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『絶望の湖』 作者: ぷぷ

絶望の湖

作品集: 4 投稿日時: 2009/10/04 16:18:02 更新日時: 2009/10/05 01:18:02
・絶望の湖






「それ、どーしたの?」
「んー?」
「腕、腕。 赤いブツブツ」
「ああ、これ? なんか、毛虫かなんかにやられたみたいでさー。
 でも不思議なことに、痒くないんだ」
「ふーん。 ま、いいか」
「ま、いいね。 早く逃げないと、大ちゃんに捕まっちゃうよ?」
「そーだね、大ちゃん鬼ごっこ得意だもんね! 急がなきゃ!」









1、
永遠亭は大繁盛だった。

この所、患者の足が全く止まらない。
余りの忙しさに、面識のあるメディスンに手伝いを依頼するほどである。
医療知識など無い彼女に出来ることは、患者達の順番などの整備、診察後のアフターケア
位だが、それはつまり永琳や鈴仙が、そこまで手が回る余裕すらない事を示している。

今日もまた、マスクをしたメディスンや因幡達が忙しく働いている。


そんな大わらわの待合室の一角に、沈んだ面持ちで診察結果を待つ付添い人達が居た。
紅魔館の主だった面子。 レミリアの他、咲夜、パチュリー、美鈴だった。

椅子に座り、右手に顎を乗せて、左手の人差し指で落ち着かなさそうに椅子の手すりを
つつくレミリア。
仏頂面を何処へ向けていいのか分からず、仕方なく懐中時計を開いては閉じる咲夜。
青い顔をして、両手を握って俯く美鈴。
そんな危うい3名を見て、何時でもフォローできるよう、パチュリーは本の内容は頭に入れず、
3名の様子を見ていた。

そこに、マスクをし、奇妙な服を着た女がやって来た。
永琳である。 疲れきった表情だ。

彼女の姿を見たレミリアが、ガバッと立ち上がり、永琳に歩み寄った。

「…結果は? 陽性の妖精は居た?」
「……」

緊張した面持ちのレミリアが、永琳に尋ねた。
咲夜や美鈴も彼女達の傍に行き、パチュリーだけがやや離れた位置に立っている。

「…ゼロ、よ」

マスクを取った永琳が、僅かに微笑んだ。

それを聞いた瞬間、美鈴はへたりとその場に座り込んでしまった。

「よ、よかった… よかった、よかった… うぁあぁぁあぁぁぁん!」

緊張の糸が切れたのか、美鈴は大声で泣き出してしまった。
咲夜も余程安心したらしく、美鈴を止める役割も放棄して、近くの椅子に腰掛けた。

「め、美鈴。 ほら、気持ちは分かるけど、ちょっと落ち着いて…」
「だって、だってぇ… 安心し、安心したんですもん! パチュリー様!」

宥めるパチュリーの服に顔を埋め、号泣する美鈴。
パチュリーは呆れた様に、しかしやはり安心した面持ちで美鈴の頭を撫でた。


それらを見て、安心した様にため息をついたレミリアは、永琳に向き直った。

「…で、これからどうすれば? 当然、館には帰らないほうがいいのよね? あの子達は」
「出来れば、貴方達も暫く館には戻らないでくれる? ただ、小悪魔と妹さんも連れ出して
 欲しいから、1回だけ館に戻ってくれない?」
「わ、私達も… 徹底してるわね」
「リスクを考えれば、徹底しておくべきよ。 事情が事情だから、仮住まいは姫なり
 紫なりに相談して頂戴」
「うー……」

借りを作るのが嫌なのだろう。 レミリアは渋い表情を見せた。

「誰も借りだなんて思ってないわよ。 気持ちは分かるけど、今回だけは甘えなさい」
「……そうね。 つまらないプライドのために、事を大きくするのは愚作だわ。
 紫に相談してみる」

永琳の説得に、レミリアは簡単に折れた。
吸血鬼のプライド何ぞ、このような場面で持っていても無駄なだけだと判断したのだろう。


暫くすると、診察室の方向から、数十匹の妖精達がやって来た。
皆、紅魔館のメイド妖精である。

気づいた美鈴が真っ先に妖精達の元に駆け寄り、妖精達を抱きしめた。
咲夜も彼女達の元へ行き、穏やかな表情を浮かべて、声をかけている。

「…本当に、よかったわ」
「うん。 ありがとうね、永琳、パチェ」
「永琳は兎も角、私は何もしてないわ」
「混乱していた紅魔館を、上手く纏めてくれたじゃない」
「それは貴方もでしょ? レミィ」
「どっちでも良いわよ。 感謝の言葉ってのは、黙って受け入れるものなのよ、パチェ」

