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『超高齢者戦隊ババレンジャー【第3話】』 作者: どっかのメンヘラ
「流し雛」という風習がある。
古くは「源氏物語」の須磨の巻に出てくるほど長い歴史を持つ風習で、「形代(かたしろ)」と呼ばれる自分の身代わりとなる紙などで出来た人形に足や手や頭や息子など自分の調子の悪い部分をこすりつけ厄を移し、川などに流し厄払いをする風習で、今でも昔と変わることなく行われている。
しかしこれは川にゴミを流していることにならないだろうか?
確かに否定は出来ない。風習とは言えど、川に物を流しているのだから。
われわれは環境のために、何らかの代打策を編み出さねばなるまい。
そのひとつに「形代をトイレットペーパーで作ってトイレに流せばいいんじゃね?」という考えがある。
確かに環境負荷が低そうだが本当にこれで厄を払えるのだろうか?
厄を含んだトイレットペーパーは下水を延々と流れまず汚水処理場へ行く。
そこでトイレットペーパーなどの大きいゴミは第一沈殿槽といわれるところに沈む。
つまり人々の厄を溜め込んだトイレットペーパーは汚水処理場にたまってしまうのである。そうすれば汚水処理場が厄い状態になってしまいそこの職員に疫病がはやったり唐突かつ不条理に爆発してしまうかもしれない。
この方法はあまりよくなさそうだ。
かように、古来からの風習を守るということは、なかなかに難しく、人々の情熱なしにはその存続は難しいのである。
(稗田 阿求著「便器とトイレットペーパーと私」より抜粋)
「超高齢者戦隊ババレンジャー第3話・死別!友との別れ!そして戦いへ!」
どごおぉ!!!
神奈子の拳が永琳の頬にめり込む。地面に倒れこむ永琳。口から折れた歯がこぼれた。
「お前に・・・お前みたいな死なない宇宙人に何が分かるんだあああああぁぁぁ!!!!!!!!!」
神奈子がほえる。
永琳は起き上がると、全速力で駆け寄り神奈子に全力でボディブローをかます。
「ぐぶふぉお!」
「分かる訳ないわ・・・腑抜けの気持ちなんて分かりたくもないわあああああぁぁ!!!」
永琳がほえる。
命蓮寺の境内に神奈子と永琳の怒号と殴りあう音が聞こえる。
「やめて・・・もうやめて二人とも!もうやめてええぇ!!」
幽々子の泣き叫ぶ声が聞こえる。
白蓮はただただ半べそでおろおろするばかりだ・・・。
紫はただこの光景を顔をしかめ見ていた。彼女はそうすることしか出来なかった。
諏訪子が死んだという一報を受けた5人。洩矢神社についた頃には、小兎姫率いるおかっ引たちと博麗霊夢、霧雨魔理沙、そして多数の野次馬たちがいた。
神奈子はあわてて神社に駆け込む。そこには床に伏して、事切れている諏訪子の姿があった。
「諏訪子・・・!諏訪子!諏訪子おおおおおぉぉぉぉ!!!!!」
神奈子が諏訪子に駆け寄る。物言わぬ諏訪子の体を抱き上げ、怒りと悲しみに喉を振るわせた。
「うおおおおぉおぉぉ!!!!!!諏訪子おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおぉ!!!!!!!!」
泣き叫ぶ神奈子に霊夢と魔理沙が近寄り、そっと慰めた。ほかの4人と小兎姫は沈痛な表情で神奈子たちを見る。悲愴感漂う光景だが残念ながらここにいる人々に現場保存の概念は存在しなかった。
諏訪子は発見されたとき、うつぶせに倒れた状態で発見された。顔は悲しみと死への恐怖でゆがんでいた。
首にはロープが絡まっており、しかも首を絞められた跡まで残っていたので諏訪子は何者かに絞殺されたものと判断された。
諏訪子の頚椎が折れていたこと、諏訪子の首の後ろ側にロープの跡が無かったこと、そして天井の梁にロープの跡と諏訪子の足と同じ大きさの足跡があったなどの状況から、明らかに諏訪子は自分の首にロープを掛け一方を梁に結び付けてそこから飛び降り首吊り自殺をはかったこと、ロープはその重さに耐え切れず千切れてしまったこと、諏訪子の死因は窒息死ではなく頚椎損傷だったことなどが分かりそうだが、残念ながら人と会わなさ過ぎてお頭が残念なことになっている小兎姫や、普段お茶を飲んでごろごろしながらくだらないバラエティを見るのを日課とし火曜サスペンス劇場などはほとんど見ない霊夢、キノコを利用した魔法研究に没頭してテレビ自体ほとんど見ない魔理沙にはそんなプロファイリングなど出来るはずも無かった。
無論揃いもそろってババァ脳のババレンジャーたちが分かるはずも無い。
