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『レミリアが小食な理由』 作者: ああああ
いまから何百年も昔のことです。
外の世界のどこか、深い森の中に紅い館があり、そこには吸血鬼の姉妹が住んでいました。
吸血鬼である二人は、いつまでも小さい女の子。
館の中から出た事の無い二人は館の外を全く知りません。
そもそも彼女達が住んでいる所は晴れの日が多いので、出るのはイヤだったのです。
でも、食事も掃除もメイドの妖精たちがやってくれるので、二人とも何不自由無く暮らしていました。
ある日、妹のフランドールが言いました。
「お姉さま、わたし外の世界を見てみたい」
そう言われたのはお姉さん吸血鬼レミリア。
「何を言ってるの、太陽があるから外は出ちゃダメって言われてるでしょ」
「でもお姉さま、太陽は夜は沈むみたいだよ? この前本で読んだもん」
「本当に?」
初めて知った事実に、レミリアは驚いた顔をしました。
「だから見たいの。私は館の外に行ってみたい」
「でもフラン、太陽が無くても外の世界はとっても危ないの」
大事な妹の頼みは聞き入れてあげたいのですが、館の主としては勝手な行動を許すわけにはいきません。
「だから私も行くわ」
★
紅い月の夜、二人はメイド達も寝静まった頃を見計らって館を抜け出しました。
暗い夜のキレイな星々に、二人の羽を持つ少女達が楽しそうに笑い声を上げます。
館の中では思いっきり飛び回るとぶつかります。
館の中では歩き方から扉の開け方まで事細かに注意しなければなりません。
館の中では大きな声をあげて笑うと下品だと言われます。
しかし、ここにはそんな物はありません。
二人は何にも縛られず、百年の人生で一番楽しい時間を空が黒い間すごしました。
★
やがて、二人は変わった物を見つけます。
「ねえお姉さま、あれ何?」
「さあ、妖精かしら」
「でも羽生えてないよ」
「髪も黒くて短いわね」
「そもそも何でこんな森を飛ばないんだろ?」
二人は、森の中を当ても無くさ迷っている男の子を見つけたのです。
年齢は自分達と同じくらいか、もしくはそれ以下。
興味を持った姉妹は、男の子の方へと降り立ちました。
男の子は目を丸くして驚きます。
「こんにちわ」
「え、あ、…………」
「こんばんわ」
「………………」
姉妹が挨拶しても、男の子は何も答えません。
ただオドオドと視線を姉妹の間に行き来させ、最後には俯いてしまいます。
見ると、男の子は服はボロボロで顔は泥だらけのドロドロです。
もし自分達がこんな格好をしたら、周りのメイド達は大慌てでしょう。
何でこんな格好なのか、何でここにいるのか、姉妹の疑問はつきません。
「ねぇ、あんた何処から来たの?」
「お父さんとお母さんはいないの?」
「街から……お父さんとお母さんは………………いない。死んじゃったから」
「しんじゃった? しんじゃったってどーゆー意味?」
「ねぇ、あなた何処に住んでるの?」
「……おウチ、無い」
「あれ、お姉さま。 この子どうしたのかしら、目から変なのが出てるよ?」
★
「お嬢様、妹様! どこ行ってらしたのですか!」
「夜中に突然居なくなったから、みんな大慌てだったんですよ!」
「お二人ともご無事でしたか、良かった……」
「さぁすぐに私とお風呂入りましょうね、外でついた汚れを身体の隅々から落としてあげます、隅々まで……ハァハァ」
二人が紅い館から抜け出したのは4時間。
しかし、二人が遊んでいるあいだ館はずっと大慌てでした。
なにせ館にとって大事な人がいなくなったのです。
何事も無く帰ってきた二人に、あるメイドはお叱りの言葉、あるメイドは安堵から腰を抜かし、あるメイドはなんかヤバイです。
しかし、様々な反応をするメイド達も、後から続くように館に入り、レミリアの後ろに隠れてしまった男の子を見て、
全員が全員素っ頓狂な顔をします。
「あのぉ〜、お嬢様……ソレは一体」
「森で拾ってきたのよ」
「今日からこの子は、ここに居るの」
「「お願いできるかしら?」」
まるでオペラのようにハモる二人に、メイド達はなるほどと感嘆をついています。
