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『実践魔女裁判』 作者: もくりこくり
皆さーん、こんにちはー。ようこそお集まり下さいました。
それでは、実演で学ぶ“素敵な幻想郷ライフ”の第十三回講義「実践魔女裁判(拷問編)」を始めたいと思いまーす。
あーあー、後ろの方の方、ちゃんと声が聞こえたら手を挙げて下さーい。あ、大丈夫そうですねー。それから、今日も壇上で色々お見せします。ちゃんと見える所に座って下さいねー。
この講座のウリは、いかにも本当っぽいという所なので、今回もちゃんとリサーチしてあります。えっへん。
例えば参考文献はクレーマーとシュプレンガーによるかの名高き『魔女の槌』です。他の有名所もちゃーんとチェックしてますよ。ピエール・ド・ランクルとかニコラ・レミとかアンリ・ボゲとかね。後は誰だっけ、えーと、ジェームズ六世のも見たし、マシュー・ホプキンスとかベルナール・ギーとかジャン・ボダンとか偉大な先達の記録にも基づいていますので大丈夫ですよ。決して失望はさせません。
今日、みなさんの眼前に暗黒の中世が出現します!!
あ、異端審問と混ざってますが気にしない気にしない。本格的な魔女狩りなんて中々見られない機会ですので、見逃さないで下さいね。
なお、今日は実演がメインですから、背景とか歴史とか細かな解説は行いません。後日講義形式で詳しく話そうと思いますので、興味がある方はその時にまた来て下さいね。ええ、参考文献などはお配りしたレジュメの末尾にリストを付けてありますから、一々ノートを取らなくても大丈夫ですよ。
さあご覧下さい。各種の道具も完全再現しました。……本当は、処刑具と晒す為の懲罰具、拷問器具はそれぞれ違うんですけども、どうせずっと昔の西洋中世とかの話ですし、皆さんもそんな細かい差異レベルでの正確さは期待していないと思うので、その辺は適当に進めちゃいます。
ところで、私は筆や書物より重いものは持ったことがないので、ボランティアの伊吹萃香さんにお手伝いを頼んであります。それから、万が一途中で魔女が死んじゃったりすると困るので、皆さんもお馴染みの八意永琳先生をお呼びしてあります。お二方ともよろしくお願いしますね。
「よろしくねー」
「よろしくお願いします」
では、いよいよ今日出演してくれるのは七曜の魔女ことパチュリー・ノーリッジさんの登場でーす。ええっと、そうですね、ご心配の方々もおられるかもしれませんが、この会場はあらかじめ念入りに結界を張ってもらってあるので、皆さんは絶対に安全です。安心してご覧になっていて下さい。さ、皆さん、拍手で迎えて挙げて下さいね。パチュリーさん、良くいらっしゃいました。
「……これはどういうことかしら? 私は非人道的行為としての魔女狩りを告発すると聞いたから来たのだけど」
ええ、ええ、ちゃんと魔女狩りの残酷さはお伝えします。あ、ちゃんと朝食は抜いて来てくださいましたか? 大量に吐かれたりするとちょっと迷惑なので。じゃ、萃香さんよろしく。
「あ、お前はいつぞやの鬼。え? 何するのよ! や、止めなさい」
「……い、嫌ぁっ」
ではいよいよ開幕ですよー。まずは準備段階の尋問です。
ここでお見せするのは謂わば魔女チェックです。とりあえず代表的な2つをご紹介しましょう。一つは水に沈むかどうかで確認する方法で、もう一つは魔女マークを探す方法です。では簡単な水でのチェックをしてみましょう。水は不浄なものを受け入れないとかで、水に浮けばアウト、沈めばOKと言う、いかにもアバウトな方法です。魔女の秤というのも似てますね。要するにある重さより重ければ魔女じゃないってことです。パチュリーさんは運動不足そうですから、秤なら有利だったかもしれませんねー。
はい、ここにちょっと深い水槽を用意しました。透明ですから水中の様子もちゃんと分かりますよ。
「ちょっと、何するのよ。放してよ! は、放しなさい」
両腕をこうして交叉させて、足に縛り付けます。ちょっと窮屈な格好ですが、仕方ないでしょう。これを水に、そぉれっ。
ざばーん。
ぶくぶくぶく……。
……。
……………。
………………………………………。
あれ、沈んでる……。えーと。しょうがないな、魔女の癖に。
萃香さん、引き上げて下さい。ちっ。
「げほっ。かはっ。……うえぇ」
偶にはこんなこともあります。問題なし問題なし。
では次の針を使う魔女チェックです。昔は先端が引っ込んだりするインチキ針を使ったりもしたようですが、今日は相手が正真正銘の魔女っ娘なのでそんな必要も無いですよね。そんでもって、これ、霊夢さんから借りてきたものです。結構太いんですねぇ。こいつで体中をくまなく刺してゆくんです。うふふ。
「はぁ、はあ。ちょ、ちょっと。魔女マークなんて無いわよ」
えーと、本当は服を全部剥いて、毛も全部剃るんだそうですが……。今日はこのまま刺します。その方が楽でしょ。では。
「痛ぅ。い、痛い痛い」
「あうっ。きゃっ。嫌っ。いぎゃっ」
ええと、うるさいし、面倒だし、時間もないので文献にある重要な部分だけをお見せしましょうか。何でも乳首とか黒子とか痣とかに刺すんですって。ふーん、この辺かなー。
「ああっ」
段々下へと降りてって。じゃここはどうかな?
