しかし、ここから生きて出られると言う確証も無い。
それに、もう我慢の限界であった。
意を決し、諏訪子はナイフの刃の先を、寝ている早苗の左胸目掛けて振り下ろそうとした。
次の瞬間。
「静かだ!! ま、まさか逃げたのか!!?」
突然すぎるヤマメの大きな声。
驚いた諏訪子はナイフを取り落とした上に、脚を滑らせて転んでしまった。
転んだ先にいたのは早苗。
ちょうど、諏訪子の胸が早苗の口に乗っかる形になった。
当然、早苗は目を覚ます。
そして、自身の状態をすばやく察した。
そこから、彼女はまず何をすべきかを、これまた素早く考えた。
考えた結果、早苗は諏訪子の乳首を、服の上から噛み千切る事にした。善は急げと、即座に噛み千切った。
「うぎいぃぁあああ!!」
「おはようございます諏訪子様。実は先ほどニプルファックの夢を見ていまして早速実践してみたいなぁと思いまして」
痛みに悶える諏訪子の服を剥ぎ取る。
そして、乳首があった部分の小さな穴にナイフを突き立てる。
「あぁ、あぁあああ!! あっぐあぁ! あがああああ!!!!」
「諏訪子様おっぱい小さくてやりづらいですから、少し拡げさせてもらいますね」
刺さった状態のナイフの柄を両手で挟み、キリで木の板に穴を開ける要領でナイフを回転させる。
「うぎゃあああああああぁぁああ!! ああっ、あああああ!!!!」
3cmくらいの径の穴が穿たれた。
そこに早苗が挿入する。
諏訪子が感じるものは、もはや激痛しかない。
ヤマメが大慌てで地下室の鍵を取って戻ってきてみると、部屋の中は大盛況であった。
「仕方が無いんです仕方が無いんですよ諏訪子様!」
「うぁぅううううぁううううぅあうああああううああううう」
「お腹も膨らんできました。もうすぐ生まれるかもしれませんし、生まれたらここを出れるかもしれない」
「あううっあううううう」
「だから辛抱してくださいね諏訪子様」
扉の向こうから聞こえる声に、ヤマメはホッと胸を撫で下ろした。
「なーんだ。杞憂だったか」
そう言いながら、扉の向こうを確認せず、鍵をもとあった場所に戻し、彼女は冥界を降りた。
偶然にも二人の会話が比較的自然だったので、ヤマメは何の異変も感じずに帰ってしまった。
ヤマメが去った後、早苗は調子を取り戻したようだった。
「あーあ。ニプルファックはつまんなかったです」
「ぃ……ゃぁ……あめて……もお……」
「他にもう挿れる場所が……って目がありますね! そうだ眼姦! そして脳姦! はははっ、まだまだ余裕ですね諏訪子様!」
「いぁぁ……めぇいれちゃやら……」
「大丈夫です、さあいきますよ!」
そう言うと早苗は、諏訪子の目に向かって男根を挿入した。
眼球を押しのけ、強引に眼孔を犯していく。
「あぐぁええおぉおぉおおおぉおおお!!!」
「おおおおお、こ、これはすごいです! 眼球のぬめぬめごろごろした感触と生暖かさがなんとも……っ」
「いぁいぃ!! いぁいぉおお!!」
歯がないので、諏訪子はうまく喋る事もできない。
ただ、痛みを和らげようと、全身に力を入れていた。
その時であった。
ブリュブリュと、膣から何かが落ちていった。
それは、卵であった。半透明の膜に囲まれた、あの蛙に卵である。
幽々子のいない所で、彼女の悲願は達成されたのである。
*
幽々子が冥界を降りて三日後の事である。
「いやあ、疲れたわ」
博麗霊夢は大きく伸びをした。
「確かに厄介な妖怪だったけど、退治できてよかったわね」
「ええ。いちいち降りてきてもらっちゃって、悪かったわね」
「どういたしまして」
一仕事終え、さあ冥界へ帰っておやつを食べようとか思ったその時。
「ゆ、幽々子様!?」
「あら、妖夢」
紅魔館での実習を終えた妖夢が、偶然地上へ降り立っている幽々子と鉢合わせたのである。
早歩きで近づき、小声で問う。
「三人はどうしたのですか!?」
「え? 三人?」
「そうですよ、卵です! た、ま、ご!」
「あ」
幽々子の一言で、妖夢は言い知れぬ不安を覚えた。
奇妙なやり取りをしている二人を不思議そうに眺めていた霊夢に一礼し、二人は即座に白玉桜に戻った。
戻った先には、ヤマメがいて、パンを食べていた。
「やあ二人とも」
「ヤマメさん! 何人の家で勝手にパンを食べてるんですか!」
「これは私が地底で作って持ってきた奴だよ。たまにはこういう所で食べたくなるんだよ」