他愛も無い会話をする2名を見て、永琳は顔には出さないが、心底ホッとしていた。


━━━ これ以上、広まってくれなきゃいいんだけど…


あの湖の近くに位置している紅魔館。
そこの妖精達が全員無事だったのは大きい。


━━━ 『結界』を張るべき場所を、少し狭められるかもしれない
━━━ そうすれば、霊夢や紫も少しは楽になる筈だわ


彼女達が踏ん張れているうちに、薬を開発しなければ…

入院中の妖精達の世話もある。
まだ暫くまともに眠れる日は来ないだろうなと、永琳は気を引き締め直していた。












紅魔館から少し離れた場所にある、湖。


主にチルノや大妖精と言った妖精達の遊び場として、稀に人間達の釣り場として使われる事の
多い、いや多かった湖である。

現在其処には、人間など現れることは無い。
飛び回る妖精達の姿も見えない。

居るのは、既に動かなくなった妖精ばかりである。



両目の目玉が無い死体。

右肩が異様に膨らみ、左足が牛蒡の様に細くなっている死体。

体中に赤い発疹ができ、赤いゴーヤの様相を見せる死体。

頭が破裂し、赤い血を周辺にまき散らしている死体。


他、etc、etc…


湖周辺は、さながら地上の地獄と化していた。







「…チルノちゃん」
「…」
「○○ちゃん、死んじゃった…」

湖から少し離れた、森の中。
大木に寄りかかり綿毛の種子を一つずつ取っていたチルノの元に、大妖精が来てそう言った。

「……ふーん…」

チルノは大して関心なさそうに、綿毛を毟り続けている。

「…埋葬してあげる?」
「死体を触らない方が良いって言ったのは大ちゃんじゃん」
「そうだったね。 じゃあ、お墓だけでも作ってあげよ?」
「……いいよ、もう。 切りがないよ」

チルノはやはり関心なさそうに、綿毛を毟り続けている。

「…わかった」

大妖精はそれだけ言うと、その場から去っていった。
そして、そこから少し離れた場所にある、仮説の墓地へ向かって行った。



墓地へ向かう道中にも、沢山の死体が転がっている。
全て妖精の物だ。

顔見知りの妖精も何匹かいる。 お墓を作りきれていないものが大勢いる。
でももう、チルノの言うとおり、『切りがない』。


━━━ とりあえず、あの子の冥福だけ祈っておこう


あの病気で死んだ者は、二度と生き返らない。
妖精の冥福を祈る時が来るなんて、1年前の自分は想像もしていなかっただろうな、と
大妖精は考えていた。














2、
この奇妙な病気が流行り出したのは、3週間ほど前からである。


紅魔湖に、定期的に釣りに出かけていた人間が、頭が2倍ほどに膨らんだ妖精の死体を発見した。
翌日、彼が仲間内でその事を話題にすると、なんと別の人間達も奇妙な妖精の死体を
見かけていたらしい。
場所は、決まって紅魔湖の近く。

性質の悪い妖怪でも現れたのだろうか? と危惧した彼らは、慧音に相談した。
依頼を受けた慧音は、湖の地理事情に詳しい彼らを同行させ、早速調査に向かった。

道中、悲惨な死に方をした妖精の死体が、そこら中に転がっている。
血肉腐臭が漂う、紅魔湖というの名に、ある意味相応しい光景となっていた。

「…慧音さん」
「どうした?」
「この妖精… この頭のでかい妖精いるでしょ?
 私、3日前にこの妖精が死んでるのを見てるんだよ」
「それがどうかし……!?」
「おかしいじゃないか。 なんで復活しないんだよ。 妖精は死なないんでしょ?」









10日かけて永琳が調査した結果、判明したのは以下の点。


1、この病気は、妖精しかかからない
2、但し、妖精以外にも妖怪の体内には潜伏できる(発症はしない)
3、発症後、平均して3日で死亡する
4、この病気で死んだ妖精は復活しない(病気にかかった妖精、かも。 調査中)
5、紅魔館近くの湖に、何か原因がありそう。 現に、その近くに住む妖精しか発症していない


発症対象が妖精に限られているようで、とりあえず幻想郷の強者達は胸をなでおろした。
しかし、この病気が幻想郷全体に広がり、妖精が全滅してしまったら、幻想郷は崩壊する。
何にせよ、早急に手を打つ必要がある。