「いぎぃっ」
あれ、痛いんですかぁ? そりゃあそうですよね、パチュリーさん。ホプキンスは第三の乳首だとか使い魔が血を吸うとか言ってますけど、馬鹿馬鹿しいですよねぇ。
「――痛っ。――ぎっ。――痛いっ」
さ、もういいでしょ。ふふふ。ではパチュリーさん。
あなたを、魔女です。
「うわあ、さすが阿礼乙女、ネタのデータも上書きされてないよ」
萃香さん、何かおっしゃいましたか?
「……いえ、別に」
ではいよいよ審問という名の拷問の開始です。本当は予備尋問から始まって何たらかんたらと制限やら決まり事がたくさんあったんですけど、複雑で煩わしいばかりで実演には関係ないので無視します。どうせ、連続して拷問すればどんなに長くても一回分としか数えないとか、元々屁理屈こねてた連中のしてたことですしね。
で、まずはライトな鞭打ちあたりからとも思いましたが、そんなものはわざわざ見せる必要も無いですよね。普段は見られないものを見てもらうと言うのが、この講義のコンセプトなので、特殊な例を選んでいきたいと思います。もちろん鞭打ちと言っても、モーニングスターやら九尾猫の鞭やらの特殊なやつを使えば別ですが――。
というわけで、最初のメニューはシンプルに水責めです。先程の水槽をそのまま利用できますしね。水責めでは漬けても呑ませても良いんですけど、ついさっき漬けたばっかりなので呑んでもらうことにします。はいこれが漏斗になりまーす。これを口にこじ入れてっと。こら、口開けてよ。
「あなた、どうしてこんなこ――、うぶぇ。がぼっ、ごぼごぼっ。ぐふっ」
こんな程度かなー。本当は量も決まってるんですって。じゃあ、今度は吐いてもらいましょう。えいっ。
「うえぇ。げほげほげぼげぼ……」
おおっと、まだ足りないですかね、一応次は全部出してからということなんで。それ、もう一発。
「う、うげぇぇ。かっ、くはっ」
あーあ、なんか鼻からも出しちゃって、ぐちゃぐちゃですねぇ。ではもう一度呑んで下さい。
「も、もう無理ぃ、……がぶっ。ごっ。ぶ、が、がが」
あー、漏斗に歯型が……。ともかく、これを繰り返すんですね。そのうち下からも出てきちゃうんで、下にも栓をしたりしたそうですけどね。どうやったんでしょう? さて量はこれで良しっと。ではまた吐いて下さい。と言っても自分では無理ですか。えっと、ぱんちは飽きました? じゃあ乗っかってみましょうか。私は体重は軽いですし、別にヒールを履いてるわけでもないので大丈夫ですよ。じゃ、そーれ。
どん、ぴょん。
「ぎゃぁあああっ。ぐぇっ。うえぇろろ……おぅぇえ……」
はい、良くできました。
さ、これ以上やっても皆さん飽きちゃうと思いますし、次のメニューに進みたいと思いまーす。床が吐き出した水だらけになるのも嫌ですしねー。後ろの方の人、ちゃんと見えましたかー? はい、じゃあ次。
では私の手元に注目してくださーい。これはさっきも使った針なんですが、今度は赤く焼いてあります。熱いんで扱いは難しいんですけど、上手く使えば血も出にくいしなかなか使えるそうです。
突き刺す場所はどこでも良いんですが、文献によりますとですね、指の爪の間に差し込むのが一番だと言うことで。
「いぎぃぃっ!!!」
「はぁはぁはぁ……。ぐぎゃぁっ………。い、嫌ぁあああ、イひぃいいぁ、ぎぎぎ」