「分かりましたお嬢様方、私達にお任せください」
★
次の日から、紅い館に新しい住民が加わりました。
姉妹に拾われた男の子が着ていたボロボロの服は、綺麗に白い服に変わって、
ロクにご飯を食べられなかった食生活は、メイド達の栄養たっぷりの食事になり、
いつも1人で床に寝ていた夜は、3人でベッドの中に入る夜になりました。
★
男の子は手品が得意でした。
その小さな手に持っていたボールが一瞬で消えたり、
姉妹の帽子が知らない間に入れ替わってたり、
気が付いたら昨日になってたり。
そんな事はお茶の子さいさいという奴です。
「ねぇ、どうやったのどうやったの!」
「教えて、ねぇ教えなさいよ!」
二人は目をキラキラさせながら男の子に問い詰めました。
でも彼は決して教えてくれようとはしません。
「私にもできるかなあ?」
その言葉にも、男の子は曖昧に笑うだけでした。
★
男の子は掃除が大好きでした。
姉妹の部屋は元々汚れが少なかったのが、男の子が来てからは輝かんばかりです。
ここに住まわせてもらっているのだからと、男の子にとってはささやかなお礼の気持ちでした。
「ねぇ、あんたどうしてそんなにお掃除が得意なの?」
「家にいる時、ずっとこればっかりやらされてたから……」
「えーなんで? 面倒くさいし疲れるし、いい事なんて無いじゃない」
「だよね……」
少し落ち込んでしまった男の子を見て、姉妹はまた何かマズイ事を言ったのではと思いました。
「よし、じゃあ明日からあんたのお掃除手伝ってあげる」
と姉のレミリア。
「え?」
と男の子。
「あなたを見ていると、何か面白そうだしね」
と妹のフランドール。
「じゃあ、さっそく今から3人で始めましょ」
「この広い部屋も、3人だったらすぐ終わるわよ」
男の子は一瞬驚いた顔をしましたが、すぐに少しだけ笑顔になりました
「……ありがとう」
誰かが疲れる事を手伝ってくれたのは、男の子にとっては生まれて初めてだったのです。
姉妹がモップがけで自室の床を剥がしまくって、3人揃ってメイドに叱られたのは次の日の事です。
★
男の子は姉妹と一緒に遊ぶ事が大好きになっていました。
館の敷地から出る事はメイドが許してくれませんでしたが、時々姉妹に連れ出され、脱走に付き合わされる事があります。
吸血鬼の姉につかまって、一緒に空を飛びました。
自分が住んでいた所が、とても小さく小さく見えました。
初めて飛んだ時には少し怖かったけど、それを見た時は自分の世界が広くなったのを、男の子は確かに覚えています。
吸血鬼の妹と丘に座って、満月を眺めました。
一人ぼっちだった頃、空を見上げてもただ真っ暗で怖かっただけでした。
しかし、フランが隣に居る今、夜空は白く光る星が散りばめられていてとても綺麗でした。
★
男の子は、ここに来る前の事を全く話しませんでした。
何で森の中で1人だったのか、ここに来る前はどこに住んでいたのかも。
聞こうとするたびに、森の中に居たときと同じ顔をするのです。
そんな男の子の顔が見たくないので、姉妹はその事は聞かないようにしました。
いずれ自分の方から話してくれるだろう、と。
★
いつもの様に、ベッドの上で男の子を真ん中に3人で横になっていた時の事です。
レミリアは、やけに目が冴えて寝れませんでした。
男の子も同じみたいです。
フランは反対方向で、スヤスヤと寝息を立ててます。
「ちょっといい?」
「うん」
多分、これも男の子がイヤな思いをする質問だとは分かっていました。
しかし、悩んだ末やはり聞いてみます。
「あなた、帰る所が無いんでしょ」
「………………うん」
男の子は、顔を伏せて答えました。
「だったら………………、 ずっとここに居てくれる?」
「いいの?」
「いいわよ」
「ホントに?」
「ホントよ」
「…………迷惑じゃない?」
「全然。むしろ、あなたが一緒に居てくれると楽しいわ」
…………………………
「ありがとう……」
「そろそろ寝るわね」
「うん、お休み」
★
次の日、男の子は何処にもいませんでした。
意地悪して隠れているのでしょうか? それともトイレにでもいってるのでしょうか?