「…まずは、湖の近くに結界を張りましょう」
「病気を防ぐ結界? そんなもの張れないわよ」
「そうじゃなくて、妖精や妖怪が通れなくするための結界よ」

紫や霊夢と言った、幻想郷の主だった者達が、緊急の会議を開いていた。

「…ああ、成程ね。 しかし、妖精を通すなって言うのはちょっと難しいわねぇ…」
「難しくてもやるしかないわ。 霊夢、これから暫くはまともに眠れない日が続くのは
 覚悟して頂戴」
「まあ、しょうがないわね… 異変とか、起きてくれなきゃ良いけど」
「魔理沙にでも任せておきなさい。 というか、これ自体がかなり深刻な異変よ」

全くね、と霊夢はため息をついてお茶を口にした。

「感染を広げないためにも、徹底してやろう。 湖の近くに住む妖精だけじゃなく、
 妖怪達も調査の対象内だ」
「ルーミアとかね。 あの子みたいに、ある程度の知性のある子達なら、話は早いんだけど…」
「全てよ。 あの周辺に住む妖精や妖怪は、全て調査の対象。 手分けして、徹底的に
 やりましょう。 抵抗するなら、殺しちゃっても良いわ」

慧音、輝夜、幽々子と言った面々も、会議に参加している。
皆一様に、表情は真剣である。

「レミリア。 貴方の所の妖精は大丈夫?」
「…わからないわ」

紫の質問に対し、レミリアは力なく首を横に振った。

「…なるべく早い段階で、調査しなさい。 紅魔館から他に広まる可能性は低いけど、
 万一があるし、館内の妖精が全滅するのもいやでしょ?」
「……」

青い顔をしたレミリアは、ただ黙って頷くしかなかった。











結局、レミリアの抱えていた妖精達は皆無事だったが、湖の近くに住んでいる妖精達は、
既に4割が感染し、死んでいた。
あれほど騒がしかった湖の周りには、もう妖精のよの字も無いほど、その姿は皆無である。
比較的湖の近くにいた妖精達の発症率が高かったためだ。 妖精だって、その位は学習する。

そんな中、チルノや大妖精が無事なのは、奇跡なのか、彼女達が妖精にしては強いからだろうか…
何にせよ、彼女達はまだ生きている。

「……」

木に寄りかかっていたチルノだが、不意に立ち上がり、空に向かって飛んでいく。
しかし、木から数メートル上空に差し掛かった時点で、

バチッ!!
「ぎっ!」

結界に阻まれ、チルノは地面に墜落してしまった。
そこから先へは、どう頑張っても行けない。
判明して3日までは色々試してみたが、どうにもこうにもならない。

「…別に、閉じ込めなくってもいいじゃん…」

結界を張る当日、霊夢から説明があった。
感染を広げないために、この湖周辺を結界で実質的に閉鎖する、と。
当然チルノは反対したが、霊夢の本気の一撃により、チルノはまともな抗議をする前段階で、
気絶させられてしまった。

気絶する前にちらりと見えた、霊夢の悲しそうな表情が、チルノは今でも脳裏に焼きついている。














3、
それから2週間後。

嵐の吹き止む事の無い永遠亭に、大嵐が吹き荒れた。


「ふざけるなよクソ鴉! これはどういうつもりよ!!」
「ふざけてなんかいませんよ! どういうつもりも何も、私は幻想郷の為にやっているんです!」
「何が幻想郷の為だ! 自分の新聞を売り出したいが為にやってるだけじゃない!」
「今回の異変に限り、売名行為を行ったことは一切無いです! 何ならさとり妖怪の
 目の前で証明してみましょうか?!」

メディスンと文が、ものすごい剣幕で言い争っている。
待合室にいた他の患者達は、その険悪な雰囲気に怯えている。

「何事よ、メディスン」
「何もなんも、これよこれ!」

騒ぎを聞きつけてやって来た永琳に、メディスンが新聞を突きつけた。

内容は、『紅魔湖及びその周辺に住む妖精&妖怪リストはこれだ!』。
記事には 『このリストに載っている妖精や妖怪を見かけたら、直ちにその場で殺し、
 巫女や隙間妖怪を呼んで対処すべし』 と書かれている。
リストには当然、チルノや大妖精と言った面々の名前が載っている。
ご丁寧に、何割かは顔写真つきである。