おおっと、確かにこれは効いてるようですね。これ続けているだけで結構行けるんじゃないでしょうか、見た目は地味だけど。ただ、なんか特高とかゲシュタポとかそんな感じで趣きに欠けますねぇ。あれ、失神してしまいましたか? まだ始まったばかりなのに。
こうなったら、髪の毛を掴んでこうガンガンっと。さっさと起きろー、です。
それに、針刺しでは見ている分にも変化が無くてつまらないでしょうから、このくらいにしておこうと思います。別に異論は無いですよね、……よし。
では次はギミックを使うものになりまーす。
まずはそうですね――、伸ばしたりする系のやつを。こいつはラックと呼ばれてます。ベッドにローラーをくっつけたものと言えばいいでしょう。はいはい、パチュリーさん、こっちへどうぞ。ほら萃香さん手伝ったげて。
「止めて、もう……お願い」
ではパチュリーさんをセットしたら、こうしてハンドルを回すと――おお、河童の技術力はなかなかですね。
「おねが……。!!!。が、ぎ、ぎぎぎぃいいいいいぎぎぎぃいい」
これ以上やると関節とか色々外れちゃうかな? もうちょっと行けますか? ええ、成る程。あと五分の二回転までOKと。分かりました永琳先生。パチュリーさん、どんな気分ですか。少し背が伸びたんじゃないですか、良かったですねぇ。おっと、よい子は真似しちゃ駄目ですよ。
えっと、記録を見ると、このラックの変形と言うか発展形も色々あるんだそうです。けれど、高々トゲトゲが増えたり刃が付いていたりする程度なんで、今回は省略します。
さて、お次は締める系です。代表としてここに用意したのは特殊な椅子で、ガロットと言います。拷問にも処刑にも使える優れものなんですよ。
こうして座ってもらって、金具を首にセットします。これでよしっと。あとはこの後ろにあるねじを回してゆけばそれだけでOK。私みたいな非力な乙女でもばっちりです。ねじを使うことで微妙な力加減ができますから、殺さずに長ーーく苦しんでもらうことが可能なんです。きりきりきりっと。
「く、ぐる……し…、息が、で……い」
おお、顔色がみるみる変わって行きますね。これは面白いです。鬱血?チアノーゼ?
ああ、このねじをあと数回転させれば……。生き物の命が自分の手の内にあるって素晴らしいですねぇ。さすがは史上最も残酷と言われるだけはあります。さあて、これはここまで。あ、緩めるのを忘れるところでした。危ない危ない。
えっと、一例一例が短くてごめんなさいねぇ。時間が限られているんで、我慢して下さいねぇ。でも次は凄いですよ?
はーい注目注目!! これがかの高名なニュルンベルクの乙女、所謂アイアンメイデンでーす。誰でも一度くらいは話を聞いたりしたことがあるんじゃないでしょうか。ただし、拷問具として歴史上実際に使われたかどうかは疑わしいと言われていますがね。有名ですし、折角ですから。
さあ見て下さい。デザインとしてはやや稚拙ですけど、中世っぽくて中々良いでしょ。そして、扉を開けるとほーら、鋭い棘が沢山植えてありますねー。じゃあ、パチュリーさんどうぞー。そんなに遠慮しないで。
「嫌っ。嫌嫌嫌嫌っ。だ、誰か助け」
はい閉めまーす。そーっと、ゆっくりと。
「い、痛っ、いだぁいっ。ぎ、がふっ、痛痛痛ぃいいいいい」
うわっ、ぷちぷちって、この感覚はちょっと……。あー、血も溢れてきちゃいましたね。まあ、いいでしょう。
そして、再び扉を開くと〜。おー、見事に刺さってましたねぇ。感想はどうですか?