重要参考人である東風谷早苗は神社からいなくなっていた。早苗が日常的に諏訪子を虐待していたことは数少ない参拝者の証言から分かっていたため、犯人であることが疑われた。
「直ちに早苗さんを見つけなければなりません・・・。彼女が犯人であることも視野に入れて・・・。」
「早苗が犯人・・・そんな訳があるか!!!!早苗は優しい子だからそんなことはしない!!!!!!暴れたりしたのだって酔っ払ってたのが原因だよ!!!!」
神奈子が小兎姫の胸倉をつかみ吊り上げた。
「いやああああ!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
小兎姫が泣き叫びながら謝る。
あわてて間に入り神奈子をなだめるババレンジャーと霊夢たち、メンタルが陵辱系同人誌に出てくる女の服並みに弱い小兎姫は完全に平常心を失ってしまった。小便を漏らし頭を抱えしゃがみ込み震えている。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいもうしませんゆるしてくださいこわいこわいこわいこわいころされるころされるころされるたすけておかあさんおとうさんおじいちゃんおばあちゃんいやだいやだいやだいやだもうおうちかえる・・・。」
こうなってしまうともうおかっ引たちにもどうにもならない小兎姫。家に運んで抗不安剤を三種類ほど飲ませ寝かしつけないといけない。
「くそっ!誰がこんなことを・・・くそっ!」
神奈子は部屋の柱を叩きなき続ける。霊夢がそっと神奈子に近寄りいった。
「神奈子・・・。少し話があるの。」
神奈子が涙にぬれた顔を霊夢に向ける。
「最近ある犯罪組織が人里で勢力を振るっているらしいの。「バカ十字団」って聞いたことあるでしょう?あれもその犯罪組織の一部、あるいは下位組織らしいの。」
「じゃあ諏訪子は・・・諏訪子はそいつらに殺されて早苗は拉致されたってことかい?」
霊夢は静かに首を横に振った。
「確証は無いわ。でも私も早苗はそんなことするはずが無いと思うし、可能性としてはそちらのほうが高いと思うの。」
「・・・・・。」
神奈子は少しひくつきながらぼんやりと考えていた。
幽々子が近づいた。
「神奈子・・・諏訪子をどう弔う・・・?」
幻想郷では普通神が殺されたり何らかの不慮の事故で死んだ場合、巫女か後任の神などが喪主となり信者に指示をして弔いの儀式を盛大に行うことになっている。
喪主は神奈子がするにしても、もう洩矢神社にはほとんど信者がいなかった。金銭的にも大きな儀式は出来ない。
「私が・・・私が一人で墓に埋葬するよ・・・。儀式はしない。あの子も変に小ぢんまりした儀式を開かれて恥ずかしい思いをするよりそっちのほうがいいって言うと思うし。」
神奈子が言う。
「あの神奈子さん・・・。」
白蓮が言う。
「私のお寺・・・命蓮寺でその儀式を開くのはダメでしょうか・・・?」
「白蓮・・・。」
神奈子が涙にぬれた顔を向ける。
「諸経費はすべてこちらが負担します。うちは神社ではなくお寺ですけど・・・いいでしょうか?」
「白蓮・・・・・。」
「私も・・・私も萃香に頼んで人を集めようか?」
霊夢が言った。
「神奈子・・・私たちも手助けするわ・・・。」
ほかのババレンジャー三人が言う。
「何だよ私を差し置いて!盛り上げるのなら得意だぜ!」
「バカ!諏訪子を弔うのに何で盛り上げるのよ!」
霊夢がお払い棒で魔理沙の頭を叩く。
「いでっ!そんな強く叩くなよ〜。冗談だよ冗談!」
魔理沙がなみだ目になる。
「みんな・・・みんなありがとう。」
次の日、命蓮寺で弔いの儀式がしめやかに行われた。
日本の土着神を仏教形式で弔うという非常に珍妙な儀式だったが、諏訪子はきっとそんなこと気にしないだろうということで誰も異議は唱えなかった。
諏訪子はかしこまった堅苦しい雰囲気が苦手だからという理由で皆私服で参加した。
当日はババレンジャー五人に霊夢、魔理沙、萃香や、そのほか諏訪子と近かった人々や妖怪の山の重役たちが来ていた。
思いのほか萃香の能力が無くても洩矢神社の元信者たちは多く集まった。みんな宝船が変形して出来た奇抜で縁起のよさそうなお寺に一時期心を奪われていたが、結局この洩矢神社のほうが思い入れが強かったらしい。
特に小さな子供の信者たちは皆心のそこから悲しんでいた。神社の近くでかくれんぼや鬼ごっこをしているといつも諏訪子が混じってきたらしい。
「ひっぐ・・・ひっぐ・・・諏訪子様ともっと遊びたかったよう・・・。」