「こんな記事を書かれたら、湖の周辺に住む子達がどんな扱いを受けるかわかるでしょ?!
 今だって、ルーミアはここに入院しているのよ?!」

正確には隔離だ。
ルーミアが病原体を体内に持っていることが検査の結果分かったので、ルーミアの了解を
得た上で、永琳は彼女を被験者とさせてもらっている。

「だから彼女はリストから外してあるじゃないですか! 私だって、極力混乱を最小限に
 抑える努力はしているんです!」
「そもそもこのリストをのっける時点で大混乱でしょうが!」

虐げられる者の気持ちが分かる為、妖精の味方をしたいメディスン。
天狗の仲間は勿論、幻想郷の全ての生物の為に、リストを広める事が必要だと考える文。

両者に正義は、それぞれ言い分がある。
しかし、命が関わる事柄の為、お互い全く譲歩できないのだ。

「大体、どっからこのリストは手に入れたのよ! これが正しい確証なんて、何処にも
 無いでしょ?!」
「その点に関しては、問題ないです。 100%、間違いの無いリストです!」
「なんでそんな事言い切れるのよ! 妄想、独善で物事を語るのも大概にしなさいよ!」

我慢しきれなくなったメディスンが、文の胸倉を掴んだ。
そのメディスンの手を握る文。

「…やりますか?」
「望むところよ! 表に出なさい!!」

一触即発の雰囲気の中、

「メディスン」

永琳が割って入った。

「鈴仙が大変そうなの。 手伝いに行ってあげて?」
「何よ! 永琳が行けばいいじゃない」
「行ってあげて? お願い」
「だから永琳が」
「お願い」
「……」

永琳が、メディスンの目をジッと見ながら、彼女の両肩に手を置いた。

「……」

しばし沈黙していたメディスンだが、やがて折れた。

「永琳の頼みだから、行ってあげる。
 ……覚えてろよ? クソ天狗」

文を睨みつけたメディスンが、診察室の方へ向かっていった。
文はそれを見て一瞬だけざまあみろと言った笑みを浮かべたが、直ぐに表情を引き締め、
永琳の方に向き直った。

「これはオフレコです。 絶対記事にしないので、教えてください。
 …リストの出所は、貴方ですよね?」

文が、永琳の耳元でボソッと話した。

「…突拍子も無いわね。 何でそんなことを聞くの?」
「このリスト。 私は、仲間の白狼天狗から偶々手に入れることが出来たんです。
 半ば強奪に近かったのですが」

そう言うと、文は懐から紙を取り出した。
その紙には、妖精達の名前がズラリと並べて書かれている。

「このリストを元に、警戒態勢を高レベルにしていました。
 ああ、高レベルって言うのは、『招かれぬ侵入者は、発見次第殺せ』っていうレベルでして」

リストを捲りつつ、文は続ける。

「…なんというか、的確すぎるんですよね、これ。
 チルノさん以外にも、何匹か知っている妖精がいるんですよ、私。
 それらの名前が、しっかりリストに入っている…
 偶に、あれあの子の名前が無いなって言うのがあるんですが、逆にそこがリアルで」
「文」

永琳が、文の発言を途中で止めた。

「帰りなさい。 そして暫く、ここには出入りしないで」
「新しいリストが必要です。 そして、それを幻想郷の皆に伝えなければなりません」
「帰りなさい」
「必要なことなんです! これはリストに載っていない妖精達の身の安全を
 確保する事も意味しているんですよ!
 聞いているでしょ! 見ているでしょう!
 幻想郷中で妖精達が、どんな目にあっているか!」

この奇病が妖精に対してのみかかる、という事が判明してから、幻想郷中の妖精達は
あらゆる所で迫害を受けている。

「お願いです、永琳さん! 最新のリストを…」
「帰れと言っている!!!」

幻想郷に来てから、初めてかもしれない。
永琳は文を、感情的に怒鳴りつけていた。

「私のやる事は、この病気の解明、病気にかかった者の治療の2つよ!
 貴方の報道に手を貸す道理は無い!!」
「えいr」
「帰れ!! 二度と来るな!!!」

顔を真っ赤にして怒鳴った後、永琳は踵を返して診察室へ戻っていった。

文は暫し呆然とそれを見ていたが、やがて舌打ちし、近くのゴミ箱を蹴り上げると、
待合室の者達を押しのけるような形で、永遠亭から出て行った。



















4、
「熱は?」
「無いようですが… かなり弱ってますね。 休養が必要です」
「そう… ついに体を壊しちゃった、ってことね」
「無理もありませんよ。 紫様も、大丈夫ですか?」
「…キツイだなんて言ってられないわ」