「む、むきゅうぅぅぅ……う、う」
でも安心して下さい、死んじゃったりはしませんから。これ、きちんと急所は外してあるんです。流石ですねー、見事な職人技です。
あ、ちょっとパチュリーさん、倒れちゃ駄目です、皆さんから見えなくなっちゃうじゃないですか。……しょうがないな。よっと。髪の毛をここにひっかけときますから、頑張って自分で立ってくださいよ。うげげ、粗相は駄目ですよぉ。もー。お仕置きが必要ですね。今がお仕置き中みたいなもんですけど。
因みにー、マリア像の両腕がこう動いて罪人をぎゅーっと抱きしめて、ついでに棘がぶすっといくものがあったとも言われていて、それも再現しようと思ったのですが、堅苦しい考証家がそんなものは伝説で実在は非常に疑わしいとか言って煩いので、今回は復元を断念しました。もし希望の方が多ければ次の機会にでも作ってもらおうかと考えてます。
そうそう、今回お見せした道具やカラクリについての問い合わせは、霧雨魔法店を通して谷河童さんにお願いします。あ、ちゃんと私に聞いたって伝えて下さいね。
では大物を見てもらった所で、ちょっと目先を変えてみます。
ほーら、拷問具にはこーんなちっちゃいものもあるんですよ。これを指に嵌めてっと。こうして万力みたいに締め上げると……。
「くうっ……。――がはっ。い、だだ…、……い、いだだだぁああ!!」
あーあー、涙流しちゃって、大丈夫ですよぉ。指の一本や二本潰れちゃったって、別になんてこと無いですよ。あ、でも親指はマズかったかな。まあいいや。
何でもこの程度は拷問に入らないとかで、裁判記録では「拷問無しで証言が得られた」って書いちゃうらしいんですよね。酷いですよねー、パチュリーさん。でもねぇ、立派な魔女にしては悲鳴のあげすぎじゃないですかぁ? もっと我慢しなきゃ駄目なんじゃないですかねぇ、魔女的に。
そうそう、指締め器の靴バージョンもあります。その名もスペインの長靴!!使い方は、ここに楔を当てて、そおれっ。はい、もう一ぉつ。
「うぎぃいいいいいいいいい…いい……ぎ、ぎゃぁぁあああああああぁああああ」
あららら、また失神かな。うわっ、血が! 骨までいっちゃったかなあ。うーん。手加減が難しいですね。そう言えば、確かこの拷問だけで死んじゃったって記録もありましたね。
おーい。そうだ、足を突っついてみれば――。
「いひぃっ、ああああがが、が」
あ、起きた。やっぱり万力式のほうが扱いやすいですね。
ええっとパチュリーさん、もう立ってるのは辛いですか? うんうん。ではこちらの審問椅子にどうぞ。ほら遠慮しないで。じゃ、萃香さーん、エスコートエスコート。
「嫌。お願い、こ、これだけ……は。この椅子…は嫌。……もう二度と見たくなかった……の、に」
「あ、が、ぐぎぃっ」
あ、やっぱり知ってます?。よく使われていたんですよね、異端審問とか魔女狩りで。
さて、パチュリーさんには、審問椅子でゆったり休んでもらってと。
ところで、実は拷問用具なんていっても、所詮苦痛を与える手段なんてのは限られてるんですよ。なので、今日は派手目で変わったのをあえて取り上げてきたわけです。実際の魔女狩りの手順とは違っているかもしれませんが、よろしくご諒解のほどをお願いします。
じゃ、続けましょうか。永琳先生、まだ大丈夫ですよね。はいOK。小物を使うやつを続けますよー。
「あ、あなたたち、……今からでも遅くない…わ。す、すぐに止めなさい。こ、こんなことを、して、た、…ただで済むと思ってい……るの?」
ええ、もちろん。何も問題はありませんよ。
さて、この器具は通称「拷問の梨」で、その筋では結構有名です。ところが、世に伝わるものの構造を調べると、とても生き物の体を壊せる程の強度を持っていないらしいんです。で、実際の所は単なる装飾品か、見せつけて脅すためのものだったと。口用のやつは、声を出させない位には役だったみたいですけど。ちょっと残念です。
でもみなさん、がっかりするには及びません! 何と言ってもここは幻想郷、ちゃんと伝説を形にしました。形や機能はそのままに、しっかり作動するのに十分な強度を持たせた理想的な拷問の梨を完成させてあります。はい拍手ー。
じゃーん。ちゃんと棘も付いてまーす。ではいっきますよー。
ええ、もちろんあそこに挿入しますよ。当然でしょ。はい、パチュリーさん、脱いで下さいねー。って、ペチコートとか何枚重ねてるんですか。こりゃー沈むわけだわ。全く、何時代の人ですか。あ、人じゃなくて魔女か。
これは面倒ですね……。あ……、ちっ。粗相してたんだった。萃香さんにやってもらえば良かった。萃香さん萃香さん、ここ見せるのに邪魔なんで破いちゃってください。
「はいはい。全部脱がせちゃえばいいのに。マニアックだねー」
余計なお世話です。覗き魔に言われたくないですねぇ。
とにかく。ここにこう突っ込んで。
「い、嫌ぁああああ、お、お願いぃ、止めてえぇえええええ」
止めませんよ。根元まで入るかな? きついですね、意外。
「ぎ、ぎぎ……………」
ではっと、このように挿入した所で、ねじを回すと中の金具がじわじわと広がって……。
「!!!!。あぎgゃyギ∞♀♂£@★×▽〒#%$!!!」