「嫌だよう・・・諏訪子様とこんな風にお別れするなんてヤダよう・・・。」
(諏訪子・・・あんたこんなにたくさんの人に愛されてたんだね・・・。あんたは本当に幸せ者だね・・・。)
途中白蓮がお経をど忘れしたり、文があんまり無神経に写真を撮ったりインタビューして回っていたのでビデオカメラを担いで文をアシストしていた椛もろとも大天狗から大目玉を喰らい山に帰らされてしまったというハプニングがあったが神奈子はそれを見るたび少し笑っていた。諏訪子がどこかで笑ってそうな気がしたからだ。
そして儀式が終わりに差し掛かる。棺が境内の真ん中に置かれた。
白蓮が小声で呪文を唱える棺から炎が上がった。
(諏訪子・・・さようなら。)
神奈子は空へと立ち上って行く煙を見つめる。
魔理沙が八卦炉を空にかざすと、そこからビームを発射した。
ビームはしばらく空を突き進んだ後、秋晴れの空よりもまぶしい極彩色の花火を空に咲かせた。
「あいつは趣味がガキっぽいからな。今頃あの世で大喜びしてるぜ。」
儀式が終わり、皆が帰った。残っていたのはババレンジャーの5人と命蓮寺の面子である。
諏訪子の遺灰を集めつぼに詰めた終わったところだ。
「みんな、話がある。」
神奈子が突然ババレンジャー4人に話しかける。
「私は・・・私は今日限りでババレンジャーを辞める。」
「え・・・・?」
4人は言葉を失う。
「も・・・もう神奈子ったら何言ってるのよ。冗談が下手ねえ。」
あせりながらも笑顔を取り繕う幽々子。
「冗談なんかじゃないよ・・・私は本気さ。」
皆の表情が固まる。
「神奈子さん・・・神奈子さん本気なんですか?」
白蓮がいう。
「ああ・・・。」
「神奈子・・・あなたはどう思ってるの。」
紫が悲しげな顔で言った。
「あなたは口ではババレンジャーを辞めたいといっている。でも本心はどうなの?本当に心のそこから私たちと戦うのを止めたいと思ってるの?」
「私は・・・私だって本当はババレンジャーをやめたくない。止めたくないんだ!でも私は諏訪子を守れなかった・・・。私に正義の味方を名乗る資格は無い・・・。」
「神奈子さん・・・。」
白蓮がつぶやく。
「神奈子・・・神奈子、考え直してよ。たった一度の失敗でしょう・・・?」
永琳が言う。
「たった一度の失敗?たった一度の失敗だと!?」
神奈子が声を荒げた。
「たった一度の失敗でひとつの大切な人間の命が永遠に失われるんだぞ!!お前は人の命を何だと思ってるんだ!!!!不老不死だか月人だか知らないが人の命を軽く見やがって!!!!お前みたいな奴に大切な人間を失う気持ちが分かるか?!!!!分からないだろうが!!!!!」
神奈子が咆えた。永琳はうつむいたが、やがて小さく、しかしはっきりとつぶやいた。
「意気地なし・・・。」
「何・・?」
「意気地なし!」
「・・・何て言った!」
「聞こえなかったの!?意気地なし!!!!何度だって言ってやるわ!!!!大事なものを失うのが怖くて戦いを投げ出そうとしてるアンタのことをいってんのよ!!!!この意気地なし!!!!」
「きっ、貴様あああああああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
神奈子が永琳の頬に強烈なブローを食らわす。地面に吹き飛ばされる永琳。
「ほっ、本当のこと言われて反論できなければ暴力かああぁ!!!このろくでなしがあああああああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
永琳は地面から跳ね起きると神奈子の腹に渾身の右アッパーを食らわした。
「ぐああああぁぁぁ!!!このアマあああああああ!」
神奈子の猛烈なストレートが永琳の腹を刺す。
「ぐおおごぉ!!!このあばずれがあああああ!!!」
「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
「おらあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
怒号とともに殴り合いをはじめた神奈子と永琳。周りの人々はただただ見守るしか出来ない。二人の気迫が、それに割って入り仲裁することをを許さなかったのである。
幽々子の声も聞かず、二人は荒々しい怒りの感情のぶつけ合いを続ける。
先ほどの勢いはなくなり始めていたが、それが却って痛々しさを強調した。
「うおおおおぉぉぉ!!!!」
「おらあああぁぁぁ!!!!」
がしぃ!