永遠亭で喧騒があった翌日。
博麗神社の一室で、紫と藍が、心配そうに霊夢を見つめていた。
霊夢は布団で寝ており、青白い顔をして眠っている。

結界を広範囲に渡って張るという肉体労働に加え、自分が間接的に妖精達を見殺している事、
異変解決の糸口さえ全く見つからないという精神的な疲労が、霊夢を苦しめていた。
その霊夢は、ついに昨日ダウンしてしまい、今こうして神社で休養中というわけだ。
本当なら永遠亭に連れて行った方が良いのだろうが、永遠亭の混乱っぷりや、まとめ役の
永琳が相当の疲労困憊、且つイライラ状態にある事は、紫も把握していた。

よって、その選択はせず、自宅療養としているわけだ。

「藍」
「はい」
「ここで構わないわ。 今すぐ、10名程度が座れるような会議室を準備して。
 私は勢力の長達に声をかけてくる」
「…緊急会議ですね、了解しました」
「頼んだわよ」

そう言うと、紫はスキマの中へ消えて行った。















紅魔湖の周辺では、妖精は2ヶ月前の3割ほどに減っていた。

病気で死ぬ妖精達が後を絶たないのは勿論、妖精同士のいがみ合いも頻繁に発生していた。
病気の症状が出たと判断するや否や、自分に感染しては堪らないと、先手を打って他の妖精を
殺し、湖に沈める妖精達が多数いるからだ。


「しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
 しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
 しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね」


赤髪の妖精の頭に、手ごろな大きさの石を数百回叩きつける、白髪の妖精。


「やめて! お願い、まだ大丈夫だから! まだ喋れるし、おしっこもできるから!」
「五月蝿い黙れ! さっさと死ね!!!」
「やめ… いぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 
発症し、既に両耳が腐って無くなってしまった紫服の妖精に、お手製の石斧を振り下ろす、
灰色の服の妖精。



嘗ての仲間達に向かって、躊躇無く牙を向ける妖精達。
絶望の閉鎖空間の中は、正に『皆殺しのサバイバル』状態だった。




「ま、待って!!」

そんな絶望の中。

「何よ、大ちゃん!」
「関係ないでしょ! あっち行ってよ!!」

黄色い目の妖精と、茶色い目の妖精の間に、大妖精が入る。
比較的力があり、尚且つ理性ある彼女が、必死に森中を駆け回っていた。

少しでも、皆を落ち着ける為に。
少しでも、死を先伸ばす為に。
少しでも、以前のような関係に戻れる為に。

「二人とも落ち着いて! まだ二人とも発症してないよ!」
「してるよ、アイツは! だって、さっきから訳のわかんないことばっかり言ってるんだもん!」
「訳わかんないのはアンタの方でしょ! いきなり顔を殴ってきて… 何のつもりよ!!」
「やめなさい!!!」

大妖精が大声を張り上げ、二人を宥める。

「いーや、やめないよ! おいお前! 殺してあげるよ、かかって来い!!」
「死ぬのはお前の方だ! 覚悟しろよ!」
「やめてって言ってるでしょ! もう、お願い、だから、やめ、て…」
「…!?」
「大ちゃん?」

大妖精は泣き出してしまった。
もう仲間内で殺しあう光景は、彼女は見たくないのだ。

「やべて… おねがひ… ね、おねがひ…」

涙と鼻水をたらし、大泣きする大妖精。
そんな彼女を目の当たりにして、2名の妖精も毒気を抜かれたようだった。

「…ごめん。 ちょっとイライラしてたんだ」
「いや、私もごめん… 大ちゃん、泣かないで…」

落ち着きを取り戻した妖精達は、大妖精のフォローに回った。

「永琳先生がね。 いつか絶対、お薬作ってくれるからね…」

泣き止んだ大妖精が、噛みしめるように言った。

「皆で、頑張ろうね… 絶対、生き残って、また皆で鬼ごっこしようね…」

大妖精の心からの言葉に、2名の妖精も心から頷いた。



















「…こりゃ、想像以上に酷いね…」
「穴だらけじゃない… どうするの?紫」

守矢の二柱が、紅魔湖周辺の地図を見ながら、渋い顔をしている。


神社に設けた仮の会議場で、幻想郷の強者達が話をしている。
大きな机の上に、紅魔湖の周辺を著した地図がある。
その地図には、所々赤いインクで○が書かれている。
会話から察するに、どうやら結界に所どころ穴が出来てしまっているらしい。

