フランドールは愛されたい

愛する人のためなら何でもできる


そんなの、だれだってできる


私だってできる、私だってやった

全部裏目に出た


掃除も、料理も、警備も、本の管理も、魔法の研究も、私が愛する人たちがしていることすべて手伝った。
全部だめだった

全部やってみたのに、全部嫌われた





フランドールは愛したいと考える。


フランドールは愛し方を考える。


フランドールは共有こそ愛だと考えた。


フランドールは努力した。



掃除に使う用具を必死でおぼえた、血液以外の食を学んだ、毎日きちんと館を見回った

膨大な本の順に苦戦した、複雑な呪文を勉強した。



フランドールは愛を尽くした。


フランドールは愛されたいと思った。


フランドールは相愛に憧れた。


団欒を夢見た、家族を願った、信頼を待望した



何よりも、外から帰った後の「おかえりなさい」を渇望した




それらを形にしたかったから、張り切った。
家事は流水に触れられないから他の部分を何倍も頑張った。
警備は合間を見て念入り念入り入念に見張った。
本の整理は押し潰されそうな程の書物たちにも、果敢に挑んだ。
呪文はスペルミスを繰り返して何度も何度も同じことを繰り返した。


けれども瀟洒なメイドは完璧主義で

曜日の魔女は本以外には無関心で

魔女の使い魔は何が最後の言葉になるかと怯え

紅髪門番は舟漕ぎで忙しい



フランドールは愛を増やした。

フランドールは必死になった。

フランドールは躍起になった。

フランドールはミスをしだした。




瀟洒はあからさまに呆れた。

魔女は大きなため息をついた。

使い魔は態度が軽くなった。

門番は舟漕ぎで忙しい。



フランドールは大きく嘆いた

私が愛する彼女らは、愛してくれないと知ったから

泣いた、泣いた、いっそのことクシャクシャのわけのわからない何かになってしまいたかった。

愛を注ぐ器が愛を避けてしまうから



その日フランは夢を見た

愛する人とともにある夢だったが、それは一挙一動ごとに悪夢に変わるのだ

フランドールが言葉を贈ると、皆の顔から笑顔が落ちた

フランドールがその手を動かすと、部屋が無残に崩壊した

フランドールが地面を駆けると、居場所がどんどん無くなった

フランドールが虚空に許しを乞うと、そこに独り残された。














フランドールは待っている。

夢をみてからフランドールは部屋から出なくなった。


フランドールは考えている

愛しても愛されないことについて


フランドールは愛に悩んだ

愛するだけではだめなのかと


フランドールは結果に嘆いた

愛を込めても、伝わらない



フランドールは答えをみつけた

求められるまでまってみようと




フランドールは部屋から出ない


フランドールは待っている。

愛する者が扉を叩くその時を



どうか必要になったなら

いつでも私を訪ねて欲しい

私はいつでも愛せます


だから私を、愛してください



どうか私を、愛してください







フランドールは待っている。

愛してくれる、存在を


だれか、私を、愛してください。