二人の拳がぶつかり合う。互いに力が拮抗し、ぶつかり合った拳は動きもせず、宙に浮いた。
しばし沈黙が流れる。二人の荒い息遣いだけが聞こえた。
「・・・なかなかの豪腕ね。伊達にあんなでかいもの振り回してないわね。」
「アンタもインテリの割になかなかいいパンチしてるじゃん。」
「・・・・・・・・・・ぶふっ!」
二人は同時に噴出すと腹を抱えて笑い始めた。
何がおかしかったかも分からない。ただただ笑い続けた。
夕日で赤く染った静かな境内に二人の笑い声が響く。
「永琳・・・。」
神奈子は笑うのを止めた。
「永琳、アンタのパンチのおかげで眼が覚めたよ・・・。私は戦う。諏訪子のためにも、諏訪子のような人々をこれ以上増やさないためにも。」
そして手を差し出した。
「前言撤回だ!」
血が流れている口元をぬぐうと永琳は神奈子と手をがっちりと組み合わせる。
「これからもよろしくね!」
永琳は力強く答えた。
「二人とも。見なさい。」
紫が二人に寄り添う。
「夕日が綺麗よ。」
あたりは夕日に照らされオレンジ色に染まっていた。
三人は、とてもすがすがしい表情で夕日を見続けた。
その後ろで、肩を寄せ合い感動で頬をぬらす幽々子と白蓮。
「見なさい白蓮・・・!あれが青春よ・・・!」
「はい!幽々子さん!」
その後ろでは命蓮寺の関係者たちがいた。
「雲山はこんなに感動したのはどれほどぶりだろうといっておりますが私は熱すぎてついて行けません・・・。」
「ううぅ・・・海の女を泣かせるなんて・・・罪作りな奴らだね!憎いよ!」
「感動ッス・・・こんなに感動したのはじめてッス!」
感動で涙を滝のように流す星の足元でナズーリンが悶えていた。
「あばばばば・・・クサッ!・・・臭すぎる・・・・あばばばばば・・・・。」
「ぐすっ・・・感動してなんか無いもん・・・。」
本殿の柱の後ろからぬえが覗いていた。目に浮かべた涙を拭いている。
「あら?あの黒い竜巻は何だと雲山がいっております・・・あれは何でしょうか?」
黒いひとつの竜巻が命蓮寺の周りに広がる畑の向こうから、畑を突っ切りこちらに向かってくる。それは綺麗な秋の夕暮れにはおおよそ似つかわしくも無いものだった。
「あれはなんスかね?・・・うわわわわこっちくる!」
それは猛スピードで畑を突っ切り命蓮寺の境内に突入すると、一輪に衝突した。風音で一輪の叫びすら聞こえない。
「いちりいいいいいぃぃん!!!!」
白蓮が叫んだ。
竜巻はいきなり崩壊し、あたり一面が黒い霧に包まれる。
「げほっ!げっほ!何なの?これは!」
そこに立っていたのは、厄神の鍵山雛と秋姉妹だ。穣子が一輪の首に手を回して押さえつけている。
「きゃあああ助けてくださああぁい!!!あと雲山が体がしびれて動けないといっていまあああぁぁす!!!」
雲山は小さくしぼみ地面に伏していた。体全体が黒ずんでいる。
「ひゃーはっはっはっは!大成功だあ!」
右手に持った鉈の背を左手のひらに叩きつけながら静葉が狂ったような大声を上げて笑う。相当興奮しているようだ。
「何を考えてるの!?一輪を離しなさい!」
白蓮が叫ぶ。
「ひゃーっはっはっは!いいわよ!ただし条件があるわ!」
「条件!?」
紫が顔をしかめる。
雛がこちら側に二歩三歩歩みを進めると、冷徹に話し始めた。
「あなたたち命蓮寺の人々がすぐさまここから立ち退き、このお寺と財宝と信者全員を明け渡すと約束したら、すぐにこの女を解放してあげる。でも嫌だというのなら、この女に少々痛い目にあってもらわないといけないわね。」
「そんな・・・そんなこと約束できないよ!」
村紗がいう。
「人質とは卑怯な!許せん!」