「霊夢がダウンしちゃった以上、どうにもならないわ。 私と藍だけじゃ、全部は見切れない」
「…他に、何か打つ手は?」
「○が書かれている箇所を、それぞれ役割分担して、監視するしかないわ。
 そこから絶対妖精を出さないように」

白蓮の問いに、紫はその様に答えるしかなかった。

「あまり近づけたら拙いんだよね?」
「良くはないわね。 …結界の穴に仁王立ちして、妖精が来たら戻るよう忠告。
 それで戻らなければ、その妖精は殺してもらって構わない。 いや、殺すべきよ」
「気が引けるが… まあ、仕方ない、か…」

頭を抱える二柱と紫。
その場に居た他の者達も、思いは一緒である。


しかし、やるしかない。

















5、
「やめときなよ、チルノちゃん!」
「何でやめるのよ! こんなチャンス、もう来ないかもしれないんだよ!!」


天気は曇り。 紅魔湖近くの森の中。
妖精達が力を合わせて、何とか作った集会所。

そこに、今や3ヶ月前の数%にまで数を減らしてしまった妖精達が集まっていた。
その妖精の代表格である2名が、言い争いをしている。

大妖精と、チルノである。


「戻れって言われたんでしょ? 来たら殺すって言われたんでしょ? 行っちゃダメなんだよ!」
「じゃあ此処で、死ぬまでボーっとしてろって言うの?! こんな所に居続けたって、
 何の希望も無いことぐらい、大ちゃんだって分かってるでしょ?!」
「ま、待つしかないよ! 永琳先生が…」
「まーた始まったよ! 永琳先生が、永琳先生が、えーりんえーりんえーりんえーりん!
 そう言い始めて、何日がたったと思ってるのよ!!」
「そ、それは…」

どうやら、大妖精が劣勢のようだ。
チルノは周りに居る妖精達を味方につけ、優位に立っている。

「チルノちゃんの言うとおりだよ、大ちゃん。 此処にいたって、何の解決にもならない」
「私はチルノちゃんの誘いを受ける。 一緒に脱出するんだから!」
「み、みんな…」


チルノが言うには、昨日、森の中をフラフラ歩いていたら、遠くに顔見知りの人物が居るのを
発見したらしい。
曰く、守矢神社の風祝と神様だった、との事。
その彼女達、チルノの姿を見るや否や、大声でこっちに来るな! と叫んだらしい。
頭に来たチルノが向かっていこうとした所、明らかに殺気を込めた弾幕を放たれたらしい。

命からがら逃げてきたチルノ。 そして、今に至るわけだ。


「あいつらさえ退かせば、その先は絶対結界の外よ。 そうに決まってる!」
「そーだよね。 そうでもなきゃ、そんな所に立っている理由なんかないもんね」
「でしょ、でしょ?!」
「…」

黙って聞いていた大妖精だが、彼女もチルノの直感は恐らく正しと読んでいる。
だからこそ、尚更危ないのだ。

「やめようよ、チルノちゃん! 我慢して待とうよ!」
「五月蝿い! 大ちゃん一人で待ってればいいじゃん! あたいは行く!」
「私もいくよ、チルノちゃん」
「私も!」
「いくいく!」

大妖精に啖呵を切って、歩き出したチルノ。
彼女に追従するように、大妖精以外の妖精達も歩き出した。

大妖精は止めたいが、どうやってもこれは止められないだろうと悟った。
へたり込んでしまった大妖精を他所に、チルノを初めとした妖精達は、昨日チルノが
行った場所を目指して飛んでいった。









「……思った通りだね。 来たよ」
「人員を増強して正解でしたね」
「来ちゃったか…」
「引き返そうな雰囲気は…」
「…ない、ですね」

ある一つの、結界の欠落箇所。
守矢の二柱と早苗の他に、幽々子と妖夢が其処にいた。

「警告は私がします。 もし聞かなかった場合は…」
「わかってるさ」
「やるしかないね」
「3人で徹底的に厚い弾幕を放って頂戴。 残りは私が片付けるわ」
「了解です、幽々子様」