「そうだ、それどころじゃなかった!」
妖夢は鍵を引っ掴み、地下室へ向かう。
幽々子がそれを追う。パンを食みながらヤマメも二人を追った。
監禁している部屋の扉に鍵を差込み、回す。
そして勢いよく、扉を開け放った。
まず漂ってきたのは腐臭。
目に映ったのは、卵の海であった。
蛙特有の気色悪い卵の中、愛し合っているつもりの早苗と、意識が途絶えかけている諏訪子がいた。
「分かります、分かりますよ諏訪子様! 屍姦ですね!? 屍姦プレイなのですね!? ネクロフィリアなのですね!?」
「ぁ……ぅ……」
その光景に思わず、
「うげ……」
妖夢は目を伏せた。
「わあ」
幽々子は感嘆した。
「おお」
ヤマメは驚愕した。
そしてすぐに、幽々子が叫んだ。
「卵よ! 卵がいっぱいよ妖夢!!」
「それどころじゃないでしょどう考えても!! 何でこの光景見て卵を喜べるんですかあなたは!」
「それにこの卵、全部腐ってるよ、多分」
「え……?」
「この腐臭から察するにね」
「一先ず、あの二人を引き剥がします!」
そう言うと妖夢は、卵を踏み潰しながら早苗らの所へ向かった。
あっと言う間に靴やスカートがぐちょぐちょになったが、気にしないことにした。
早苗を刀の鞘で殴り飛ばし、強引に諏訪子から引き剥がし、諏訪子を連れて部屋を出た。
片目がなく、頭と胸に穴を開け、歯が折られ、秘部が痛々しい状態の諏訪子を、三人は囲んでいた。
「……なんでこんなことに」
「絶倫だったのね」
「幽々子様。もしや、と思うのですが」
「うん」
「精力剤、どれくらい与えました?」
「え? 全部」
「……は? いつ?」
「あなたが出て行ってから。飲み溜めさせておけば後が楽だなって思って、あるだけ全部飲ませてしまったわ」
妖夢は言葉を失ってしまった。
幽々子の滅茶苦茶な理論がおかしくて、ヤマメは大きな声で笑った。
「何でそんな訳の分からない事をするんですか!?」
「だってどれくらいあげればいいか、教えてくれなかったじゃない!」
「だからって全部飲ませるのはおかしいでしょう!」
「まあまあ、二人とも落ち着いて。それより、どうするんだよ、こいつ」
早苗の肉便器と化してしまった諏訪子を指差し、ヤマメが言う。
「どうするんです」
「とっておきたいけど」
「と言うか幽々子様、あの卵食べてみたいですか?」
「うーん。……微妙」
「ならさっさと殺してしまった方がいいよ」
「そうね」
こうして幽々子は、あっさりと諏訪子を死に追いやった。
「それで、あの卵だらけの部屋はどうするんです?」
「それは私にいい考えがある」
言うとヤマメは、監禁部屋の外から、早苗に声を掛けた。
「早苗ー。諏訪子を返して欲しいかー?」
「返してっ、返してくださいっ」
おもちゃにしていたボールをとられた犬のように、早苗は諏訪子を求めていた。
現に、もはや今の早苗にとって、諏訪子はおもちゃでしかない。
「返して欲しいなら、そこにある卵を全部食べるんだ」
「これ、これですかっ? コレ食べれば、諏訪子様返してくれますかっ」
「うん」
言うや否や、早苗が卵を食い始めた。
性欲を満たす為ならこれくらい平気だと言わんばかりの食いっぷりである。
「よく醤油無しで食べれるわねぇ」
幽々子は感心していた。
あっと言う間に、卵が部屋から消えた。
残ったのは腐食が始まっているにとりの死体と、子どもでもいるかのような腹の早苗。
「さあ、食べましたっ。食べましたよ」
「うんうん。お疲れ様。さあ妖夢」
「はい」
ヤマメに呼ばれ、妖夢が早苗の前に立ち、愛用の刀でその首を刎ねた。
死ぬ直前から全く表情を変えなかった早苗の顔が、ゴロリと床を転がる。
噴水の如く吹き上がった血が、粘液と精液に塗れた床の汚れに拍車を掛ける。
「一件落着ね」
頭の無い早苗の死体を眺めながら、幽々子が呟いた。
しかし、妖夢が首を横に振る。
「いえいえ。まだです」
そして妖夢は、幽々子に物を押し付けた。
――モップとバケツである。
「?」
なし崩し的に受け取ったが、幽々子はそれの意味を理解していない。
妖夢が床を指差した。
「掃除をしてください。この部屋の」
「何で私が……」
「そもそもこんなになっちゃったのは幽々子様の所為でしょう」
「うう……。て、手伝って妖……」
「嫌です」
即答され、泣く泣く幽々子は、地下室の掃除を開始した。