ナズーリンが躍り出た。しかし乾いた破裂音がするとともに彼女のダウジングロッドが真っ二つに折れて宙を舞った。ナズーリンが肩を押さえ倒れこむ。押さえた手の指の間から血があふれた。
「うわああぁぁナズさあああぁぁぁん!」
星が叫ぶ。
「アーラ動いちゃダメだよネズミちゃん。直撃しなくてよかったねぇ。」
穣子がナズーリンに向けて持っているそれは、火薬で鉛球を高速で打ち出す外界で弾幕を張るために使うもの、拳銃だ。ただしごっこ遊びのためではない。殺し合いをするためのものだ。
ナズーリンは歯を食いしばりながら地面に伏した。
「はっはっは!下手に動くとこのネズミちゃんみたいにこの女も苦しむよ!」
ナズーリンは鬼のような形相で穣子をにらみつけた。
「姐さん!こんな卑劣なもの達に耳を貸す必要はありません!」
一輪が気丈にさけぶ。
「黙ってな!この頭巾女!」
穣子は一輪の足の甲に銃弾を打ち込んだ。
「いぎゃあああああああああぁぁぁぁ!!!!姐さんだすけでええええええええ!!!!!!!!」
態度を一変させ泣き出す一輪。
「いちりいいいいぃいぃぃん!!!この芋神いいいいぃぃぃぃ!!!!!」
「ってひいいいいいぃぃぃぃ!!!!!!」
白蓮が幽々子の頭を叩き割ったハンマーを振り回し襲い掛かってきた。散々脅しておいたからもう襲い掛かってこないだろうと高をくくっていた穣子は完全に面食らった。後先考えず行動するというババァの行動特性を彼女は知らなかった
白蓮のハンマーをぎりぎりよけたものの人質の一輪を逃がしてしまった。
「一輪さん!大丈夫ッスか?一輪さん!」
「ふえぇぇぇん!星ちゃ〜ん!痛いよおおぉ!!」
一輪を星が何とか保護した。
「このババァ共さっきからあぁ!!何なんだ!」
「む!敵に正体を聞かれたら答えるのが正義の味方の義務ね!みんな!いくわよ!1.2.3.・・・ウォリャッ!」
紫の掛け声とともに配置につく5人。
「スキマの心は正義の心!悪をスキマの彼方に葬り去る女!ババァパープル八雲紫!」シャキーン!
「オンバシラは悪を打ち砕く正義の刃!ババァブラウン八坂神奈子!」シュピーン!
「親の健康子の健康!大事な人の健康を守る女!ババァレッド八意永琳!」ピキーン!
「悪党たちを冥界の旅にいざなう女!ババァブルー西行寺幽々子!」ピカーン!
「此岸の崖っぷちから戻ってきた正義の味方!ババァブラック聖白蓮!パァーン!
「5人そろって!超高齢者戦隊ババレンジャー!ただいま参上!」
5人がそれぞれ戦隊ものでお馴染みの名乗り口上ときめ台詞を叫び終わると同時に、彼女たちの後ろで爆音とともに紫、茶色、赤、青、黒の煙が噴出する。
「くっそババァ!!!」
「仕方ないわね・・・予定変更、みんな殺す。」
雛が一言いうと、秋姉妹が襲い掛かってきた。
「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃくたばれババァ共ー!!!!」
静葉が鉈を振りかざして幽々子に襲い掛かる。しかし幽々子はこのとき魂魄妖夢直伝の必殺技の構えに入っていた。手のひらで刃をはさみ、相手の攻撃を封じ込み、あわよくば相手の刃を折り無効化する必殺技「真剣白刃取り」である。
「ほりゃああああ!!!!」
幽々子が頭の上に両手をいきおいよく合わせる。鉈はその下で幽々子の頭に深々とめり込んでいた。
(・・・ちなみに幽々子様、その技は生きてる蝿をお箸でつかめるぐらいの反応速度が無いと出来ませんから実践しないでくださいね。あっ!冷蔵庫の中に入り込んで死掛けてる蝿じゃないですよ!ちゃんと外で飛んでる奴ですよ!)