うっわ、すごい悲鳴、というか異常音? それにしてもねじ式って良くできてますねー。力もいらないし。さて、やりすぎて死んじゃっても困るので、この辺までにして抜くことにします。
「はぁ……、はぁ……。い、いぎっ。ひ、ひぐぁああ、あ…ぎゃああああ……」
あ、これはしまった。金具を狭めるのを忘れてました。本格的に裂けちゃいましたか。
ありゃりゃ、これはもうきっと使い物にならないですね。どうせ使う機会なんてもう無いんですけど。どうでもいいことなんですけど、これ、口に入れるものの他に肛門用もあったなんて言われていて、要するに穴なら何でも良かったようで。何考えていたんですかねぇ。正直考案した人の人間性を疑います。ま、次いきましょ。
さてさて、これはユダの揺り籠というシロモノです。尖った台座と拘束用の器具からできてます。今度はこうして宙づりに近い形で拘束して……。ちょ、萃香さんちゃんと支えて下さいよ。そうそう、このように足は開かせて台座の鋭い先っちょは膣に当てます。その状態で、もしこうして力が抜けるとぉ……、あれ?
「かはっ、かひゅー…、ひゅー……」
喘息? ……違うか。あー、前はもう壊れちゃってるんだった。じゃあちょっとずらして肛門の位置にしようかな。さ、これならどう?
「いっ痛いぃい、嫌あ、ぎぎ、ぎ……」
お、よしよし。このように下半身にしっかり力を込めてないとこの尖った部分が突き刺さるという仕掛けです。この姿勢では眠れませんし、なかなかに効果的な方法です。
「い………だ…い、痛…ぃい……、ひゅー……」
あらら、力が全然入っていないじゃないですか。刺さりっぱなしじゃ意味ないじゃないですか。しょうがないな。もう駄目かな。永琳先生どうですか。ええ、はい。うーん、そろそろ時間が無くなってきたようですね。
ま、それはそうとして、他にもここに置いてあるような棘やら鉤やらが付いた器具が用いられてました。どれもできるだけ多くの苦痛を与えるように工夫された凶器ですね。これらを使って身体を裂いたり千切ったり抉ったりするわけです。ただ、これを今更時間を掛けて実演しても、ちょっとたくさんの血が出たりする程度ですので試す程度に留めておきます。時間もないしね。
まー実際にはこれらの変わった凶器を使わずに、焼いたやっとこやペンチで肉をひっちぎると言うのが定番だったらしいんですけど、道具がいまいちインパクトに欠けるので、わざわざ実演することはないかな、と思っています。
では、これ何だっけ、猫の爪かな? えい。
「ぎゃっ、ぐふっ、がぁっ」
おや、パチュリーさんは着痩せするタイプでしたか。でもって、こっちはスペインの蜘蛛、これはどうかな、それ。やっ。
「レミィ……、さ…く…、だれかた…ひぎぃいいっ……、あがっ……」
あ、あやうく胸が無くなっちゃうところでした。失敗失敗。
やっぱりもう反応も薄くなってきちゃいましたね。次の段階に移りますか。それでは永琳先生、多少反応が良くなる程度でいいんで、恢復の方お願いしますね。
では、まだまだ続きますよ。って言っても、もう終盤ですけどね。ともあれ続いては裁判後のお話に移ります。
そうです、棒をボキッで『有罪!!』ってなった後のことです。まー裁判と言ったって、密告にせよ何にせよ一旦疑われちゃったら一巻の終わり、なんですけどね。牢内で死ぬか有罪となって処刑されるか、究極の選択ですねぇ。他の仲間の名前をしゃべれとか言われるんですよ? 冤罪だったら仲間も何も無いですけど、言わないと尋問が終わらないもんだから、みんな知人友人の名前を言うんです。そんなわけで一人が捕まったら一族郎党友人関係が芋づるです。うんうん、大変ですよねー。
パチュリーさんだったら危ないのは、魔理沙さんとか、…………えーとあとは……、魔理沙さんくらいですかね。
ともかく有罪になったら、魔女の場合は俗吏に引き渡されて処刑です。教会は血を流さないって、随分虫がいい話ですよね。あはは。
でもって、えーと、処刑方法はっと。斬首、杭打ち、車裂き、絞首刑に磔、火炙り、エトセトラエトセトラ。うーん、ちょっと独創性に欠けるかしら。処刑方法は中国の方が多彩かもしれませんね。まあ所詮はどっちもどっち、五十歩百歩ですけどね。
埋めたり首斬っちゃうとすぐ終わっちゃうので、今日の実演では違うものをお見せします。溺殺もさっきの魔女チェックと被るので却下ですね。絞殺系の方法もどれも変わりばえがしないので今回は採用しません。さっきお見せしたガロットで十分でしょ。とは言っても、中世にはどんな所でも村外れの絞首台や首括りの木に多数の刑死者がぶらぶらしていたと言いますから、縛り首がメジャーな死刑だった事は確かなんですけどね。
じゃあ処刑編を始めますよー。ただの人間だったら、当然一種類の刑の執行で死んじゃう訳なんですけど、パチュリーさんは生粋の魔女さんですから、上手く調節して複数の死刑を実演してもらっちゃおうというのが今日の趣旨です。凄いでしょ。折角だから魔女に対する刑罰に限らずにセレクトしてみました。
まずは十字架刑です。
おー何か迫力がありますね。磔とは違うんですよー。知ってました? ほらほら、魔女なのにキリストさまと同じ刑罰なんて凄いと思いませんか?