しかし、想像を絶する手際と効率の悪さで、終わるのにどれだけ時間が掛かるか分からなかったので、結局妖夢とヤマメが手伝った。
掃除が終わったのは日が暮れかけた頃の事であった。
途中、幽々子がモップと石鹸で、ヤマメとホッケーを始めた時は、妖夢の視界が一瞬真っ白になったが、どうにか堪えた。
「あー疲れた」
「ホッケーしてただけじゃないですか幽々子様」
「そんな事ないわよ。楽しく掃除をする工夫よ、あれは」
「ああそうですか。もういいです……」
話すのも疲れて、妖夢が話を打ち切った。
疲労困憊の二人を見て、ヤマメが手を打った。
「温泉に行かないかい?」
「温泉?」
「そう。この前の地獄烏の放熱を利用した温泉だよ」
「温泉……いいわねぇ。行きましょう」
幽々子はニコニコと微笑んだ。
「温泉と言えば温泉卵。楽しみねぇ、妖夢」
「……まだ卵食べたいんですか?」
fin
今年の八月、人生初となるコミケに参加致しました。
そこで、実は産廃合同本の購入に成功していたのです。(管理人さん、ありがとうございました)
このSSは、それを読んでたら書きたくなった作品であります。
故に構想は八月中旬から始まっていたのですが、なかなか形にする事ができず。
長編終わった息抜きと書かせて頂きました。
とても軽い気持ちで書いていたので、書いててとても楽しかったです。
今までで一番コミカルな作品になったと私は思っています。
エロいシーンをいかに書かないようにするかが最大の難点でした。
早苗さんの奇跡に頼ってしまったのが反省点ですが、それもコミカルさを助長させる要因であるような気がします。
蛙は卵を勝手に産み、それに雄が精液をかける、と言う方法をとっているらしいですが、諏訪子様は人型なので、こちらがしっくり来るなぁと思い、こういう形となりました。
そして眼姦大好きです眼姦。
〜次回予告〜
次こそ船長を、と思っています。
〜11番目のコメントの事について〜
『犬神造り』について少しだけ調べてみました。
解決できた事は少ないですが、確かにこの作品の早苗の死に方と重なる部分があったように感じました。
内容を理解できていない面もありますが、重大な問題を秘めているようであれば修正しようと思います。
ご観覧、ありがとうございました。
次回もどうぞよろしくお願いします。
pnp
- 作品情報
- 作品集:
- 4
- 投稿日時:
- 2009/10/02 17:40:44
- 更新日時:
- 2009/10/03 21:45:50
- 分類
- 幽々子
- 妖夢
- 早苗
- 諏訪子
- ヤマメ
- グロ
- ふたなり注意
余裕かましてるこいつらを絶望させたいねぇ。
悪に報いは必ずあるのだー
幽「人間の胎児って美味しいらしいのよね。妖夢!行くわよ!」
まで幻視した。
次は蛇と蜘蛛の卵だ・・・
カエルなみにグロテスクだが
次はなんの卵でしょう?
虫ならホタルとかもいますよね
ともあれ妖夢かわいいよようむ
にとりかわいいよにとり
大丈夫なのコレ?
エロシーンはそこまでないのに、私の股間がミラクルフルーツしているのは一体何故…?
ゆゆ様にはこれからもグルメ魂を燃やしていただきたいです。
神奈子「諏訪子、早苗、今帰ったよ!新しい信仰の獲得方法もわかったし、これでもう……、…?…え……?」
楽しいこと美味しいものに興味があって、そこにはモラルの制限がかかっていないのが子供のようで可愛いんだな。石鹸ホッケーも拷問ダイエットも彼女の中では無区別なのだろう。
可愛いだけじゃなくて幻想郷の治安維持にも尽力しているところに敬意を覚える
可愛さ+偉業+残虐非道、この組み合わせがすごく魅力的に思えた
細かい事は胴でもいいか
というのを夢想した
…嘘ですごめんなさい。
なんてことはさておき、作り方自体は江戸期の随筆なんかに書かれていて今でも読むことができるんで問題はないんじゃないかな。実際微妙な問題を孕むのは使う側についてのお話。
相変わらず容赦なくて面白い
幽々子、氏ねや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!諏訪子とか天狗達とか殺すな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!