間脳に鉈の刃が深々と食い込んだ幽々子の頭の中に妖夢の言葉が浮かぶ。そのまま幽々子の思考は彼岸の彼方へと飛んでいった・・・と思ったが亡霊ババァである彼女は頭が割れたままその反動を利用して静葉の腹にサマーソルトキックを食らわした。
「ごぶふぉぉぉ!!!」
空に吹き飛んだ後地面に墜落した静葉。
幽々子の頭はぱっくり割れているが幽々子はそんなことぜんぜん気にしない。
だって彼女は亡霊ババァだから。
亡霊ババァ西行寺幽々子の亡霊ボディはそんなもの簡単に凌駕する。だからぜんぜんOK、問題ない。
「うりゃああああああ!」
白蓮は高速回転する雛にハンマーで渾身の一撃を食らわした。雛とハンマーの間から鋭い金属音をあげて火花が飛び散る。
(はじき返せない?!・・・重い!)
そのままはじきとばされて本殿に激突する雛。
「ひいいいいお寺がああ!!!」
星の手当てを受けていた一輪がムンク顔になり悲鳴を上げる。
「畜生!玉切れか!」
銃を投げ捨てて自前のバタフライナイフで応戦する穣子。対する永琳と紫は素手で戦っている。
「とああああぁぁぁ!」
紫のハイキックが穣子のナイフを吹き飛ばした。
「うおおお!!!」
永琳のドロップキックが穣子の腹を直撃する。穣子がひるんだ。
「くらええええ!!!」
神奈子が巨大なオンバシラを穣子の上に落とした。穣子はそれを受け止めたが、オンバシラはどんどん重たくなってゆく。
「ぐぐぅ、うがあああぁぁぁ!!!」
とうとう重さを支えきれなくなった穣子。オンバシラの下敷きになる。
「畜生・・・ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおごぶぎゅぁ!」
グロテスクな音とともに穣子はつぶれた。オンバシラのしたから血とちぎれた腕がはみ出ていた。
「うおおおおおおおぉぉぉぉよくも穣子をおおおおおおおお!!!!!!!」
頭の上から大声が響く。鉈を振り上げ怒り狂った静葉だ。鉈を一直線に紫に向かって振り下ろしている。
(しまった!上をとられた!)
紫が心の中でいう。
(!!??)
何かの気配を感じ前を向く静葉。目の前には、高速で飛んでくる巨大な鉄の塊があった。
それが自分の腹に当たった。
「がはぁ!?」
その鉄の塊が、ぶつかり弾き飛ばされたような、すり抜けたような感覚。そして自分の体が回転し、最初に眼に映ったのは・・・下半身だ。
上半身が無い。断面から血液と内臓を振りまいている。
(え?うそ?何これ・・・あれ?意識がだんだん遠のいて・・・・。)
紫の目の前に、腰の辺りから上下に二分され、内臓と血液まみれになった静葉が墜落した。
驚いて鉄の塊が飛んできたほうを見る。そこには息を荒げる村紗がいた。
「はぁはぁ・・・船長を怒らせると怖いよ!!」
鉄の塊は村紗がハンマー投げの要領で投げた碇だった。
「いてて・・・あのババァ、どこにあんな力が・・・?」
瓦礫の山からびっこを引きながら出てきた雛を5人が取り囲む。
「少々おいたが過ぎたようね、鍵山雛・・・覚悟しなさい。」
紫がいう。その眼には静かな怒りの炎が燃えていた。
「・・・ふふっ。仕方ないわね。この勝負、引き分けにしといてあげるわ。」
雛は不敵に微笑むと黒い霧を噴出し回転し始めた。
「うわあぁ!」
霧が晴れた頃には、鍵山雛はもう黒い竜巻となって月に照らされ夜空を飛んでいた。
「ってこらっ!厄神こらっ!私の見せ場持ってってんじゃないわよおおぉ!」
「卑怯だぞ!降りて来〜い!!!」
悔しがり飛んだりはねたりしながら抗議する5人の声が雛に届くことは無かった。
「村紗船長、ありがとう。」
紫が村紗に握手をした。
「えへへ、何か照れちゃうなあ。あの時はもう夢中だったから・・・。」
村紗はテレながらもまんざらでもなさそうだ。
「あなたは今日から超高齢者戦隊ババレンジャーの戦友(トモダチ)第2号よ。」
「え?なんだそれ・・・?まあいいや。ありがとう。」
ババレンジャーの戦友(トモダチ)とは、発明家河童の言う「盟友」と似たようなものである。ちなみに記念すべき第1号は里の守護者上白沢慧音である。
(いいなあ・・・船長さん・・・。自分も戦友になりたいッス・・・。)
村紗のことを親指をくわえながら見つめる星。
それに気づいた紫は、星に近づくとこういった。
「あなたは寅丸星・・・ていったっけ?あなたはとても綺麗な目をしているわ・・・。」
(え?!ほ・・・本当ッスか?)