「何を…言うか、私は……負けない」
おっと、元気が戻ってきて何より何より。ほら、ご覧下さい、十字架刑ではこのように中々死にません。そもそも死ぬまでに時間を掛けるというのがこの処刑法の目的なんですね。で、ほっとけばそのうち窒息死します。時間短縮したい場合はこうやって……。
「えっ? きゃああっ」
膝を砕いたりするんです。おっと、これ以上続けると死んじゃいますね。じゃあ一旦降ろしまーす。萃香さんよろしくー。
お次は車裂き刑です。これは中国とかの引きちぎるタイプとは違って、撲殺プラス晒し者って感じでしょうか。四肢を粉砕してから晒すわけなんですけど、道具として車輪を使うんです。この前ちょっと聞いたら太陽信仰だとか車輪の聖性とか色々難しいことを聞かされました。趣旨が違うので今日は踏み込みませんが、今度機会があったらそっちもお話しましょう。
はい、ではこの巨大な車輪にくくりつけてっと。エモノとしても車輪を使います。これはまさに萃香さんにぴったりです。力任せですしねぇ。お願いしますねー。はーい。では一本づつ、そーれぇ。
「えぐあぁ」
はい、もう一本。
「ぎゃぃいい」
「ぃああっ、がっ」
「…いぎ、ぎぎぎ………」
――大体の場合は、この後さらに腰やら頭やらを打って死に至らしめるのです。それから車輪にくくりつけたままで晒すのです。ああ、死ぬまで晒すという場合もあったようです。殺すにはまだまだ早いので、今はここまでにしておきます。この方法は用意するものも多いし力も必要で、結構面倒ですね。
おーい、聞こえてる? まだ死んじゃあ駄目ですよ。
「う…、うう。どうし………て、こんなこ……と、を」
だから言ったでしょう。魔女狩りの残虐性を伝えるためですよ。
さあて、続いてはこちらのでっかい振り子にご注目下さい。ポオの『陥穽と振子』でもよく知られる処刑道具です。からくりを用いて重い刃が少しずつ下がってくるのです。さ、萃香さん、装置を動かして下さい。おー、これは怖い。まるでダモクレスの剣ですね。どんな気分ですか? もう感覚が麻痺しちゃいましたか?