5名がそんな話をしていた時、チルノが早苗達に向かって大声を出した。

「おい! そこの緑! あと蛙! あとその他! 其処をどいて頂戴!」

怒りを露にして叫ぶチルノ。
対して早苗はあくまで冷静に、しかしやはり大声で叫んだ。

「昨日話した通りです! ここはどきません! おとなしく引き返してください!」

叫ぶ早苗の直ぐ傍で、諏訪子達が力を溜め始めている。

「フン、脅しなんか効かないわよ!」
「私達はやりたいようにやるもん! 何で人間とか神なんかに邪魔されなきゃいけないのよ!」
「いくったらいくんだからね!」

妖精達は早苗の忠告を物ともせず、早苗たちの下へ向かっていった。

「…打つかい?」
「まだ早いわ」
「もうちょっと待ちましょう」
「早苗。 もう一度、声を掛けて」
「はい、諏訪子様」

諏訪子の依頼を受けた早苗が、最後通告とばかりに、威厳の篭った声で言った。

「妖精達、止まりなさい! これは最後通告です! 来るなら容赦はしませんよ!!」

チルノを初めとした妖精達は、一瞬だけ怯んだが、直ぐに気を取り直した。

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい
 うるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 あたいは出るっていったらでるんだ!!!!
 そこをどけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!」

半狂乱になって叫んだチルノが、早苗達に向かって飛び出して行った。
釣られて、他の妖精達も向かっていった。


















「…!?」

一人、集会所の切り株椅子に腰掛け、うなだれていた大妖精。
そんな彼女だったが、何かを直感で感じた。


━━━ チルノちゃんが… チルノちゃん!


第六感だろうか?
チルノの身の危険を感じた大妖精が、チルノ達の向かっていった方へ飛んでいった。








道中。
彼女は色々な妖精達に出会った。


五体バラバラの妖精。

顔が御柱で潰された妖精。

奇妙な輪で首を絞められ、絶命している妖精。

体中を虫に食い千切られたかのような妖精。



それらは大妖精の視界に入るようで、入らなかった。


━━━ チルノちゃん、チルノちゃん!


必死に、前に向かって飛び続けた。











数秒後。

彼女はお目当ての氷精と対面していた。

彼女の左足は潰され、右足は折られ、右腕は斬られ、左腕は跡形も無くなくなっていた。

「チルノ、ちゃん…」

大妖精はその場にペタリと座り込んでしまった。
しかし。

「だい、ちゃん…」
「…!?」

なんと、チルノはまだ生きていた。
苦しそうに、本当に苦しそうに息をしてはいるが。

「チルノちゃん! チルノちゃん!!」
「大ちゃん… 私ね…」

泣きながら自分の名前を呼ぶ大妖精に、チルノは息も絶え絶えに話し始めた。

「実はね。 発症してたの」
「!!」

チルノの驚くべき告白に、思わず息を呑む大妖精。

「目がね。 右目がね、よく見えなくなってたの。 …でもね、言えなかった。
 怖かったの。 とっても。 自分が病気だって認めることが、凄く怖かったの」

チルノは泣きながら、噛みしめるように言葉を発し続けた。

「だからね。 なんとかしたかったの。 もう大ちゃんと会えなくなるなんて、絶対嫌だった。
 絶対に、生きたかった。 だから、森の中で待ってちゃ、ダメだった。
 生きたかった、生きたかった、いぎっ」

そこまで言うと、チルノは口から大量の血液を吐き出した。

「ち、チルノちゃん!! 大丈夫?!!」

ダメに決まってる。
しかし、大妖精はそう叫ばずには居られなかった。

「もう、だめ… ゴメンネ、大ちゃ… またいつが、いっじょ、に、おにご、ご…」

其処まで口にしたところで、チルノの目から光が消えた。
大妖精は、脈を取らずとも直感した。



チルノは、死んだ。





















「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


今まで我慢していたものが、一気に噴出した。
今まで必死に理性で抑えていたものが、抑えきれずに飛び出した。


「なんでよ… なんでよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!」


大妖精は半狂乱になって叫んだ。


「なんで?! ねえなんで!? なんで私がこんな目に合わなきゃいけないの?!
 なんでチルノちゃんが死ななきゃいけないの!? 
 ねえなんで?! なんでなんでなんでええええええええええええええええ!!!!!!!」