呼んでみても、返事は返ってきません。
レミリアは館全体を探しましたが、どこにも男の子はいません。
仕方なく、近くのメイドに男の子に居場所を尋ねました。
すると、メイドさんは笑いながら答えます。
「ええ、丁度いい時期になりましたので、いま準備をしている所です」
レミリアは意味が分かりませんでした。
「あまり太らせすぎると、今度は臭みが出ますからね」
とりあえず、男の子の場所に連れて行けと命令すると、メイドは少し渋りました。
しかし館主の命令です。しつこく言うと、やがて折れて、レミリアを地下室へ案内しました。
いつもは立ち入り禁止になっている地下室です。
錆の浮いた鉄製の扉が、開かれました。
そこでは、全てがばらばらでした。
ばらばらの手、ばらばらの足、ばらばらの頭。
それらが全部全部全部、針で吊るされていました。
吸血鬼の女の子が大好きだった人間の男の子は、ばらばらになって死んでいました。
レミリアは何も言えません。
生まれて10年くらいで、初めての光景です。
目の前の物が何なのか、全く分かりません。
メイドは、やさしく微笑みながら、吸血鬼の女の子に言いました。
「お嬢様、まだ食材を切っている所なので、もうちょっと待っててください」
「……………………」
「せっかくお嬢様が捕まえてきたんですから、腕にヨリをかけますね」
その夜中、メイドがレミリアの部屋にご飯を持ってきました。
しかし、レミリアはそれを『いらない』と答えました。
メイドは驚きました。
「どうしたのですお嬢様。
お嬢様は人間の血が入ったステーキが大好きだったじゃないですか。
人間の心臓をミンチにしたジャムをたっぷりぬったサンドイッチが大好きだったじゃないですか。
人間の血が入った────」
「いらない!!」
レミリアは怒鳴って、ご飯をひっくり返しました。
「何てことを、お嬢様!?
何がいけなかったのです、せっかく捕まえてきたあの人間を」
「うるさい!!」
どんっ!!
レミリアが力いっぱいメイドのお腹を突き飛ばすと、
メイドの華奢な身体は壁にぶつかり、目や鼻から血を流しながら動かなくなりました。
その日、レミリアは外に出ませんでした。
次の日、人間の血が入った紅茶をほんのちょっぴり飲みました。
でもすぐに戻してしまいました。
吸血鬼の女の子は、もう食べる事が大キライになってしまったのです。
「お姉さま、どうしたの? これすっごく美味しいのに」
そして妹は、地下室へと閉じ込められたのでした。
咲夜タグがあり、オリキャラタグが無いのは、仕様です
ああああ
作品情報
作品集:
5
投稿日時:
2009/10/17 14:52:16
更新日時:
2009/10/17 23:52:16
分類
二度目の否台本形式
レミリア
フランドール
咲夜
幼少期
フランはその程度の付き合いだったということかな
真実を知ればまた変わったのだろうか
これが原因で「コワレタ」のかもよ?
咲夜さんを受け入れたのは男の子のかわりなのかな。
>一行目
自分的に前者です
>二行目
代わりというより、男の子そのものだからです
男の子は咲夜さんのずっと前世で、再会したのは成長したレミリアが運命を操って……という脳内設定が自分には
泣いた
で、感情が食欲に勝ったおぜうさまはそれ以来鶏肉が食べれなくなって…。
俺は妹様だな。