「こ、このような…ものを、私がお、怖れ…るとでも思ったか……、ぎゃあっ」
刃が届きましたか? こうして少しずつ身体を切断していくはずなんです。ところが。
「……が、い、だ…いぃ」
実際には数回斬りつけたところで、こんな風に摩擦で刃の動きが止まってしまうのです。なかなか伝説通りにスパッとはいきません。ほらね、止まっちゃったでしょ。まー実用的じゃないですね。多分これも伝説上のものなんでしょう。
さてと、よく知られた処刑法には、この他に串刺しや杭打ちなんてのもあります。ただし、それらは魔女ではなくってむしろ吸血鬼にこそ相応しいと思うので、今回は見送ります。
肛門からぶすっと口まで、じわじわと木杭で貫く串刺しも魅力的ですけど、やっぱりドラキュラ御用達ってイメージがありますので。魔女の楔も今回は無し。ユダの揺り籠やバンベルクのボックみたいで目新しさも無いですしね。そうそう、英国式の四つ裂きは中々見応えがあるのですけど、女性には使わない方法らしいので。
ではもう一度ご注目下さい。今日お見せできる処刑法もいよいよ最後になりました。何だか名残惜しい気もしますね。仕上げはやっぱり火炙りです!定番ですよね。焼いちゃうと屍体が残らないのがこの処刑法の利点であり欠点でもあります。鉄籠に入れてずっと晒しておくなんてことはできなくなっちゃいますからね。なーんて、ここに魔女の屍体をずっとぶら下げとくのは厭なので丁度いいんですけど。あはは。
では、火炙りにする前に、生粋の魔女に敬意を表して杭も打っといてあげます。本当は早く死なせてあげるための行為なんです。とは言っても、パチュリーさんは人間じゃないので杭を打っても死ねないでしょうけど。あ、大丈夫です。このくらいは私でもできます。えいっ、えいっ。
「ううっ、くぅぅ……」
「……ぐ……、………がふっ」
いいですねぇ。死に臨んだ聖人みたいです。ますます色白に見えますし。どうです? 殉教者の気分とか、法悦には至りませんか。ああ、あなた方には最も遠い境地でしたね。
ではせめて、ここで最後のおめかしとして新しい靴を差し上げましょう。ほらどうです? 真っ赤に焼けた金属製の靴は。お洒落ではないけど威力は十分ですよ。はいどうぞ。いやいやしても駄目ですよぉ。じゃあ、萃香さん、履かせてあげて下さい。あ、やっぱり履かせてから炙った方が良かったかなぁ。だいじょぶだいじょぶ、押し込めばいいって。
「ぁああああ、あづいぃいいい」
おお、似合ってますよ。元気が出ましたか? おや、ちょっと大きかったでしょうか。うん、ちょっと叩いてあげて。
「ぎいぃっ。かっ……はっ。ううぅ」
あー、萃香さん、ハンマー扱いは不得手ですか?ちょっと歪になってるじゃないですか。もう一度、ほら、鉄は熱いうちに打てってね。どお、うまいこと言った? え、駄目?
がつん。がつん。
「……ぐ。……は、ひゅう、ひゅうぅぅ……」
「はぁ、はぁ……。あ、あなたに慈悲……があるな…ら、早く殺し……て。わ、私は……魔女、罪…を認めるわ。……うぅ。だから、お……願い、火を………つ、点け…る前に殺……して。はぁ、はぁ。か、かつての裁判で…も、……それは、認められ…ていた……はず…よ」
へぇ。さすがホンモノの魔女、よくご存じですね。でも駄目です。本当に裁判しているんじゃなくて、あくまでパフォーマンスなんですから。ちゃんと最後まで苦しんで死んで下さい。
では萃香さん、そこに準備した火刑台にパチュリーさんをくくり付けて下さい。そうそう、しっかり焚木も積んでね。よく見えてしかもきちんと燃えるように。
これまでおつきあい下さったみなさんに、ここでメインイベントの前のサービスタイムです。なんと石打ち体験の時間です。人類史の中でも一二を争う程の古ーい刑罰ですよ。さあ皆さん、思いっきりぶつけちゃって下さい。良いストレス発散になりますよ。かつての普通の市民だって、不満のはけ口としてやってたんだから、全然OKでしょう。石はちょっと、という方には腐った卵も用意しました。どちらでも、お好きな方をどうぞ。
私もやってみようっと。それっ、えいっ、えいっ。あ、結構快感……私も癖になっちゃうかも。なんだかみんなが弾幕ごっこに夢中になるのも分かる気がします、えへへ。
ではいよいよ着火しますよ。
おおっ、これは荘厳ですね。逆巻く火焔、苦しむ少女……美しいですね。絵巻でも描いちゃいそうです。
ごうごうごう。
「―――――。レ…ミィ、さよ…な………ら。……お別…れが、い、言え……なくて……………ごめん…ね」
「咲…夜、め、……美鈴、……レミィ………を、お…願い………ね」
「ぜぃ、ぜぃ……。こ………、私…の………生き……て」
「………願わ……………く……は、人………類……のこ…の愚こ………行が…今日………をさ、最後……………に………………………………………」