「あなたの穢れ無きすんだ瞳の向こうに、明るい未来が見えるわ。」
「紫さん・・・。」
「精進しなさい・・・正義の味方として。その暁には、私たちはあなたを戦友として歓迎するわ。」
「・・・分かりました!自分精進するッス!必ず紫さんみたいな正義の味方になるッス!」
その隣で、腕の傷の治療が終わったナズーリンがもだえていた。
「くっさ!・・・臭い・・・ぐふぅ・・せりふが・・・・くっさ!・・・がはぁ・・・。」
紫は月を見あげる。月は幻想郷の夜空に柔らかな光を放っていた。
(鍵山雛・・・いつかあなたを倒して見せるわ・・・。待っていなさい。)
「1.2.3.・・・ウォリャッ!」
紫の掛け声とともに5人は月夜に照らされた境内を駆け出した。
しかし彼女たちは知らない・・・真の悪人たちは息を潜め静かにその魔の触手を伸ばし続けていることを!
行け!超高齢者戦隊ババレンジャー!進め!超高齢者戦隊ババレンジャー!
村紗船長が投げた碇が稗田家の屋敷の天井に大穴を開けたことも渡り賃を持たせ忘れたせいで諏訪子が三途の川を渡れず川の藻屑となって消えたことも紅魔館の門番が泥棒に入られた責任を全部負わされて解雇されたことも気にする必要はないぞ!!
超高齢者戦隊ババレンジャー
第3話 完
そうなんです。これです。
こういうバトルがやりたかったんです。
何か3話もかかっちゃった。
星蓮船のキャラのセリフよくわかんね。
でも星ちゃんは多分熱血バカ。
どっかのメンヘラ
作品情報
作品集:
4
投稿日時:
2009/10/06 17:44:04
更新日時:
2009/10/07 02:44:04
分類
幻想郷最凶のババァ軍団
老害
アクティヴなババァたち
熱血物のお約束シーン
グロがんばったけどエロはからっきしだよ三級品
台詞がアレすぎて一部読むのが辛かった。
しかし面白かったです。
見習いたいテンションです。
次回もがんばって下さい。
今回も楽しく拝見させて頂きました
このハイテンションさが大好きです
ババア良いよババア
いつも自分の方にコメ下さって本当にありがとう御座います。
毎回励みになっております。
シズハのキャラがガ板系のノリで再生されるのはお約束ですね。
さあ、ライバルとの直接対決はいつ起こるのでしょうか・・・。
>>1
実は考えてたんだけどSS中で言及し忘れてたwww
>>2
東方屈指の地味キャラを少しでも活躍させようとした結果がこれだよ!!
>台詞がアレすぎて一部〜
メンヘラはね、興奮しすぎるとついやっちゃうんだ・・・。
>>3
うん!とってもすばらしい!
>>4
あんさんのナズさん好きには負けましたわwww
>>5
ライバルたちとの直接対決はまだまだ先っぽい・・・
あと話を連発させすぎてつかれたので作者は旅に出ます。
ただし2〜3時間で帰ってくるので多分普通に書きます。
最後が魔の手じゃなくて触手になんだかこだわりを感じました。
穣子の攻撃は1回当たっても死なないがバタフライナイフはそうではない
つまりそういうことだ
>>8
毎度毎度ありがとうございます
なぜ魔の手ではなく触手にしたのかは・・・まあノリです。
目から触手が……
しかし、美鈴さん解雇されたか…。
やはりサ店のマスターやんのかなって…それなんてアドベントチ…
そして自殺なのに気付かないからこいつら反省しねえんだよな