その時。


「ぐぇ!!??」

数メートル吹っ飛ばされる大妖精。
数秒後、大妖精は自らの体に、弾幕が打ち込まれた事を確認した。
飛ばした者は…

「……おまえかああああああああああ!!!!」

早苗が冷たい視線で、大妖精の正面に向いている。

「しねええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

早苗に向かって、弾幕を放つ大妖精。
しかし、それらはいとも簡単に避けられてしまった。


そして、お返しとばかりに、大妖精に弾幕が襲い掛かる。


柱が。

「あが!?」

鉄の輪が。

「ぎぃ!!!」

斬撃が。

「ぎゃう!!」

蝶が。

「がはぁ!!」


大妖精の小さな体を、破壊していった。

















「…もう十分ね」

妖精一匹に、数十もの蝶を放った幽々子が言った。

「…そうだね。 これ以上は、やってもやらなくても結果は一緒だ」

神奈子がそれに同意したようで、戦闘体制を解除した。

「せめて、死の姿だけは、見ないで置いてあげようね…」

諏訪子が悲痛な面持ちで言った。

「…というと、彼女も発症済みなんですか?」

早苗が諏訪子に質問した。

「…貴方はあの子の事を詳しく知らないでしょうが…
 彼女の左羽、形が明らかにおかしかったです。 恐らく、彼女も発症済みです」

答えを返したのは、妖夢だった。

「…さ、帰ろう。 見るものじゃない。 また、見ていいものじゃない」

神奈子の発言を最後に、5名はその場から去っていった。























雨が、降り出していた。

上空の雲は、その残酷な光景に、思わず涙してしまったようだ。

しかしその涙は、残酷に大妖精の体を冷やしていった。



━━━ なんで、こんなことになっちゃったんだろう…


チルノや他の妖精達と、楽しく鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり。

偶にやってくる人間と、弾幕勝負で遊んだり。


そんな楽しい日々の光景が、大妖精の頭の中に流れていた。


━━━ もう、だめ、…


大妖精は、自分の死を自覚し始めていた。
…死ぬって、こういうことなんだ。


━━━ わたし、もう、しんじゃ、う…


下半身の感覚が、無くなった。


━━━ しんじゃ…


先ほどからうるさいほど聞こえていた心臓の鼓動音が、止まった。


━━━ …





雨は、止まない。
涙は、止まらない。

しかし、大妖精の心臓は、止まった。






















永琳がその病気に対する薬を開発し終えたのは、それから1週間後の事だった。





fin
作品集1で、pnpさんの『原因不明の病気』という作品がありますが、それが『原因の分からない病気の恐怖&それに対する
住人の混乱』をテーマに扱っているのに対し、この作品は『(一応)原因が分かった場合、社会はどう動くか?』
という事をテーマにしています。
それにしても、名無しのキャラを主人公にしたSSを書く日が来るとは、思ってなかったなぁ…
ぷぷ
http://blog.livedoor.jp/pupusan/
作品情報
作品集:
4
投稿日時:
2009/10/04 16:18:02
更新日時:
2009/10/05 01:18:02
分類
まさかの大妖精
チルノ
疫病
1. 名無し ■2009/10/05 01:42:16
復活の日を思い出した
神社に引っ越してた三月精は無事だったんでしょうかね?
2. 名無し ■2009/10/05 02:26:38
いいわ〜
ぷぷ氏のシリアス物はやっぱいいわ〜
3. pnp ■2009/10/05 06:17:00
どんだら面白かったです。
 以前私も病気ネタ書きましたが、これは敵いませんわ。
完全隔離とか、外に出たら殺害とか、
いい鬱分が豊富で…

素晴らしい一日の
スタートを切ることができました。
4. 名無し ■2009/10/05 06:31:37
地獄絵図だなー
面白かったです
5. 排気ガス ■2009/10/05 08:31:59
ぐおー…こいつは影響されるなって方が無理だ…素晴らしい欝分でした
6. ウナル ■2009/10/05 10:11:55
なんかね……心がひゅんってきた
7. 名無し ■2009/10/05 18:04:05
文がガチで週刊誌の記者みたいだ。
8. 名無し ■2009/10/05 19:00:55
誰も悪くないというのがまたいいね
9. 紅魚群 ■2009/10/05 20:38:47
はぐわぁ!もうど真ん中ストライクなんですけど…
各幻想郷住民の心情も然ることながら、温和で優しかった大ちゃんが最後チルノを殺されて怒り狂うあたりも最高。
賞賛の言葉しか浮かびません。名作を有難う。
10. どっかのメンヘラ ■2009/10/05 20:52:55
なんだろうな・・・こういう病気は精神もむさぼるね
11. 名無し ■2009/10/05 22:31:03
いやぁいい鬱話だった
12. 名無し ■2009/10/05 23:44:36
統計と固有性のぶつかりあいっていいですよね
13. risye ■2009/10/06 00:46:05
文もみんなのためにやっているのが・・・

誰が悪いのか解らないのがホントに好きです。
14. 名無し ■2009/10/06 14:03:53
ペストを思い出すな
カミュは俺の神様だよ
15. 名無し ■2009/10/14 02:11:14
大ちゃん……
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