ああ、やっぱりなかなか死なないんですね。いや、人間なら煙で死んじゃうらしいんですけど。そうだ、萃香さん、焦げた服を払ってあげて。よっく身体が見えるようにね。胸とか女性器とか。ジャンヌ・ダルクもそうだったらしいし、先例には敬意を表しなくっちゃ。うん、そうそう。
……………。
あ、腕が落ちましたね。へぇ、骨って随分と白いんですね。うわぁ、流れ落ちてるのは血かな、それとも膏かな。まだ息があるようです。ああみなさん、生きる力って凄いですねぇ。
ごうごうごう。
……………。
お、いよいよ崩れてきましたね。ぐずぐずです。
身体が燃え上がり、命は燃え尽きたわけですが、後はこのまま全部が灰と化するまで待つばかりです。ええと、灰は永琳先生が全て引き取るとのことなので、残念ながら頒布はいたしません。ご諒解をお願いします。
じゃあ、萃香さん、そして永琳先生、後始末はよろしくお願いします。ええと、残ったゴミは大きなものは粗大ゴミ、細かなものは不燃物ですので、その辺よろしく。
それでは長かった今日の講義もここまでです。みなさん、お疲れ様でした。
次回は講座“素敵な幻想郷ライフ”の第十四回目、人間だってやればできる!「正しい夜雀の退治法―巫女じゃなくても大丈夫―」を開催しまーす。退治後の夜雀の活用法も教えちゃいますよ! 詳しい日時は決定次第発表しまーす。楽しみにしててね。
ではでは、ご静聴ありがとうございましたー。稗田阿求でした。
この駄文には一部に真実が含まれている場合があります。
内容はこれでもだいぶ控えめにしました。
研究書等の方が過激とかどういうことでしょう。
美しいからでも醜いからでもなく、豊かだからでも貧しいからでもない。
女だからでも男だからでもなく、排他性故でも近隣憎悪故でもない。
誰もが被害者たりえたのです。
行ったのは――権力者だけでも庶民だけでもない。学識の有無も関係ない。
誰もが加害者たりえたのです。
魔女を生かしておいてはならぬ 旧約聖書
もくりこくり
- 作品情報
- 作品集:
- 5
- 投稿日時:
- 2009/10/16 19:44:48
- 更新日時:
- 2009/10/17 04:44:48
- 分類
- パチュリー
- すぐに使えない雑学
魔女裁判=異端審問はなんと18世紀までやってたんですよ。
でもここは魔理沙でやってほしかった。
余裕あるなあw
悪魔の端くれ、拷問のレパートリーなら阿求ともタメ張れるだろう
あ、阿求はひ弱だから途中で死ぬか
なんか実際やると殺傷力がありすぎるとか
しかしドギツイw
雑学も同時に学べた
突っ込みは否定しないけど書き方がなあ
とか言いつつ
長い割に平板な印象
話にもそっと緩急ちゅうかメリハリが付けばもっと良かった
多くの方に読んでいただき、うれしく思っております。
>>1
誠に残念ながら人ではすぐに死んでしまい、実演にならぬのでございます。
>>2
アリスさんでは本格魔女の雰囲気が出ないような気がしたのでございます。
また、アリスさんは他の方々にことさら愛されている故、今回はご遠慮いただいた次第であります。
>>3〜6
パチュリーさんの人気に一安心でございます。
喘息でもビタミン不足でも、そこは偉大な魔女でございましたゆえ。
>>7
小悪魔さんも阿求さんもイメージ的には耳年増でありますな。
ご期待もっともながら、私の脳内では小悪魔さんは阿求さんには敵いそうにありませぬ。
>>8
ある事無い事を適当に、しかももっともらしく語りそうなキャラクターとして重宝しております。
今後代わりが現れましたら、そのときには。
>>9
まったく、仰るとおりでございます。
拷問の手引書にも最初に見せびらかすようにとありますし、
いささか大げさなものが作られたのでありましょう。
>>10
確かにいつも白黒をいじめている印象もございます。
これでもかなり控えめに書いております。
それは私が小心者で文章が稚拙なためでもありますが、実際現実のほうがより悲惨でありますな。
>>11
ありがたいお言葉でございます。
しかし所詮は阿求さんの話すこと、眉に唾をつけてお聞きになるのがよろしいかと。
>>12
まさに痛いところを着くご指摘であります。
しかし、元々雑学風味が本質でもあるわけで、
その部分だけでも受け取っていただければ十分とも思っております。
しかしながら、読み物として成立せずば本末転倒、今後精進に勤めたく思っております。
>>13
お心遣い感謝いたします。
講義形式という型を採用しておる故、物語性の付与は未熟な私には中々困難であります。
しかし、改善に努力して行きたいと思っておりますので、どうぞ生暖かく見守りくださいませ。
そこで中国伝統拷問術の大家、紅美鈴先生の登場ですよ!
ノリノリになってるパチュリーが可愛すぎる